生徒会side
★。゜.:銀崎 無垢 >今まで
ぼくらは始め、相川さくらという女を疑っていた。
ぼくと同い年だったその子は、新しく生徒会に入った桃愛の親友だった。
始めて会ったときは、とてもびっくりした。だって、いきなり初対面でキャーキャー騒いで訳の分からないことを言っていたから。
第一印象は地味で面倒な子。そう思った。
苦手だから近付かないって思った。
でも、次に会ったときは違っていて、それもまたびっくりした。
デザートのティラミスを食べたとき。ほわんっ、って一瞬にして雰囲気が変わって。こっちまでなんだかほわほわになるぐらいだった。ぼくはいつもより眠くなっちゃって少しうとうとしてた。いつの間にか会議も中断していたし。だから、そのあとまた雰囲気を変えて一瞬にして冷たくなったときには吃驚した。
あの時のぼくらは油断していた。相川さくらという女をバカだと侮っていたけれど、あの子は一枚も二枚も上手で、ぼくらが騙されたほどだった。
ううん。それも違う。あの子は嘘を言わなかった。ただ、雰囲気を変えて変えて変えて。したたかな面は出しつつもそれもまたおとぼけして。そうして自然のうちにぼくらを自分のペースに巻き込んでいたんだ。
気付いた時にはもう遅くて。ぼくらはあの子と約束していた。まさか、言質までとるとは思わなかったけど。でも、今までの子達と全く違った変わった子で、面白かった。
...そう言えば、北校舎で見たお化けが何となくあの子に似ていたような...気のせいかな?雷はまだあの時の美人さんが気になってるみたいだけど。あ、脱線。ごめんね?
とまあだから、そんなあの子がまさか桃愛に手を出すとは思わなかった。桃愛は元気な可愛い子だった。妹みたいって言うと、必ず無垢くんは弟って返されるからちょっとだけむっとするけど、桃愛はやっぱり妹みたいだった。
最初に、武津から相川さくらの目撃証言を聞かされたときは本当にビックリしたんだ。だって、相川さくらは生徒会室で桃愛の為にあんなことまでしていたから。
でも、佐々木春人や東堂小百合、飯島真理恵とか、他にも何名かと接触していて、その全員が怪しかったから。それに、桃愛から離れていったし、桃愛の私物をいじくるところを見たって桃愛本人から聞いたから、もう信じられなかった。
...あの子は嘘つきだったんだ。
武津でさえも、なんの意図かは分からないって言っていた。雷も彼女は掴めないって言っていた。桃愛はずっと泣いていて、すごく落ち込んでいた。水樹は何も言わなくて、ただ怒っていた。リクは信じたければ信じろって始めは言っていたけれど、途中から何も言わなくなった。
ぼくは、仲良くなれると思った子が、本当はそうじゃないんだって知って、悲しかったし怒ったしあの子に失望して自分に腹が立った。
ぼくはずっとあの子を疑い続けた。
ずっとずっと疑っていた。
...そうして、今日が来た。
★。゜.:黄々 雷 >流れ
はじめ、さくらちゃんはおどされていた。
桃愛ちゃんを逃がしたときは、どういう意図かよくわからなくて、端から見たら桃愛ちゃんが嫌いに見えた。けど、よくよく考えて見れば、あの腹黒ちゃんがわざわざオレらから逃げたいからってはるかにめんどくさそうなあっちに行くのは可笑しいでしょ?
でも、それなら今までやってきた事の説明がつかないしねー。
だからよく分かんなくて。
観察してみた...んだけど、みたけれど!なにやってんの、キミ!
脅されて怯えてて助けようかなー、って思ったら水樹とリクと琳李ちゃんとあと、途中からやってきたあの閠學学園生徒会長の弟くんが現れて、その剛力和弥くんにも止められた。
オレと武津と無垢と桃愛ちゃんはそれでも出ていこうとしたんだケド、魔王様を怒らせちゃってねー。
スクリーンを見とけって言われちゃった。
だから見てたケド...ホントなんなの!なにチャッカリ小百合ちゃん寝返らせちゃってんの。おまけにあの小声、リクの集音機で聞こえたんだケド!なんでキミが東堂の愛人知ってんのよ。ってリクまで。
「あいつ写真も音声も採集済みだぜ」
ってねー。まさかねー、ハハハ。
...あり得そうだから怖いよねー。
おまけに千酷味方につけてるし、なつかれてるし、ヘッドに勝っちゃったし。身体能力いいし、スカートの中は武器だらけだし。おまけにスタイル良かったし、ムチとガーダーベルトが...ってオレ!やめやめやめ!待って待って!オレ変態じゃないからね!
「あぁー、アレちゃんと着てたんだ。特注のかいあるな」
っておい!元凶お前かリク!
んでもリクとさくらちゃんってなんか関係あったっけ?後で聞こー。
いつの間にか、スクリーンのキミを見ていたら目が離せなくなった。清々しく暖かい空気。なぁんか誰かに似てる気もするけど、いまはいっか。
でも、ね。あの話じゃ全部は分かんないけど、もしキミのやったことがホントなら、これだけは言えるよ。
――優しすぎだよ、さくらちゃん。
★。゜.:藍沢 水樹 >苦悩
彼女があそこまでする子だとは、思っていませんでした。守るために...彼女はそう言っていた。
私は浮かれていたのかもしれません。生徒会室の中だけでも側にいることが出来て、見ている事が出来て。
でもだからこそこれは起こってしまったのかもしれません。正直に言うとすれば、私は彼女の行動に気がついていました。ですが、なにもしなかった。そう、彼女自身に...何もするなと頼まれたことも有りますが、私がなにも行動せずにいたのは個人的私情からでしょう。
ですがもう私は、今更引き返す事ができません。もう私は...いえ。私達は、後戻り出来ないのです。
★。゜.:赤城武津 >感情
俺達は、相川さくらという人物を勘違いしていたのかもしれない。
話を聞いて、更に分からなくなった。いや、それは違うか。俺は怒っているんだ、不甲斐ない自分に。そして、何も言わないどころか嫌われるのが都合いい等とぬかす相川に。
勝手だって俺でも分かるな。だが、少なからずとも俺は相川を気に入っていた。それなのに関わるなやら嫌われるのが都合いいやら。一応これでも俺達モテるんだけどな。プライドもなにもあったもんじゃない。おまけに桃愛のいじめの原因ってまごうことなく俺達だよな?考えて見れば相川は俺達に興味を抱いていなかった。
確かにこれじゃあ後輩に尻拭いさせる先輩だな。
都合よかろうがなんだろうが俺は...話が聞きたい。直接にだ。あれだけじゃ足りん。それに、リクとさくらの関係も怪しいし、事故に遭い運動が出来ないらしいさくらがあんなにも動いているのは可笑しい。
また、あれほどの頭脳がありながらなんでこんなまわりくどいことをしているのやらさっぱりだ。
おまけに東堂どころか飯島まで救いやがったぞ。流石に俺達はそこまで調べがつかなかったんだが。いったいどこで情報を得ているのやら。というよりも、お前は誰なんだろうな。
だが...くくくっ、面白い。
お前にとって俺は近付いてほしくなどないかも知れんが...俺をサドだと言ったのはお前だぞ?さくら。




