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ティラミスはほろ苦い


さくらです。はいです。あの後面倒だったので、ナニコレヨクワカンナーイ、うちゅうごー?って感じで、メニュー表をめくり、う~っ、とうなる。

「はぁ。今日のオススメでも頼みましょうか?」

すると、見かねた藍先輩が心底呆れたように言った。

「ごめんなさいです。あいにくレストランには行ったことがないのです。だから、よく分からないのですよ」

「だから、先程から忙しく辺りを見回していたんですね。これを言い出したのは私です。どうせ今日は栗原さんの分も払うつもりでしたし、貴女の分も私が払いましょう。分からないようでしたら、勝手に頼みます。異論はないですか?」

淡々とした口調で藍先輩が言う。

「そんな、わ、私払います」

と、桃ちゃんが言うが、

「招いたのはこちらですので。今日くらいはどうぞ食事をお楽しみ下さい」

と、さらりとかわす。

「私はいいです。メニューだけお願いするです。お金は...」

「こっちが招いたんだし、甘えちゃいなよ。なんならオレがもつよ?」

チャ~ラ~黄ィ。絶対今のわざとなのですよねぇ。そんなバカですよ~って演技したって騙されないのですからね。

「いえ、代金は...」

「お支払いしましょう。良いですね?」

「...はいです」

大魔王君臨です。その笑顔は、なにやら黒いモノが純度を保って出来ていやしませんか?

「それでは、本日のオススメメニューにデザートは...そうですね。ティラミスでも付けましょうか?」


ぴくっ


いっけないいけない。思わず体を動かしてしまったのです。

「栗原さんはお決まりのようですね」

藍先輩が注文する。


それから少しして皿が運ばれてきた。

キラキラキラキラ光輝く食事たち。美味しそうなのです。

ですが、これまた勝負のみせどころ。

どうすればいいのかわかんなぁい。これどうやって食べるの~?と言った感じで視線をさ迷わせ、目の前の人物にはっと目を止めると、それをちらちら目の見えない顔で盗み見ながら、もたもたと不器用に食事をとり、緊張で上手く飲み込めませ~んみたいなフリをする。(もぐもぐ、ごくん)

あ。結構おいしいのです~。さすが清蘭のシェフがが作っただけあるですねぇ。


っと、ここまではいいのです。問題はここからでした。

食事を下げた後、代わりに上がってきたティラミス。そう、あのティラミス!口にはこぶと、ふわり、とはだけていくようなスポンジ。とろりとした甘いソースが味覚を刺激し、すこしほろ苦いパウダーがコーヒーの香りとともにひろがる。

美味しい...。

ほわんっ、ほわん。

和みますぅ。紅茶を口にはこび、少しほわわんとする。幸せですぅ。

「さくちゃん...かわいいっ」

ポツリ、と桃ちゃんが呟く。

ふみゃぁ。いつの間にかしーんってしてたです。先程までやっていたはずの打ち合わせもいつの間にか終わっていたようなのです。

おまけに和んでいて、近づくんじゃねーよオーラ出すの忘れていたのです。失敗しちゃったのです。

「君ってティラミス好きなの?」

うぐっ。

「べ、べつに嫌いじゃなくもないってだけなのです。す、好きとかじゃないのですからね?」

つっかえながらも答えると、今度は小さく笑う声が聞こえた。誰だっ...って、銀くん?珍しいですね、笑うの。初めて見たですよ。でもそれぐらいじゃほだされないのです。

「笑わないで下さいです」

「くすくす。ごめん。あんなに...違うのに...、分かり...やすい」

「ひとのことを笑うなんて失礼にあたるのですよ」

お前が言うな!とかのツッコミは結構なのです。

いつの間にか場が和んでいたその時。

「くくくっ、お前...キャラ違いすぎやしないか?」

面白がる声が聞こえた。

あ、私いつの間に生徒会と交流なんかしてたのですか?ヤバいです。これは多分。...ごまかすっきゃないですかね。となると、どうせですからあれも持ち込むですかね。でも、その前に。

「桃ちゃん桃ちゃん、私少し気分が悪いので、こちらで少し休ませて貰ってから来るですね。もうすぐ鐘がなるので伝えてもらってもいいです? 」

「うん、いいよ。大丈夫?さくちゃん」

「大丈夫なのです。先輩方もよろしいです?」

「ああ」

「武津っ。彼女は少し前に...」

「水樹、お前は悪感情を表に出しすぎだ。抑えろ」

「...分かりました。ですが、何かあった場合はただちに...」

「分かっている。気分がすぐれないのだろう?暫く休ませておこう。栗原は教室に戻っておけ。遅刻するぞ」

「でも...」

「急いだ方がいいですよ、桃ちゃん。次の授業は山田先生なのです。遅刻したらペナルティが怖いのですよ」

「え、大変!さくちゃん、安静にしててね。じゃあね。藍沢先生、ごちそう様でした」

ぺこり、と頭を下げて去って行く桃ちゃん。

はぁ、とひとつ溜め息をつく。

「皆さんの五時限目貰うですね。取引しましょう」

「君っ!」

「いいだろう。ただし、それ相応の内容ならばだがな」

にやりと笑う赤会長。

「生徒会の皆様にも関係はあるです。大人しく聞いてくださったほうがいいと思うのです」

「くくっ、いいだろう。その前にまず、聞いていいか?」

ああ、気持ちの悪い雰囲気。

「それで?食事マナーにどもるそぶりを見せたわりに妙に食べ方の綺麗なお前は、何者だ?」

狩られる側は誰なのでしょうか。




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