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第三十四 初依頼

現在修正中です。取り敢えず、修正する箇所が少ない話は修正が出来次第、編集します。

修正箇所が多い話は、全ての修正が終わったらまとめて編集する予定です。


「知らない天井だ」

「………起きるの遅いし。そして何言ってんの………」


コオリの呟きを聞いたライラが呆れながらツッコんでくる。

二人が居るのは宿『兎の耳亭』の一室だ。二人は謎の少女との邂逅の後、無事に宿に到着した。

何故ライラが同じ部屋に居るのかというと、ダンジョンから普通に二人で眠っていたので部屋を分ける必要性を感じなかったからだ。


「相変わらず寝起き悪いねコオリ。ほら、さっさと支度して!」

「ふぁぁ………了解」


大きく欠伸をした後、コオリはベットから起き上がって支度をする。

着替えを済ませて、荷物を持ったらライラと一緒に部屋を出る。そのまま、宿の酒場兼食堂で朝食を摂る。


「今日はどうするの?」

「冒険者になったんだし、八級にはならない程度で依頼はこなしておこう」

「何でそんな縛り?」

「義務とか面倒」


八級以上の冒険者には、有事の際の緊急招集に応じる義務がある。ある程度までなら力を隠すつもりは無いが、死んだ事になっているであろうコオリは、有事の際などにマルト国内で目立つ事は避けたいのだ。


「それに、魔物とかの災害の場合は兎も角、有事の際って戦争とかの場合もあるみたいだからな。例え義務であっても、そんなんに首を突っ込むつもりは無い」


冒険者ギルド自体は国から離れた組織ではあるが、街の予備戦力として数えられている以上は、防衛戦などには参加させられる事がある。

コオリが出張れば防衛戦だろうが戦争だろうが、戦略級魔法でも叩き込めば簡単に終了させる事は出来る。だが生憎と、コオリには戦争に参加する気などさらさら無い。もちろん、相手がコオリと敵対した場合は応戦するが、自分から手を出すつもりは無いのだ。

そんなコオリからすれば、義務が生じる八級以上の階級は不都合なのだ。

冒険者登録した事によって身分証も入手し、資金の方も魔物の素材をギルドに売れば問題無い。

これが普通の冒険者だったら、生活や名誉の為に階級を必死になって上げるのだが、コオリの場合は目立つ事は望まず、生活も特に問題は無い。メリットよりもデメリットの方が大きい昇格など、コオリには全くする必要性を感じない。


「取り敢えず、薬草採取やゴブリン退治でもやっていこう」

「あれだね。コオリ冒険者に憧れてたぽかったのに、意外とする事地味だね」

「いや、確かに冒険者には憧れてたけど活躍したいとか冒険したいとか、そんな子供みたいな事は考えてねーよ」

「そうなの?」

「そりゃそうだろ。わざわざ自分から目立ってまで冒険して活躍したいなんて思わない。大体、冒険なんて最近まで散々やっただろ」


既にコオリ達はダンジョンで冒険らしい冒険を行っている。むしろ、危険度などで言えば大概の冒険者よりも遥かに上の冒険をしている。現状では、冒険なんてもうお腹一杯なのだ。


「地味に細々と依頼をこなして、資金が足りなくなったら手持ちの素材を売る。当分はこんな感じだろ」

「んー。了解」


ざっくりとだが今後の予定を建てて、朝食を食べ終える。

そして、特にやる事も無いので、そのままギルドに向かう。

『兎の耳亭』とギルドは大して離れていないので、数分程度の時間でギルドに到着する。


「よう、コオリ!」

「ライラちゃんもおはよー」

「あ、どうもドイランさん。あとクルト」

「おはようございます」


ギルドに入ると、ドイランとクルトが酒場に当たる場所に座っていた。


「朝っぱらから飲んでるんですか?」

「ちげえよ。今日は休日だからな。他の奴等と情報交換でもしようと思ってな」


朝から酒盛りでも始めているのかと呆れるコオリに、ドイランが否定しながら目的を話す。


「休日なんですか?」

「そりゃ、昨日の今日だからな。流石に休息を入れないとな」

「というより、元々パーティ内で休日の日を決めてるんだけどね」

「そんなん決めてんのか?」


コオリの中の冒険者のイメージでは、依頼は結構な頻度で受けている印象がある。


「そりゃそうでしょう。連続で依頼こなすのは確かに金になるけどさ、疲れが残って依頼失敗したら困るんだから」

「あー、そう言やそうだな。戦闘の時に疲れが溜まってとか洒落にならないか」

「そう言うこと。だから休日は決めてあるんだよ」


物語などと違い、現実ではやはり色々とある。依頼を連続でこなすと疲れも溜まるし、それによって命の危険も高くなる。冒険者達が定期的に休息をとるのは別段珍しい事では無いのだ。


