第四十 食事会について
書き終わって直ぐに投稿しました。誤字脱字の可能性が高いです。
「それじゃあ、クルトが依頼の報告してくるわね」
「そうか、そんじゃ頼む」
「はいはーい。ほら、行きなさいクルト」
「命令口調!?」
「「さっさと行け」」
「拒否権無しですか!?」
依頼を終了してギルドに戻ってきたコオリ達。クルトが依頼を報告している間、三人はテーブルについて談笑をする事にした。
「いやー、二人が一緒で助かったわ」
「そんな事無いですよ。結局メイラさん達がずっと戦ってましたし………」
「そんな事無いわよ。二人が居たからあんなに討伐出来たんだから」
ライラが初戦しか戦わなかった事を申し訳なさそうに言うが、その言葉をメイラは否定した。
「元々、私とクルトの武器慣らしって目的だったんだから、私達の方が多く戦ってるのに文句は無いわよ。それに、こんなに狩れたのは二人のお陰なんだから」
クルトと自分では大量のゴブリンを狩れなかったと言うメイラ。
実際、コオリ達は戦闘自体はしていないが、索敵と警戒という面に関してはかなりの活躍をしていた。コオリは勿論だが、それには劣るもののライラも普通とは言えない程度には警戒範囲が広い。それは二つのユニークスキルによって補正された身体能力から来る物である。その効果は中々に大きく、探知系のスキルを所持してないライラだが、下手な斥候よりも感覚が鋭かったりする程だ。
そんな二人が警戒と索敵のみに集中していたのだ。周辺のゴブリンは全て狩り尽くしたと言える程度の量は簡単に発見出来る。
「あ、皆さんも戻ってたんですか?」
そんな感じの話をしていると、ギルドの入り口からシェリルが入ってきた。恐らく彼女も依頼帰りだろう。
「そうよ。シェリルも依頼帰り?」
「はい。蜜の採取依頼を。最近、甘い物を食べてないなあ、って思ってたから丁度良かったです」
うきうきとした表情をして報告してくるシェリル。片手には蜂蜜が入った提出用の瓶。恐らく、それとは別に自分用に採取した蜂蜜もあるのだろう。
「沢山採れたので明日はお菓子作りです!」
気合を入れて宣言するシェリルに、メイラは呆れた様な顔をする。
「あなた、そんな事の為に依頼を受けたの?」
「はい。と言うか、依頼はついでですね。偶然に蜂蜜採取の依頼を目にしたので蜂蜜にしただけですし。だったらついでに受けちゃおうかなって」
「完全に道楽じゃない………」
「ええ。既に十分な蓄えもあるので。だから当分は自由に行動しようかなって思ったんです」
「はぁ、上位冒険者のあなたが羨ましいわ………」
上位冒険者のシェリルと中堅冒険者のメイラの収入はかなり違う。メイラも冒険者という仕事の関係上は一般人より高給取りだ。だが、その分出費も多いのでそこまで贅沢は出来無い。甘味などの嗜好品は高価な部類に入るので、中堅冒険者でも早々口には出来無いのだ。だが、上位冒険者の場合はそうでも無い。彼等は冒険者の中でも例外と見られる程に強く、その分報酬の高い仕事をしている。その為、上位冒険者は中堅冒険者とは比較にならない高給取りだ。場合によっては商人なんかよりも金を持っているのだから。
「ちゃんとお裾分けはしますから安心して下さい。私はレベルは高く無いですけど料理スキルもあるので、味は保証しますよ」
「本当?じゃあ楽しみにしてるわ!」
「おーい!シェリルちゃん、その話に私も混ぜて!」
「クスッ。分かってますよ。ちゃんとユルさんの分もありますから」
「やったー!」
ユルも何処からか飛び込んできて話に加わりだした。とは言え、食い道楽の気があるユルなのでコオリ達も別に驚いてはいなかった。
やはり、何処の世界でも女性は甘い物が好物なのは変わり無いらしい。さっきまで呆れていたメイラも、蜂蜜を使った食べ物が貰えると知ったら笑顔になっているし、ユルに至っては顔を輝かしていた。
「あ、コオリ。ちゃんと約束は憶えてるよね?」
「アイスの事だろ?手持ちも十分あるし、街なら材料に種類があるから色々と作れるぞ」
