第23話 計画の始まり
かなり期間が空いてしまいました。
すみません。
出来るだけ早く次回投稿したいです。
ゴーレムの街ラスタに着いてからの毎日はとても忙しいものだった。
なにせこの街の水は鉱物含有量が多く、ゴーレム以外の者には微弱ながらも毒と等しいものであるためだ。もちろんこれは分かり切っていたことなので、持参したろ過装置を何個も重ね合わせて対処した。ろ過した水が生活水として有効かどうかをテストするため、初めはこの水で数種類の植物を育てて死なないことを確認した。その間は、これまた持参した水で乗り切る。それから居住区の整備だ。問題は、魔族と人間族をどう居住させようかということだ。やはりそれぞれ種族別に居住区を分けたほうが良いのだろうかとも考えた。しかし、私は魔族と人間族を半々でグループを構成し、1つの居住区域を整備した。怖いのは、魔族と人間族のすれ違い。その対策として、魔族と人間族とのコミュニケーション頻度を増やし、交流を深めるとともに人間族のトップと魔族のトップが週2で巡回し皆の問題点等や近況報告を聞くことにした。
「お姉様、一旦休憩しましょうか」
「そうですね」
ライラは私の机の上にそっと紅茶を置いた。王族だからかライラの動きは優雅で無駄がない。一方、私は未だ女性にはなっていない気がしてならない。やはり長年の癖は抜けないということなのだろうか。私は出来るだけしなやかに腕を動かし、"ライラの様に"カップを持ち紅茶に口をつけた。ガバガバ飲みたい衝動を堪えながらも、私自身が思い描く深窓の令嬢の様に姿が様になるようにとカップを飲む。すると背後に不自然な視線を感じた。そう、それはヤツなのである。
私は後ろを振り返り、視線の発信源に言う。
「グルマーニャさんも一緒に紅茶を飲みませんか?」
「いいえ、結構です!」
「そ、そうですか…」
女神型ゴーレムのグルマーニャはピシャリと言った。グルマーニャさんは出会った当初は殆ど彫刻みたいな感じだったし、自分と形が似ていると言ってもそんなに似ているとは感じなかった。しかし、日々一緒に過ごすにつれて、次第に色がつき、薄ぼんやりした自分みたいな人という不思議な姿になっていた。このままいけば、おそらく自分がとって代わられるのではないかと感じるくらいの変化だ。
ただ、一つ明らかに違うものがある。それは性格だ。グルマーニャさんは真面目過ぎるということだ。特に朝方は酷いなんてものではない。
「女神様!朝です!起床して下さい」
この世界では丁重に扱われてるはずの女神である私をベットから無理やり引き離し、すぐさま身包みを剥がす。元が男だったから裸になるのには、そこまで抵抗感はなかった。しかし、ゴーレムという石の腕に身包みを剥がされるというのは、本当に本当に恐ろしいものであった。ビクともしない腕に無理やり服を脱がされる恐怖は、ある種拷問なのではないかと思うほどのトラウマになった。起床から着替えまで無理やりさせられ、涙目で廊下に出される惨めさは、えもしがたい。その惨めな姿を見た心優しきリザードマンのガラナンは言った。
「女神様、やはり朝は起きた方がよろしいですね」
返す言葉もなかった。私は小さく頷いた。
「朝は起きましょう。ライラ様はもう既にお仕事を始められております。女神様も負けてはいられませんでしょう!」
ドアをピシャリと開いて、グルマーニャは言った。ライラに負けていいよ!なんては言わず…
「…次からはもっと優しく起こして下さい。優しさはとても大切なものです」
「朝昼晩きっちり生活することこそ生物にとっての本当の優しさであると私は進言します」
これは本日の早朝のことである。怖いですグルマーニャさん。ただグルマーニャさんも嫌がらせで言っているわけではなく、彼女自身の考える正しさを求めての行動であったりもするので、無下に扱うことは出来ない。これは女神だからではなく、私個人としての意見である。
「女神様、なぜ人間のみならず魔族までもがこのラムズ川の水が飲めないのですか」
「おそらくこの川には有機物に独占のある物質が含まれてるからなんじゃないかな?」
「ということは、ラムズ川は天からゴーレムのみに与えられた神聖な川ということなのですか?」
「そうではないと私は思います。おそらく、このラスタの近くにある火山の金属とかがこの川に流れているんじゃないかと思います。なので、もしかしたらラスタと同条件の場所は他にもあって、そこを開拓すれば新しいゴーレムの街が広がりそうですよね」
「流石は女神様だな。少しの会話だけで私たちに有益な情報を提供するとはな」
「当たり前ですグルマーニャ!私のお姉様は素晴らしいのです!」
ちなみにこの様な会話の最後は必ずライラのこの言葉で締めくくられる。私はなんだか気恥ずかく感じ、異世界で女神になっても変わらぬ悲しき日本人魂をもどかしく感じる。
すると、私たちの職務室兼いちゃつき場の扉がノックされた。
「どうぞ」
ライラは上品な声で言った。すると扉が開き、ラスタ遠征隊の人間代表のカルドが顔を出した。カルドの見た目は、騎士という職業と体格の良さからダンディでワイルドなおじさんと思っていた。しかし、聞けば30代とリアル年齢の自分と10年も離れていないことに衝撃を受けた。欧米人の顔は正直年齢が分からない。まあ、今の自分はせいぜい15歳あたりなのでカルドはおじさん認定でいい気がした。
