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とある少女の始まり


窓からさす光

気を震わせる小鳥の鳴き声


あさですぅ。ふわぁぁ。

二つのベッドのあるその部屋にある影は一つ。その影の持ち主は、そっと小さくあくびをもらす。寝台から腰を上げ、シーツの上に散らばった長い髪をさっと払いのける。顔を洗い目をすっきりとさせる。その後、大きなクローゼットから少女は制服を取り出した。


春である現在は中間服。

胸元にフリルの付いたブラウスの袖もとはふんわりと手首をおおう。その上から紺に金の線の入ったノースリーブワンピースを着る。V字に開かれたワンピースの肩から横隔膜程にかけてのカットは花弁のように波打つ愛らしいカット。そこから覗くフリルと襟。片襟には蘭の花の刺繍がされている。秋はオレンジとなるうすいピンクのリボンは蝶々結びに。

このお金持ち学園の中で、たった一つのワンピース形である中間服は上品でとても可愛らしいと人気がある。


夏服はたしかセーラー形で、白い上着に水色の線が入った緑のスカートだった。半袖の袖もとは立ててボタンでとめる。ネクタイは水色で、そのネクタイや袖、襟には緑の線が入っている。

少し爽やかな感じが涼しげな制服だ。


冬服はブレザー。銀のボタンの黒いブレザーに黒いスカート。これは自分でリボンかネクタイかが選べて、どちらも目の冴えるような(あか)だった。

落ち着いた静かな感じと繊細な感じが相まった制服だった。


この学園の制服は、珍しい事に季節によって型を変えた3着である。プロに描かせたらしいそのデザインは素晴らしいの一言につきるであろう。実際、制服を見てここを目指す人がいるのも倍率が高い理由の一旦となっている。


さすがお金持ちですね~。

少女はそれをどこか他人事のように思う。そしてその制服をまとい、鏡の前に立つ。


冰桜(ひお)

鏡に写った姿は、久し振りに会った懐かしい彼の暖かな呼び掛けを思い起こさせた。

この部屋は本来二人部屋であるが、人数の都合によりたまたま彼女は一人部屋を使っている。


さらりと太もも辺りまである長い髪を慣れた手付きで纏め上げ、その上から黒いヴィッグをかぶる。そしてメイク道具を取り出し、度なしカラコンの入った目の下にくまを描く。唇に青いリップを馴染ませ、血色悪く見せる。そして目には度なしのぶっといくろぶち眼鏡を掛ける。そしてメガネごと思いっきり長い前髪で隠し、輪郭も誤魔化す。鏡で姿のチェックをする。


もう少しここを...。

ブラウスを引っ張ったりぎゅっと握ったりしてシワをつくる。

この作業ももう既に彼女には慣れたものとなっていた。

OKですね。チェックかんりょーです。うぅ、お腹がぺこぺこなのです。時間...もいいぐらいです。ご飯なのです。

彼女は入り口を閉め、部屋に鍵をかける。

今日は購買にするです。

そうして今日も彼女の一日は始まる。

...私はさくら。相川さくら。


心の中でそっと言い聞かせるように、今日も彼女は呟いた。








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