第1話 どうしたものか?
俺は今目覚めた。なんだかすごく良い夢を見ていたような安らかな気持ちとでもいうのか、そんな感じの目覚めだった。澄んだ空気の中で日差しが俺の肌を優しく包んでいる。ああ、幸せだ。もうひと眠りでもしたいが、そろそろ大学に行かなきゃなとか考えながら、俺はまた目をつぶろうとした。ここで、ふと気づいた。
「あれ、ここどこだ?」
俺は身体を起こし、周りを見渡した。すると、いつも見慣れている東京の6畳の格安マンションの一室ではなかった。俺の周囲は、ストーヘンジといえばいいのだろうか、直径3 mはあるのだろうかという大きな平らな丸石がゴロゴロおいてあり、遠くを見れば地平線がくっきり確認できる程広大な平原だった。その中で、どうやら俺は直径5 mはあるかという円形の一番大きな石の上に仰向けに転がっているようだ。
「どこだここ?」
見覚えはない。再び声に出してみたが、誰も答えてくれることなく俺以外はいない。
「どうしたものか?」
俺は立ち上がった。すると、ここでも不思議な違和感を感じた。目線が低いような気がする。俺は何気なく自分の腕を見た。するとそこには、華奢な白い腕があった。いつものThe縄文人体形の老け顔博士課程の学生には似ても似つかわしくないモノだった。俺は、柄にもなく震えるように驚く。
「う、腕が!え、あ、髪も長い!」
声もなんだか変だ。気づくと色んな所が気になって、俺は改めて自身の異変を実感した。Tシャツ半ズボンと服装だけが変ってないので安心できた。しかしこれは、やばい。全てがなんか変だし、それよりここはどこなんだ…。
すると、どこからか音がした。微かにだが、俺の座っている丸石の下からだ。他にすることもないので、俺は音の正体を確かめるべく丸石の淵行った。丸石から地面は1 mくらい離れていた。これくらいなら大したことがないと思ったが、なんでか身体が震えた。そうか、俺は小さくなっているからこのくらいの高さは危険なんだな。俺は、ゆっくりと手を使って降りた。
地面に足をつけてこの場所が何か分かった気がする。
全ての丸石の下には円柱状の石が置かれていた。幸い、俺の降りた丸石の下にある円柱の石には小さな子供がギリギリ出入り出来そうな穴が開いていた。声はそこからする。しばし俺は考えた、が、やはり行くことにしよう。俺は中に入った。
中はなんでか20畳ほどの広さだった。加えて、不思議と明るい。俺のマンションもこのくらいであってほしかった。いや、それよも早く帰りたい。
「なんだこれ」
この空間の真ん中に棺のようなものが置かれていた。明らかに棺である。NHKで見た古代エジプトのミイラの棺を思い出した。
「…たすけて…」
棺からかすれた声がする。
俺は絶句である。しかも男か女もなぜか判別できなかった。
まてまて、落ち着け俺。これは明らかにやばい系のイベントな気がする。全身全霊が俺に訴えかけている。ここがファンタジーかゲームの世界だったら、棺を開けたとたんにパクりといかれるやつだ。俺はとりあえず話しかけてみた。
「もしもし?誰かいますか?」
すると、棺からトントンと音が鳴り、再び声がした。
「一度で、いいですから、…、外に、…出してください」
声は弱々しかった。なんだか、不思議と俺の心に優しさが溢れた。ああ、良いやつだな、俺。これがチョロイやつなんだろうか。仕方ないな、俺も喋り相手が欲しかった所だったんだよな…。嘘である。
震える腕で俺は棺に触れた。この棺、湿っている。そのせいかなんだか簡単に開けられそうな気がした。とりあえず、棺の人に一言告げた。
「今から開けますよ」
この棺なんだか湿ってるし、ミイラが出てきてもおかしくない気がした。ああ、怖いぜ…。でも、言ってしまったからな、俺も男の端くれではあるからな。俺は勇気を振り絞って棺の蓋を開けた。
「あり、がとう」
そこには美少女が涙を流しながら横たわっていた。腰まで届くほどの白髪に人形のように整った顔、歳は15とかだろうか、ゴシックな黒のドレス?に身を包み、その姿は中世のお姫様である。彼女の口はゆっくり動かし声を発していた。
「か、可愛い」
「あ、ありがとうございます。あ、ありがとう、ございます」
少女は泣きながら俺に精一杯感謝の言葉を絞りだしていた。これは無理に喋らせないほうが良いかな。
「辛いなら喋らなくていいんだよ」
俺は彼女言ったが、彼女は感謝しながら起き上がろうとした。
「まてまて、辛そうならそこでまだ寝ててもいいんだよ」
「も、もう、寝ているのは、い、いやです」
彼女は渾身の力を振り絞り上半身を起こした。しかし、身体にうまく力が入らなかったのか俺の方に倒れ込んだ。もちろん俺は彼女をキャッチした。この子軽い!