「二人は依頼を受けに来たの?」

「まあな。とは言え、初心者の依頼なんて子供のお使いレベルだろうな」

「だろうね。僕の場合は、初依頼なんてまんまお使いだったし」

「そうなんですか?」

「うん。何を運んだかまでは覚えて無いけど、配達の依頼だったんだ」


そう言って、コオリとライラはクルトの過去の依頼の話を聞いていった。その話は中々に面白く、笑いも交えながらも二人は真剣に聞き入った。


「とまあ、僕の経験談は大体こんな感じかな。どうだった?」

「すっごく勉強になりました」

「ああ。話自体も面白かったしな。流石はオチ担当。笑いに関しては一級品だ」

「………コオリ君それ褒めてる?ねえ褒めてる?」

「当たり前だ。芸人に面白いなんて最上級の褒め言葉だろ?」

「いや芸人じゃないよ!?冒険者だから!」

「結局オチ担当じゃねえかお前」


いじられてツッコミを入れるクルト。それにツッコミを入れるドイラン。

その後もやいのやいのと騒ぎ、ひと段落着いたところで会話を打ち切った。


「さて、そろそろ依頼受けてくるわ」

「おう、引き止めて悪かったな」

「問題無いですよ。クルトさんの話も面白かったですし」

「うう。ライラちゃんだけが僕の味方だ。コオリもドイランも僕の扱いが酷いよ」

「「いや、だってクルトだし」」

「答えになって無いからそれ!」


結局、別れる直前まで、コオリとドイランはクルトをイジリ続けたのだった。


「はてさて、どんな依頼にするかな?」

「どんなのがあるのかな?」


掲示板の前に立ち、コオリとライラは良さげな依頼を物色する。


「うーん、やっぱり簡単なのが多いね」

「新人がやる様な奴だから当たり前っちゃあ当たり前だがな」


新人冒険者なんて、コオリやライラみたいな例外を除けば基本的に戦闘の素人だ。そんな素人のやる依頼が難しい訳が無い。


「まあ、無難に配達関係か採取系だろ」

「えっと、じゃあこの辺かな?」


依頼の中から無難な物を二つ選ぶ二人。流石に、初心者依頼を二人で受ける事はしない。なので、ライラは採取系を受け、コオリは配達系の依頼を受けた。


「それじゃあ、夕方ぐらいに落ち合うか」

「わかった。場所はギルド?」

「そうだな」


ライラと合流する時間帯などを決め、コオリは配達する為に街の中を、ライラは採取する為に外にと歩いて行った。


「えっと、地図だと向こうの方かな?」


配達先の記された地図を片手に、コオリは街の中をうろうろと歩き回る。多少は道に迷いそうになったが、そこは直感スキルによって迷子になる事は無く、無事に目的の場所に到着する。


「はい、ありがとね」

「いえいえ。それでは」


依頼品を受け渡し、相手に達成の報告を依頼書に書いてもらう。これでコオリの依頼は完了だ。


「結構早く終わったな。二時間ぐらいか?」


予想してたよりも早く依頼が終わり、コオリは手持ち無沙汰になった。


「まあ、一つしか受けてないから当たり前ではあるんだが」


元々、初心者用の配達系の依頼というのは、複数の物を同時に受注するものだ。何故なら、初心者の配達依頼は街の中しか移動しない為に危険度が低く、拘束時間もそこまで長くないので報酬が安いのだ。初心者用の配達依頼一つの報酬が飯代で消える、そう言えばその安さも分かるだろう。その為、配達系の場合は複数の依頼を同時進行で受注しないと、新人冒険者はまともな生活を送れないのである。

とは言え、これは冒険者ギルドが報酬関係をケチっているのではない。ギルドには、配達依頼によって新人の間にテイレンの地理を頭に叩き込ませる事と、地域の住民と触れ合わせるという目的があるのだ。その為に、依頼を何度も受けたり、街中を動き回る必要がある様にしているのである。

しかし、有事の際には『索敵』など探査系のスキルを使えば、コオリの場合はテイレンの地理の知識など無くても殆ど関係無い。

そんなコオリからすれば、配達系依頼を複数同時にこなす必要は無いのだ。


「うーん………。資金はまだ全然あるからこれ以上依頼を受ける意味も大して無いしなぁ。なにより、何度もギルドを往復すんのはだるい」


報酬関係も特に美味しい訳でも無く、地理云々も問題無い。地域住民と交流に関しても、そんなに長居するつもりも無いので、必要以上に交流する意味が無い。

そして、これ以上依頼を受ける必要性が無い事と、コオリの内心が合わさった結果


「………待ち合わせの時間までぶらつくか」


適当にぶらつく事が決定した。

外で採取に専念しているであろうライラには多少の後ろめたさを感じるが、そこまで深く考える事なく、ふらふらと移動し始めるコオリだった。


コオリはやっぱりダメな子ですね。

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