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お昼訪問と彼女の失態


キーンコーン カーンコーン


読者の皆様こんにちはです。桃ちゃんが生徒会に入って一週間程たった今日この頃。やっとやたらと長い授業が終わり、お昼休みになったのです。

うぅっ。ペコペコですぅ。


タッタッタ ぴょこんっ


ありゃりゃ、可愛いうさぎさん出現なのです。

そこへうさぎが飛んで出て~♪みたいな感じですかねぇ。

「さくちゃんっ。一緒にご飯食べよー」

自分から誘ってくれる桃ちゃん。可愛いですぅ。

ですが桃ちゃん、知ってるですか?跳んできたうさぎさんは転んでしまうのですよ?

「桃ちゃん、ありがとうなのです。でも...」

無表情のままくいっと廊下の方に親指を向ける。

ぴくり、と震える桃ちゃん。

「さぁっさとおとなしく、見目麗しき書類整理役員どもに連行されていくです」

くいっと指差された先の廊下にて、素晴らしき人だかりと悲鳴に近いほどの歓声が響きわたっていた。

「でもぉ。だって私はさくちゃんと食べたいんだもん」

「こればかりはどうしようもねんです。大人しく行きやがれです。無駄な抵抗はやめた方が良いのです」

「そんなぁ...」


事は、昨日のお昼休みから始まったのでした。


「さくらちゃん、お腹すいたね~」

4時限目終了後、たったとこちらに駆け付けてくる桃ちゃん。可愛いですぅ。

「です。お腹ペコペコなのです。桃ちゃんは今日はどうす...」

るです?と続けようとした言葉を途中で呑み込む。

なぜ、ですってか。そんなの決まっているのです。何せ女子のキャーキャーキャーキャー何がそんな可笑しくて(わめ)いているです?と言いたくなるような声と共に、素晴らしくキラキラしい学園のアイドル、麗しの美形様達が扉の前にいらっしゃいましたのですから。

うわー、らっきー(ぼうよみ)。

さて、なんで来たのですかね。反対は出なかったのでしょうか。でもです、大体そーぞーつくのですよ、なんで来たかなんてっ!

「栗原桃愛ちゃんいる~?」

やっぱりです。

はあぁぁ。ベターに頑張ってるですね、ヒロインは。

ううっ。折角の桃ちゃんと過ごせる幸せの一時でしたのに。

まぁ良いのです。美顔は好きですし、美形の並ぶ姿を見るのが大好きな私は、喜んで送り出すですよー。

ちょこっとだけ寂しいですけど、眼福には変えられねんです。前・妹は攻略対象者どもの性格は良いと言っていました。調べた限りでもほの暗い事は、なかったのです。まぁ、ヤクザ関係者も居はするですが、あのひとは大丈夫なのです。願わくば桃ちゃんと誰かのツーショットの為に。一肌脱いでやるですか、わたし。

「桃ちゃん、呼ばれているのですよ~」

「あ、ほんとだぁ。どーしたのかなぁ、先輩達」

そりゃー勿論貴女と...

「あー、いたいたぁ。ねぇねぇ、桃愛ちゃん。一緒にご飯食べない?」

ですよねぇ。やっぱりそうですかぁ。お約束テンプレなのですよ。

ヒロインちゃん?ちらちらこちらに困ったカオを向けるでないですよ。

「ごめんなさい。私はお昼ご飯はさくらちゃんと...」

「桃ちゃん、お昼ご飯は先輩方と(しょく)し...食べて下さいです。部外者は去った方が良いですよねぇ、銀崎様」

馴れ馴れしくすると他の者どもがうざったいしなぁ。てか、同級生に様付けする意味ってあるのですかね。なるたけ嫌わせておきたいのですがこいつらのお陰で注目のまと状態の今に、あんなウザ子やったらこれから先やりづらいですし、いびられる可能性も出てくるのです。そんなのはやーなのですよ。折角いま、忘れられたクラスメート、命名貞子やってるのですから。


「...生徒会...の、交流..。水樹、が、やり...たいって」


え?あの...藍先輩が?冷徹なる魔王やら裏切りの微笑やらと言われ、妹にまでこの人他人に興味ないから攻略ムズい~!と言われた彼が!これはまさか脈アリなのですか?脈アリというのですか、桃ちゃんに!

