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女神になった俺は、魔王と一緒に平和な世界を実現する⁉︎  作者: 猫野ピート
魔族を復興させたいので、知恵を絞った。
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第15話 準備(電気の確保編)

あれから私は女神と魔王の護衛、もとい監視に力を入れて行った。

一見すると彼女たちの行動はあまり意味のあるようなことには見えなかったが、話を聞くとその一挙動に至るまですべてに意味があることだった。その中の一つで最も驚くべきことが、発光するヒモだった。


「この竜のヒモを銅剣とこの棒に括り付けて、ラムズ川の水に浸します。するとこの竜のヒモが光ります。ラムズ川の水は電解液。そしてこの棒はイオン化傾向の大きい亜鉛や何かな。簡易的なボルタ電池で、電球を作ったという感じですかね!あ、でもケミカルは専門じゃないんで間違っていたらすみませんね!」


そう女神は言うが、その言葉の意味が一つも私には分からなかった。私は光る竜のヒモをまじまじと見つめたが、一体全体何がどうなっているのかさえ分からなかった。


「魔法のたるいではないのですか?!」

「魔法ではないです!これは自然現象です!」

「にわかには信じ難い。こんなもの騎士学校でも学んだ覚えはない」


女神は得意げな表情をした。女神は傍から見れば精巧や宗教画の天使のような美しい少女だ。そして心優しく清らかで、この世のものとは違う包容力を持つ少女。そして私が今最もお慕い申し上げているお方である。いまその少女は満足げで歳さながらの子供っぽい無垢で眩しいくらいの表情をしていた。その隣で上品に微笑んでいるのが魔王であり、これまた可愛らしい少女だ。魔王と仰々しい地位にいる彼女だが、実際はとても優しく、時に私にも気をかけてくださる。数十年前は敵勢力だったとしても私は彼女に対して敬意を払わざるをえない。


「本当にお姉様は素晴らしいです」

「ありがとう、ライラ」


魔王よりも女神の方が少しだけ背が高いが、その仕草や雰囲気から魔王の方が大人びているようにも見える。だが、魔王は女神のことを「お姉様」と呼ぶ。その姿はとても愛らしくいつしか私はその不自然な姉妹然とした光景に不思議な良さを感じるようになっていた。


「ク、クラーラさん、あんまり睨まないでいただけますか?少し怖いです」


私としたことがついつい彼女たちを見続けてしまった。

どうやら私は物事を見つめる時に睨んでいるような表情をしているらしい。女神曰く「クラーラさん、顔の表情筋が適切に稼働してないのかもしれません」らしい。すべてにおいて何を意味しているのか分からないが、とにかく表情が難いということだと思う。そんなことを言った女神は、今は少し怯えた表情をしていた。しかしまあ、ここまで美しい少女にそんな表情をさせてしまうと私としてもどこか罪悪感というものを感じてしまう。だが同時に何とも言えない心持でもある。というのも、女神のこの怯えた表情が一人娘である私にいもしない妹を感じさせるのだ。なんて可愛いんだ。と、失礼ながら私は感じてしまう。


「お姉様が怖がってます。あまりこちらを睨まないでください」


魔王が強く言う。だが、こちらは口調とは裏腹に細い足を震えながら言うのだ。騎士学校で学んだ魔族とは明らかに異なるこのギャップにこれまた妹感を感じる。私は一言「すまない」と言った。すると魔王は「分かっていただけたのなら良いのです」と曖昧な返事を返した。その空気を読んでか女神が話し始めた。


「とにかく今日はこの発明に感謝しましょう!これがあれば、魔道具や魔法なしでも光がつかえるようにもなるでしょう。さらに、この電池の発明はこの世界の今後を左右する大きなものになるでしょう!」

「お姉様、電池とはなんでしょうか?」

「電池とは、魔法や魔道具を使わずに物質の化学反応だけで電気を発生させるモノのことなんだよ」

「やはりお姉様の言葉は難しいですね。私もまだまだ勉強しないといけませんね!」


女神は魔王ににっこりと笑顔を見せてから、私の前まで来た。


「クラーラさん、この数日間私とライラは様々な道具を作り続けました。そのどれも私たちが作る街では”人々”にとってとても大切なものになります。今言った”人々”とは貴族など特権階級だけではありません。商人、農民、などのいわゆる一般階級の人間族、それに魔族の為の道具なのです。例えば、どんなに水が汚れていようがゴーレムなら飲むことは出来ます。しかし、人間は飲むことが出来ません。反対に人間は炎を使ったりしますが、獣人族は炎を使うことが出来ません。一見当たり前の様ですが、これらの違いは様々な問題を発生させます。人間でも富めるものとそうでない者、別の土地に住む者、肌の色が異なる者は互いに対立したり果ては争ったりします。人間族と魔族では根本的に身体の作りから異なるため、違いをなくすというのは難しいでしょう。それでも最低限、違いによる不自由をなくすことが出来れば、心にゆとりが生じ、皆が違いを個性として認め合うことのできる社会を作ることが出来るのではと私は願っています。