「あ、ありがとうございます」
彼女は即座に感謝する。不意に訪れたボディタッチの機会だったので俺も感謝しそうになったが、彼女いない歴年齢のプロ童貞の底力で無言を突き通した。そして俺は彼女が落ち着くまで彼女に抱き着くもとい支え続けた。数分後、彼女は落ち着いたらしくゆっくり喋りだした。
「な、情けないですね、私」
彼女は震えながら呟いていた。俺は身体でその震えを感じた。
「昔はみんなの生活する国を支えていこう考えていた私が、今じゃ一人で身体を起こすことも出来ないなんて…」
「え、国?」
え、この子、昔は国を支えようとだって?なかなか大志のある子だったのね。スケールがデカイ夢って良いよね。とにかく俺はすかさずフォローを試みた。
「今は身体の調子が少し悪いだけかもしれないよ。現状がこうだからってやりたいことを諦めるのはよしたほうが良いと俺は思う」
すると、彼女は顔を上げてこちらを見つめた。それからまた涙を流しながら俺を見つめて言った。
「今の私にはなにもないわ。民も魔力も金も」
おいおいおい、金しか分からんわ。とにかく俺は彼女を見返した。普通に可愛い。美人系の顔つきなのだが、泣いている顔は歳の幼さというものが現れているのかこれは天使である。そんな天使が意気消沈している。俺の心に火が付いた。そう、俺は優しいのである。きっと。
「今は何もないのかもしれない。でも、ここで諦めてしまってはダメだよ。可能性の芽を潰してはいけない。それは今はとても小さくて見えないものかもしれない。でも、いつか花開く時が来るかもしれない。なんなら俺も手伝うよ、君のために」
「あなたはなにも持たない私に対してどうしてそんなことを言うのですか?」
俺はふと考える。それは君が可愛いから!なんて言えない。ここでカッコいいことを言うべきなのだろう。童貞の血が俺の脳をヒートアップさせた。ふと彼女を見ると彼女の目は涙を貯めながら真剣な眼差しで俺を見ていた。おい、可愛いじゃないか!俺は、伏し目がちに最低の答えを返してしまった。
「君にもいつか分かる日が来るよ」
俺は彼女の顔を見た。すると、彼女は何か驚いたように俺を見た。
「あなたはもしかして女神様であらせられますか」
予想外の答えだ。まて、神でもなければ女でもない。でも、ここは即答せず俺は余裕をもって答える。余裕のある男はモテるらしいからここで決めておかねばね!
「いや、俺はタダの通りすがりさ」
ダサい。我ながらダサい。しかし、他にどう言えばいいのか。俺には分からん。ああ、こういうことならカッコいい服でも着ておくのだった。そしたら…
いや、まて、そもそもなんで俺はTシャツに短パン姿でこんな謎なところにいるのだ?そもそもここはどこだ?
するとフフっと上品な笑いがした。
「ご冗談が下手ですわ。ですが、この度は本当に感謝しています。とても元気づけられました。そうですよね。今は何もないかもしれません。しかし、諦めてしまってはそれこそ民に示しがつきません。私は、魔王として民の為、世界のバランスの為に頑張りたいと思います!
女神様、いや、通りすがりのお姉様、お力を貸してくださいますか?」
涙で腫れた彼女の目には得も知れぬ強い意志を感じた。
Web小説を書いてみたいと思いを始めました。
拙い出来ですが、どうかよろしくお願いします!