第9話 女神の目的
私は相変わらずブラウ城の領主室でデスクワークをしていた。確かに税制改革であったり、住民の戸籍管理であったりは大切である。だが、やはり私には向いている気はしない。しかし、領民の為にもやらねばならぬことであるが故、これから離れる訳にもいかない。私はため息をつきながらも、真剣に書類に目を通していると、急に領主室の扉がノックされた。
「入れ」
「失礼します。急な要件で参りました」
「どうした?」
入ってきたのはカルドだった。しかしその様子はいつもの知的な感じとは異なり、かなり取り乱しているように見えた。
「陛下、先ほどのアーブラムの北門に来たカーベルなのですが、ゴブリンではなく少女が2名乗っておりました。そして、1人の少女は20年前に封印された魔王で、もう1人の少女はその封印を解くほどの力を持つ女神であることが分かりました」
まさかリアリストなカルドから想像以上に突拍子もない話を聞くとは思わなかった。
「それは本当か?」
「おそらく本当です。私はしかと魔王の腹に封印の術式が刻まれているのを見ました」
「それが偽装である可能性は?」
「術式は私が今まで感じたこともない魔力を放っていたので、おそらく本物かと。本物でなくとも魔族の幹部に匹敵するだけの魔力はあるかと思われます」
カルドの額に汗が滴るのを見た。アーブラムでも屈指の実力と知性を兼ね備える優秀な部下がこの様に言うとは、私も少し寒気がした。
「その少女達の目的はなんだ?」
「分かりません。しかし、もし女神であるならば、伝説にある光と陰の力のバランスの為に天から遣わされた可能性あるのかもしれません」
現在の世界は、闇の代表者である魔王を封印することで、光の力が世界を覆っている。しかし、世界は元々光と闇のバランスを保つように出来ており、そのどちらもなくてはならないものである。その均衡が崩れる前に天から女神が降臨し、世界に再びバランスを保たせると言う話が伝説として残されている。
このバランスを保つことは、必要だが、光のモノと闇のモノはそれぞれ性質が違うこともあり、互いにいがみ合い、その間では争いが常であった。そこで、我々人類は、20年前に魔王を上手く騙し、殺すのではなく封印することにより光と闇のバランスを保ち、魔族から人類を守った。しかし、もしその少女が女神であり、魔王の封印を解いたとすれば…
「旧魔族領であるアーブラムに来たということはつまり、魔族の再建が目的ということか?」
「恐らくは…」
私は不思議と手に力が入った。
「魔族との戦争が終わり、今ようやく領民の生活が安定し平和を噛み締めることが出来たというのにそんなことをさせるつもりはない。カルド、その女神とやらはどこか?」
「こちらです」
主人公編
気づくと俺はソファーに寝かされていた。そしてその俺を心配そうに見る可愛い系のメイドと美少女である。
「ここは天国か?」
「お姉様、ここは地上です」
「いや、天国だ!」
ライラは本当に心配そうに俺を見た。ああ、可愛い。俺は目線を横にずらし、メイドを見た。秋葉原にいるフリフリのメイド服ではなく、実用性のありそうな動かそうなメイド服だった。顔は可愛い系で茶色の髪がふんわりとして、とても俺好みの容姿だった。これまた可愛い。
「あなたは何て言う名前なの?」
「も、申し遅れました。私はこの屋敷の使用人のリズです」
名前まで可愛いのね。するとライラが言った。
「リズと言うのね。とても可愛らしい名前だわ。もし良ければ、私の使用人になってくれないかしら?人間の使用人って今後私としてもとても素晴らしいと思うわ」
ライラは嬉しそうに言った。しかし、俺にはなんとなく使用人という言葉が冷たく感じた。きっとこの文化圏では一般的な身分制度的なモノがあるのだろう。しかし、俺の感じている倫理観にはそぐわない。俺はリズの方を見た。すると、リズは困った顔を浮かべていた。そりゃそうだよな。俺は言った。
「リズさん、俺はあなたと友達になりたいな」
自分でも驚くほど不思議な感じと謎のリア充感のある言葉を言ってしまった。すると、リズは言った。
「友達だなんて、めっそうもない」
するとライラが言った。
「お姉様、友達って言葉はなんだか素敵です!ねぇ、リズお願い。友達になってくれないかしら?」
ライラは上目遣いをしていた。これが素なのだとしたらとてつもない悪魔だ。いや、魔王だからいいのか?。
リズが返事をしようとしたその瞬間、扉がノックされた。
「失礼します」
声とともになんか強そうなおっさんが出てきた。するとライラが俺とリズの手をギュッと握った。俺はそれと同時にソファーから飛び上がり、おっさんとライラの間に入った。おっさんは言った。
「私はアーブラム領主のクラウスだ。あなたが女神なのか?」
え?俺ってマジで女神と思われているのか?俺はとてつもない違和感を感じた。ライラを見ると震えながら頭を縦に振っていた。俺としてもこの場を乗り切る必要がある気がしたので、一応そう名乗って置くことにした。後のことは知らないぞ!
「そうです。俺、私が女神です」
「そうなのですね…」
おっさんはとても悲しそうな表情をした。俺は内心、失敗した気がした。そしてそれは間違いではなかった。おっさんは続けて言う。
「私としてもこの様な震えている少女に対してこの様なことをしたくはないのだが…」
おっさんは腰につけていた剣を抜いた。すると、わらわらと騎士達も集まる。俺は震えながらも聞く。
「なぜ、あなた達は俺、いや、私たちを傷つけようとするのですか?」
「先の戦争から20年、ようやく魔族との戦争が終わり人々に平和が訪れたというのに、魔族の復興を大人しく見過ごす訳にはいかない」
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