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女神になった俺は、魔王と一緒に平和な世界を実現する⁉︎  作者: 猫野ピート
可愛い魔王を助けたいので、女神になった。
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第4話 出会ってから ライラ編

ライラ編


魔王としての責務は果たさねばならない。その為には我が民である魔族が平和に生活できる国にしなければならない。もちろんその為には、人間族と戦争をすることない、平和な世界を作らなければいけない。しかし、そんなことは本当に私に出来ることなのだろうか。私の人間族を憎む感情と同様に人間族も私達を憎んでいる。この憎しみの感情はそう簡単に消せるものではない。過去に私は失敗し、幾多の辱めを受け、封印された。少しでも思い出すと、身体の震えが止まらない。封印されている間、あの密閉空間で、私は何度もあの時の辱めを思い出し、恐怖に震えた。それを絶え抜いたのは、前魔王の優しかった父の言葉であった。

「何事にも信念を持って貫けば、それはきっと叶う。諦めない事が大切だ。可能性の芽を潰してはならない」

私は諦めなかった。ある意味私の平和への思いはただの意地なのかもしれない。しかし、これはやはり私が決めたことだ。平和を愛した父が亡くなったとき、私は父の思いを紡ぐため、今も絶えず生きている。


しかし、いざ封印が解かれると全てが変わっていた。当たり前に持っていた全てのものがなく、立ち上がることすらままならない。心が沈んでしまいそうなそのとき、封印を解いてくださった美しき少女が言った。


「可能性の芽を潰してはいけない」


それは亡き父の言葉であった。私はふと懐かしさとともに心に何かずっしりとしたものを感じた。しかし、この思いとは裏腹に私の心の中には懐疑の芽が生えてきた。この人は誰なのだ。こんなにも苦労をした私にまだ頑張れというのか。しかし、そもそも私はこの人を知らない。


「あなたはなにも持たない私に対してどうしてそんなことを言うのですか?」


するとこの人は何故か微笑んだ。全てを見通した目で私を覗き込んだ。

ここで私はある伝説を思い出した。「世界の均衡が傾くとき、女神がその均衡を保つために地上に降り立つ」確かに私は魔王である。とすると、今まさに魔族と人間族とのバランス、魔族の窮地のときなのかもしれない。

目の前の少女は微笑みながら言う。


「君にもいつか分かる日が来るよ」


私は確信した。彼女こそが女神様であると。


あろうことか女神様は私を背中におぶり、外に出してくださった。私は感謝を言う他なかった。


女神様の金色の髪はとてもサラサラで、白い服は全て高級な綿花で出来た様な肌触りであった。女神様の背中はとても心地よいものだった。母は幼い頃より出会ったことはないので分からないが、女神様にはどことなく母の包容力の様なものを感じ、ふと、私の目から涙が流れてしまった。すると、女神様は慌てた様にソワソワし始めた。私は、無性に申し訳なくなり言い訳をした。


「あ、すみません。女神さまの肩を汚してしまいました。私また涙を流して…。久しぶりの外の世界があまりにも美しすぎてつい私、泣いてしましました」


すると女神様は微妙に鼻をする音を立てた。もしかして女神様は私と一緒に少し涙を流してした。そして、女神様は不思議な話をし始めた。


「ここは本当に広い草原地帯だよね。草原って植物は育つけど樹木は育たないくらいの降水量場所か、もしくは大きい植物が折れてしまうくらい風が強い土地ってことだね。空気が乾燥しているから降水量が原因で草原になったのかな?」


全然意味が分からないが、話題を変えようとして下さったと言うことは分かった。最初は母の様な包容力を感じたが、今はどちらかというと姉の様なモノを女神様から感じた。とても優しい姉とはこの様な感じなのかもしれない。少し不器用な気もするけど。そんなわけで、私は失礼ながら「お姉様」と女神様に言った。すると女神様は激しく動揺された。その姿はとても可愛らしく私の心は不思議と満たされた気持ちで一杯であった。お姉様はとても可愛いです。


「それにしてもこれからどうする?」


女神様は言う。私はすかさず魔力を使おうとしたが、自分の中の魔力量が少なかなっていることに気づいた。やはり、下位魔法しか使えない。私はないよりはマシと思い、カーベルを作り出した。


私は全身から力が抜けたのを感じた。すると、女神様は何かを察した様に、カーベルに私をゆっくりと寝かせ、私に言った。


「今後は今のようなことはやめてね。それでライラちゃんが辛い顔をしているのは俺ちょっと嫌だから、ね。今は頼りないかもだけど、俺に任せてくれるかな?」


やはり女神様は女神であった。常に私のことを気にかけてくださる。私は嬉しさと共に瞼を閉じた。


しばらくして瞼を開けると、女神様は何やら楽しそうにカーベルを触っていた。その表情はとても楽しそうで私の心は安らかな気持ちになった。

しばらく女神様とわたしは笑いあった。それはとても幸福なものであった。あの封印の期間すら随分前のことであるかの様に私は感じた。しかし、この会話はしなければならない。


「そういえば、ライラちゃんはなんであそこに入ってたの?」


女神様は言う。私はありのままを話した。それはとても辛く。私にとってとても容易に語ることのできないものであった。身体が震える。そして心臓がいつも以上に波打つのが分かる。そして頭では常に封印のときの辛く長い1人の瞬間を感じてしまう。


話が終わるとお姉様は私を大事に包み込む様に抱きしめた。その腕はとても繊細に私を包んでくれた様に感じた。


「ライラちゃん、涙にはストレスの発散効果があるんだよ。今は誰も見てないし、我慢しなくて良いんだよ。

なんだか俺も涙が出てきたんだ。1人で泣くのはなんだか恥ずかしくて、一緒に泣いてくれませんか?」


私は女神様の腕で泣いた。女神様も一緒に泣いて下さった。1人の涙はとても辛かった。しかし、女神様と一緒に出す涙はとても心地よく、まるで涙を出すたびに私の心が浄化されていく様な気がした。そして私はいつしか女神様の胸もとで寝てしまった。



そして、目が覚めた。

そこは見たことないベットの上で1人であった。人間の民家の一室のようで、室内は人間の臭いが充満していた。


「ここはどこなの?お姉様はどこ?」


すると部屋の扉が開き、人間の男が出てきた。


「お、起きたかね?調子はどうだい?」


私の身体中に恐怖が走った。それはまるで雷の様に激しく、頭から足の指先に至るまで全てが震え始めた。そして涙が流れ始めた。

読んで下さってありがとうございます。

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