後編 白い幸福
こんばんは、バレンタインデーはほぼこういう短編を書く日へと変貌してしまっている遊月です。なので今年のバレンタイン直前は、少し浮かれた周囲に対して「うおぉ、何書こうか……」状態でしたw
皆様はバレンタイン、満喫されていますか?
本編スタートです!
「お土産?」
「あぁ、ちょっと街で面白い話を聞いてな? 明日は大切な人に贈り物をする日だそうじゃないか。だから、ちょっと早いけど……」
青年はそう言って、呆気にとられた様子の魔女の腕に小さな腕時計を着けた。魔女の髪色と同じ、黒と白の2色の装飾があしらわれた、質素ながらも趣味のよさげな時計。
「なに、これ」
「そうか、姉上浮世離れし過ぎてるから時計を知らないのか。その針の指し示す時間が今だ。姉上、けっこう時間の感覚ないだろ? 前も腹空かせて倒れるまで薬の調合に明け暮れていたし。だからせめてこういうのを見ておけばいいと思うんだ」
「いや、そうじゃなくて」
時計くらいは魔女も知っている。彼女自身は身に着けていないが、彼女を訪ねてくる客人は皆時計を着けているし、何より彼女自身、世の中のことに興味を持っていないわけではない。
むしろ世間の人々の役に立とうとするなら世情の動きを知っておく必要がある――それが自分の神秘へのニーズに繋がることだって少なくない――し、世に溢れる娯楽は、彼女を近くで見ている青年から「浮世離れしている」と評される魔女の心をもある程度は捉えているのである。
むしろ、自身の興味がないことにはほとんど知識を持たない青年の方がよほど浮世離れしているというか、世間からずれた感覚の持ち主なのではないかとすら、魔女は案じている。
そう、きっと彼は知らない。
時計は【独占欲】も表しているのだと。
「まぁ、受け取るだけ受け取るけど……。あんまり使わないかもよ?」
言いながら魔女は薬の調合に戻る。明日は【大切な人に贈り物をする日】。そういう日には特に多くのニーズがある。何に使うのかはあまり詮索しないが、重宝がられるなら求められる薬を作らなくては。
きっとそうして気を張っていたからだろう、食事中に急な眠気に襲われてしまった。そして、奇妙なことにいつもならそうなったときに聞こえてくる慌てたような音が、全く聞こえてこなかった……。
あれ、あ、そうなのかな……
薄れゆく意識の中、魔女は奇妙なほどすんなり納得していた。
前書きに引き続いて、遊月です♪
作中で出てきたように贈り物に「時計」というのは、独占欲を表すそうです。元々は「あなたと同じ時を刻みたい」というロマンチック?な意味ですが、まぁずっと一緒的なニュアンスですものね(´ー`*)ウン
ちなみに、アクセサリー全般的に「一緒にいよう」的な意味があるそうですね。
私ですか? 私は……、うーん。基本的に小物を贈ってますねw
ということで、あと1話、お付き合いくださいまし。
また次回!




