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第五話 森を進め。ついでに野蛮人ルートも直進中

魔法についての説明ご入ります。

使い方ではなく作り方ですが。


改稿作業終了


話の流れ、というか主人公の境遇が、ガラッと変わってきたなぁ……。

上記の魔法? 無えよ。

「……これで打ち止めか?」


最後に残ったデュラハンを殴り飛ばし、辺りを見渡す。

既に魔法陣は沈黙しており、オカワリが出てくる様子は無い。

結果として中々の量のアンデッドを仕留め、馬鹿げた量の経験値を獲得する事に成功した。

その半分は身体能力、主に敏捷、筋力、耐久性を強化するのに使用。4分の1をなんとなく魔力方面の強化に。残りの4分の1は貯蓄する事にした。

貯蓄に関しては、実験の意味合いが強い。出来れば良し、減り始めたら即座に使用しようと思う。ただ、貯蓄しておく事が出来れば、ピンチになっても後出しで強くなる事が出来るので、出来て欲しいところだ。

まあ、強さに関してはかなり極まっている気がするので、ピンチになるような状況があるのかは不明である。


「一応、マルト神聖王国の騎士なら、何人いても鎧袖一触なぐらい強くなってる筈だが」


現状で最も敵対的な勢力であるマルト神聖王国を基準にしても、多分相手にならないと思う。

あの時の団長曰く、騎士団でも高位アンデッド一体に苦戦するというし、秒間数十単位で増殖する高位アンデッドの軍団を一蹴出来れば大丈夫だろう。

警戒するとしたら搦手の類だが、それはもう手を出されてからじゃないと対処出来ないし。イジメすら耐え凌ぐしかしなかった俺に、そんなスキルを求められても困るわ。

まあ、搦手すらゴリ押しでなんとかなりそうだし、別に良いか。辺り一面が瓦礫の山になるだろうが、それは仕掛けてきた方が悪いって事で。


「……いや違えよ。別に荒事を起こしたい訳じゃねえんだよ」


危ねぇ。色々と吹っ切れたせいで、思考が好戦的というか、野蛮人よりになってる。ちょっと落ち着こう。

取り敢えず、マルト神聖王国と勇者達には関わらない。少なくとも俺の方から関わるのは止める。ただでさえ胸糞悪い連中が多いのだ。絡まれたりしたら、手加減出来る気がしない。そしたら皆殺しからの全面戦争ルート一直線だ。それは不味い。

人間社会は鬱陶しいものが多いが、それと同じぐらい便利でもあるのだ。距離を置くとかなら全然いいが、完全退場はちと困る。美味い飯とか普通に食べたいし。


「……まあ、そういうのは地上に出てからだな」


思考を切り替えよう。

大抵の事なら腕っ節でなんとかなるだろうし、今は不確定な未来よりも目先の現実だ。


「何処なんだろな此処?」


目先の現実。即ち現在位置が全く分からない。

この場所に来たのがまずイレギュラーだし、その方法も罠による強制転移。そして罠の詳細は一切不明となれば、この場所が何処なのか見当もつかない。唯一分かっているのは、【試みの迷宮】の50階層より下って事だ。

