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第四十二 盗賊襲撃

久々の戦闘描写があります。文が稚拙だったらすいません。

誤字脱字があるかも。


「あの洞窟がそうか」


レインコートの付属効果である透過を使いながら、木の上からコオリは眼下にある洞窟に視線を向けていた。

この場所まで移動するのに掛かった時間は十分も無い。《揺らぎのレインコート》によって人目を憚る必要が無く、能力を制限しないで移動したからだ。


「総数五十四。見張りはあの二人だけ。後は中みたいだな。一箇所だけ三十ぐらいの人間が固まってるみたいだし、そこが居住スペースか?他の奴等は散漫としてるから恐らく見回りだろう。居住スペースの奥に隔離されてるのが居るみたいだけど、被害者か?」


探知系スキルによって盗賊の人数と位置を割り出し、洞窟の広さと内部構造を把握する。


「………ある程度は情報も揃ったな。それじゃあ始めるか」


透過を解除しながら飛び降りる。透過する為に魔力を流すという性質上、敵方に魔法使いがいると感知される恐れがあるからだ。見張りの二人は魔力を感知する技能を持っていない様だが、中の人間がそれを出来ないとは限らない。察知される可能性は少ない方が良い。別に察知された所でどうという事は無いが、奇襲の方が色々と雰囲気が出る。


「ん?」


見張りの一人がコオリに気付く。もう一人もそれに続いて遅れながら武器を構える。


「おい何だよアレ?人か?」

「いや、魔物じゃないか?」


警戒を露わにしながら、見張りの二人は互いに目の前の人型について疑問を口に出す。

彼等の疑問ももっともだろう。コオリはレインコートの効果でまともに認識する事が出来ない。彼等からすれば、コオリはもやが掛かった人型に見えている。しかも所々で靄にノイズが入って僅かに姿形が変化する為、徐々に彼等の記憶とズレていく。

これこそが《揺らぎのレインコート》の認識阻害。見えてる筈なのに分からない、隠者の衣服。


「一応は聞いておく。アンタ達は盗賊か?」


ほぼ確定している事だが、それでもコオリは確認の為に見張りに問う。

しかし、見張りからの答えは無い。返ってきたのは罵声と武器の鋒だった。


「テメエ、何処の者だ?冒険者か?」

「どっちにしろ、この場所を知られたからには帰す訳にはいかねえ。殺して身包み剥いでやらぁ!」


声を聞いてコオリが人間だと分かったのだろう。見張り達は威勢良く武器を構えてくるが、コオリは動じる事無く淡々と言った。


「分かり易くて助かるよ。けど、これ以上騒がれても困るし、さっさと死んでくれ」


ショートソードをだらりと下げ、ゆらゆらと幽鬼の様にコオリは歩く。相手の呼吸に合わせ、緩急をつけて相手の虚につけ込んで移動する。その歩みはとても緩慢であったが、見張りの二人は反応出来ず、コオリの姿を見失う。

そして、見張りの二人がショートソードの間合いに入った瞬間、トスッ、トスッと二回剣を突き立て二人の急所を貫き、音も出さずに絶命させた。


「悪いな。アンタ達の仲間に気付かれると面倒なんだ」


剣についた血を払いながら、コオリは悠然と歩き出す。

洞窟という環境上、コオリが全力を出す事は出来ない。下手に力を振るえば、それだけで崩落の危険がある。流石にコオリとしても生き埋めは御免被る。

だからこそ静かに移動し、出来る限り盗賊達の数を減らす。最低でも、居住スペースに居る盗賊達以外は始末しておきたい。戦ってる最中にぞろぞろ来られるのはコオリとしても面倒だし、逆に逃げられる可能性も高いからだ。


「一番近いのはこの先を右に曲がった所か」


自分に最も近い位置に居る見張りを索敵で探し、出来る限り音を出さない様に小走りで移動を始めた。


《暗歩を獲得しました》


すると、コオリの頭の中でそんな音が響く。ダンジョンから出て以来初の新スキルを獲得したのだ。


「暗歩ね。………なるほど、スニーク系のスキルか。今の状況にはおあつらえ向きのスキルだな」


コオリが新たに獲得したスキル《暗歩》。それはスキルの発動中、行動する際に出る音が小さくなるというスキルだった。

本来だったらスキルレベル1ではその効果は微々たるものだが、【革命】によってスキルレベルが反転した《暗歩》は、コオリを完全な無音での行動を可能とさせた。

普段なら僅かに聞こえる呼吸音も、地面を踏みしめ移動する際の足音も、果てには衣擦れの音までもが消失する。


「見えた」


見張りが視界に入った瞬間、コオリはひらりと空を舞った。洞窟とは言っても、その大きさはかなりある。その分天井も高く、人の頭上を通過するのは容易かった。そのまま音も無く相手の死角に着地して、剣で頭蓋を貫き殺す。


