液体が喰らうのは
クラリイにまとわり付いた液体がランタンの光を反射してテラテラと光る様子は半透明の玉虫色と合わさりなんとも不思議で、どこか愛おしい様な狂気を感じさせた。
「な、何だこいつは!クッ、離れろ!」
クラリイは液体に身を絡めとられながらも必死にもがく、やはりあの液体はクラリイからしても気味の悪いものなのだろう。
「お、落ち着いて!俺が剥がしますから動かないで!」
アレンがクラリイを宥めつつも液体を引き剥がそうと奮闘する。しかしそれもむなしく液体はアレンの手を指の隙間からすり抜けてクラリイから離れようとしない。
何だこの液体は?魔物か?スライムの一種?それにしては力が強いしスライムに共通する弱点の核も見当たらない。 だったら・・・
「アレン!離れて! 安寧の波動よ、炎を防げ。 アンチファイア!」
スライムだったら熱には弱いはず、クラリイにまとわり付く液体生物に向けてランタンを投げつける。これで何の効果も無ければ俺にはどうすることもできない。 少なくともあの液体がクラリイから離れない限りは。
ランタンの油が引火し、炎がクラリイごと液体生物を包む。一応クラリイには炎への耐性を強める魔法を使っておいたので問題は無いと思う。
炎が晴れると液体生物はベチャリと音を立てクラリイの身体からはがれおちた。熱によって少し蒸発したのか一回り小さくなっているような気がする。
液体生物は標的を変えアレンに飛び掛るがすでに警戒していたアレンは軽く身をひねって回避する。
「力を与えた炎の怒り、ファイアショット!」
アレンが液体生物に手をかざし炎の魔法を放つ。 アレンって攻撃魔法使えたのか・・・前見たときは剣士っぽかったし、魔法剣士か。勇者の次の次くらいにはモテそうな戦闘職業だな。え?勇者の次にモテる戦闘職業? うーん、英雄とか?
アレンの炎魔法により液体生物は完全に蒸発し、消え去った。 結局アイツはなんだったんだ?
「ヒィ!? あ、アァアアアアア!?」
液体生物について脳内で整理しているとクラリイがまたもや悲鳴を上げながら背中に手を伸ばしていた。
「クラリイ!」
アレンがクラリイに駆け寄ろうとするとクラリイの背中から赤い色をした触手のようなものが伸びてアレンを弾き飛ばす。
「クラリイ!どうした!?」
思わず女性口調も忘れてクラリイに問いかける。
「血、血が・・・無くなって、ああ、嫌だ、嫌だ、死ぬ。嫌・・・い、や」
クラリイは半狂乱になりつつも俺に現状を伝えようとする。やがてその力すらも失ったのか、声も小さくなり、おとなしくなってゆく、というよりは生気を失っているといったほうが正しいか。
それにしても、血?血液か?どういうことだ?それにあの触手は・・・?
考える暇も無く今度は俺の方に触手が突き出される。どうにか避けようとするもそれは敵わず俺の軽い身体は吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。 身体が動かない、頭を打ったのだろうか。
そうしている間にもクラリイの顔は見る見る内に青白くなってゆく、先ほど言っていた通り血液を失っているのだろう。 何故だ?どうしてこうなった? クラリイの背中を注意深く観察する。ランタンの炎はすでに消え、アレンの魔法の炎ももう燃えカス程度でしかないため、唯一の光源は空に上がる月明かりのみ。そんな中クラリイの背中を見るとそこには赤く、光沢を持った半固体のドロドロとした液体がへばりついていた。
テケリ・リ テケリ・リ 鈴の音のような声が絶対的な狂気とともに鳴り渡る。
あぁ、ここはすでに狂気の世界の入り口なのだ、永劫に続く繁栄は久遠に眠る。




