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第六話 いやん、体が勝手に動いちゃう

主人公がメタメタにやられます。そう言うのが嫌いな人や不快な思いをする方もいると思いますので、ノーダメージ攻略が好きな人は別の作品へ。全然大丈夫だぜ! と言う紳士はどうぞこちらへ。主人公ボッロボロです。


改変しました。保奈美勝利から幸彦勝利へ











(笑いすぎだ。バーカ……身体強化も疎かになってたぜ。笑われたのは酷く腹が立ったが……)


 幸彦は足を引きずって、出口に向かって歩き続ける。しかし、進行方向に向かって思い切り殴ってしまったので幸彦が脱出する前に彼女は起き上がり、幸彦の前に立ち(ふさ)がるのだった。


「うへぇ、乙女(おとめ)を全力で殴るなんて酷いじゃない。幸彦君も中々のクズね。普通こんなのできないもの」


「はっ! 勝手にほざいてろ。俺はイケメンだろうが、美人だろうが、子供だろうが動物だろうが構わずに殴れるんだよ。クズで結構! それが俺だからな!!」


「あら、素敵。まぁ、ラッキーパンチにしては随分いいパンチだったわよ。一瞬意識が、飛びかけたんだもの」


「そのまま気絶してろよ。大人しく」


「それは無理ね。イタタ(あご)にヒビでも入ったのかしら。とっても痛くてたまらないわ。でも痛いだけ。特に動きには支障なし。さっ、喧嘩(けんか)の続きをしましょうか」


「まじかよ……この戦闘狂が」


 彼女はの怪我など何事もなかったよう戦闘をすぐさま続行しようとする。その様子に思わず幸彦は戦意を失いかけた。


「あらあら、もう限界? 情けないわね。二回戦はまだまだこれからよ。ナイフも取られ、片足はヒビ。妖気も残り少ない。こんな逆境ぐらい直ぐ跳ね返せして見せなさいな。私が大好きな旦那様なんだからもっと足掻(あが)いてちょうだい」


「ちょっと休憩しただけだ。まだ諦めた訳じゃねぇ。それと俺はまだ子供だ。結婚できねえよ。バーカ、バーカ!!」


 幸彦は勝負を諦める訳にはいかなかった。まだ拳が握れ、足が動くなら足掻く価値は十分あった。


「よろしい。さぁ、とことん殴り合いましょう。血が吹き出し、骨が皮膚(ひふ)を突き破るまで」



 彼女は背中の脚を引っ込め身体強化も解く。



 こちらを舐めているのだろうか。いくら怪我をしていても彼女の行動は筒抜けなのだ。素早いフットワークが出来ない以上近接戦は幸彦にとっても都合が良かった。


「なめるのも大概にしろよ! その綺麗な面を人様に二度と見せられないよう、ボッコボッコにしてやる!」


 幸彦は気炎を吐いて保奈美の顔を殴りにかかる。その言葉に彼女は苦笑し目を柔らかく細めるのだった。


「うーん? あぁなめてる訳じゃないのよ。これは私を盛大に笑わしてくれたご褒美よ。特別に弱点を(こん)切丁寧にレクチャーしてあげるわ。感謝してね?」


「殴り尽くして記憶飛ばしてやる!!」


「元気なのは良いことね。その元気があるうちに体で一回体験しましょうか。幸彦君は絶対私に勝てないことがすぐ理解できるようになるから」


 しばらくすると、幸彦は文字通り、保奈美に一生勝てないことを体に徹底的(てっていてき)に刻み込まれるのだった。






「はぁはぁ、なんで当たらねえんだ。こんなに打ち込んでるって言うのに。がはっ!」


 かけていたメガネは当の昔にバキバキに壊されて保奈美の顔もよく見えない。彼の顔は全体的に腫れ上がり実に痛々しい顔つきをしていた。


 ここまで一方的に殴られる経験は幸彦には今までなかった。彼は得体の知れないものと戦ってるのではないかと疑い始め、保奈美と距離を取ろうとする。

 がっ、彼女はそれを見越していたのか、幸彦の背中に手を回し腹にの腹に(ひざ)を叩きつける。


「げぇぇぇぇ……がはっ、がはっ!」


 幸彦は思わず地面に倒れ込みそうになったが、保奈美は(えり)を掴むことによってそれを阻止する。

 

「おっと倒れるのはまだ早いわよ。ほらほら、私の顔を人様に見せられないぐらいボコボコにするのでしょう? 早く早く、でないと幸彦君の顔はどんどん不細工になっていくわよ。はい! はい! はい!」


