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女神になった俺は、魔王と一緒に平和な世界を実現する⁉︎  作者: 猫野ピート
可愛い魔王を助けたいので、女神になった。
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第11話 ライラの戦い

あの素晴らしき立ち回りの後、騎士たちが引き上げていった。そしてなぜだか俺たちも騎士たちについていくことになってしまった。その間、ライラは俺の左腕にしがみつきプルプル震えながらも目を開けて事態を見極めようとしていた。俺はというと左腕に全神経を集中させて、美少女の抱き着きという素晴らしき事態を味わっていた。周りを取り囲んでいた騎士たちはそんな俺らを見て罪悪感を抱えているような申し訳なさそうな表情をしていた。そんな感じで、歩いたり少し馬車に乗ったりしてたどり着いた場所は中世ヨーロッパの綺麗なお城であった。ああ、たまらん!隣には美少女、そして俺は今まさに綺麗なお城へと入る。日本にいたころの狭い部屋とでっかい豆腐の様な大学のキャンパスとは訳が違う。一人俺だけ内心喜んでいた。


「女神様をお迎えするには少し狭いとは思いますが、今はこれが用意できる一番の部屋です。どうか分かってください」


騎士は言う。その場所は、世界遺産にも登録できそうな豪華なつくりでそして広い。俺の下宿先の6畳の部屋が10部屋あっても余裕で入る空間だった。


「いえいえ、こんな部屋を使わさせていただいていいのですか?!」

「お気に入りいただけないのであれば…」

「いえいえ、こんな素晴らしい部屋を使わさせていただけるなんて嬉しいです。ですが、もう少しこじんまりした部屋でいいですよ。私が女神であるとか気にせず、2人の客人として考えてくださってかまわないですよ」

「しかし…」


すると俺の腕に抱き着いていたライラがより強く腕を握った。この豪華な部屋が良いのか。ライラは王様だったもんね。


「そうですね。やはり女神と王族であるライラが一市民の様な部屋に住んでいるとなると示しがつきませんかね。では、この素敵な部屋を使わせていただきます。本当にありがとうございます」

「分かりました。それでは女神様方、もし何かあればこちらのメイドにお申し下さい」


きりっとしたメイドがそこにはいた。しかし、俺としてはこんなメイドは求めていたものとは違う。わがままなんだよ、私は!


「あの、出来ればリズさんが良いかなって思っていまして…」


騎士は困惑した表情のまま「分かりました。女神様、リズというものを探してきます」っと本当に分かっているか分からない返事をしてどこかに行ってしまった。俺とライラこの豪華な部屋に入った。


「ライラ、なんだか分からないけど助かったようだね」


するとライラは俺の腕から一歩離れ、お上品で素晴らしいお辞儀をして言った。


「お姉様、いや、女神様、この度は何度も命をお救い下さいまして本当にありがとうございます」

「どうしたのライラちゃんこんなかしこまっちゃって」

「私、魔王なのに人に剣を向けられただけで倒れちゃうなんて…」


ライラはなかなかのネガティブな子なんだね。ライラは今にも再び泣いてしまいそうなウルウルとした瞳で俺を見ている。純粋に可愛い。だが、こうも言ってられない。俺は困っている顔の美少女も好きだが、笑っている美少女の方がもっと好きだ。だが、ここで問題が発生した。あれ、俺はこんなとき女の子にかけてあげる言葉を知らないぞ!

例えば、高校の時、まともな青春?というやつを送っていたのなら傷心の女の子にかけてあげる言葉や慣用句、その辺のボキャブラリーを持っていたのかもしれない。だめだ。俺は、愕然とした。こんなときになんて言葉をかけてあげたらいいのか分からない。


「お姉様?ど、どうされましたの?」


やばい。俺としたことが逆に傷心の女の子に心配されているではないか。ライラは俺の顔を覗き込む。可愛い。そして俺は一つのことを気づいた。匂いである。女の子って良い匂いがするんだな。アニメや漫画でしか知りえなかった知識をリアルで俺は体験しているというのか。圧倒的大満足。

あっ、そんなことはどうでもよかった。そうこうしているうちにライラがクスクスと笑った。


「お姉様、お顔が変です。不安な表情になったと思えば幸せそうな表情になったり。でも、こんなところでくよくよしていてはいけませんよね」

「そ、そうだね」


俺はコミュ障気味に返した。するとライラが何かに気づいたように俺を見つめた。それから何か悪戯っ子な表情をした。


「失礼ながら、お姉様ってここぞって場面ではとてもお美しい女神様なのに、普段のいでたちはどことなく男性の様で、時たまにうぶな少年の様な言動ですのね」


「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


26歳大学院生の俺、若干中高生間くらいの年齢の子にこんなことを言われてしまった。俺はえも知れぬ恥ずかしさで顔が真っ赤になった。するとライラはとても良い表情をして俺を抱きしめた。


