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ダンジョンなストーリー  作者: 黒鷺
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一流冒険者を目指す

ダンジョンなストーリー



登場人物

◎小鳥遊カガリ(五月十日生まれ)

父である小鳥遊クレハに憧れ、十二歳から冒険者になった。サザガーイから出て半年後には津島ゲンジのギルドに所属し冒険者業をしている。ゲンジから受けた恩を返そうと頑張っている。

・空野ソラ(十月一日生まれ)

幼馴染である赤沢カレンと藍野ツララと組んでいるパーティーのリーダー。両手剣を振り回す筋肉の持ち主。趣味が筋トレ。

・赤沢カレン(七月三十一日生まれ)

片手剣使いで、片手に短剣片手に盾を持ち敵のヘイトを集めながら相手を攪乱させる戦い方をする。

・藍野ツララ一月十四日生まれ)

魔法使いで得意な魔法は氷魔法。器用に攻撃魔法と防御魔法を扱う才能に恵まれ後衛で前衛二人を支えている。

・津島ゲンジ(四月九日生まれ)

カガリ達が所属するギルドのマスターであり、一流の冒険者でもある。

津島ナナコの旦那。

◎津島ナナコ(八月六日生まれ)

津島ゲンジの秘書兼、ギルドの事務を任されている。津島ゲンジの妻。

・小鳥遊クレハ(十月十日生まれ)

小鳥遊カガリの父親。かつて一級冒険者として世界的に名を轟かせた英雄。放浪癖有。

でもある。

・小鳥遊ツグハ(六月二十一日生まれ)

小鳥遊カガリの母親。昔は夫であるクレハに着いて色々なところに移り住んだが、カガリが産まれてからは生活を安定させる為、サザガーイの家で暮らしている。


【一、冒険】

「よし、いくか。」

まだ夜も開けていない闇の中で慣れた手つきでベッドの横に置いてあるランプに火をつけカガリは防具を身につけ、昨日新調したばかりのダガーを腰に巻き身支度を済ませる。

1階に下りるといつもと同じパンが二つお皿の上に用意されて、洗い場には。洗われていないお皿が三枚重ねて置いてあるのを横目に、

「ナナコさんありがとうございます!いただきます。」

と言い、パンをペロリとたいらげると四枚の皿を洗い、早々に街へと飛び出した。

新月の今日は辺りにポツポツと冒険者達の持つランプの灯りが見えるだけの真っ暗な中、ダガーの感触を手に感じながら早足でダンジョンへと向かった。ダンジョンの入口に立ち、壁に触れて目を閉じると飲み込まれるようにダンジョンの中へと入っていった。


【二、一年と一日目】

目を開けるといつもと同じ一階層の安全地帯に転送される。

「この転送だけは一年経っても理解ができないな。」

なんて思いながらも辺りを見渡すとパーティーのメンバーを待つグループやダンジョンで汚れた防具の汚れを落として武器の手入れをする人達が多数見られるが、なんだかいつもよりも人数が多い気がした。

「よっカガリ!今日もこんな時間から精が出るな〜。」

と冗談交じりに声をかけてきたのは3つ歳上の空野ソラ率いるパーティーのみんなだった。

「おっはよ〜♪カッガリ〜ん♪」

「おはようございます、カガリくん」

ソラの後ろから出てきた二人は、元気っ子で片手剣使いの赤沢カレンといつも冷静で優しい魔法使いの藍野ツララだ。リーダーであるソラは両手剣使いの筋肉バカである。

三人は歳上だが、同じ年に同じギルドに入った唯一のギルドメンバーだ。

「そういう三人はは今日もまた夜中から潜ってたのか、よくやるよ。」

と皮肉をいいながら毎度恒例の情報交換をする。ダンジョンで低階層でも中階層のモンスターが紛れていたり異常が発生することが増えてきたこともあり、最近は細かい事も言い合うようにしているのだ。

「今日は大丈夫だったか?」

「俺たちは見かけなかったんだが、今朝三階層で何かが出たらしい。それを聞いて帰るか迷ってる奴らがここで留まってるんだ。冒険者がモンスターに怯えてどうすんだってんだ!」

と、一人で奮起していると

「ソラ、誰だって怖いものはあるわ。あなただって蜂が怖いのでしょう?それと同じ、命を大事にするのも冒険者にとっても大切なことよ。」

と、ツララに冷静に指摘されるとソラは唸りながらも納得した。

「まぁ今日は一階層は大丈夫そうだ。じゃあ俺たちはそろそろ帰って寝るからな!じゃあ頑張れよ。」

「頑張ってね〜♪おやすみ〜♪」

「ではカガリくん、失礼します。」

と言いながら後ろ手に手を振りながら三人は脱出転移門の方へ歩いて行った。

「なるほどな、どおりで人が多いわけだ。気をつけないと。」

危険だと分かっていてもダンジョンに潜ることしか考えていなかった。

安全地帯から出るとすぐそこには一階層の主モンスターであるゴブリンが背を向けて歩いていた。すかさずスニークで足音を消し背後からゴブリンの後頭部へ一発入れる。

「グアぉぉぉぉおお!!!」

ゴブリンは不意を突かれて怯んだが、すかさずで反撃してくるが、爪をダガーでいなし空いた脇腹に突き刺すと血を流して倒れ込み、やがて死体は霧散した。煙の中からはドロップアイテムとしてゴブリンの牙だけが残っていた。それをポーチへしまうと次のモンスターを探して駆け出す。

その後も順調にゴブリンを倒し、ダンジョンの奥深くに進んでいく。すると、少し開けた場所へ出た。その奥には宝箱があり、

「まぁどうせ大したものは入ってないだろう。」

などと誰に聞こえるでもない小言を言いながらも開けると、幸いトラップでもなくすんなりと開き中からは四階層のモンスターであるミノタウロスのレアドロップであるミノタウロスの角が出てきた。カガリはにやけ顔を抑えることも出来ないまま角をポーチへしまう。ポーチの空きも少なくなり脱出転移門にゴブリンを倒しながら戻り、ダンジョンを出た。