「そっか!だったら楽しみにしておくよ!」
ライラは満面の笑みを浮かべて頷いた。
ダンジョン内でもコオリはアイスを作ったが、手に入る素材は限られてくるのでどうしてもバリエーションが少ないのだ。しかし、今いるのはテイレン。街だ。素材の良し悪しは兎も角、バリエーションという面ならば期待が出来る。
「「「アイス?」」」
「あ………」
遠くから三つの声が聞こえてくる。やってしまったと思ったがもう遅い。顔を向ければ、女性の三人の顔がキラキラと輝いていた。
「ライラちゃん、アイスって何なの?」
「とっても美味しいお菓子です!すっごく甘くて、冷たくて口に入れると溶けるんです!」
好物の事を聞かれたからか、ライラは表情を明るくしてアイスが如何なる物かを熱弁する。やはりライラも女の子。お菓子の話題は大好きみたいだ。
「「「ほうほう」」」
「それに、コオリは高レベルの料理スキルもあるので、コオリが作った料理は全部が普通の料理の何倍、ううん、何十倍も美味しいんです!」
「「「何ですと!?」」」
とは言え、これはかなり不味い流れである。これから出てくるであろう言葉は簡単に予想出来るのだから。
「「「コオリ君、是非アイスを食べさせて!」」」
「やっぱりか………」
がくりと項垂れるコオリ。しかし、これはもう手遅れだ。この流れで作らない訳にはいかないだろう。
「………まあ別に構いませんよ。でも、材料とかあるので今度の皆に振る舞う時で良いですか?」
「勿論よ」
「作って貰うんだから文句なんて無いよ。それに、美味しいご飯の後に美味しいデザートが食べれるなんて願っても無しね」
「え、あのコオリ君?そんな予定があるんですか?」
不思議そうに聞いてくるシェリル。それを見てコオリはああと思い出す。彼女はこの話が出た時はまだコオリ達と出会ってなかったのだから、知らなくて当然である。
「ちょっと前にこのユルさんに料理作ってくれって頼まれたんですよ。偶々話の流れで料理スキルの事も話しちゃって。そのまま成り行きで食事会みたいな事をする羽目に」
「へー、そうだったんですか」
「あ、参加するメンバーは烈火の獅子とユルさん。後はマッチョの二人」
「ぶふっ!マッチョって、あははは!」
「あははは!た、確かにマッチョよね彼奴ら!」
コオリのカインとジョンの紹介を聞いてメイラユルが噴き出した。良く見ると、ライラも後ろで震えていた。
「あの、マッチョっの二人って一体………?」
「くくくっ。ほら、カインとジョンの事よ」
「っ!?……ああ……な、納得………です」
マッチョが誰かと聞いたシェリルにメイラが説明するとシェリルまでもが肩を震わせる。………後ろに居るライラは既に涙目になったいた。
「後、予定では他にもいるぞ」
「へ、そうなの?」
「ああ。俺が個人的に招待した奴等だからな」
「へえ、奴等って事は複数人なの?一体誰よ?」
「スラムの子供達」
「「「へ?」」」
コオリがルアンとその仲間の事を言うと、ライラを除く三人が固まった。やはり予想外だった様だ。
「え、と、何でスラム?」
「偶々知り合ってな。そのまま親しくなったんだよ。それで俺が招待した」
「あの、大丈夫なんですか?」
「何がです?」
「えっと、メイラの言葉を聞く限りだと、参加する人達は知らないんじゃ………」
スラムに抵抗を持つ人が居るのでは、そう聞いてくるシェリルだが、コオリはその疑問を切り捨てる。
「それが嫌なら食べなければ良いでしょう。食事会の主催者は俺、材料を提供するのも調理するのも俺です。スラムの子供達はホストの俺が直接招待した客人です。誰にも文句は言わせない」
そんな奴に食わせる料理は無いと、そう言い切るコオリ。そして、そのまま参加者達にどうなんだと視線で尋ねる。
「別に私はそんなの気にしないわよ。烈火の獅子の皆もそうだと思うわ。ってか、そんな事をいちいちに気にしてられないわよ」
「私も問題無し。大体、曲者ぞろいの冒険者ギルドの受付嬢に差別する様なのが成れる訳無いじゃないの」