「先ずは一人」


音を立てない様にゆっくりと死体を横たえ、返り血を浴びない様に注意しながらコオリは突き立てた剣を引き抜く。大量の血液が溢れ出すが、それはコオリの体に付着する事は無かった。

そして更に進む。気付かれる事無く、返り血すら浴びる事無く、次々に見張りを殺していく。時にぬらりと忍び寄り、時にひらりと空を舞う、壁を使って飛び回り、天井すらも駆け抜けた。

気付けば、見張りは眼下の男ただ一人。その男も眠そうに欠伸をしているだけで、見張りをしていた仲間が全て殺されている事に気づいてる様子は無い。


「ラスト一人」


天井から蝙蝠の様にぶら下がっていたコオリは、《壁走り》のスキルを解除して眼下の男目掛けて落下する。

音も無く、姿も無く、気配も無い死神が、仕上げとばかりに仕留めに入る。


「ッ!?」


欠伸をする為に上を向いた男の瞳が驚愕で見開かれるが、声を上げるよりも早くにコオリの剣が男の首を切り飛ばした。


「………見張りは全滅。後は居住スペースの奴等か」


今だに相手の動きが無い事を見れば、恐らくまだ盗賊達はコオリに気付いていない。だったら早々に終わらせようと決め、居住スペースと思われる空間に向かう。


「ここか」


簡素な扉を前にして、コオリは一先ず中の様子を探ってみる。上手くいけば、ここ最近の物騒な理由を知れるかもしれないからだ。

中を探ってみた所、盗賊達は二つに分かれていた。眠っている輩と騒いでる輩である。


「へへ。最近は大漁っすね頭!」

「当たりめえよ。誰がこの団を率いてると思ってんだ?この俺、剛腕のラッシア様だぞ!!」

「やっぱり頭は頼もしいぜ!」

「「「ヒューヒュー!」」」


(………盗賊ってバカばっかなのか?)


宴会らしきものしていた盗賊達を見て、コオリが感じたのは呆れであった。言動といい行動といい、何ともお気楽な奴等だとコオリは思う。これは得るモノは無いなと思い、殲滅する為にドアを開けようとした所で


「何より今は稼ぎが良い!人を攫えばどんどん売れていくからな!まったく、良い取り引き先が見つかったもんだぜ!」


興味深い話題となったので動きを止めた。


「若けれりゃガキでも男女問わず買い取ってくれるし、生娘だったらしっかり色付けてくれんだ!更に色々と便宜を図ってくれるなんたあ、俺の運も向いてきたぁぜ!」

「………でも頭、やっぱり変じゃないですかい?そりゃあ、俺達全員が食いっぱぐれないのは奴等のおかげですけど………」

「良いんだよ。俺達は攫って、向こうは買う。下手な詮索なんて必要無え。金が入れば充分だ」

「で、でも、流石にあの狂」

「おい、そろそろ五月蝿い。もう少し静かにしてくれ」

「あ、いや、悪りい………」


賊の一人が後ろ盾の話題を話そうとした所で、眠っていた盗賊の一人が静かに苦情を言う。すると、そいつはきまりが悪そうに頭を下げてしまい、それ以上その話は続かなかった。


(ッチ。もう少しで黒幕みたいなのを聞き出せそうだったのに。タイミング悪いなあ。………いや、別に良いか。目的はあくまでこの盗賊達に攫われた人達の救出だ。黒幕云々は知らん)


これ以上の被害が出ない様に纏めて叩き潰すという選択肢はコオリの中には存在しない。今回動いたのだって、『知ったから』動いたのだ。偶然に攫われた人達がいると知り、それを見て見ぬ振りをするのはコオリとしても寝覚めが悪い。だが、それだけだ。わざわざ黒幕まで潰す程コオリにボランティア精神は無い。悪即斬をする程に正義感も高く無い。決まりが悪いからやった、それだけなのだ。