【三、レアアイテム】

ダンジョンの外へ戻ってきたカガリの目を太陽の光が目の奥を焼き付けたかのように、目の前が真っ白になった。思わず目を瞑り視界を正常運転に戻す。

太陽の位置を見ると真上にあり日の出前から潜り、既にお昼の十二時時を回っていた。今が何時か把握した途端、「ぐうぅぅ」とお腹の虫が鳴り、目に付く場所で家までの凌ぎとして団子を買おうと店を見つけて入った。お金を払い団子を受け取るとその場で口いっぱいに頬張る。口に入れすぎて噛みづらい事も気にせず、咀嚼し飲み込むとお店のお姉さんにお礼を言って店から出ようとすると、呼び止められた。振り返ると、

「お腹減ってんだろう?これも持っていきな!形は悪いかもしれないが美味いものには変わんないからね。」

どうやら形が少し崩れて商品として出せないものをくれたらしい。お礼を言って店を出てカガリはやっと帰路についた。

「ただいま戻りました。」

玄関の扉を開けると、ナナコさんとカレンとツララがテーブルを囲むように座り少し遅めの昼食をとりながら談笑していた。そこに今起きたばかりのソラがあくびをしながら階段から下りてきた。

「おかえり、カガリくん。今日はいつもより遅いし随分と汚れてるじゃない。シャワーをして綺麗にしてらっしゃい。ソラくんは顔を洗って来なさい。」

「「は(ぁ〜)い」」

とカガリは言われたとおりに風呂へ行って汚れを落とすと、昼食が準備されている席に

着きご飯を食べ始める。

「カガリんさ、今日は随分な汚れ様だったけど大丈夫だったの?」

「ん?あぁ、新しくした武器が思った以上に使いやすくてちょっと深くまで行ってしまっただけなんだ。危ないヤツには遭わなかったよ。」

「一年間頑張ったかいがあったわね。でも自分自身が強くなったわけじゃないんだから油断しちゃだめよ。ダンジョンは何があるか分からないんだから。」

などと色々話し合いながら二人は食事を終えると自分の分を洗って席に戻った。

こうしてこのギルドのマスターであるゲンジさんを除くギルドのメンバーが揃い、

今朝の成果をナナコさんに報告する。まずは、ソラ達がポーチからゴブリンの爪や牙をバラバラと取り出す。それをナナコさんが受け取ると精算して換金してもらうというルールになっている。その次にカガリがポーチをひっくり返すと、出てくる中にサイズも大きく一際目に付く物がある。

「お、おいカガリ、それはなんだ、ゴブリンのレアドロップか?そんなの見たことねえけどよ。」

「ミノタウロスの角ですか珍しいですね。ミノタウロスは四階層からのモンスターでその中でも百回倒して一つ出るか出ないかのかなり希少なアイテムですよ。」

「ええ〜!!何で一階層しか行けないカガリんがそんなもの持ってのよ〜!!」

「ダンジョン深く潜ってたら宝箱があってその中に入ってたんだよ。ほんとに偶然さ。」

自分たちよりいいものを持ってきたカガリに少し不機嫌なカレンを宥めるように返事を

すると、

「それでカガリくん、その角なんだけど換金せず装備の素材にするということも出来るけどどうする?換金したら銀貨金貨十枚くらいになるのでそれで装備を揃えるでもいいけど。」

「「「き、金貨十枚いいいいい!!??」」」

「ゴブリンのドロップアイテムなんて十個でやっと銅貨一枚なのに!!」

「それくらいレアなものだと言うことですよ。それで、カガリくんはどうしますか?」

「ギルドの費用にしてください。ゲンジさんへの恩返しも兼ねてという事で。これだけじゃ返しきる事は到底出来るわけじゃありませんけど。それでお願いします。」

「それでは好意に甘えさせてらいますね。旦那はきっと恩を売った覚えはないんだから返されなくてもいい!とか言うんでしょうけどね、ふふふ」

こうして全てを換金するようにすると、今日の集まりは終了した。


【四、二階層へ】

そんな日常を過ごしながら月日は流れ、カガリは一年と四ヶ月かけてようやく二階層へ

進むこととなった。実際、四ヶ月前でも既に二階層には行ける実力は持っていたが、もし

もの事が無いようにと階層を上がること禁じられていた。(実は一度内緒でソラと二階層へ

行ったことがあるが、モンスター自体は一階層と強さは変わらないが、数が多く戦いにも

余裕がなくなってしまい、撤退を余儀なくされたのだ。)

