勇者は逃げられない
執筆現在、とんでもないことに気づいてしまいました。
第5部のタイトル「Oh my son」 と書いているつもりが「Oh my sun」になっていました。 太陽って・・・なんだよ・・・
というわけで修正しました。 これは本格的に恥ずかしいですね
―――――――――白い燐光が身体を包み込むと同時に力が漲って来る。 内側から力が滾るような感じではなく、まるで世界から力を貸してもらっているようなそんな感覚。
その有り余る力を一撃に込める。
「――聖剣 ジャッジメント!!」
身体を包んでいた燐光が閃光と同調し、混ざり合う。
横一文に振り切られた聖剣から放たれた光は刃となり黒い暴風とぶつかり合い、一瞬の拮抗を経て暴風を消し飛ばした。 空龍の暴風をかき消すという偉業を成し遂げてなお、放たれた光の刃は衰えることなく暴風の向こう側に立つ空龍の体を真っ二つに切り裂いた。
「っ!?――――」
空龍は完全に切り裂かれてからようやく己が斬られたことに気づき驚きの声を上げるがそれすらもままならない。
「・・・上位の龍は首を落とされてもしばらくは生きているなんて話を聞いたことがあったがそれは嘘だったみたいだな」
すでに二つに分かれた空龍の胴体に歩みを進めつつ皮肉に言い放つ。
空龍がすでに事切れているのはわかっていたがそう言葉にするだけで少しは溜飲も下がった気がした。
「リオン様・・・」
俺の名前だけを口にして何も言えないでいるアオバだが、言いたいことはなんとなく察することができた。
「アオバ、行こう。 時間もあまりない」
しかし、有無を言わせぬ態度で町に戻っていった。
身体が軽い。歩いていても全然疲れない。
それでも心は重かった。シエルが居ない。シエルが消えた。もう会えない。
男に戻れた事による喜びよりもシエルを失ったことによる悲しみの方がはるかに大きいのだ。
「シエルがくれたチャンスだ。1秒たりとも無駄にはできない」
一人、誰に言うでもなくつぶやいた。
やがて、街が目前まで迫ってくる。
ずっとシエルのことを考えていたせいだろうか、帰り道の記憶がほとんどない。 時間の感覚が薄れていたようだ。
「リオン様、もうすぐ町です。姿を見られないようにしませんと」
アオバが俺に忠告してくる。 そうか、そういえば勇者リオンは行方不明って話だったな。じゃああまり人に見られるわけにも行かないか。
「わかった。少し待ってくれ」
一旦立ち止まりあらかじめ用意していたマントを羽織り、フードを目深にかぶる。
これで俺の顔は多少なりとも隠せるだろう。
・・・俺がこの姿でクラリイの前に出て行ってやったらどうなっただろうな。
シエルが居なくなったことから目をそらすためだろうか、自然とそんな考えが頭によぎる。――――そして、同時にクラリイの死に様が脳裏に鮮明によみがえってくる。
「うっ、オエッ・・・ぐぅ、」
カラカラに枯れ尽くしてもなお生かされ、最後には焼け死んだ彼女の最後がフラッシュバックし、思わず吐き気を催してしまう。
逃避は許されないということなのだろうか。
「リオン様!! 大丈夫ですか!?今お水を・・・」
俺を心配してアオバが駆け寄ってくる。
差し出された水を一気に飲み干し胸まで競りあがってきた胃酸をどうにか飲み込む。
「はぁ、はぁ ありがとう。俺は大丈夫だから、町に戻ろう」
そういいつつも自分の顔がひどく青ざめているのがわかる。 額に薄くにじんでいた脂汗がこめかみを伝って行った。




