第5話 コミュ障には辛いぜ
俺は持ち前のコミュ障を発揮した。
美少女であるライラと抱き合って泣き合うという素晴らしき感動タイムの後、なんともいえない疲れから俺は意識を失っていた。そして目が覚めたら、俺の目の前にはザ中世の騎士と言わんばかりの男たちに囲まれていた。体格は大きく、俺が男であった頃よりも明らかに大きそうで、腰には剣をぶら下げており、カヌーの周囲を取り囲む様に騎士達がいた。
これはヤバイぞ!と、とにかく何か言わなきゃ!
「お、お、お、俺になにか?」
恐怖とは恐ろしいものである。頭の回転はいつも以上なのだが、その全てが空回りしている気がする。気づけば身体全体が震えている。誰か俺を助けてくれ!
すると、騎士の代表らしき男が口を動かした。
「もう大丈夫だ。心配しろ、恐怖は去った」
いやいや、あんた達が恐怖なんですよ!すると、急に足がなくなったかの様にストンと俺は倒れてしまった。これが腰が抜けたというやつか。
「ははは、安心して腰が抜けたのか」
男が笑った。すると周りの騎士も笑い出した。いや、逆やろ!
「とりあえず城内に入ろう。今は何より休息が必要そうだな。皆のものこのモノ達を丁重に運べ」
俺は身体から力が抜けてふにゃふにゃだし、ライラは寝ている。騎士達は軽々と俺とライラを抱え、気づけば荷物の様に門をくぐった。
門の向こうには、とても素晴らしき中世のヨーロッパの街並みが広がっていた。レンガ造りで、先ほどまでいた草原とは打って変わって文明の世界だった。ああ、中世まで進化した。すると、俺の鼻に香ばしい良い匂いがした。これは肉である!
たまらん!俺は騎士の身体にヨダレをつけぬよう頑張った。
気づけば、品の良い屋敷の様な場所に連れてかれていた。そこは一軒家の立派な豪邸だった。4階までありそうだ。中々の技術力である。
俺は心の中で大絶賛のコールを鳴り響かせた。屋敷の中に入ると、俺とライラはそれぞれ別々の部屋のベットの上に寝かされ、先ほどの騎士の代表?の男が俺には話しかけた。
「名前を教えてくれないか?お嬢さん」
この騎士、中々ダンディな声であった。コミュ障の俺はようやくここでこの男の顔をきちんと見ることができた。その顔は彫りが深いく、スマートで、知的そうであった。顎髭が地味に生えており、不思議なワイルドさを感じた。いわゆるイケメンなおっさんである。羨ましい。
俺は持ち前のコミュ力で答える。
「ひ、樋口昌」
「変わった名前だね。聞いたこともない苗字た。どこの生まれか?」
「と、東京です」
「聞いたことのない場所だな」
「お嬢さんは貴族か何かかな?」
「い、いや」
「…、お嬢さんはどうしてあそこにいた?」
「な、なんでなんでしょうかね…」
俺は恥ずかしくて死にそうになった。なんだこいつ質問責めやんけ!
そして俺は諦めた。男は困惑していた。俺も困惑している。今度は仕返し俺が質問してやる。
「ここはどこですか?」
「アーブラムのブラウだ」
「あなたは誰ですか?」
「私は、アーブラム近衛隊長のカルドだ」
しかし、ここで俺は詰まった。男には興味がない。故にこれ以上質問することがない。いとかなし!
「聞きたいことがある。その服はなんだ?」
カルドは俺を指差した。俺は自分の着ているTシャツを見て、それからカルドの服を見た。なんというかそこには絶望的な文明の差が生じていた。これこそ説明が出来ない。
俺は困惑した表情をカルドに見せた。
そう、俺はここまでの流れで気づいていた。俺の身体は今素敵な美少女か何かなんだということを!ライラがお姉様と言って、カルドがお嬢さんと言うってことは大体15歳くらいの少女なのではと俺は推測している。そんな少女が分かりませんという顔をすれば、俺なら謝罪でもしてしまう。さあ、どうだ、男よ!すると、男、カルドは言った。
「お嬢さん、教えてくれないか?」
カルドには効かないようだ。俺は頭の中で考えをまとめようとした。その時、悲鳴が聞こえた。ライラだ!
不思議と身体に力が入り、俺は急いでベットを飛び降り、隣のライラの部屋に入った。
ライラは酷く震えており、俺はすぐさま泣いていた時のように優しく抱きついた。