ソラたちはパーティーということもあり、カガリよりも早く二階層へ進むことになって

いた。

「カガリも早く来ないと俺たちが三階層も先に言っちまうぞ。」

なんて事を言ってくるが、それも最近の事である。最初の頃は、潜っている時間も半分程

になりいつもボロボロになっていた。パーティーーでも多数

にはなかなか大変だというものを見ているので、話を聞いて対処の仕方などの練習をし

ながらステータスを上げることに時間を使ってきたのだ。

なんだかんだ言いつつ今日から二階層の探索という事で緊張しながらも朝からダンジ

ョンへと向かう。初めてということで今日はソラたちのパーティーに混ぜてもらう形で

様子を見ることにした。やがて二階層に来ると、

「とりあえず最初はカガリ一人でやってみてくれ。やはりどれくらいここで通じるか知っておくべきだと思うしな。大丈夫だ、危ないと思ったらすぐに助けてやっからよ。」

という事でカガリはゴブリンを見つけると、いつもと同じようにスニークで近づくと背

後から攻撃を仕掛ける。ゴブリンは叫び声をあげながらこちらへ突進してくるが、綺麗に

避けてもう一発攻撃を当てるとすぐに倒れて霧散していく。終わったと気を落ち着けよ

うとすると奥から足音が近づいてくる。そしてゴブリンが二体現れ、こちらを見つけると、

攻撃を仕掛けてきた。

「「ぎゃおぉぉぉぉ!!」」

甲高く大きな声で耳を塞ぎたくなるのを我慢して二体と対峙する。倒し終わると周りの

安全を確認して三人の元へ歩いて行った。

「連続はきついだろうに息一つ切らさずにやっちまうか〜、俺達が助ける必要も全然なさそうだったしよ。その調子なら二階層は大丈夫だろうさ。」

「カガリんかなり強くなってたじゃ〜ん!アタシびっくりしちゃったよ〜♪」

「カガリくんずっと頑張ってましたもんね。でも私も予想以上で驚きましたよ。」

思っていたよりもいい反応が返ってきてカガリは少し安心した。その後は四人で二階層を

探索して今日は帰った。


【五、異常】

「せいっ!ふっ!はあああああ!!」

二階層に潜り始めてもうすぐ一ヶ月が経とうとしており二階層での探索も慣れてきたと

いう時、探索をしていると誰かの悲痛な叫びと共に地響きが聞こえてきた。何事かと思い

声の聞こえる方へ急いで向かうと、そこにはクロノタートルとカガリと同じくらいの若

い男が対峙していた。

「いったいどういう事だよ!ここはまだ二階層なんだぞ、何で五階層のモンスターのクロノタートルが出てくるんだよ!ぐっ・・・。」

男が攻撃を受けて壁に追いやられてしまったのを見て何も考えずに飛び出して行った。


【六、父の存在】

「お父さん、今日はどこに行くの?」

「ん?今日はな、俺の生まれて育った場所に行くんだ。山の麓にあって、最近モンスターが人里まで下りてくるって依頼を受けて行くんだよ。おばあちゃんの墓参りも行かないといけないしな。」

と言って歯を見せて子供のように笑うのは父の小鳥遊クレハである。

「お父さんの生まれたところ?行ってみたい!」

「おぉ、いいぞ。だが、何があるかわからないから父さんがいない時は家から出るなよ。これだけは約束だぞ!」

「うん、わかった。じゃあ準備してくる!」

カガリとクレハは準備を終えて母であるツグハに見送られてお昼前に馬車に乗って家を

出発した。ツグハから預かったお昼ご飯のバスケットの蓋を開けると、野菜や加工肉や魚

などが入ったサンドイッチが二人分綺麗に並べられていた。太陽がてっぺんを越えた頃

に、馬車を空き地に止めて馬に餌をやると二人は太陽の下で好物のツグハのサンドイッ

チを頬張る。食事を終えるとまた再度出発する。通り道にある貴族の街によって夕食の食

材を買い込み夕方になる前にクレハの故郷である村に着いた。

「カガリ、じゃあ父さんは村の周りを見てまわって来るから大人しくしてるんだぞ。」

そう再度注意を促されるとクレハは出ていった。

家と言われた建物は、一階はカフェらしい造りになっており二階に部屋があるという構

造になっている。カガリは二階へ行き椅子に座って窓から外の風景を眺めていた。自然の

気持ちのいい風に吹かれていると、知らぬ間に眠りについていた。村が騒がしくなり目を

覚ましたカガリは目に映る光景に唖然とした。村の周りの木々は倒れ建物も燃え村の中

でモンスターと誰かが戦っているように見えた。眠りにつく前の光景とは全く違う場所

になっていた。カガリがいた場所は少し村の外れにあった為損害はなかったらしい。すると、一階から音が聞こえ誰かが階段を駆け上がってくる。

カガリは物陰に隠れて息を潜めて誰が来たのかを伺うとクレハだった。

「カガリ、大丈夫だったか。見回りをしていると急にモンスターが現れて村に入り込んできたんだ。村人達を避難させてから退治したんだが損害は免れなかった。」

「村のみんなを助けたんでしょ?どれだけじゃダメなの?」

カガリは五歳ながらにそのような質問をすると、

「命も大事だが場所というものもとても価値のあるものなんだ。場所というものにはそこであった出来事が思い出として残るんだ、生まれた場所、家族と一緒にご飯を食べた場所、笑い合って涙を流した場所、そういう物が形として残るんだ。それは一度壊れてしまうと二度と同じものは出来ないんだ。俺はそれが守れなかったんだ、それがどうしても悔しいんだ。」

父は命だけではなくその人の大切なものも守ろうとしていた。そしてカガリは、その言葉

に鈍器で殴られたかの様な衝撃を受けた。カガリが父を本当の意味で尊敬したのはきっ

とこの時のこの言葉があったからだろう。普段は少しおっちょこちょいな父親だが、ふと

他人の事になると真剣になる少し可笑しな英雄とも世界で言われている位なのだから。

次の日山の上にあるカガリの祖母にあたる人が埋まっていると言われるお墓にお参り

をしてから二人は一度ツグハのいる家に帰ると父は昨夜起きた事を伝えるために出てい

った。カガリはというと、

「僕、お父さんみたいなかっこいい冒険者さんになりたい!」

そう母に告げると、

「そうね〜、難しいけど出来る?自分が好きな事だけしててもダメなんだからね。嫌いな事も自分には何もいい事が無くても助けるのよ。カガリは我慢できるの?」

「うん、お父さんみたいになれるなら何でも我慢するよ。お手伝いもするし嫌いな事も野菜もちゃんと食べる。」

「それは凄いわね。じゃあお父さんと同じくらい強くなってたくさんの人を助けてたくさんの人を幸せにしてお母さんに教えてね。」

優しい笑顔をして聞くツグハとカガリはそんな口約束をした。


【七、冒険者】

幾年の月日が流れ、カガリは十二歳になった。十二歳から冒険者としての資格を受けるこ

とができるのでその日の午前中に冒険者の集会場へ行き冒険者登録をした。それを終えると家に帰って父親から貰ってずっとしまいこんでいた皮の防具と父に貰ったダガーを持って近くのダンジョンへ向かった。ダンジョンの入口へ着いたが、扉らしきものが見当たらず周りをウロウロとしてると他の壁に触れると中に入れる事を知りやってみると引き込まれるようにダンジョンに入った。