「さて、もう隠れる必要も無いし、直ぐに終わらせるか」


既に残りの盗賊達は居住スペースにいる奴等だけ。ここまで行けば回りくどい方法で殺す必要も無い。やり過ぎない程度に蹂躙すれば良いのだから。


「ゴメン下さーい!!!」


馬鹿にした様なセリフと共にコオリは扉を蹴破った。コオリとしては数人を巻き添えに扉が吹っ飛んでくれれば良かったのだが、簡素な分脆かったのか、それとも蹴りの威力が強過ぎたのか、蹴りを入れた扉は粉々に砕け散ってしまった。


「うおっ!?」

「何だなんだ!?」

「襲撃だ!見張りは何をやってやがる!!」


突然の爆音と、黒い靄の人型が侵入してきた事に盗賊達は慌てふためく。


「見張りだったら全滅させた。だからそう責めてやるなよ」

「何だと!?」


ラッシアと名乗っていた盗賊が驚愕の声を上げるが、コオリはそれを無視して近くいた三人を切り捨てた。


「クソっ!一体何者だテメエ!ギルドの差し金か!?この剛腕のら」

「長いし五月蝿い」


名乗りを上げるラッシアだったが、台詞の途中でコオリに首を飛ばされる。


「頭ぁ!?」

「嘘だろ!?頭は中級上位の元冒険者だぞ!」


どうやらさっきの相手は冒険者崩れだった様で、中級上位とそこそこの人物だったらしい。何故その様な人物が盗賊をやっているのかは疑問だったが、どうでも良いと思い直し殲滅を再開する。

唯でさえ浮き足立っていた盗賊達だが、頭目を失った事によって彼等は烏合の衆と成り果てていた。もうまともな抵抗すら出来ていない。貫かれ、切り捨てられ、無残に盗賊達は命を散らす。たかだか破落戸ならずもの風情には、コオリという存在は重過ぎた。


「他愛ない。………ん?」


恐怖の宿った瞳でコオリを見つめる盗賊達。そのあまりの張り合いの無さに呆れていると、鈍く輝く物が後ろからコオリに降り降ろされた。


ギイィィィンッ!!


「ッ!」

「へえ、やるじゃん」


コオリはショートソードを逆手に持ち替え、振り返る事なく不意を突いた剣撃を受け止める。後ろからは動揺の気配が伝わってくるが、コオリ相手にその隙は悪手だ。その一瞬の虚に付け込み、巧みにショートソードを操り男をいなす。それにより、コオリと男の位置が逆転し、無防備となった背中目掛け剣を振おうとする。だが、その一撃は男を捉える事は無かった。


「っち、本当にやるじゃん」


横から別の男が突っ込んできたのだ。既に男は剣、クレイモアと呼ばれる大剣を振りかぶっており、舌打ち一つしながらコオリはバックステップでクレイモアの間合いから逃れる。すると男達はコオリが避けるのを見計らってか、瞬く間に陣形を整えコオリの事を包囲する。

別にクレイモアを無視して切りつけても問題無かったが、敢えてそれはしなかった。それよりも聞きたい事が出来たからだ。


「アンタ等何者だ?さっきの連携にその装備。少なくとも盗賊じゃないだろ?」


包囲する男達を見ながらコオリは気付いた事がある。一つは彼等の装備。一見すると汚れてみすぼらしいが、それ等はそう偽装されてるだけで本当はかなりの業物だ。次に、包囲している者達は全員がさっきまでの宴に参加しないで眠っていた盗賊だった事だ。

