黒く成就した
「ほう、我に命を捧げると言うか。面白い、ならば貴様を喰らってやろう」
男に戻るなんてのも、もうどうでもいい。 さっさとこの声の主を殺してやりたい。
「早くきやがれ!」
「よかろう、ならばその陽だまりに入るがよい」
あぁ、いちいち喋り方が、声が、態度が、口調が、存在が癪に障る!
「これでいいのか」
一歩下がって心配そうにこちらを見つめるアオバを意識の外に、俺は陽だまりの中に歩みを進める。
「ああそれで良い。 では、ゆくぞ」
空龍の声が聞こえたと思ったら俺の中から力が抜けていくような感覚に見舞われた。
「ククク、これほどまでに濃密な力はいかぶりか・・・ クハハハハハハハ!」
俺の目の前に現れた巨大な蒼い龍は大口を開き笑った。
「・・・我、勇者の名においてすべてを断ち切る剣を欲す。聖剣よ、顕現せよ!」
目の前の龍を確認すると聖剣を呼び出す。 当然、こいつを切り捨てるためだ。
「ほう、濃密な力だと思ったが、まさか勇者だったとはな。 まぁいい、これほどまでに甘美な力を味わわせてもらったのだ。 褒美に貴様の願いをひとつ聞いてやろう」
上機嫌な龍に殺意がこみ上げてくる。
そして、その問いに俺はこう答えた なら、さっさと死ね と。
「なら、さっさと死―――」
しかし、その言葉はとある人物によってさえぎられた。
「リオン様の時を巻き戻していただきたいのです!」
俺の言葉をさえぎったのはアオバだった。
「リオンというのはそこの勇者のことだな。よかろう、そのくらいならば容易い事だ。 いったいいつまで遡ればいい?望むならば赤子に戻すこともできるぞ?」
「アオバ!!」
思わず声を荒げてアオバの名を呼ぶ。 しかし、アオバは一瞬だけこちらを見ただけで何もいうことなく空龍に向き直ってしまう
「彼が男だったころに、リオン様がもっとも力に満ち溢れていたときに戻してください!」
アオバが誰の声をもさえぎるような大声で空龍に告げる
「よかろう。その願いしかと聞き遂げた。
――――――――」
空龍が何かの言葉を発する。 しかしそれは俺には聞き取ることができない。
次の瞬間だった。
俺の身体が強く光を放ち、そしてその光が晴れたとき
俺は男に戻っていた。
「空龍 フェル=ニエーバ だったか」
俺は鋭い眼光を空龍に向け、こう言い放つ。
「俺は、お前を殺す」
正直リオンを男に戻す気はなかったのですが、シエルが命を賭してリオンを男に戻そうとしたわけですからね。 多少なりともその意思は汲んでやりたいと思ったのです。