ダンジョン内は数人冒険者らしき人がいた。それを見て自分も冒険者になったという事を自覚し気持ちを昂らせた。勢いよく安全地帯から出ると人が少ない時間帯だったのかモンスターの数が思ったよりも多かった。初めての戦闘が二対一だと大変だと考えたカガリは隠れながら一体でいるゴブリンを見つけると、物陰から走り出して斬りつけようとするが、足音で気づかれカガリの攻撃は空を切る。前に体重をかけすぎてバランスを崩すと後ろからゴブリンの攻撃を受けてしまった。武器を手放し地面に倒れ込んでしまった所をゴブリンが追撃を仕掛けてくる。何とか身体を翻し回避すると武器を持ち直し、また交戦する。初めは防戦一方となってしまったが、少しずつゴブリンの動きにも慣れはじめてまともな回避が出来るようになると回避して攻撃のヒット&アウェイで何とか一体を自分の力で倒す事が出来た。ここでカガリはポーチを持って来ていない事に気づくとゴブリン一体のドロップアイテムを手に握りしめて帰宅した。

カガリが家へ帰るとその姿を見たツグハが怪訝な顔をして、

「初日からボロボロね、お風呂入れるから綺麗にしてきなさい。」

風呂で服を見ると数カ所破れ、シャワーで今日出来た傷が痛んでやっと自分の状態を知った。一体と戦うだけでこんな事になってたんじゃダメなんだと分かり、次の日からはダンジョンへ入らず戦闘の知識と技術を身につける事に専念した。

次の日の朝からまず基本の体力を作る為に走り込みをして身体を作り替えるように約三ヶ月を費やし戦いの基礎を身につけた上でダンジョンへ潜った。

前回同様、一体のゴブリンを見つけると、カガリはスニークをして確実に初手を与えられるように近づく。モンスターの急所であるコアの場所を狙って攻撃を仕掛けていくが、思っていた以上に刃が通らず仕留めきれず反撃を食らってしまうが、体制を立て直ししっかりと距離を取り相手の隙を狙って攻撃をしていく。するとすぐに倒す事が出来、ダメージもほとんど受けていない状態で勝利を収めることが出来た。

「ふぅ〜、まぁこんなもんかな。前と比べると成長はしてるな。」

戦い方を決め、焦らなければ問題がないところまでカガリは成長したと実感した瞬間だった。その後も同じ戦法で倒していき、今日の探索は終了となった。


【八、個人遠征】

そんな日が数週間経ったある日、冒険者達の集まる街ラガスへ行ってみることにした。十日分の準備を済ませるとツグハにお小遣いだと銀貨十枚を受け取り、見送りをされて数少ない街へ向かう馬車に乗り込み半日かけてようやくラガスへ到着した。到着するとお昼時を過ぎていたので、すぐに目に付いた店に入りメニューに目を通すと今まで聞いたこともない物ばかりで何をどうしようかと迷っていると、

「ご注文はお決まりですか?」

猫耳の猫人族らしいウェイトレスが声をかけてきたので、カガリは何かわからないが頼んでみようと質問で返した。

「すみません、このロールポークのコンチーニって何ですか?」

「そちらはロールポークのバラ肉と野菜やチーズを器に入れて蒸しあげたものになり ます。」

「じゃあそれで。あとお水を下さい。」

「はい。ではロールポークのコンチーニとお水ですね。少々お待ちください。」

猫人族の長い尻尾を振りながら歩いて行ったウェイトレスの後姿を見て無事に注文でき

たと安堵していると、水が運ばれてきたので一口飲むと料理が来るのを待つつことにした。

カガリが入った店はかなり繁盛しているようで賑やかに昼間から酒を飲む男達やパー

ティーらしき男女四人組で食事をしていたりと席も空いていない状態だった。店員もひっきりなしに注文を受けながらも上手くホールをまわしている所を見ると、かなりの腕の持ち主のようにも思える。窓の外にも目を向けると、色々な種族の冒険者らしき人がたくさん大通りを歩いている。カガリは父親に昔着いて行った場所以外は、今まで生まれ育ったサザガーイから出ることも無かったので人の多い場所は物珍しいものに思え、ここでの生活に胸を躍らせるのであった。

そうして周りを見ていると、注文した料理らしいものを持ったウェイトレスがこちらへ向かってくる。

「お待たせしましたこちらがロールポークのコンチーニと取り皿です。他になにか御用がおありでしたらまた呼んで下さい、それでは失礼します。」

「あ、ありがとうございます、いただきます。」

料理を見て生唾を飲み込むと、料理の蓋を開けると美味しそうな匂いが内臓を刺激する。カガリはテーブルの端に置いてある食器を手に取るとバグバクと食べ始めた。あれだけあった料理もすっかりと食べ終えると代金を払い店を後にする。

おなかいっぱいになると宿を探して大通りを歩き始めた。大通りには果物を売っていたり串焼きを売っていたりと賑わっている。さっきのお店で宿屋の名前を聞いていたのでその名前を探しながら歩いているとすぐに見つかった。宿屋に入ると受付で鍵とランタンとマッチを受け取り、指定された部屋に入る。部屋の内装はシンプルでベッドと机とクローゼットがあるくらいである。カガリはベッドに倒れ込むと朝から移動で疲れたのか眠り込んでしまった。

目を開けるとそこは真っ暗ですっかりと夜中になっていた。ベッドの横に置いておいたランタンに火をつけるとテーブルに向かって座った。ペンと羊皮紙を持ってきたバッグから取り出すとツグハ宛に無事に着いたという旨を書くと宿屋の受付の横に設置してある手紙用の箱に入れてくる。部屋に戻るとカガリはダンジョンへ行く準備を始めた。

宿屋からカガリが出てくると外は真っ暗で大通りにもランタンの明かりがポツポツと見えるくらいである。ダンジョンの場所は明るいうちに確認していた、というよりはダンジョンは背が高いので遠くからでもどこにあるかすぐに分かってしまうのだ。

カガリはダンジョンへ辿り着くと入口へ触れ、ダンジョン内へ入った。中には冒険者が数人いたが、サザガーイのダンジョンよりも少ないくらいしかいなかった。安全地帯から出るとすぐそこにはゴブリンが歩いていた。

