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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界IN

異世界 IN ダイスロール! 6

作者: 秋月みのる

徹夜のテンションでまとめて書いた。なのでまとめて投稿。

このシリーズ、主人公が何もしないまま死んでる。

面白いのか謎だが、公表しないのも勿体ない。そんな話。


 ――どうしてこうなった?


 俺は中学生の頃、修学旅行の帰りのバスに一人忘れられたことを語っていた。

 ……ゴブリンに向かって。


 まぁ、理由がある。話は三十秒くらい遡るかな。

 ……ああ、ここにいたるまでの経緯はたったそれだけなんだ。

 俺は異世界に来て早々魔物に襲われたのだ。

 その名もRPGでは序盤の定番モンスターであるゴブリン。


 喧嘩なんてしたこと無い俺が魔物にいきなりであっても勝ち目は無い。


 と、そこですぐさま思い出すのがポルタという神さまから貰ったチートだ。

 ぶっちゃけ最強のチートだと俺は思う。


 俺のチートの内容は『六面ダイス』

 内容は至ってシンプルでサイコロを作り出す能力だ。

 ……まぁ、ご察しの通り作れるのは普通のサイコロじゃない。

 頭の中で出目に好きなことを書き込んで振ればその通りのことが起きるという能力だ。


 俺は頭の中のダイスに六面それぞれにこういった内容を書き込んだ。


 『ゴブリンに火の魔法』

 『ゴブリンに水の魔法』

 『ゴブリンに風の魔法』

 『ゴブリンに土の魔法』

 『ゴブリンに雷の魔法』

 『ゴブリンに氷の魔法』


 属性だけが変えてあるのは火魔法のみで出目を構築しようとして出来なかったから。

 どうやら同じ内容を複数面に書き込むことは出来ないらしい。

 それには若干納得。

 六面一緒でもよかったらダイスを振る意味ないもんな。

 でも条件が緩いな。内容がほんの少しでも違えば全部攻撃で埋めてもいいらしい。

 これならばどの目が出ても大丈夫だ。


 俺は頭の中にイメージしたダイスをゴブリンに投げつけるように振る。

 が、何故か手から離れはない。

 どうしてだろうと疑問に思うのと同時、どこからか情報がインストールされたかのように俺はその理由を知った。

 どうやら特殊な掛け声が必要らしい。


「何が出るかな♪ 何が出るかな♪ テケテケテンテン♪ テテテテン♪」

 

 ダイスは手から離れると同時に膨らみ、大きさは直径三十センチくらいになった。

 ゴブリンはサイコロとの直撃を受けて怯む。だが大したダメージを負ったようには見えない。

 このダイスは攻撃としては心許ないが牽制くらいには使えそうだ。


 ダイスが転がり始めると周囲の時間が止まった。

 ダイスが止まるまでゴブリンをどう相手しようか考えていた所だったから正直ありがたい。


 やがてダイスはピタリと静止する、

 俺はそこでようやく気づいたことがあった。

 頭の中で描いていた文字数と現実のダイスの文字数が合致しないのだ。


 『ゴブリンに火の魔法』……悲しい話

 『ゴブリンに水の魔法』……嬉しい話

 『ゴブリンに風の魔法』……私、実は○○なんです!

 『ゴブリンに土の魔法』……嫌いなあの人

 『ゴブリンに雷の魔法』……すべらない話

 『ゴブリンに氷の魔法』……当たり!