もしもそうだとすれば、大切な人に大切な人が出来るかもしれないな、という寂しさと共に、ほんの少しだけ喜びがわいてくる。腹黒癒し系と小動物ロリ系の組合わせ...なんて素晴らしいのですか。となれば私、もしそうであるならば協力は惜しみません。この二人のカップリングは私にとってとても嬉しいものになるはずなのです。目には。

でも、やっぱりゲーム効果でもなんでももしそうなるというならば、ちょっとだけ、ほの暗い気持ちを持っても許して下さいですよ、桃ちゃん。

覚悟なら、思い出したその時から固めようとしていたのですから。それが彼の為になるならば。


でもまずはゆっくりと確認から。勝手な事をすれば

藍先輩みたいな性格の人は怒りそうなのです。

人から逃げるために身につけた私の空気をよむ能力と洞察力だけは普通の人以上にはあるですからね。それぐらいはこの短期間でも知ることぐらい出来るのです。んじゃまあまずは、思考を切って桃ちゃん連行の手助けをするですかね。


「交流だそうなのですよ、どうぞ行って来て下さいです。大切な事なのですよ?」

ありゃありゃ。今頃なのですか?先程も喋ったですのに、今頃私の存在に気付いて驚かないで下さいです。確かに桃ちゃんと比べるてしまえば、空気人間なのですが。

げっ!みたいな表情で美形に見られると、流石の私でもメンタルずたぼろなのですよ?


まあそれでもにやり、と笑ってしまいそうになるのは仕方のないことです。思わず笑ってしまいそうですねー、コレは。あそこまでしたのです。騙されていなければ逆に可笑しいですかね、ふふふ。

性格悪い、です?

とっくの昔に自覚済みです。

それでも楽しいんですし、害はないんだからいいんじゃありませんか、ねえ。ふふ。楽しいのです。まあ人いる前で笑いはしねんですけど。

貞子が笑っても怖いだけでしょうしねぇ、くすくす。


「私は栗原さんも交えて食べられればどのような形であろうと構いませんが?」

突然、不穏な空気を交えて藍先輩がいい放つ。

微笑が何処か黒いのはデフォルトですか?そうですか。


あっ!

その言葉に何を思ったのか。それまでへにょっと眉をさげていた明らかに困ってます風情の桃ちゃんが突然さけんだ。

パパァっと顔が一気に明るくなる。

ちょぉっと、いえ、かぁなぁり、いやぁな予感がするですよ?あれぇ?


「先輩っ!さくらちゃんも一緒でいいですか?」

だめですっ!いやです、ヤです。嫌なのです。

なにを言ってるのですかっ。

「桃愛ちゃん、それは...」

ほらっ。書類役員どもも困ってるです。ワガママいっちゃなんねぇんですよ、桃ちゃん。

「はぁ。」

溜め息をつく赤会長。

よしっ。誰かどうにか止めてくださいです。

「もういいだろう。そこの、お前もこい」

「は?」

「らちがあかん。この際面倒だし、お前もこい。ただし大人しくしておけ」

「あの、私は...」

「昼食代はこっちでもつ。食堂に行ったこともないのだろう?いい機会だと思っておけ。ほら、いくぞ」

「あのぉ、拒否権は...」

「...多分ないと思うよー」

「です...かぁ」

「...しずかに...してよね」

嫌そうに顔を歪める銀くん。

からかいがいがありそうです。

それにしても先日の怪しい女の正体に二人とも気付いていないようです。良かったです。

「承諾しかねるです。この後何があるか知んねんです。不審者見ても黙って突っ立っとけ言われても困るのです」

「けほっ、こほっ、き、君面白いね。なんか前と違う気もするけど。こほっこほ」

ポツリと呟いた言葉は近くにいた二人に届いたようで黄先輩は笑いだし、銀くんはぽかぁんと、目を見開いている。

なんかいらぁっとくるですねぇ。前と違うというセリフにドキッとしながらも思う。

「美形様は観賞用なのです。実際あんたらが私を巻き込んだ事で平穏な日常が危機にさしかかってんです。わかったら近寄んなです」

「ぶふぁっ。し、辛辣だね~。」

「マゾですか、そうなのですか?気味悪いです。第一そう思うなら今のうちかかわんねー方がいんです。今すぐ立ち去らせろです」

「ムリだね、多分。あきらめよ」

はぁ、思わず溜め息を吐いても仕方ねんですよ。

「黄々、余りそこの方としゃべらないほうが良いですよ?(けが)れます」

ふぐっ。ぷ、くすくす、ぷくくっ。

あんまりな言葉に思わず笑ってしまいそうになり、声を抑えてひっくひっくしていると、泣いてるとでも思ったですか

「...水樹、さすがに...それは...言い過ぎ」

という銀くん。

「お前らいい加減いくぞ。食事をとらぬ気か」

赤会長の一言で、皆は歩き始める。

きゅっと左手に暖かな温度を感じれば、にっこり笑って手を握りしめる桃ちゃん。

はあぁぁ。

なぜ、私はこうなっているのやら。


彼女は気付かない。

あの辛辣な言葉達が彼ら...無垢と雷に彼女を嫌わせるどころか逆に興味を持たせてしまったことを。

そしてまた、武津のあのことばを聞いた彼女が武津を睨んだことを、武津自身が気付いたことを。

彼女は知らない。

それはきっと、今までの過去があったためなのだろうか。

彼女は(うと)い。

相手から与えられる好意に。


歯車は、今なお歪み、そしてまた回りつづける。



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