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モブ勇者の成り上がり  作者: barium
五章 冒険者
59/70

59.編成

ちょっと短め


ダンッ!と大きな音を立て、ギルドの扉が貼り開けられる。

中に居た冒険者の視線が一斉に集まる。

その視線の先には、傷一つないピカピカの白銀の鎧に身を包んだ、13歳ぐらいの少年が居た。

サファイアの様に蒼い瞳を輝かせながら、金髪の髪を靡かせ、不敵に笑っている。


「ランプール家、次期当主のロック・ランプールだ。誰か、俺のパーティに参加したい者は居るか。褒美は出すぞ。」


その言葉に、実力のある冒険者は興味を失った様に視線を戻し、金に困窮しているものは、我先にと手を挙げ始めた。

迫る金目当ての冒険者を、「まあ、待て」と、手で制しながら、言葉を続ける。


「俺は戦闘は得意だが、冒険者としては初心者だ。なので、パーティに参加するものはDランクまでの者、4名とする。出来れば同年代がいい。」


対象外の冒険者が、肩を落として去っていくのを横目で見ながら、和也はいつ少年の元へと向かうか見計らっていた。


「おお、お前は治療師か。中々いいじゃないか。よし、採用だ。」


黒髪の少女がパーティに参加したところで、和也は少年の元へと近づいた。


「戦士?いらん、俺で十分だ。」

「…あの。」

「ん?」


前に並んでいた少年が項垂れて、帰り始めたタイミングで、和也は偽物のカードを見せながら声を掛ける。


「僕の職業は、盗賊です。D級の。えっと、パーティに入れてもらっても良いですか?」


ロックが和也にじろじろと、不躾ない視線を寄越し、見定める。

そして、カードを受け取り、それを眺めたあと、「ふんっ」と鼻で笑った。


「見たところ弱そうだが、本当にDランクなのか?……まあいい、斥候は必要だからな。歓迎しよう。」

「あ、はい。ありがとうございます。」


そんなに弱そうに見えるだろうか?

装備のレベルを下げてきたからかもしれないけど、少し心外だ。

ここまでそう言われると、少し考える必要もあるかもしれないなぁ。

まあ、なんの思惑があるのか、そんなに目立たなそうな人ばかり採用しているから、今回は良かったけれど。


「三枝和也です。よろしくお願いします。」

「ああ。」


ぺこりとお辞儀をして、先に選ばれた治療師にも挨拶をする。


「よろしくお願いします。」

「はい、よろしくです。」


そして、近くの席に座り、パーティのメンバーが選ばれるのをぼーっとした表情で見続けた。



───────────────────────────



「今から行くクエストはゴブリンの討伐だ。行く場所は東の森のゴブリンの集落で、そこのゴブリンを殲滅することが今回の目標だ。」


最終的に出来たパーティは戦士1人、重戦士1人、盗賊1人、魔道士1人、治療師1人という構成になった。

パーティのバランスとしては最高だが、不安でもある。

というのも、本来、ゴブリン集落の殲滅はDランクのクエストであり、和也がパーティに参加することで受けられるようになったクエストだ。

そして、和也以外のメンバーはEランクということで、戦力に不安がある。

というか、不安しかない。

ロックは貴族なので、英才教育を受けているはずだからまだいいとして、問題はあとの3人だ。

装備は質素だし、使える魔法も少ない。

そしてなにより、クエストの経験回数が多くない。

まんま初心者といった風体の彼らは、正直、このクエストにおいては殆ど戦力に数えられないだろう。


しかも、ゴブリン○体の討伐〜ならまだしも、今回は集落の殲滅だ。

報告では小さめの集落らしいが、このクエストは、Dランクでも上位のものにあたる。

集落を形成するくらいだから、そこら辺を歩いている野良ゴブリンよりも知能が高いし、装備も整っている。

そして何よりも数が多い。

小さめの集落でも30はいる。


和也は本当はB級の冒険者なのだが、それでも、護衛対象が死なない様に気を払いながら、さらにB級とバレないようにするのはかなり骨が折れる。

しかも、他のパーティメンバーを見捨てる訳にもいかない。

ある目的の為にもクエストを成功させて、恩を売っておきたいが、クエストの成功よりも、3人の命の方が重いのは当然のことだ。


…さて、どうするか。

偵察の時に、出来るだけ間引くか?

和也が一人で自由に行動することが出来るのは、斥候としての役割を果たしている時だけだ。

しかし、その時間も決して長くは無いし、その後、ロック達が突入した時に、集落に死体が溢れていたら、怪しすぎる。

ゴブリン同士が、喧嘩してこうなったと言っても、知能が高いゴブリンは殺し合いまでに発展する喧嘩はしないし、死体はまだ温かい。

十中八九信じてもらえないだろう。

残りの一、二に賭けるのは得策とは言えない。


やはり、守りながら戦うのが一番か?

でもそれだと、状況によっては手が回らない可能性もあるし、身バレの危険もある。


うーん……どうしよう?


「…じゃあ出発するぞ。表に馬車を用意してある。」


考えの纏まらないまま、和也達一行はクエストに向かった。

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