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May it snow eternally.  作者: 遊月奈喩多
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中編 黒い蜜月

こんにちは、遊月でございます!

ハッピーバレンタイン、というやつですね!! ちなみに私はチョコよりも時間がほしい病を今年も発症していますので、通常運営ですね(笑)

ということで、魔女と少年の物語、中編です。

是非お楽しみください!!

 さて、どうしたものだろう。

 森の奥深くにある住居の私室で、魔女は頭を抱えている。別段、病に侵されたりしているわけでもなく、諸地域で燃え盛っている弾圧の炎が彼女に迫っているわけでもなく、むしろ彼女の用いる神秘(・・)は現在移り住んでいる地域では重宝がられている。

 それゆえに、彼女はむしろ畏敬の念を込めて「魔女」ではなく「賢女」と呼ばれてもいる。


 以前、別の街で受けたような酷い裏切りを受けるようなことはないだろう。


 ――――信じてたのに。


 あのとき感じた絶望をまた抱くことは、当分はないだろう。もっとも、まだ幼かった当時と同じことが今起こったところで、恐らくもう動じたりはしないだろうが。幸いと言っていいかはわからないが、人から憎悪を向けられることにも多少は慣れた。


 善意を向けて、返ってくるのが善意であるとは限らない。

 身を粉にして、その報いが感謝や褒賞であるとも言えぬ。


 気味悪がられて排撃されて、排斥される。匿うことを条件に要求される対価が金品であるとも限らないこともその喪失と痛みを以て思い知らされた。そのときに、あまりの絶望感に彼女は赦されざる罪を犯したのである。その罪のことを、彼女が忘れることは恐らく生涯ないだろう。


 何故なら――――


「おい姉上! 姉上を狙う輩がまたいたぞ。やつらも懲りないな」

「ねぇちょっと、まさかとは思うけど」

「安心しろ。命だけは助けてある。まぁもっとも、男としては死んだかも知れんがな」

「……それは助けたことになってないから」


 扉を開けて入ってきた長身の青年とこの魔女の間に血の繋がりはない。恐らく出会ったときに歳近い“姉”として接していたことによる慣れだろう。この青年は、魔女のことを「姉上」と呼んで慕っている。


「姉上がいなければ、俺はあのままあの2人の亡骸と運命を共にしたことだろう。どのような経緯であれ、そこから救い出してくれた貴女にその恩を返したいと思うのはおかしいことか?」

「…………」

 そう、両親を目の前で惨たらしく殺めた魔女のことを。


 憎まれるならわかる。

 疎まれるならわかる。

 それには慣れている。

 しかし、こうなるか。


 魔女にとっての最近の悩みの種は、どこまでも純粋で眩しい。彼が向けてくる好意はあくまでも純粋なのだ。それに対する戸惑いと同時に、思ってしまう。両親を殺めた自分に(・・・・・・・・・)育てられることに感(・・・・・・・・・)謝の念を持ってしま(・・・・・・・・・)うほどの環境だった(・・・・・・・・・)のか(・・)、と。


 それを思うと、思わず抱いてしまうのだ。

 人を殺めた自分が持つべきではない感情を。


「あっ。でさ、姉上」

「ん?」

「今日はちょっと土産があるんだ」

「今日も、ね。どんなの?」


 どこかわくわくした表情で自分にそんな報告をしてくるこの青年を見ていることが、幸せだと。

 ふとした瞬間に感じてしまう自分がいることに、魔女は戸惑わずにはいられない。

前書きに引き続いて、遊月です。

そもそも、Twitterでハッシュタグ #魔女集会で会いましょう というマーベラスなものを発見したことがこのお話の原点になっていますが、はい。大学時代に得た知識をけっこう使えるものだな、とか思いながらノリノリで書いておりますw


前後編の予定だったこのお話、全中後編として、あと1話投稿予定です!


ではではっ!!

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