58.面倒な依頼
お待たせしました。
長い間投稿出来なくてすみませんでした。
今日から投稿再開していきたいとおもいます。
ブクマ解除せずに待っていてくれた方々、更新してないのにも関わらず登録して下さった方々、ありがとうございます。
これからも頑張っていきたいとおもいます。
「冒険者の護衛?」
レグニアス帝国の首都にある冒険者ギルド。
その受付の前で、一人の青年が首を傾げた。
黒い髪に黒い瞳。
普段は中性的で優しげとされる顔だが、今は怪訝そうに、眉間にシワが入っている。
「どういうこと?」
その青年こと三枝和也は、目の前に立つ少女に問いかける。
「…えーっと、ですね。」
問われた少女━━ユニスは、肩にかかった茶色い毛先を弄りながら、何か言いにくいことがあるように、言葉を詰まらせた。
「この街にランプールっていう結構大きな貴族が住んでいることは知ってますよね。」
「いや、知らないけど。」
「えっ、知らないんですか?」
ユニスの目が信じられないものを見た様に丸くなる。
「皇帝の改革にも引っ掛からなかった名家ですよ!」
「…あんまり貴族には興味が無くて。あ、でも改革は有名だから知ってるよ。無能な貴族から貴族位を剥奪するってやつでしょ?」
「ランプール家も有名なんですけど……」
ユニスが呆れたようにぽつりと呟いた。
「まあ、それは置いといて。そのランプール家のご子息が、冒険者に憧れているみたいでして。明後日、ギルドでメンバーを募集して、クエストに行くみたいなんですよ。貴族なので、教育として戦い方とかは教わっているんですけど、それでも家族は心配らしくて、『適当なBランク以上の冒険者に護衛としてパーティに入ってほしい』ということです。」
「それで、どうして僕なの?Bランク以上なら他にもいるじゃん。帝都なんだし。」
「えっと……」
ユニスが気まずい顔で明後日の方向をむき、言葉を詰まらせる。
「そ、その依頼には2つ条件がありまして、1つは年齢が近いこと。もう1つはその冒険者が護衛で入ったBランク以上の冒険者だ、ってバレて欲しくないらしいそうなんです。」
「…なるほど、僕がランクの割に全然強そうに見えないし、知名度も全然無いからってことか。」
「えーっと……まあ……そうです。」
自虐だったのだが、肯定されるとそれはそれで少し腹が立つものだ。
申し訳なさそうに返事をする彼女を見ながら、和也はそう思った。
「確かにカズヤさんと同年代の人も居ますけど、あの人達、有名ですからね……」
「ああ、あの人らね。」
「その点、カズヤさんはソロだし、遠征系の討伐ばっかりであんまりギルドに居ないからあんまり知られて無いんですよね。」
「それに、パッと見、弱そうだし?」
「うっ。」
必死にフォローする彼女をわざと困らせる。
言葉をどもらせる彼女を見て、少し鬱憤を晴らす。
「えっと、それで、受けてくれますか?」
「…まあ、別に良いけど。」
上目遣いに此方を見る彼女の視線に耐えきれず、和也はそっぽを向き、頭をガリガリと掻く。
「ありがとうございます!」
困った顔をしていた彼女だったが、和也の返事を聞くとすぐ、一面喜色に染まる。
無理も聞いて貰ってるし、これぐらいなら別にいいか。
……いいものも見れたし。
「では、説明を続けますね!」
「うん、どうぞ。」
「さっきも言った通りバレると当主様が怒られるので、バレてはいけません。なので、これを持っていてください。」
ユニスがポケットから出したものを受け取る。
「冒険者カード?」
それは、和也の冒険者カードだった。
ただし、表記された情報が初級の冒険者のそれレベルに変わっていたが。
「会った時にこれを使って下さい!」
「偽物じゃん。」
「そ、そうですね。」
「ギルドがこんなん作っていいのかよ……」
「…まあ、別に規則は破っている訳ではありませんので。穴を突いているんですけど。」
ギルド側が規則の抜け穴を利用してどうするんだ。
埋めろよ。
「…まあいいや。それで、どうしたらいいの?」
「明後日の午前8時に募集をするらしいので、それに参加して下さい。そして、うまい具合にバレずに守って下さい。」
「どうしてもバレるような場面があったらどうするの?」
「その時は、強い初級の冒険者と振る舞えばいいんですよ。」
「そんなに上手くいくかな…」
絶対怪しまれる。
「…!ああそうだ。」
「?」
「大事なことを忘れてた。このクエストが終わったらどうするの?その子供が冒険者を続けるなら、いつかギルドで顔を合わせることもあるよね。…その時は?」
「あー、その時ですね。」
ユニスが忘れていたと言うような反応を見せる。
バレずに終わったとしても、その後バレては折角の苦労が水の泡だ。
それに対する作戦は何か考えているのだろうか?
「…演技し続けて下さい。」
「は?」
「クエストが終わった後も、しばらくはフリをし続けて下さい。そのうち、大出世した〜みたいな設定だそうです。」
「……怪しすぎるだろ。」
流石に無理がありすぎる。
…なるべくクエスト以降はギルド内での接触は避けた方がいいな。
そんなことを考えていると、ユニスが申し訳なさげに話しかけて来た。
「…すいません、こんな面倒なクエスト頼んじゃって。」
「いや、まあ、別にいいよ。僕ぐらいしか居なかったんでしょ。」
今回ばかりは仕方ない。
どうせ、貴族だから断り切れなかったんだろ。
「…まあ、そうですけど。」
「じゃあ、適当に討伐してくるよ。」
小さく首肯する彼女に背を向け、和也はクエスト掲示板へと向かう。
余計なクエストに1日盗られる分、もっと強くならないといけないのだ。
「帰ってきたら!お礼にご飯でもご馳走しますねー!」
背後から呼びかけてくる声に適当に手を振り返しながら、明後日のクエストに思いを馳せた。
……どうか、面倒なことにはなりませんように。
活動報告更新しました。