「ここも一階層はゴブリンか、昨日潜ってなかったからまずは感覚を取り戻さないとだな。」

戦闘の用意ができると、先手を取るように背後から足音を消して近づくとコアの場所を目掛けて一突きした。すると、刃の入り具合が良かったのかダガーを抜くとすぐにゴブリンは霧散した。カガリは周囲の警戒をしながらドロップアイテムを拾うと次のモンスターを探し始めた。カガリがこんなに警戒している理由というのも、ラガスで初めての探索という事もあったが、昼食をとった店で不穏な会話を聞いたからである。

「また三階層に五階層モンスターが現れたらしいぞ。」

「はぁ、またかよ。今年入って何回目だろまったく、、。」

「さっき上級の冒険者の奴らが討伐に向かったってよ。」

そんな事を聞くと初級冒険者であるカガリは気にしないわけがないのだ。その日はゴブリン以外に出会うことなく無事に宿屋に戻ることが出来た。

カガリは宿屋の食堂で昼食を取ると、ラガスの街の散策へ出かけた。ラガスには名物の焼き物やペンダントを置く土産屋さんや冒険者の街というだけあって武具屋や防具屋が所狭しと並んでいた。自分の手持ちも考えながら歩き回っていると空も暗くなり始めたので宿屋に戻り夕食を食べると部屋に戻った。部屋に戻るとダンジョンへ行った日の日課となっている身につけていた装備を整備する。それが終わると、桶に水を張り布で体を拭き明日も朝が早いので太陽が沈むと共に床に就いた。

そんな日々が続き、ラガスでの暮らしも残り半分を越える。


【九、蜘蛛、】

カガリはいつものように日の出ていない時間からダンジョンに潜ると雰囲気がいつもと違う気がした。心なしかいつもより同業者が少ない気はするが何がというわけではなく、ただただ嫌な感じがする。安全地帯から出るとゴブリンがいつものように徘徊している。とりあえず目の前の相手に集中して攻撃を仕掛けると、いつもと同じようにすぐに倒す事が出来た。そのままモンスターを倒しながらダンジョンの深くへと進んでいく。少し広い空間へ出るとそこらじゅうに瀕死のゴブリンが転がっていた。チャンスだと思い瀕死のゴブリンにトドメを指していく。不意に上からボリボリという音が聞こえることに気が付き天井を見上げると全長十メートルもあるニードルスパイダーが捕食している最中であった。驚きのあまり動けなくなったカガリがニードルスパイダーの視界に入るとカガリを押しつぶそうと上から降ってきた。なんとか体を動かしギリギリで避けるが風圧で壁まで吹き飛ばされてしまう。そこへニードルスパイダーは背中の毒針を飛ばして追撃をしてくる。カガリは必死に走りながら避けるが一本足元を掠めてしまった。ようやく武器を手に持つと自分から攻撃を仕掛けていくが、やはり外骨格が硬く全く歯が立たず退散を余儀なくされるが不意に視界がぼやけてしまい足が重りを付けているかのように重くなってくる。

「くっ・・・もう毒が回ってきたのか・・・。」

カガリは膝を着いてしまうと、そこへニードルスパイダーが脚を振り下ろしてくる。振り絞った力で紙一重で避けるがそこから一歩も動けなくなってしまい意識も遠のいて行くのが自分でもわかった。遠のく意識の中で人影のようなものが一瞬見えるとカガリの意識は深みへと落ちていった。


【十、救出と出会い】

目を開けると目の前には知らない天井があった、どうやらカガリはベッドに寝ている様だ。起き上がろうとすると全身に激痛が走り少し涙目になりながらも周りの様子を伺った。すると、ドアの開く音がしたと思うと若い女性が話しかけてきた。

「目が覚めたのね、体は痛いでしょうけど我慢してね。それでも良くなった方なんだから。」

「ここはどこですか?どうして俺はここに?」

「ここは私たちが立ち上げたギルドの休憩室です。ニードルスパイダーが出たと聞いてダンジョンへ向かった旦那がモンスターに襲われていたあなたを見つけて連れて帰ってきたのですよ。」

どうやらあの人影はこの女性の旦那さんだったらしい。

「連れて帰ってきてからすぐに治療はしたのだけれど、丸二日も目を覚まさなくて心配しちゃったわ。お腹空いたでしょう、何か食べられそうなものを持ってくるわね。」

そういうと、女性は部屋から出ていってしまった。数分経つとお盆を持って戻ってきた。

上には、スープらしいものが器によそわれていた。お盆ごとカガリに渡すとベッドの横の

椅子に座り優しい笑顔を向けきた。

カガリは渡されたスープを一口ゆっくり飲むと、無言で飲みきってしまった。

「ご馳走様でした。とても美味しかったです。」

「少しは元気が出たかしら。ところでお名前を聞いてもいいかしら。」

「・・・小鳥遊カガリです。まだ冒険者になったばかりです。」

「カガリくんね、私は津島ナナコよ。聞きたいことがあったらなんでも聞いてね。」

「あの、津島さん。ここは津島さん『たちが』と言われたんですが、他にも誰かいるんですか?」

「ナナコでいいわよ。いいえ、このギルドはつい最近私と旦那の二人で立ち上げたのよ。

所属する冒険者の人もまだ一人もいないわ。旦那が冒険者だからダンジョンに入るような依頼が来た時は今は旦那に任せっきりなのよ。」

「あの、ナナコさん、旦那さんにお礼を言いに行くことって出来ますか?命を救ってもらっただけでなくここまでして頂いたので感謝してもしきれないです。」

「ちょっと待っててね、今呼んでくるから。」

そういうと部屋にあったもう一つのドアを開けてナナコの旦那でありギルドマスターの、

津島ゲンジを呼んでくれた。すると大柄な男がナナコの後に続いて部屋へ入ってきた。

「おはよう少年。大丈夫かい?と言っても大丈夫ではないだろうけどね、ハハハ。私が津島ゲンジだ、今回の事は気にしないでくれよ?困ってる子が居たら助けるのは当たり前だからな、ハハハハハ」

