淡く薄く消えた白い希望
俺、シエル、アオバの三人は街から馬車で数刻ほど離れた丘、ドロアスの丘に立っている。
空はすでに赤く染まりつつある中でシエルが一人、魔力により浮かび上がった魔方陣の中央で祈りをささげている。
「シエル・・・?」
集中しているシエルに声をかけるのは憚られたがそれを止めることはできなかった。
なぜなら―――
「シエル様・・・身体がっ!」
―――シエルの身体が徐々に消えていっているのだ。 もともと半透明だったその身体は掻き消えてゆく。
俺は、その様子をただ見ていることしかできなかった。
――――――――――――――――我を失ってシエルを見つめていた。
そして、最後の瞬間、シエルは俺の方を向き微笑を浮かべた。
その微笑を認識した次の瞬間にはもうシエルの姿は影も形もなく、文字通り消え去ってしまっていたのだ。
数分、数刻、数時間の静寂が続いた。――――いや、実際には数秒の間が空いただけだろう。しかし俺にはその数秒がいやに長く永く感じられた。
その静寂を打ち破ったのは空から不自然に落ちた陽だまりだった。
それはいつの間にかできていた。
シエルが祈りをささげていたその場所に落ちた陽だまりから声が聞こえてくる。
「久方ぶりの贄だというのに死んだ魂の残滓とは、あいも変わらず人間どもは愚かであるな」
陽だまりから響いた声が継げた言葉を理解するのに数瞬の時間を要した。
――贄?シエルのことか?
――死んだ魂の残滓?シエルのことか?
――愚か・・・だと?
「あなたは何者ですか?」
思考の海におぼれ動くこともままならない俺に代わってアオバが口を開いた。
「我のことを知らずに呼び寄せたというのか? まったく、以前から人間のことを愚鈍だとは思っていたが、ここまでとはな」
声はそこで一旦言葉を切り、こう続けた
「我が名は空龍 フィル=ニエーバ。 大空をすべる偉大なる龍の長だ」
「・・・シエルは、シエルはどうなった」
空龍の言葉なんてほとんど頭に入ってこなかった。 ただひとつ、それでも聞いておくべきことがあった。
「シエル・・・ ああ、あの死んだ魂のことか。 我を呼び出す対価として食ろうたぞ。 腐っても空の一族だ、死んだものでもそれなりには美味であったぞ」
シエルを、食った? 魂を喰らうってことか?
「シエルは、戻ってくるのか?」
淡すぎた希望を吐き出す。
「戻ってくるわけがなかろう。魂を喰らったのだぞ? あの魂はもう、蘇生どころか転生すらもできんわ」
帰ってくる無慈悲な答え。
「・・・姿を現せ」
はらわたが煮え繰り返る。 それでも冷静さだけはなぜか頭の中にある。 心が熱く燃えるのと同じだけ頭は冷えていく。
「我が顕現するには贄が足りん」
空龍の声を聞くだけで心が憎悪に焼ききれそうになる。
「だったら!俺の命でも魂でも何でもくれてやるから!さっさと出てこいよ!!」
あれ?シエルを脱落させるつもりはなかったんだけど・・・ どうしてこうなった