 どうやらこれは出目の効果発動に必要な条件らしい。

 当たりは条件無しで能力が即時発動できるといった物のようだ。


 今回の出目は『ゴブリンに火の魔法』だった。

 そして時間が動き出す。

 ここから効果が得られるかは俺しだいなようだ。


 「あ~、畜生!」


 ゴブリンから距離を取りながら俺は冒頭の話をする事にした。

 すると、火魔法がダイスから飛び出してゴブリンへと直撃する。小さな火の玉だった。


 『ツマラン!』


 これは火の玉がダイスから飛び出すときに出た効果音である。

 どうやらエピソードの面白さや強烈さで威力が変わる無駄に凝った仕様のようだ。


 大方ポルタとか言う神さまが俺の話を評価でもして威力を決めているんだろう。


 ――さて、無事に倒せたはいいが、結構手間取った。


 武器や防具があればもっと上手く立ち回れるかもしれない。

 俺の能力はサイコロに書き込んだことをなんでもおこせるから万能だ。


 『俺はグングニルを手に入れる』

 『俺はエクスカリバーを手に入れる』

 『俺はアイギスを手に入れる』

 『俺は天羽々斬を手に入れる』

 『俺はM4カービンを手に入れる』

 『俺は機動戦士ガンバルを手に入れる』


 最後のに関しては操縦できるのかという疑問があるが、俺のチートは使い放題なのでいいだろう。最悪『使えるようになる』を当たり目にしてやればいいのだ。


 「何が出るかな♪ 何が出るかな♪ テケテケテンテン♪ テテテテン♪」



 『俺はグングニルを手に入れる』……雷ビリビリ真っ黒焦げ。

 『俺はエクスカリバーを手に入れる』……ぐさぐさ全身槍衾。

 『俺はアイギスを手に入れる』……全身火だるま焼死体。

 『俺は天羽々斬を手に入れる』……がぼがぼ溺死は水の底。

 『俺はM4カービンを手に入れる』……塵も残らず爆散。

 『俺は機動戦士ガンバルを手に入れる』……もう死ねよ。お前の命如きと釣り合うわけ無いだろ。まじ死ねよ。

  

 ……何これ?


 この文考えてるのやっぱりあのポルタとか言う神っぽいな。

 しかし、伝説の武器が欲しければ死ねって事か?

 やらないって言っているようなもんだよなぁ。

 

 一応出た目は『俺はM4カービンを手に入れる』だった。条件は爆散。

 達成できるわけが無い。 


 ……まぁ、発動条件を履行しなければ武器はゲットできないままの現状維持なので問題は無いだろう。

 ……もっと要求のレベルを落とせばいいのかな?

 RPG序盤から終盤の武器まで適当に織り交ぜてみるか?

 

 『俺は鉄の剣を手に入れる』

 『俺はひのきのぼうを手に入れる』

 『俺はなべのふたを手に入れる』

 『俺はドラゴンキラーを手に入れる』

 『俺はを皮の鎧を手に入れる』

 『俺はをくさりかたびら手に入れる』


 「何が出るかな♪ 何が出るかな♪ テケテケテンテン♪ テテテテン♪」


 と、ダイスを投げようとしたときのことだった。


 『前回の条件が未達成です。強制的に達成するか、内容を破棄するか選んで下さい』


 手の中のダイスが無機質な声でそう言った。


 選ぶ余地なんて無い。爆散なんてもってのほかだ。

 

 「ケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ!」


 するとダイスから奇妙な笑い声が聞こえてきた。


 『ペナルティ発生。ダイスの自由マスを一つ除去。代替のダイス目が自動追加されます。尚、ペナルティ内容は達成不可能だった発動条件です』


 なんだったんだ?


 俺の手からポロッとダイスが転がり落ちた。

 何となく目で追う俺。


 ……そして出た目はこうだった。


 『塵も残らず爆散』……雷ビリビリ真っ黒焦げ


 なんだこれは!?


 俺はこんなの目に書いてないぞ。

 そう思って慌てて他の面を確認してみるとちゃんと俺の指定したとおりの内容が書かれていた。


 『俺はひのきのぼうを手に入れる』

 『俺はなべのふたを手に入れる』

 『俺はドラゴンキラーを手に入れる』

 『俺はを皮の鎧を手に入れる』

 『俺はをくさりかたびら手に入れる』


 ここに追加で加わった『塵も残らず爆散』の項目。不吉すぎる。



 ――グルルルルッ!



 不吉が不幸を呼んだのか、気づけば近くに3匹のゴブリンがいた。


 俺はすかさずダイスに攻撃魔法をセット。


 『ゴブリンに火の魔法』……悲しい話

 『ゴブリンに水の魔法』……嬉しい話

 『ゴブリンに風の魔法』……私、実は○○なんです!