ゲンジは大声で笑いながらカガリの心配をする。カガリは圧倒されながらも思いを伝えた。

「あの、この度は助けていただき本当にありがとうございました。あのニードルスパイダーを倒す事からしてかなりの実力をお持ちだとお見受けします。是非このギルドに私を入れてもらえないでしょうか?」

「ハハハハ!急にギルド入会希望か、嬉しいぞ!!半年ごとに入会行事をするからその十日ほど前に来ていてくれればいいさ。広い心を持てってな、あの英雄クレハも言っていた。詳細はナナコに聞いておいてくれ。」

父親の名前が出て誇らしげになりながらも、お礼を言えたことに一安心した。すると、仕

事があるからとゲンジはすぐに部屋へ戻ってしまった。すると、ナナコが

「そういえば、あなた小鳥遊って言ったわね、もしかして・・・。」

「え〜っと、はい。一応小鳥遊クレハの息子になります。」

「やっぱりそうだったのね。名前を聞いて一瞬思ったけどそうだったのね。」

そう言って共通の話題が出て色々話すと、

「じゃあそろそろ私も仕事に戻るわね。大人しく寝て安静にしててね!おやすみ。」

「ありがとうございます。おやすみなさい。」

そう挨拶を交わすとナナコは部屋を出ていった。おなかいっぱいになったカガリは目を

瞑るとすぐに眠りについた。

目が覚めるともう翌日の朝になっていた。体もまだ痛みはあるが動けるくらいには回復

していた。居間へ出ると明日にはサザガーイへ帰らなければならない事を伝えると朝食を

食べ、改めてお礼を伝えるとカガリはそのギルドを後にした。宿屋へ帰る途中でクレハと

ツグハへのお土産を買い宿屋の自分の部屋へ戻った。部屋へ出していた服などの私物を

大きなバッグへ詰め込むと既に太陽はてっぺんを回っていた。宿屋の食堂で軽く食事を

とると部屋のベッドへ寝転がった。

包帯だらけの自分の腕を見ながら、何も出来ずに助けられた事を悔やんでいた。昔思った、

父のようになりたいという思いはずっと消えていないがそれは夢でありただの理想ではなく目標として成立すらしていない。考え込んでいるうちに日も暮れ始め、明日の朝一番の馬車に乗るために今夜は早めに休むことにした。

翌朝荷物を持ってサザガーイを通る馬車に乗り込んだ。馬車の上に蜘蛛の巣が張ってあるのを見ると、ニードルスパイダーに襲われた時のことを思い出し気分が悪くなってきたので少し仮眠をとって体を休めておくことにした。眠っては目を覚まし眠っては目を覚ましと浅い眠りを繰り返し、ずっと座っていてお尻が痛くなってきたあたりでちょうど、サザガーイに到着したをカガリはお金を払って馬車から下りると家への帰路を進んだ。

「ただいま〜。」

玄関のドアを開けるとツグハが奥から出てきた。

「おかえりなさい。ってその怪我はどうしたの!?何があったの?」

カガリの怪我をした様子を見るや否や駆け寄ってきたのでこの十日間であった出来事を簡単に説明をするとツグハは大丈夫そうだと安心したようだ。

「そういえば父さんはまたどこか行ってるの?」

「ええ、五日ほど前に帰ってきたけど二日経ったらまた依頼が来たとか言って行っちゃったわ。多分そろそろ帰るでしょうけど何か用があったの?」

今回助けてもらった人のギルド入会入りたいと思っている事をツグハに伝えるとあっさりと認めてくれた。その話が終わると、引っ越しに必要な物の準備をしてリビングへ戻ると、カガリが好きだった具がたくさん入ったスープを作っていた。

「カガリも帰ってきたことだし、久しぶりに作っちゃうわよ〜!」

とはりきるツグハとラガスであった事を話したりお土産を渡して久しぶりの家族の時間を楽しんでいた。すると、玄関が開きクレハが帰ってきた。クレハは大荷物で帰ってくると、

「よっ、カガリ!大変そうだな〜、ハハハハハハ。」

怪我をしているカガリを見て笑いながら挨拶を交わしてくる。三人は、ツグハお手製の料理を家族団欒で食卓を囲んだ。クレハがどこで依頼をこなしてきたか、そこで出会った人の事など会話に花を咲かせていた。ここでカガリは、ツグハに話した事と同じ事をクレハにも伝えると、クレハも大賛成だったらしい。「男は旅をしてなんぼだろう!」という事らしい。

両親の同意を貰うと父親に強くなる方法を聞いてみた。

「ねえ父さん、どうやったら父さんみたいに強くなれるの?」

「う〜んそうだな〜・・・やっぱり数こなすしかないかもしれないな〜。」

「やっぱりそうだよね、、急に強くなんてなれないもんだよね。」

「まぁ実力をつけるのはな!でもな、自分の事を見直して得意なものを伸ばして嫌いなものを無くすだけでもかなり違ってくるとは思うぞ。」

「自分を見直す?」

「自分の戦いの癖とかを見つけたらそれが最も有利になる立ち回りをするんだ。癖ってのは得意なものになるもんだからかなり戦いやすくなるんだ。」

経験者の言葉だけにカガリの為になることばかりだった。話していると夜になってきて、

昔のように家族みんなでご飯を食べて話していると夜は更けていった。

朝起きると、クレハはまた出かけていた。体もある程度回復したので予定を早め、カガ

リも今日からラガスへ発つことにした。昼前にはラガス行きの馬車へ乗り、再びラガスへ

向かった。

ラガスへ着くと直接ナナコさんたちのいるギルドへ向かった。到着し、ホールにはナナ

コが書類と睨み合っていた。ナナコはカガリの存在に気がつくとにっこりと微笑んだ。

「久しぶりね、カガリくん。体はもう平気になったの?」

「お久しぶりです。お陰様で十分に回復しました。両親にここに所属する同意を貰えたので、さっそく来ました。」

「そう、わかったわ。じゃあギルド登録はしておくわね。でも正式な加入は二週間後にある集会が済んでからよ。もう一組入る事になったから楽しみにしててね。」

「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

挨拶を済ませると、カガリは自分の部屋となる場所へ案内された。荷物を置くと、数日

使っていなかった装備を手入れし直し、綺麗に揃えて置くと一階のホームにいるナナコ

をたずねた。

「ナナコさん、何か手伝えることはありませんか?今からダンジョンへ行くのは時間が微妙になりそうなので。」

「そうねぇ、じゃあホールの掃き掃除をしてくれないかしら。旦那は掃除ができないからいつもは私がやるのだけれど最近は書類整理が忙しくてね。掃除道具は受付の所にあるわ。」

