63.出発
応募用の新作書いてたら遅くなりました。
すみません。
落選したら、なろうにも出します。
和也がユニスに遺跡の話を教えて貰った数時間後、その情報が一般にも開示された。
その時の熱狂っぷりは凄まじいもので、街中を遺跡のニュースが駆け巡った。
死者が生き返る。
それは異世界でも有り得ない事なのだ。
人を生き返らせる魔法なんて無いし、金をどれだけ積んでも、どれだけ願ったとしても、教会も死者を生き返らせることが出来ないのだ。
いままで不可能とされていたことが、常識が覆る。
その事に歓喜するものがほとんどだったが、もちろん反対意見もあった。
しかし、それはすぐ世論に埋め尽くされた。
ほとんどの国民が、期待しているのだ。
遺跡に眠る財宝を、死者の蘇生を。
そして、ギルドは遺跡にCランク以上の制限を設け、遺跡を攻略する調査隊を募集した。
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ガタ、ガタ、と和也だけを乗せた馬車が軽快に走る。
高い金を払って貸切にした甲斐があって、かなり快適だ。
装備の点検をしながら、進行方向を眺める。
目的地は例の遺跡から一番近くの町。
そこで調査隊の募集がある。
ギルドが遣わせた先遣隊の情報によると、その遺跡はダンジョンになっているらしい。
……恐らく、かなり高レベルなものになるだろう。
そこらのダンジョンと比べて、報酬が破格の性能だ。
簡単だなんて有り得ない。
それでも、僕は何としてでもこのダンジョンを攻略しないといけない。
そしてエリナを──
決意を固め、背もたれにもたれ掛かる。
ずっと遺跡の事を考えていたせいで、昨日はあまり寝ていないのだ。
町まではまだある。
休める内に休んでおこう。
目を瞑ると直ぐに、和也は夢の世界へと誘われた。
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いつも通り、彼女を救えない。
どれだけレベルが上がろうとも、僕の剣は彼には届かないのだ。
『……嗚呼。』
悲嘆の声を上げながら、僕は横たわる彼女に近づいて跪き、手を握る。
彼女から溢れる生暖かい血が、僕のズボンを染めていく。
『……どうして、助けてくれなかったの?』
彼女の質問。
僕はいつも、これに不甲斐ない答えしか返せなかった。
でも、今日は違う。
『……今まで助けられなくて、ごめん。』
僕は、鮮血が付き、赤く染った手をぎゅっと、さらに強く握る。
『…今度は、絶対に助けるから。』
そして、そう誓った。
『……』
じっと、彼女が僕の目を見つめる。
そして、ゆっくりと口が開き────
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「……さん!…お客さん!着きましたよ!!」
体を揺すられ、微睡みから覚める。
「……ん。……どうも。」
小さく伸びをしてから、和也はよっこいしょと立ち上がる。
最後、彼女は何と言いたかったのだろう?
御者は全くもって悪くないのだが、つい、不躾な返事をしてしまう。
パッパと支度を終え、馬車から降りる。
そして、閑静な街並みを眺めながら歩く。
帝都から遠い、小さな町だ。
クエストで一度だけ来たことがある。
その時の印象は『住民全員が暖かい良い町』だったのだが、そんなこの町に異様なほどの冒険者達が集まっている。
そこにはこの前感じた雰囲気は無く、剣呑な空気だけが漂っていた。
名の知れた冒険者もチラホラ見受ける。
「……げ。」
冒険者達の顔ぶれを確認していると、顔見知りの冒険者と目が合い、思わず声が出る。
…あいつも来てるのかよ。
絡まれたら面倒だ。
急いで逃げよう。
そして、何も無かったかのようにそそくさと立ち去ろうとする。
もちろん『隠密』スキルを発動するのも忘れない。
もう発見されているから気休め程度にしかならないのだけれど。
しかし和也の苦労虚しく、右肩をガシッと掴まれる。
「何逃げてんのよ。」
「あ、来てたんだ。気付かなかった。」
「嘘。さっき目があったじゃない。」
…ああ、これは逃げれないな。
和也は逃げることを諦め、しぶしぶ向き合う。
アリア・トライアム。
以前、ユニスとの会話で話題に出た、和也と同じBランクの冒険者で、ツリ目がちの、気が強そうな美少女だ。
燃え盛る炎の様な赤毛を背中の中程まで伸ばしていて、その豊満な胸を押し上げる様に腕を組んでいる。
「あんたも来てたんだ。」
「うん、まあね。」
「ふーん……」
そう言って、僕の装備をジロジロ見る。
「そう言えばあんたって、盗賊だっけ?」
「そうだよ。」
僕の返事を聞いた彼女が、ニヤリと笑う。
あ…嫌な予感。
「私、今盗賊居なくて困ってるの。だからパーティ組むわよ。」
「え、嫌なんだけど。」
「はぁ?この私が誘って上げてんのよ。素直に聞き入れなさいよ。」
「別に、僕じゃなくても。そこら辺から適当に選んだらいいじゃんか。アリアなら余裕だろ?」
「ふんっ!分かってないわね。弱っちそうなあんたの為に言ってやってるんだから。……ほんとに、なんでこんな奴が私と同じBランク何だか。」
溜息をつきながら、アリアがポツリと呟く。
同い年。
ソロ。
Bランク。
そう、彼女は僕のことを勝手にライバル視しているのだ。
それで、よく絡んでくる。
それが面倒なのだ。
あと、高圧的な所も苦手だ。
「別に、いいよ。」
「豚に言いつけるわよ。」
「……」
彼女が豚と呼ぶのは、彼女のファン達のことだ。
高飛車で口も悪い彼女だが、その容姿からかなり人気が高い。
そんな彼女に惚れ込んだ人が勝手に親衛隊と名乗り、アリアに不敬をした者を粛清するのだ。
和也も初めて会った時に(何をしたか忘れたが)やらかし、狙われた経験がある。
どこへ逃げても追いかけて来て、かなり面倒だったのを覚えている。
しかも24時間ずっとだ。
少しトラウマになっている。
「入るわね?」
勝利を確信し、笑みを浮かべた彼女が高圧的に確認する。
「……了解。」
「ふんっ、初めから素直にそうしていれば良いのよ。」
…それにしても、パーティなんて本当に久しぶりだ。
エリナと別れてから、1度もパーティを組んだことがない。
しかも相手はアリアだ。
お互いソロ同士、連携なんて出来るのだろうか?
グダグダして、逆に危険なんじゃないだろうか。
勝ったことが嬉しいのか、機嫌良く鼻歌を歌う彼女を横目で見る。
…いつも以上に気を張らないと。
「そう言えばあんたって、名前何だっけ?」
「和也だよ。三枝和也。初めて会った時に言っただろ?」
…名前、覚えて貰ってなかったのか。
「…ふふっ、知ってるわ。冗談よ。」
和也が気を落としていると、彼女はイタズラが成功した子供の様に無邪気に笑って言った。
「ねっ、さっきホントに忘れられてると思ったでしょ!」
……こいつ。
「…はいはい。」
カラカラと笑う彼女におなざりに返事する。
自分のペースが崩される。
あー、早く始まらないかな。
その後、ギルドから簡単な説明がされ、
「さあ!早く行くわよ!!」
僕とアリアは遺跡へ向かった。
新キャラです。
別に、大きい方主義者ではありませんが、何故か登場するヒロインの多くが大きいです。
何がとはいいませんが。
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