これで地上に出るのは骨が折れるぞと思いながら、辺りを見回す。

そこで気付いた。


「……これ、地上に出る以前に、まず部屋から脱出すら出来ねぇんじゃねえの?」


この部屋、出入り口が無いわ。

もう一度皆見回してみても、やはり無い。


「ここの出入り口は魔法陣だけだったのか……」


中々に嫌な現実が見えてきた。

このモンスターハウスの殺意の高さから考えても、これが妥当だろう。モンスターが部屋の外に出ないように且つ、罠に掛かった者の逃げ道を限定させる魂胆だと思われる。

あんな分かりやすいトラップの癖に、内容は本当にえげつないな。


「一応、隠し扉の類は探してみるか」


念の為という事で、他の出入り口がないか辺りを散策して見る。

だが、やはり隠し扉らしき物等存在しなかった。

さて。これで手詰まりである。


「しゃーない。ぶち抜くか」


正攻法では餓死する未来しか見えないので、ダンジョン攻略としては邪道である壁破りを決断する。

取り敢えず、壁を軽く叩いて固さをチェック。


「……いけそうだな」


叩いた感触から、固くはあるが壊せなくはないと結論を出す。


「あとは、壁の向こうがどうなってるかだけど……」


流石にそれは破ってみるか分からないか。

唯一の不安要素に関しては、棚上げするしか無さそうだ。


「んじゃ、南無三!」


ドゴォン!


特に何もありませんようにと祈りながら、壁を殴ってぶち抜いた。

そこそこの力を込める必要があったが、無事人が通れるぐらいの穴が開く。

その穴を覗き、外の安全を確認する。


「………ほへー」


少し間の抜けた声が出てしまったが、それもしょうがない。

なんと部屋の外は、今まで攻略していた上層のラビリンスのような環境からうって変わり、広大な森林が広がっていたのだ


「話には聞いていたけど、実際に見ると圧巻だな」


ダンジョン、特に大型のものには、階層が変わるとガラッと環境の変わるものもあるという。

100層はあるのではと予想されていた【試みの迷宮】もこれに当てはまったようで、環境が一変していた。

モンスターハウスがあったのが高台だったらしく、当たり一面を確認する事が出来たが、これは凄い。

広大な森林と、脈のように流れる幾つも川。身体能力の強化によって跳ね上がった視力をもってしても、目を凝らさければ確認出来ない程の高さにある天井。しかも何か柔らかい光を放っている。……あれは……蔦か? どうも発光する蔦が天井をびっしりと覆っていて、それが光源の役割を果たしているらしい。


「……これはもう小さな世界だな」


天井も確認出来るので、一応ダンジョンの中ではあるのだろう。だが、この生態系が確実に存在しているであろう環境を見ると、ダンジョンの中という実感があまり湧かない。

なんというか、改めて異世界の凄まじさを感じた。何だよダンジョンって。ヤバ過ぎるだろう。

色々な疑問が沸き起こってくるが、確実に言える事が一つ。


「壁破りの類は基本やらない方が良いか……」


この攻略法は封印だ。壁や床、天井は破壊しない方が良いという事を実感した。

今回は森林エリアだったが、ダンジョンによっては海だったり火山だったりするらしい。横着して床や天井をぶち抜いて、海水や溶岩が流れ込んできたら目も当てられない。

同じ階層内であっても同じだ。モンスターハウスや毒ガス部屋等、トラップルームの類も大量にある。そんな厄介な所を掘り当てる可能性がある以上、やはりやるべきではないだろう。

今回みたいな餓死ルート一直線の状況なら兎も角、そんな事は早々起きないだろうし。


「ただそうなると、ここから階段を探す事になるんだよなぁ……」


眼下に広がる大森林。鑑賞するにはもってこいな程に雄大な景色だが、探し物をするとなると途端に憂鬱になってくる。

縦横数メートル程度の穴を、この樹海じみたエリアで見つけ出さなくてはならないのだ。


「……一応、上層に上がる階段の場所は目星がついてる。ただ問題は、上に行くより下に行った方が良さげなんだよなぁ」


特に天井に達している部分は見当たらないので、普通に考えれば上層に繋がる階段は壁沿いの何処かという事になる。

ただ、今の状況だと上に進むのが脱出の近道だと断言出来ない。

まず前提として、ダンジョンから脱出する手段は2つある。素直に来た道を戻っていく方法と、最下層にある入口に繋がる転移陣を使用する方法だ。

普通に考えれば来た道を戻る方法、つまり上層に登っていく方が何かと楽だ。ダンジョンの難易度、モンスターの強さや罠の凶悪さは階層に比例する。帰ろうとするのに、わざわざ難易度の高い方を選ぶ意味も無いだろう。