「女神様、魔王様、今日もお美しいですな」
「どうもありがとうございます、カルド様」
ライラは余裕の表情で答える。私はその横でアワアワ慌てることしかできなかった。情けない。ライラは言う。
「そろそろ会議ですか?わざわざカルド様が伝えに来なくたっていいでしょうに」
「いえ、大した距離ではないですし、男とは美しい女性方に会いたくなるものです」
カルドはにこやかに言った。しかし、文面通りの
意味では捉えることは出来ないだろうと私、それにライラは感じている。憶測だが、恐らくカルドという男は、あまり魔族について良い印象を抱いていないのではないかと思っている。その証拠に帯刀している剣は魔族に特化した作りになっているとガラナンは言っていた。まぁ、確かにずっと敵だと思ってた者達と数日生活しろと言われても易々とは安心できないのも無理はない。それにカルドのこの行為は、人間達にとっての魔族への不信感の指標と捉えることも出来る。このような行為がなくなる日が来ることを願うばかりである。私は希望を胸にカルドに笑顔を振りまいた。
そしていざ会議である。元々対立していた魔族と人間族の会議なので当然雰囲気は良くない。双方共に不信感はあり、時たまに議論は引っかかる。しかし、幸運な事に魔族と人間族共に女神である私に対しては、謎の信頼感があるのだ。これは、魔族に対しても、人間族に対しても今のところは分け隔てなく言い分を聞いているからである。言うのが遅れたが、この会議の議長は私なのである。円卓の議会のメンバーを説明しよう。魔族側は、ライラ、ラスタの長でデーモン型ゴーレムのケイラー、ゴーレム以外の魔族側の遠征隊代表で獣人のガル。そして人間族側は、カルドとその部下で副遠征隊のゲイル、それに民間人代表のアイスという女性だ。
中世の文明レベルだというのに人間族側に女性がいるってのが驚き。まぁ、そんな事はどうでもよくて、議案である。
「前回は、ラスタと鉄鉱山間に街道を作る計画を話しましたね。では、今回はラムザ川の水の活用法を話しましょうか」
「水ですか?」
カルドが言う。私はその言葉に出来るだけ丁寧に「そうです」と答えた。
「ここの水は電解液というもので、とても不思議な力を備えているのです。ここに竜のヒモで括り付けられた2つの金属を漬けるとこうなります」
私は簡単な電池と豆電球の実演を円卓上で披露した。竜のヒモは温かみのある明かり灯した。すると一同感嘆の声が上がり、ライラが小さく「そうでしょう、そうでしょう。やっぱりお姉様は一番です」と小声で言った。ライラの声は聞こえなかったふりをして、私は言った。
「この明かりは電気というというモノが生み出すモノで、ラムザ川と鉱山とゴーレム達の家の素材に使われている金属を使って作る事が出来ます。また、この電気というものは、磁界という金属に影響を及ぼす技術にも影響を及ぼす事が出来ます。では、ご覧いただきましょう。みなさーん!」
私はお上品に声を上げた。すると微妙に時間が経ってからガラナンとグルマーニャがそれぞれミニ四駆を持ってきてくれた。私は懐かしき少年時代に帰った気持ちで、ガラナンに磁気の魔法をミニ四駆にかけさせた。ミニ四駆はスルスルと勝手に動き出した。再び、感嘆の声が上がる。
「これは魔法だけでは不可欠で、知識があって初めて動くモノです。とっても面白い余興になったと思います。
今回、私がこの議会で提案する内容は、この電気を使った製品の製造を中期的な目標にしたいと考えています。例えば、この車をより大きくして、荷物を載せた場合、それは馬を使わない無人の輸送機へと変貌を遂げるでしょう。滑車にレールを引くだけで思い思いの場所までお届け!なんて事も出来ますね。もちろん荷物でなく生き物だってね。恐らくこれを用いるだけで、鉄鉱石の生産量は爆増するでしょう。
カルド様、私は我々の活動へのご協力と感謝の気持ちとして、アーブラムへ鉄鉱石を寄贈しようと考えております。鉄鉱石というのはあまり美しくはないでしょうが、早々にこちらの気持ちを伝えるという面では悪くはないと思っております。特に、鉄は最近値段が上がったとお聞きします。なので、不必要にはならないかと勝手ながら考えております。いかがでしょうか。皆様も私の考えについてご指摘等ありましたら遠慮なく言って下さるとありがたいです」
私は優雅そうな雰囲気と、ゆっくりとした口調で議会の全員を見た。全員、息を飲む。流石にミニ四駆からこんな話に繋がるとは思わなかっただろう。私は女神な顔?でカルドを見た。カルドは負けたよと言わんばかりの謎の顔をして答えた。
「もし私がアーブラム領主の地位にいて、どこからともなく鉄鉱石が送られてきたら、舞い上がってしまうでしょう。気持ちは十分過ぎるほど伝わるかと思います」
「お姉様、私たち魔族もその意見には賛成いたします。恩には恩で返すというのが、やはり美しい形ですものね」
こうしてメインテーマが終わった。私は少しだけ息を吐いて、皆さんにこう告げた。
「それではこれから電気を使った製品を作る為に、種族も所属も地位も問わず賢いモノを魔族人間族それぞれ10名ずつ集めていただけますか?」