ここにその違いによる不自由を解消する道具の素材のリストがあります。どうかこれをクラウス様にこの素材をいただけないか一緒にお願いして下さいませんか?」


やはり彼女たちはただものではない。常に先のことを考え行動する。そしてその動機となっているものは人々の幸せである。彼女たちは容姿以上にその心の清らかさや上に立つ者として尊敬できるモノがある。私は誓った。


「出来る限り力を貸そう」


私の返答を聞くなり彼女たちは花のような笑顔を浮かべた。本能に訴えかける可愛さである。私の妹達、いや、(将来の)主は素晴らしい。私は素晴らしき職場を得たのかもしれないと感じた。




女神視点


クラーラさんはとにかく怖い。一見すると、綺麗系の美人さん。是非とも私が東京にいた時にお会いしたかった。これはかなり悔やまれる。けれど、今回は状況が違う。というのも、今の私は女性でしかも少女だ。そして相手は騎士学校とやらを首席で卒業した戦闘におけるエキスパート。一応、東京にいた時は大学院の博士課程で細胞生物学を専門として、教養や生物学的知識はそこそこ並よりはある方だと思う。けれど、顕微鏡やピペットの知識がこの世界で活かせるとは思えないし、活かせたとしても現状では絶望的なまでに役に立たないことに変わりない。幸い、私は女神という立ち位置なのできっと彼女は何もしてこないのだろう。少なくとも今は女神であることを演じなくてはいけないなと私は感じた。


今回も見事?女神を演じきれたのか、クラーラさんの表情が少しだけ和らぐ。だが、クラーラさんの視線は中々の鋭さであった。私はライラの手を握る。すると、ライラも私の手を強く握り返してくれた。ライラも同じ気持ちなのか。私の感性は間違っていなかったらしい。


「失礼します」


ノックの音と共にメイドのリゼが部屋に入ってきた。リゼは自分の身長くらいの大きな板をもってやってきたが、流石はメイドというべきかキチンとお辞儀をしてから「失礼します」と再び言いながら板を下した。その先には首から上がトラで身体が人間の獣人と恐竜みたいな人間?のリザードマンという魔族たちが申し訳なさそうについてきた。両者共に2メートルはあるかという大男で、彼らは地図などの書類の束を片手にしていた。その光景を見たライラが言った。


「あなた方はこんな小さな少女にこんな大きなものを持たせて恥ずかしくないのですか?」


ライラが落ち着いた声で言う。それは中々に怖いものだった。その声に反論したのがリゼだった。


「ライラ様、この板は私が持ちたいと言ったのです!」

「どうしてです、リゼ」

「ライラ様それから女神様が朝から夜中までずっと頑張っておられるというのに私だけ楽なんてできません!」

「そんなことないわ、リゼ。あなたにはいっぱい手伝ってもらったわ。本当にありがとう」

「そんな、もったいなきお言葉です」


すると後ろからクラーラさんの強い視線を感じた。しかしこれは無視しよう。私は獣人のガルとリザードマンのガラナンの書類を受け取った。


「ご苦労様です」

「いえいえ、女神様。それを言うのは私たち魔族です。いつもあなたには感謝しています」


ガルは言う。その後ろでガラナンが頷く。

ガルは魔国の元親衛隊で戦後20年間ずっとアーブラムの檻に入れられていたらしい。並の人間なら精神が異常を異常をきたしそうだが、出会った時から常にずっと心優しき良いひとだ。今年で150歳くらいになるらしい。それからガラナンも同じく魔国の元親衛隊で戦後20年間ずっと檻の棺桶に入っていたという。本人は冬眠していたというが、アーブラムの檻の責任者は捕虜が死んだと勘違いしてせめてもの情けに棺桶に入れたという。とにかく凄すぎる奴ばかりだ。どうやってこんなツワモノ揃いの魔国と互角に戦い、滅ぼせたんだ人間族よ!私はいつも問いたくなる。

ガラナンが言う。


「女神様、これで準備は整いましたかね」

「そうですね。準備満タンです!」


私はオーバーに彼らに笑顔を振りまいた、すると彼らはとても幸せそうな表情になった。男とはかくもチョロイのかと、種族を越えてもなお男の弱さに頭を抱えた。


「リズさん、今回は私がその板を持ちましょう」


そうガラナンは言って、板を持ち上げた。リズは困った表情をしたが、ライラはリズをなだめて「リズはこの地図をもって下さいね」といった。


私はクラーラさんに軽く会釈をして「お願いしますね」と言ってから、皆に行った。


「これは戦ですよ!皆、気を引き締めていきましょう!」




それから数分後、私たちはクラウス侯爵、アーブラム市民会議、それにアーブラムの有力商人の前に立っていた。

読んで下さってありがとうございます。


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