これ等の事を踏まえ、更にさっきの宴の席での会話を思い返すと、一つの仮説が思い浮かぶ。


「アンタ達は盗賊じゃない。この盗賊達の後ろ盾の勢力の所属だろ?」

「………」

「宴会の時の頭目の台詞。便宜を図るって言ってたが、大方、その内の一つに戦力の貸し出しなんてあったんだろ?」


だからこそ、盗賊の一人が黒幕の話題を持ち出した時に止めたのだとコオリは推測する。持ち出した奴もそれを知っていたから話題を変えたのだろう。


「………貴様こそ一体何者だ?」


今まで無言で通していた男達から、一人が進み出てそう聞いてくる。それはクレイモアを持った男だった。彼が男達のリーダー格のようだ。


「見て分からないか?唯の通りすがりの一般人だ」

「………どうやらマトモに答える気は無い様だな」

「そりゃそうだろ。先に質問したのは俺だぜ?それに答えないなら俺が答える義理も無いだろ?」

「………ぬけぬけと」


吐き捨てる様にクレイモアの男は言うが、コオリは何処吹く風とばかりに受け流す。


「まあ、実際はアンタ等が何処の組織や勢力に所属してようがどうでも良いんだよ。偶々襲撃した盗賊達と一緒に居た。だから殺す。それだけだ」

「………偶々だと?」

「ああそうだ。偶然、この盗賊達の仲間が俺の身内を狙ったから始末して、そしたらアジトと攫われた人達が分かったから襲撃を掛けた。それだけ」

「………ふ、ふざけるな!!そんな理由で貴様は我等の計画を邪魔するか!」


クレイモアの男が叫ぶ。どうやらコオリが襲撃を掛けた事によって、男達の所属する組織の計画が破綻したらしい。

怒りに打ち震えるクレイモアの男とその仲間達。だが、コオリはその怒声をにべも無く切り捨てた。


「後ろ暗い事やっといて大義もクソねえだろうよ。………まあ、運が悪かったって事だ」

「貴様ァ!我等の計画、邪魔した事を後悔させてやる!生きて帰れると思うなよ!」


そう叫ぶやいなや、男達は包囲を解かずに陣形を組み直した。明らかにそれは素人の動きでは無い。やはり、男達は訓練を受けた何処ぞの組織の戦闘部隊のようだ。

包囲の仕方に隙が無い。一定の距離を全員が保ちつつ、いざコオリが動けば即座に誰かが死角に入り込んできて、そこから見事な連携へと繋げるだろう。しかも、男達は個々の実力も高い。少なからず、中級上位のラッシアよりは強いと思われる。


「貴様がかなりの使い手なのは分かっている。個々で戦えば精鋭である我等でも手も足も出ないだろう。だが、我等の真髄は連携にある!幾ら貴様が強かろうと、我等の連携の前には為す術もない!」


そう言って切り掛かってくるクレイモアの男。更に、他の男達も時間差で攻撃を仕掛けてくる。四方からの波状攻撃は連携を自負するだけの事はある。これ程の練度の連携をベテラン冒険者クラスの人間が行うのだ。殆どの人間がクレイモアの男が言った様に為す術もなく殺されるだろう。

それ程までの完成度。見事なまでの連携だ。

だからこそ、直に到達する複数の刃を見据え、コオリは賞賛と皮肉を込めて言った。


「見事な連携だ。………だがな、連携なんて物が通じるのは一流までだ」


ギイィィン!!!


男達の刃はコオリの身体に届き、薄皮一枚傷つける事は出来なかった。


「なっ!?」

「馬鹿な!?」


男達から次々に驚愕の声が上がる。それもそうだろう。彼等は確かにコオリを己の武器で斬りつけた。だが、手に伝わる感触はどうだ?鳴り響いた音はどうだ?全てが人間を切った感触では無い。それはまるで、鋼鉄を斬りつけた感触だった。


「《硬化》と《金剛》ってスキルだ。説明してやると、身体を硬くするスキルだよ」


コオリが使ったのは二つのスキル。コオリの馬鹿げた耐性値に身体硬化のスキルを加えた時、その硬さは鋼鉄すらも上回る。

だからこそ、コオリは防御も回避もしなかった。男達の自信である連携に真っ向から挑みかかり、彼等の驕りを砕く為に。


「連携ってのは弱者が強者とやり合う為のものだ。だがな、それにも限度がある。アンタ達の連携は確かに見事だ。それでも、俺には届かない」

「ぐっ!この、化け物め!!」

「否定はしないよ。人間辞めてる自覚はあるし。………さて、今度はこっちの番だ」


コオリが殺気を出しながら男達を睨む。そのあまりの鬼気と、先程の衝撃によって男達は一瞬だけ反応が遅れる。

それが仇となった。


「疾ッ」


コオリの短い呼気と共に、銀色の煌めきが円を描く。

自らを精鋭と呼んだ男達は、コオリの斬撃に為す術もなく切り伏せられた。


唐突ですが、獣人って何が良いかな?ケモミミキャラをだそうと思ってんだけど、イマイチ固まりません。

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