一怪 毒入りスープから始める邪神生活(前編)
××月××日
なんてことない普通の神父だった私が昨晩人間を辞めていた。
まさかキリスト教に全力で反するニャルラトホテプの化身になろうとは…
昨日は普通にベットで寝ていたのだ。しかし目を覚ますと今まで見たこともない木製の床に横たわっていた。薄暗い天井の明かりを見上げ、なんとなく違和感を覚えたが、よくわからずに近くの椅子に有ったメモを読んだ。
「美味しい人間の血のスープ、調味料を足して飲んでね。暖かいうちに飲まないなら…次のスープは君だ」
このメモを見たとき、普通恐怖で凍るだろう。しかしその時私はスープを嘗めてみたのだ。
本当に血だろうか。そんなレベルの話ではない。その血を飲み干したいと体の芯が求めていたのだ。嗚呼もうそこから間違っていたのだろう。
一嘗め、もう一嘗め、ついには皿を掴んで血を飲んでしまった。鉄の味などはせず、ただ美味であった。
『ナンデコンナオイシイモノヲシラナカッタンダ?』
血を飲んで満たされた気持ちになったと同時に脱出する鍵が消えたことに気付いた。しかしメモの裏の地図に調理場があり、救済措置はあるのだなと気付いた。
調理場についた。銀の食器を見つけたが、今の私は何故かその魔除けの効果を忌避していた。それよりも目についた物がある。
鍋だ。死体が入った大きい物だった。
鍋の死体を無造作に投げ捨て、最初の部屋にあった木製のスープの皿に血を注ぎ入れた。鍋を持ち上げるとメモがあった。
「スープの調味料は品切れだ。いきなりスープ飲み干すな馬鹿」
何処から見てた?
次回中編、美しい少女と忌まわしき狩人との遭遇。 神父がニャルへと化す?