「うっせえ! 勝負はこれからだ。これからのはずなんだ……! 多分…… ぐえ!! ぶほ!! ぶぎ!!」


 はい! の掛け声と共に幸彦の顔面に拳がめりこんで来る。

 それは鼻が折れても歯が折れても一向に止まる気配がなかった。

 内臓もいつのまにか傷つけられていたのか、込み上げてくる血も、シャレにならないぐらいドボドボと吐き出される。


 次第に彼女の白いセーラー服は幸彦の返り血で赤く染め上がっていくのだった。

 それはちゃんちゃんこのように色鮮やかで美しく彼女の黒髪を際立たせるものだった。


 

 保奈美はとらえていた幸彦をつまらなそうな顔で解放すると構えを解いた。

 そしてリラックスした体勢で幸彦に話しかける。


「ねぇ、まだ分からないの? さっきからずっと言ってるじゃない。私と貴方の相性は最低最悪だって。いい? もう一度ゆっくり解説するわね。幸彦君は私の思考を一瞬読んで行動に移してる。それがまずいのよ」


「?????」


「体で理解する方が早いと思ったけど理屈もやっぱり必要かしら? まぁこう言うことよ」


 すると保奈美は足を肩幅より少し開き、左足を前に出す。そして脇を閉めたまま腕を顔の前まで持っていき、顎を引いて少々猫背気味に構えるのだった。


 それは先程幸彦をタコ殴りにした、忌まわしきボクシングの構えである。

 彼はその構えに表情を瞬時に(くも)らせ、じりじりと保奈美との距離を開く。


「さっきよりうんと手加減してあげるから。そんなにビビらなくて大丈夫よ。これは講義の一種だから。いい? 今から右ストレートで私が幸彦君をぶっとばそうとするから、回避してクロスカウンターを私に決めなさい。右ストレートよ。右ストレートだからね」


「お前は何を考えてるんだ? ていうかそれなんかの台詞なのか? 戦っている相手にしょっちゅう言われるんだが」


 なぜか、幸彦は相手に右ストレートでぶっ飛ばすとよく言われるのであった。

 普通に避けてクロスカウンターを決める幸彦であったがそれをすると酷く貶されるのはなぜだろうか。長年の疑問である。



 左ストレートでぶっ飛ばすと言われたことはないのが不思議な幸彦であった。


「まぁまぁ。それは別に気にしないでちょうだいいい? 撃つわよ。さーん、にー、いーち、ぜーろ。はい! 左に避ける!!」


 当たり前だ。回避する方向は分かっている。幸彦は言われた通り、彼女の思考を読んで左に避けようとする。しかし、幸彦の考え方は思考を読んだ後、正反対に変わった。


(げっ! あいつスイッチヒッターだったのかよ。右ストレートじゃなくて左ストレートだったら右に避けなくちゃいけねぇじゃねぇか!!)


 それは彼女が、左に撃つという強いイメージだった。幸彦はそれを避けるため、右に避ける。


 結果、幸彦は彼女の右ストレートに吸い込まれるように当たっていく。ペチンと弱々しいパンチが幸彦の顔に当たった。


「はっ? 何で……お前本気で左に撃とうと」


「理由その一。読み取った思考を素直に信じすぎてる事よ。私が左で打とうという考えを読み取って、右に避けたんでしょう? 実際私は幸彦君に思考を読ませてからから、回避できないタイミングで右に打ったの。それが私の攻撃が当たる理由よ」


「本気で左に撃とうと考えてなかったか? ていうかお前、それがどれだけ神業か……」


 幸彦が信じてしまうほどリアリティに溢れるイメージだったが、彼女は首を横に振る。


「ブラフよ。ブラフ。続きを言うわね。理由その二、見切りの速さ。ほら今度は腹にパンチを打つわ。受け止めなさい!」


 今度は宣言通り、保奈美のパンチは幸彦の腹目掛けて一発撃ってくるのだった。

 流石にそれは安直過ぎて疲労困憊した幸彦でも受け止められるものだった。しかし、保奈美の拳を受け止めて気を抜いた瞬間、体がくの字に折れ曲がる。


「がはっ、うげぇ、うぇ、うげえぇぇぇぇ……お前……パンチは一発だけじゃないのかよぉぉぉ……」



 幸彦の腹には、二撃目のパンチを放った彼女の拳が突き刺さっていた。



「腹にパンチを撃つと言っただけで、二発目を撃たないとは私は一言も言ってないわ。これが理由その二。幸彦君は先読みに頼りすぎて攻撃の勘違いが非常に多い。まぁここまでは、誰でもするかしら。問題はその三よ。私は貴方のことを知り尽くしているから」


 保奈美は腕を組んで、自身満々に言うが、幸彦はそこに、保奈美であるからこそ、勝機を見出すのであった。


「ふーん……じゃあ勝てるよ。お前には。それを今から証明してやる」


「あら、期待しておくわね。それじゃあ三回戦、始めましょうか」


 そうして幸彦は保奈美に殴りかかるのだった。





ジャンケンがなくなりました。

主人公の見せ場を増やすためです。

この小説見せ場がないんだってね。ぐすん

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