「そんなお姿も私は大好きです。ですが、少しばかし女性として恥ずかしくない振舞いを練習してみませんか?」

「あっ、はい」


俺はうぶな少年の様な対応をしてしまった。


「まずは、俺ではなく私というところから始めませんか?」


俺、いや、私は答えた。


「は、はい」



するとドアがノックされた。


「女神様方、今後の予定についてお伺いしたいのですが、いつ頃がよろしいでしょうか?」


私はライラを見た。ライラは真剣な眼差しで私を見ていた。それからライラは小声で私に囁いた。


「お姉様が世界のバランスの為に私を助けて下さったこと、そしてこれからも助けて下さることは本当に感謝してもしきれないことです。されど、魔族を救うのは私の役目なのです。そしてそのために一番最初に前に進む者は私でありたい、これだけは譲れません。それが魔族の王である私の考えなのです。たとえ人をみると震えが止まらぬこの身体であっても、私は一刻も早く魔族を救いたいです」


ライラはまっすぐな瞳だった。私はしかとその思いを受けとめ、言った。


「ライラちゃん、じゃあ行きますか」



そんなこんなで私とライラはクラウド、そしてカルド、以下このアーブラムでの諸々の責任者達と会いまみえることになった。円卓のデスクの上には地図があり、そしてその周りを私たちは囲んでいる。もちろんほぼ全員がライラを睨んでいる。この部屋に入ってからライラは私の手を握り続けていたが、皆が全員円卓の周りに立つとライラは私の手を放した。


「人族の皆さん、私は魔王ライラ・ボーデヴィッヒです。私は魔族復活の為にここに来ました。しかしそれは皆さんの思っているモノではありません。私は人族と魔族が争うことなく共存する社会を作っていきたいと考えています。

古来から人族と魔族は争いをしてきました。そしてその争いは幾億の悲しみや恨みが積み重なり、何が発端となっていたのかすら今では誰も知りません。しかし、私たちは元よりその様なことをする必要なんてないのです。なぜならあなた方人族と同様に私たち魔族も争いのない平和な世界を望んでいたのですから」


ライラの最後の言葉に皆動揺していた。敵側の感情は想定出来てなかったということだろうか。この場にいる人が動揺するということは戦争当時はもっと考えられなかったことだったのだろうか。憶測で物事を考えるのはよそう。今は、彼らがライラの言葉に動揺しているということだけが重要だ。

動揺していた初老の人が口を開いた。


「私はアーブラムの市民会議議長のトランドだ。若き魔王よ、あなたの言葉に嘘偽りは感じなかった。しかし、現実問題、人族と魔族が争うことなく共存する社会を作ることができるだろうか。私は20年前の戦争時代を知っているからこそ、それが現実には難しいことなのではないかと感じる。あなたのその気持ちだけでは、アーブラム市民は協力できません」

「ええそうですね。トランド様、あなたのお言葉はごもっともです。実は恥ずかしながら私自身、人族と魔族が争うことなく共存する社会を作るということが出来るのかどうか自信がないです。しかし、確かめることはできます」

「して、その方法は?」

「この旧魔族領ヘルヘイム、いや、今はアーブラムでしたね。アーブラムの北部にラスタという魔族の小さな隠れ町があります。そこで人属と魔族の共生社会を実験的に行いたいと考えています。もしそれが成功すればこのアーブラムで同じような村や街を作ってください。この計画が成功すれば、アーブラムの人口は魔族も含めることが出来、領内の生産量も上昇するでしょう。アーブラムの経済に魔族は大いに貢献出来ると考えています」

「もし、人族と魔族が共存出来なかったら?」

「その場合は、アーブラム中の魔族はアーブラムを退去することを約束しましょう」


ライラは悔しそうな表情だった。反面、人間たちはとても良い表情を浮かべていた。私には何かこの光景は気に入らなかった。ライラは言った。


「今から言うことは、戦争を止めることが出来なかった魔王としての気持ちです。どうか忘れていただけると幸いです。

私は、人族との戦争で前魔王である父を亡くしました。そして先の大戦で国も滅びました。そして現在に至ります。人族に捕らえられてから私は一度も同胞である魔族の姿を見ていないのです。まるで異世界に一人いるようです。一人ぼっちは寂しいものです。封印の間私は寂しさで涙が枯れそうになるまで泣き続けました。しかし、他の同胞は国が滅びてから死の恐怖で生きているはずです。これは私が経験した悲しみよりももっと深い悲しみであると感じます。私はその様な方々を助けて、そして償いたい。魔王である私が不甲斐ないせいでこのようなことになってしまってごめんなさいと。ですので、皆さまどうか私に少しでも協力していただけないでしょうか!」


ライラは途中涙声になっていたが、その言葉はみなの心にずしっときていた。隣にいる私はというと号泣である。前半は利害関係の話で、後半は感情論。ライラは丁寧に深くお辞儀をした。


「魔王ライラ、表を上げてください」


クラウスが言った。


「私たちアーブラムはあなたに協力しましょう。今は魔王ではなくライラという素晴らしき少女にという意味ですが」

小説って難しいですね。


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