第7話 なんだか勝手に物語が進んでいる。
ライラの格好良さに俺は脱帽した。なんだかしっくりくるこの発言に、ファンタジーゲームで出てくる知識では太刀打ちできないということを俺は感じた。俺はここぞとばかりにライラへのボディータッチ、もとい、涙を拭いてあげたりした。
だが、この場でこんな事を言って良いのだろうか?ここは魔王のライラ的には、人間という敵の本拠地なんだろ?いや、まあ、俺としては会ったことのない(人間に嫌われていると思われる)ゴブリンとかと過ごすよりは絶対に良いのではあるが…。
俺は恐る恐るカルドを見た。彼の顔は案の定なんとも言えない表情を浮かべていた。そりゃ、そうだろうな可愛い女の子が急にゴブリンの肩を持ち、泣き出す。これは困るだろうな。俺は冷静になってこの場をどう乗り切ろうか考えていた。
しばらくの沈黙が訪れた。これが気まずい雰囲気とやらか。謎の冷や汗が俺の額を走る。話題を切り替えるべきか?いや、ここで切り替えるのは得策ではないか。すると、カルドが口を開いた。
「すまない。私も少し感傷的になってしまった。この話は、また後ほどにしようか。そうだなまだそちらのお嬢さんの名前を聞いてなかったな」
なんとか一息つけたようだ。俺は安堵した。ライラは相変わらずメソメソしているので、俺が代わりに答えた。
「この子はライラと言います。ご覧の通り心優しい子なんですよ」
きちんとフォローも入れといたぜ。俺の中で俺の株が上がった。するとカルドが、何かに気づき、不審な顔をしだした。え、なんだこいつ。
「何か俺の顔についてます?」
「いや、君ではない。そちらのお嬢さんだ。もう一度、名前をフルネームで教えてくれ」
そして俺は気づいた。
しくじった。
そりゃそうだ。仮にライラが魔王だったとしたらその名前はきっと世間一般では知られているに違いない。ああ、くそったれ!俺のポンコツ!
どなしよう
するとライラが涙を拭いながらキリッと顔を向けた。
「人間、私の名前はライラ・ボーデヴィッヒ。魔王ライラです」
思った以上にあっさりと正体をバラすライラだった。俺もカルドもそれを口を開けて見た。カルドが言う。
「まて、魔王は20年前に封印されたはずだ!なぜここにいる!」
カルドは腰にぶら下げていた剣を抜いた。そして鬼のような形相で俺たちを見た。怖過ぎる!
「人間、私が封印から離されたということはどういうことかお分かりでしょう」
「まさか」
え、どういうことだよ!
俺はツッコミを入れたかった。しかし、そんな空気ではなかったので口を紡いだ。あとでライラに聞くか。
「ここにおられる方こそ、私の封印を解いてくれた聖調の女神様なのです!」
ライラは俺の方を直視しながらはっきりと言った。そして俺はまた心の中でツッコミをいれた。どういうことだよ!
すると、カルドが言った。
「それは誠であるか!」
すると、ライラが言った。
「では、確かめてください。私が真の魔王ライラであることを」
するとライラは素敵なドレスを脱ぎ出し始めた。俺は興奮した。しかし、なぜか立たない。あ、俺は女になったのだ。なぜかとても悲しい気持ちになった。
ライラはドレスの上半身を少しだけはだからようにしてお腹のあたりを俺たちに見せた。そこには、とても緻密なタトゥーみたいなものが刻まれていた。それを見せているライラの顔がとても赤くなっているのが俺的にかなりポイント高いことは言うまでもない。
「それは、封印の印!」
「そうです。そして、この封印を解いてくださったのが、ここの晶様なのです」
するとカルドは急に剣を下げ、言った。
「女神様、どうか無礼な私達をお許しください」
「え、まあ、大丈夫ですよ」
「どうか、アーブラムの民だけは慈悲をかけていただけないでしょうか」
「だ、大丈夫ですよ」
なんというか、なんだか俺を置き去りに勝手に物語が進んでいるのを感じた。なんだこれは…
その後はあれよあれよという間に急に待遇が一変した。
まずはじめに俺たちはなんだか格式高そうな部屋に移動させられた。さっきまでいたベットの部屋や応接間とは明らかに違う雰囲気だ。部屋の隅々はなんちゃら調とか専門用語がついてそうな装飾がなされ、とにかく一個一個の備品がおしゃれだった。
「女神様、しばしここでお待ち下さい。もし何かあればこのメイドに仰って下さい」
カルドはそう言って足早に去っていった。代わりにとても可愛らしいメイドがビクビクしながら部屋に入ってきた。俺は軽く挨拶をした。
「よ、よろしく」
「この度は粗相のないよう頑張りたいと思います!」
メイドはビビりながら立派なお辞儀をした。ライラはというとメイドには何も言わず、俺の方を向き喋りかけた。
「お姉様、先ほどは本当にありがとうございます」
「いや、いや。俺は何も言ってないよ」
「いやいや、そんなことはありません。お姉様はお姉様であるというだけで十分なのです」
よく分からん。
「不躾な事を言うようですが、お姉様ってなんだか男みたいな喋り方をされるんですね」
「そりゃ、男だから」
まだ途中書きなのですみません。
週に2話ペースで書けたらいいなと思ってます。