そう言われると、カガリは早速掃除へ取り掛かった。掃除を済ませるとまたナナコをたず

ねる。その日はギルドの手伝いをしていた。夜になると、ナナコの作った料理を食べると

お風呂に入り、就寝準備にかかる。眠りにつき、朝早く起きるとダンジョンへ向かった。

以前と同じように、ダンジョンへ入り、ゴブリンを見つけると、後ろから攻撃を仕掛ける。

しかし、体が思った通りに動かずことが出来ずカガリの攻撃は空振りに終わってしまう。攻撃されたことを知ったゴブリンは、こちらに向き直って攻撃をしてくる。重い体を動かして一体一で対峙する。少しずつ感覚を取り戻し、ようやく倒す事が出来た。ここで家へ帰った時にクレハに言われたアドバイスを思い出し、次からの戦いで自分の戦いの癖を見つける事を心がけながら戦い始めた。戦っていくうちに、自分は戦う時に相手の攻撃を正面から受けてバランスを崩す事が多いので、試しに攻撃を受け流してみた。すると、相手のバランスを崩しながら自分は攻撃を与えることが出来ることがわかった。モンスターに比べるとカガリ自身は体が小さいため、小さい動作で自分の流れを作るとなるとその戦い方がベストだという答えに至った。

その他にも模索しながらその日の探索は終わった。脱出転移門からダンジョンの外へ出ると、太陽が既に傾き始めていた。考えながら戦っていると時間感覚が狂ってしまうようだ。ギルドへ帰ると夕食の準備がされていた。

「おかえりなさい、カガリくん。ダンジョンへ行くのはいいけど、長すぎやしないかしら。」

「すみません、ナナコさん。色々考えながら探索していたら時間がわからなくなってしまって。」

「無事ならよかったけど、いつ行くかは教えててね。ご飯の用意とかもあるんだし心配しちゃうもの。」

早速注意をされてしまったが、今日の事はかなり自分の為になったとこの時カガリは確

信していた。次の日からは出発、帰宅時間を伝えてダンジョンへ潜るようにする、

そんなある日、ダンジョンから戻っているとギルドからパーティーらしい三人が出てくるのを見かけた。何か依頼か何かあったのかと思いながらそれほど気にもしていなかった。―――――――そして、ギルド正式加入の日。―――――――


【十一、出逢い】

加入式があるのは昼だと言われたため、カガリはいつもと同じように朝からダンジョン

へ潜り、昼食前に戻ってきた。シャワーを浴びて綺麗な服に着替えてホールへ行くとギルド入り口のドアが開いた。

「ギリギリセーフ!」

「あっぶないな〜も〜、ギルドに入れなかったら半年も待たないと行けないんだからね!」

「ハァハァ、まったく、誰のせいだと、思ってるんですか。あなた達が、ギリギリまで寝てるからでしょう。」

と慌ただしく三人の男女が入ってきた。話の内容的にカガリと一緒にギルドに入る人達

なのだろう。三人が息を整えていると、

「集まったようですね。時間になりましたので、これより加入式を始めます。」

そう言ってナナコのこのギルド初のギルド加入式が始まった。

スムーズに進んだのか、案外式が早く終わると親睦会と言われる食事を全員でとる事に

なった。カガリは緊張して静かに食事をしていたが、他の三人はワイワイと楽しそうに話

している。

すると突然、男がは声を掛けてきた。

「なぁなぁ、君なんて名前?年下っぽいけど何歳なの?俺は空野ソラって言うんだ。よろしくな。」

「小鳥遊カガリです。まだ十二歳です。よろしくお願いします。」

急に話しかけられて驚きを隠しきれないまま返事をすると、ソラは気にせず話を続ける。

「カガリか、よろしくな!二つ下だったのか、ちっこいわけだ、ハハハ!こっちのちっこいのが赤沢カレン、そっちが藍野ツララだ。この三人は幼馴染でパーティーやってんだ。年は違うが同期なんだ、敬語なんか使わないでくれ」

「よろしくね!カガリん♪」

「カガリくん、これからよろしくね。」

「よろしくお願いします。」

そこから少しずつ話しながら親睦会は終了した。三人は明日からギルドの宿舎に住むと

いうこともあり、ナナコに質問をすると帰っていった。

「今日はどうだった?あの子達とは仲良くできそう?」

「どうですかね。あまり得意なタイプではありませんけど、なんとか頑張ってみます。」

カガリはナナコと親睦会の後片付けをしながら、今後の事などを話し合っていた。


【十二、共闘】

翌日、朝からあの三人が来るということでダンジョンへ行くのを諦めてギルドの掃除をし

ながら三人を待った。昨日ナナコに、

「四人が仲良くなる為には交流が必要よね、ということで明日の部屋の案内は頼んだわね。」

などと言われたわけで、断るわけにもいかずこんな事になっているのだ。

程なくして三人がやってきた。またしても走ってきたのか息が上がっているのが見て取

れる。そこへカガリが声をかける。

「おはようございます。宿舎の方へ案内するので、荷物を持ってついてきてください。」

宿舎でそれぞれの部屋へ案内して荷物を置いた三人に宿舎の説明をしたあとは、皆自

分の部屋へ戻って自由時間となった。

カガリも部屋へ戻ってツグハへの手紙を書こうと椅子にに座ろうとした瞬間誰かが部屋のドアをノックした。ドアを開けると、そこには防具の上にマントを羽織り、自分の身長とほぼ変わらない程の両手剣を肩がけにしたソラが立っていた。