「私も別に気にしないですよ。人として問題無ければ出自とか気にしないですし。と言うより、出自が良くても下衆な貴族とかいますし」
返ってきたのはそんな頼もしい返事だった。シェリルのコメントに関しては、貴族からの求婚などの経験談だろう。
「そうか、なら良かったよ。それじゃあ、日取りが決まったら連絡する」
「あ、だったら最初に私に言ってくれませんか?」
「何でよシェリルさん?」
「食事会の場所を抑えておくので。子供達って事は結構な人数になるんですよね?だったら会場はそれ相応の広さが要りますし」
シェリルの言葉を聞いてコオリは納得する。確かに会場の事は失念していたのだ。ルアンの仲間はそれなりの人数がいる様なので、この申し出はありがたい。
「あー、なるほど。でも、悪くないですか?」
「平気ですよ。美味しい物の為ですし。それに、コネも色々とあるんです」
その台詞は流石は上位冒険者と言った所だろう。ある意味特別な地位にいるだけに、そう言ったコネは持っているのだ。
「それじゃあよろしくお願いします」
「はい。私は『小鳥の囀り亭』に泊まっているので、日取りが決まったら来て下さいね」
「わかりました」
『小鳥の囀り亭』というのはテイレンの中でも上位に入る高級宿だ。そんな所からも、シェリルの懐の温かさが伺える。ついでに言うと、コオリ達が泊まっている『兎の耳亭』はランクでいる所の中の下ぐらいの宿に入る。
「ふふ、良かったねコオリ」
誰もスラムの子供達に嫌悪感を示さなかったからか、ライラも嬉しそうにコオリに笑い掛ける。
「そうだな。………あ。ライラのアイスは食事会までお預けな」
「えっ!?コオリ何で!」
早くアイスを食べたい、そう訴えてくるライラの頭を掴み、コオリは頭に青筋を浮かべて笑い掛ける。
「お・ま・え、が!余計な事を言ったからだろうが………!」
「あ痛たたたた!こ、コオリ痛いよ!余計な事言ったのは謝るから力抜いて〜!頭割れちゃうよ!」
ギリギリと音がするかの様な握力で頭を掴まれ、涙目になりながら謝るライラ。
「うわぁ、あれは痛そう………」
「だねぇ。でも、今回はライラちゃんが悪いかなぁ」
「原因は私達なんですけどね………」
三人は同情的な視線をライラに向けながらも、コオリの寒気がする笑顔に間に入る事はしなかった。
「大体、勝手に人のスキルをバラすな!少なくともシェリルさんは知らないんだから、俺に確認ぐらいは取れ!」
「ご、御免なさい、うぅぅー!」
コオリの説教はその後も数分程続いた。
「うぅ………」
説教が終わった後、ライラはしょんぼりと肩を落として落ち込んでいた。普段は抜けてるコオリからの説教は流石に堪えた様だ。
「………はあ。そんなに落ち込むな。アイス自体は飛び切り美味いの作ってやるから」
ライラのあまりの落ち込み様に、コオリはついそんな甘い事を言ってしまう。ライラが悪いとはいえ、ここまで落ち込まれるとコオリの方も負い目を感じてしまっていた。
「だから元気だせ。な?」
頭に手をおいてわしゃわしゃとライラを撫でる。
「………うん!」
少々乱雑ではあったが、それでもライラは嬉しかったらしく、満面の笑みを浮かべてコオリに飛びついた。
「うわぁ、ラブラブねぇ」
「うーん、甘ったるいねえ」
「まあまあ」
目の前で形成された桃色空間を、三人は苦笑しながらも見守った。
「ごめんごめん、ゴブリンの数が多くて報告が長引いちゃった………って、何この状況」
依頼の達成報告から戻って来たクルトだが、ライラがコオリの腕にくっついて桃色空間が展開され、いつの間にか増えたシェリルとユルがメイラと一緒にその空間を見守っている、という光景に首を傾げる。
しかし、その疑問に答える声は無かった。
クルトの出番が最初と最後のみという。不遇キャラなのに愛着があったりします。
次回は盗賊襲撃なので、シリアスになる予定です。
あんまり成功するビジョンが見えない………




