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勇者とか身に余る。  作者: うめほし
出会ったのは運命。
2/3

ポンコツ女神、一発殴らせろ。

「あ、起きた。」


また、あの少女が目の前に居た。

体を起こそうとしたけれど、重くて起きない。


「動かないで。綺凜、栄養失調なんだって。」


―― 子どもやのに難しい言葉知ってんのやな。


「今はゆっくり休んで。」


慈々に諭され、動くことは諦める。


「ここは?」

「私の家。綺凜、倒れたから連れてきたの。」

「ふうん。ありがとう。」


―― 倒れたんか、私。


深くは考えなかった。

いや、考えたくもなかった。

ここがどこだとか、何が起きたとか。

考えるだけ無駄だと思った。

どうせ、私にはわからないのだから。


「もう少し寝ると良いよ。」


慈々がそう言って微笑む。


「ウン。」


今はその言葉に、甘えてしまう事にした。





体がふわふわした。

ここは夢の中なのだろうか。

こんなに意識のはっきりとした夢があったのか。


「そりゃあお前、そうでなくては話も出来ぬだろう。」


嫌に陽気な声がして、視線を動かす。

振り返った所に、『いかにも』な白髪で長い髭を貯えた老爺、ではなくやけに美人な女がいた。


「誰?」

「お前たちの言う、神様だ。」


―― なるほどわからん。


「お前……。まあよい。お前をここへ呼んだのは他でもない。お前の現状について説明するためだ。」

「ぜひお願いします。」


このまま目覚めても、慈々が事情を知ってる様子はない。

調べようにも何をどう調べればいいのか分からない。

そんな状況なのだ。

彼女が“胡散臭い”神様でも状況説明してくれるなら、これほど有難い事はない。

一瞬、彼女が何か言いたそうな顔をしたが、気にしないことにした。


「お前が居るのはメルヴァーナという大陸だ。科学よりも魔法が発達し、お前のいた地球とは全く別の世界で、お前がそのメルヴァーナに居るのは、すまぬ、私のミスだ。」

「あ?」


―― 神様のくせにミスすんなよ。


「神と言えども万能ではないのだぞ。」


万能と言えずに神と呼べるのであろうか。いや、呼べるわけがない。(反語)

いや、これを詰めても話が進まないので、ここはスルーしておくことにする。


「それで?」

「ああ。実は今、メルヴァーナは危機に陥っておってな。魔力が枯渇しているとか、そういう根本的な話ではないのだが、実は以前は我々の仲間であったラマシュトが悪さをしていてな…。この世界の者たちを苦しめているのだ。」


―― 邪神、ってか。


それで、ただの一般人である私にそれを話してどうしようというのか。

私に出来ることと言えば、…何もないのだ。


「お前はただの一般人ではない。メルヴァーナからすれば異界人なのだぞ。」

「いや、せやけど…。」

「よく聞け。お前はまだ気づいていないだろうが、お前の中にはとんでもない潜在能力が潜んでいる。それは鍛えれば、この世界で右に出るものが居なくなるほど強大なものだ。」


確かに、異世界転移者と言えば、チート的能力を保有するのが定石。

種類はあれども無双できるというのが“お決まりのパターン”ではある。

けれど、それが私にあるというのは実感がわかない。


「案ずるな。私がタダでミスする訳がなかろう。」

「まずミスをするなよ、ミスを。」

「……、お前に万物の女神たる私が加護を与えた。」

「聞けよ話を。」

「うるさい。とにかく、お前は今、メルヴァーナでラマシュトを止められる唯一の人物なのだ。今後、お前があの子を止めなければ必ず世界は混沌と化す。そうなれば、お前は死ぬ。」


―― 神様のくせに脅迫か。


だが、この時点で私を地球に返すと彼女が言っていない事を鑑みると、このメルヴァーナとかいう世界で生きていく他、選択肢はないのだろう。

別に、地球に残してきた未練もない。


「しゃあないね…。」

「ふん、お前ならそういうと思っておったぞ。」

「調子のええ女神さまやな。」

「そろそろ時間だ。目覚めたらまず、自分のステータスを確認しろ。お前専用の武器と共に送っておく。」

「送るってどうやって…。」


―― あ、意識が…。


まだ話の途中だというのに、声が出せなくなった。

視界もどんどんぼやけて霞んでいく。


「達者でな、綺凜。また会おう。」


最後に、ポンコツ女神の腹立たしい笑顔が見えた。

せめてもの報復に、思いっきり舌打ちをしてやった――。

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