が、俺の置かれた状況は特殊。まずダンジョンの難易度はあまり関係が無い。経験値を消費すれば、その場その場で強くなる事が出来る俺にとって、モンスターの強さはそこまで問題にならない。罠に関しては知識が無いから何も言えないが、そもそも発見も解除出来ないのでどうしようも無い。凶悪さが上下しても変わらねえというのが本音だ。

そしてこれが一番大きな理由だが、戻るより進んだ方が早い可能性があるのだ。俺のいる階層は不明だが、デュラハンやリッチーの湧き出るトラップがある以上、相当深い場所にいるのは確かだろう。そもそも、あの時の騎士達はデュラハンやリッチーが湧く可能性すら思い当たっていなかった。それはつまり、此処が情報の存在していない未到達階層であるという事である。このダンジョンは推定100層で、70階層まではマッピング済み。最深部が100層である可能性は無いが、少なくとも深度5割は越していると考えていい。

深度がそれ以上の場合はどうするのだと思うかもしれないが、【極点】と呼ばれる世界最大規模のダンジョンの1つにして、唯一攻略されているダンジョン【神の宝物殿】の階層が215。攻略したのが実在の英雄達で、その功績をもって【神の宝物殿】の周囲に街を造り、迷宮都市として現在も運営されている事も考えると、この情報の確度は高い。

故に、深度5割以上というのは、見立てとして間違っていない筈だ。このダンジョンが極点以上でも無い限り。


「……何か盛大なフラグを立てた気がするぞ……?」


いやいや、流石にそれはないだろう。

不穏な気配は無視だ無視。それより今は攻略の方針だ。


「えーと、まず下行きの階段を探すか。情報が一切無い以上、難易度よりも優先すべきは階層の少なさだ。彷徨う回数は少ない方が良い」


取り敢えず、進む方向は下に決める。

ダンジョン攻略において、深度が5割以上であっても来た道を戻って脱出するのは、難易度の高さもそうだが、それ以上に既知の階層であるからというのが大きい。

だが俺の場合、この階層には強制転移で来たため、上の階層の情報が一切無い。つまりどっちに進もうが彷徨う事になる。だったら上も下も変わらない。


「後は食料の確保かなぁ……」


ある意味で脱出以上に優先度の高い、それこそ生存に直結する問題に、どうしたものかと頭を抱える。

一応、大森林エリアという事で食料の確保は問題なく行えるだろうが、それだけじゃあ駄目なんだ。肉や魚は捌かないといけないし、植物の類は見つけられるか分からない。というかそれ以上に、肉にしろ魚にしろ植物にしろ、食べられるかの判断もつかない。食べたら毒有りましたとか洒落にならん。強化された肉体的には、毒があってもいけるかもしれないが、だからといって毒有りを食べたいとは思えない。絶対不味いだろうし。

かと言って、何も食べないなんて選択肢は無い。それはもう餓死ルート一直線だ。だから、どんなに怖くとも、覚悟を決めて食べなければならない。


「でもこの問題、ダンジョン攻略中はずっとついて回る……」


そういう意味でも、早急にダンジョンから脱出したい。食事ぐらい安心して食べたいし、何より美味い物が食べたい。俺の料理スキル(現実的な方)は皆無だ。調理器具も調味料も無い状況では、雑な丸焼きか決死の生食ぐらいしか出来ない。

そんなの明らかに野蛮人である。確かに人間社会を煩わしいとは思っているが、だからと言って文明を全て捨てるつもりは無い。世捨て人とかには惹かれるものがあるが、文明を捨てた野蛮人ルートはお断りだ。


「最低限でも良いから、文明的な飯が食えるようになりたい……」


切実に望む。というか、これを望まなくなったら終わりでは無いのだろうか?

ヤバいな。やはりダンジョン攻略は急務だ。人間性が残っているうちに脱出しなくては。

そんな訳で、俺のたった一人のダンジョン攻略は、嫌な想像と共に始まった。

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