 『ゴブリンに土の魔法』……嫌いなあの人

 『塵も残らず爆散』……雷ビリビリ真っ黒焦げ

 『ゴブリンに雷の魔法』……すべらない話


 『塵も残らずに爆散』が出る確率は六分の一。

 俺が素手でゴブリンに勝てる確率は極めて低い。

 この難局を乗り越えるにはダイスに頼るしか無いだろう。


「何が出るかな♪ 何が出るかな♪ テケテケテンテン♪ テテテテン♪」


 ダイスが転がり始める。そしてどんどに気負いが落ちていきピタリと静止しかけたその時。

 

 このままなら出目は『ゴブリンに土の魔法』……嫌いなあの人になるのが目に見えている。


 良し、流石に六分の一は外さな――


 ――バシュッ。



 股あの高笑いと共に不意にダイス表面の文字列が書き換わり始めた。


 『前回の出目処理を破棄したため、ペナルティ発生。ダイスの自由マスを一つ除去。代替のダイス目が自動追加されます。尚、ペナルティ内容は達成不可能だった発動条件です』

 

 『雷ビリビリ真っ黒焦げ』……ぐさぐさ全身槍衾。


 なっ! そうかペナルティを失念していた。だがこのタイミングでこの処理はあんまりだろう。

 結果、何の効果も出なかったダイスはそのままにゴブリンの群れがこちらへと突っ込んでくる。


 ゴブリンが手にしていた棍棒で腹を強打され蹲ったところを今度は別の個体が頭を叩いてくる。

 あっと言う間に地面に倒れそのまま組み伏せられた俺。

 棍棒を振り降ろされて足の骨が砕かれる。


 「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」


 (まずい、このままじゃ殺される)


 もう確率は大分低いがダイスに賭けるほかない。

 現在の出目はこうだ。

 

 『塵も残らず爆散』

 『雷ビリビリ真っ黒焦げ』

 『自由設定枠』

 『自由設定枠』

 『自由設定枠』

 『自由設定枠』


 だが、このまま振るとまた直前にダイスが強制ペナルティ枠を書き換えて来る恐れがある。

 だからあえて今のうちに前回のダイス情報を破棄する。


 『塵も残らず爆散』

 『雷ビリビリ真っ黒焦げ』

 『ぐさぐさ全身槍衾』

 『自由設定枠』

 『自由設定枠』

 『自由設定枠』



 これなら確率は二分の一。ゴブリンに組み伏せられた今、これが俺の生き残る確率だ。

 魔法を三つ設定して投げる。


 「何が出るかな♪ 何が出るかな♪ テケテケテンテン♪ テテテテン♪……頼む!」


 しかし、出た目は無情にも『ぐさぐさ全身槍衾』だった。

 もうどうにでもなれ!

 更に『全身火だるま焼死体』が追加されたダイスを俺は縋る思いで見つめ続ける。


 『ゴブリンに風魔法』……私、実は○○なんです。


 ……○○な話? そんなのすぐ思いつくか。この切羽詰まった状況で話せるか。


 「俺、実は今死にそうです!」


 『ツマラン! ツマラン!』


 微風が吹いただけに終わる。更にダイスロール。


 『全身火だるま焼死体』……………がぼがぼ溺死は水の底。


 くう、更に目が悪くなった。


 『塵も残らず爆散』

 『雷ビリビリ真っ黒焦げ』

 『ぐさぐさ全身槍衾』

 『全身火だるま焼死体』

 『がぼがぼ溺死は水の底』

 『自由設定枠』


 こんな滅茶苦茶になったダイスを俺は更に振る。もう一縷の望みに賭けるしかなかった。

 頼む。当たりを引いてくれ。頼むから。


 ――そして出た目は俺の設定した覚えの無い『大当たり』だった。

 当たりを出してくれという願いが形になってしまったのだろうか?

 大当たりの効果は全部の面の効果を一度に得られるらしい。

 発動条件はこれまた『当たり』

 ……つまり、条件無し発動だった。


 『ダイスの当たり目を全て実行します!』

 

 ――こうして俺は五度の地獄を経て死亡した。




 気がつくと真っ白な部屋の中にいた。

 憎らしいポルタの奴がそこにいる。


 「……くそ、人を玩具にしやがって。大体どうして俺なんだ!」


 「……そりゃあ、人間を六人単位に区切ってサイコロ振って当たりに選ばれた人間だけに絞ってまたサイコロ振って……を繰り返した結果最後に残ったのが君だったからさ」


 そんなふざけた理由で俺を弄びやがったのか!


 「こぉのやろおおおおおおおおおおっ!」


 ポルタが指をパチンとならすと俺の体は足から消え始めた。


 「さ~って。次はどんな遊びにしようかな。何が出るかな♪ 何が出るかな♪」


 ポルタは今度はルーレットで次に呼び出す人間を決めているようだった。

 ……願わくば、俺のようにならんことを。

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