「今日はまだダンジョン言ってないんだろ?暇だし一緒にどうだ!」

「あ、あぁまぁ構いませんけど準備が出来ていないのでちょっと待ってもらっていいですか。」

「おうよ!じゃあホールにいるから準備終わったら来てくれよ。」

そういうとソラは渡り廊下の方へ歩いていった。カガリは急に誘われて驚きはしたが、ダ

ンジョンへは行っておきたいとは思っていたので早々に準備を済ませるとソラの待つホー

ルへと向かった。

ダンジョンへ入ると、ソラがカガリの戦いを見てみたいと言い出したので先にゴブリンを見つけると後ろから近づき先手を取ると振り返りながら殴りかかってきた腕をしゃがんで回避すると足で勢いをつけてコアのある場所を一突きしてゴブリンを倒した。それを見ていたソラは、

「おぉ〜、凄いなぁ。一発も攻撃を受けず正確な攻撃とか俺にはできねえな〜。」

と褒めているかわからないことを言いながら、自分の順番だと言って進んでいくのでその後を追っていくと隠れることも無くゴブリンの目の前に立つと剣を構えるとゴブリンの攻撃を剣の腹で受けると隙ができたゴブリンの胴ではなく頭を剣でぶん殴った。剣なのに「斬る」ではなく、力任せに「断ち切る」という使い方らしい。

「どうだったよ!まぁいつもは一人じゃないからこういうのもなかなか出来ないんだけどよ。」

「俺はてっきり首でも飛ばすのかと思ってましたけど、斬らないんですね。」

「昔はそうしてたんだがな、これでいいんじゃねえかってなったんだ。」

「そうなんですか、やっぱりパーティーの時と一人の時では変わってくるんですね。」

「まぁ、そりゃあな。あいつらは頼りになるからな!」

「そうなんですか。。」

満面の笑みで仲間の事を信用しているらしい。父親に憧れて冒険者になったカガリは、パーティーを組むなんて考えたことも無く全て自分で何とかしようとしてきた。やはりパーティーの事も考えておく事にした。

「あ〜、あとその敬語は辞めてくれ、むず痒くて仕方ない。」

「わ、わかったよ、ソラ。」

カガリは とソラは少しずつ仲良くなりながらダンジョンを進んだ。

探索していると二階層への転移門を見つけると、ソラは、

「ちょこっとだけ二階層へ行ってみないか?二階層もゴブリンだって言うし。」

「え、ダメだよソラ。何があるか分からないし危ないよ。」

「だからちょっとだけだって。頼むよ。」

そのままカガリはソラに押しきられる形で二階層へ進んだ。

「二階層っつっても下とそんなに変わんないんだな〜。」

そういうとソラは奥へ歩き始めた。カガリはその後ろをついていくと、一体のゴブリンに出会った。ソラはさっきと同じようにゴブリンの目の前に出ると、攻撃を受ける構えをした。すると、ゴブリンは攻撃してくる訳でもなく吠えた。二人の目からすると、威嚇しているだけのように見えたが、やがて奥からゴブリンが二体やってきた。二対三になりカガリとソラは防戦一方となった。交戦している間もゴブリン達は吠え続け、まだ仲間を呼ぼうとしているようだ。

「ソラ!どうするんだよ!これ以上来たら捌ききれないぞ!」

「んなこと言ったってよ〜。とりあえず俺が二体受けるから先に一体殺ってくれ。」

「わかった。とりあえずそれでいこう。」

カガリとソラは少し距離をとり、ソラは一対一、ソラは二体の攻撃を受けながら攻撃の隙を狙っている。

カガリはこうなるといつもと同じということもあり、早く倒す事も考えながら慎重にゴブリンを倒した。ソラの方を見ると、そっちは既に倒してこちらに向かってこようとしていた。

「まったく、どこが一階層と同じだよ。強さは同じでも数が違えば全然違うじゃねえか。」

と、ソラが悪態をついていると奥からゴブリンが寄ってきた。終わりがなさそうに思えた二人は退散した。そのままダンジョンの外まで戻ると外はもう日が沈みかけていた。夜までには帰ると伝えて出てきたので二人は顔を見合わせると、ダッシュで帰宅した。

帰宅した彼らは、シャワーを浴びて部屋へ戻った。カガリは机に出しっぱなしにしていた手紙を書くと装備の整備をして夕食も食べずに眠ってしまった。翌朝目を覚まして朝食を食べにホールへ下りると、ナナコが朝食の準備をしていた。

「おはようございます。」

「あら、おはよう。よく眠れたようね。昨夜は下りてこないからどうしたのかと心配で見に行ってもらったけど、ぐっすり眠ってたようだったから。お腹すいたでしょう、昨日の残りものだけど温めて食べてね。」

そう言われると、スープを温め直し、空腹を和らげた。その日からは、カガリとソラたち三人は別々に行動する形に戻った。そこから四人はそれぞれの方法で成長していった。


【十三、対峙】

カガリはクロノタートルの顔を横から斬りつけた。男に向かって炎を吐こうとしていた所を不意に横から攻撃を受けたクロノタートルは思わず怯んでしまった。その怯んでいる隙に、カガリは男を連れて物陰に隠れた。

「大丈夫ですか?」

「あ、あぁありがとう。」

男の無事を確認すると、ダンジョンの外まで避難させて詳しい話を聞いた。

クロノタートルは天井から突然落ちてきて、男が戦っていたゴブリン達を一掃すると襲いかかってきたのだという。話が終わり、男と別れるとギルドでゲンジに今日の出来事を相談すると、街の本部へと伝えると出て行きこの話は終わった。夕食時にギルドのみんなにもその事を伝えて注意を促してた。

この時、 モンスターの異常事態は世界中でも起きている出来事だった。これが何を意味している事だったのか知る由もなくカガリたちは冒険をすることになるのだ。


今回初投稿です。黒鷺と申します。授業課題でストーリーを作るというもので1週間の時間のある時に書いたものなので、誤字脱字などあるかとは思いますがご覧になってくださった方は生暖かい目で見守ってくれると嬉しいです。ここがこうだったらいいのに!とかアドバイスとかあればご指導よろしくお願いします。

続きとして一章ずつ分けてあげられたらなと思います。

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