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第二十七 交渉の時間

やっと二人以外のキャラが出てきました。


十月三十一

色々と修正しました。


改稿作業終了済み。

やったー。コオリとライラ以外でちゃんとした会話回だー。

「さてと」


盗賊達の始末を終えたので、護衛組との交渉に移ろうと思う。……おい。ちょっと呟いただけで武器に手をやるな。ビクつき過ぎだぞアンタ等。


「流石にその反応は遺憾なんだが?」

「いや、しょうがないでしょ」


護衛組の反応に頬を引くつかせていると、ライラが合流してきた。尚、その顔は大変呆れ顔だった。


「ちょっとやり過ぎだよコオリ。一人でさっさと片付けた事にも文句は言いたいけど、それ以上に倒し方! コオリの力じゃああなっちゃうのは仕方無いけど、それでももう少しこう、優しさというか、親しみ易さを感じさせる倒し方にしなきゃ」

「優しげで親しみ易い殺し方って何なんですかねぇ……」


何だその碌でもないパワーワード。カルト宗教の儀式ぐらいしか連想しねぇぞそれ。


「言葉の綾! もう少し怯えられないようにしてって言ってるの。見てよ此処。絵面最悪じゃん」

「まあ、端的に言って地獄絵図だよな」


辺り一面は血の海で、上半身が破裂している死体が二十体。そして返り血でドロドロになっている俺。スプラッタ系のホラー映画でも中々無い光景だとは思う


「幾らルール的には問題無いって言っても、これを平然とやった張本人を、警戒するなって言う方が無理でしょ? ましてやボクら、あの人達と知り合いって訳でも無いんだから」

「好き好んでスプラッタをやった訳じゃないんだよなぁ」


むしろ、そうなんない用に手加減してたまである。ダンジョンの魔物だったら、ギリギリ生き残るぐらいには加減してたし。ただ、盗賊達が俺の予想以上にプリンだっただけで。これ以上は神経使うと思って、即座に諦めるぐらいには力抜いてたんだぞ。


「コオリの主張も分かるけどね? ただ、警戒されても仕方無いって事は理解して」

「……はいはい」

「じゃあ、交渉の方はボクがやるね。警戒されてるコオリよりも、ボクの方が話は早いと思うし」

「あ、ちょ」

「コオリはまず、その返り血落としてからだよー」


そう言うな否や、ライラは軽い足取りで護衛組の方に行ってしまう。

俺も急いで全身に【クリーン】を掛け、ライラの後を追った。


「さっきはボクの相方がゴメンなさい。強くて頼りにはなるんですけど、ちょっとマイペースで世間知らずな所があって。でも悪い子じゃないんです」

「あ、ああ。いや、こちらこそ申し訳無い。助けて貰っておいて、獲物に手を掛けるのは流石に失礼だった」


追い付いた先で行われていたのは、ライラと護衛組のリーダーらしき男による謝罪合戦だった。

ほぼ恋人みたいな相方が、バカ息子の粗相を謝る母親みたいなになっているのだが、俺はどういうリアクションをしたら良いのだろうか。


「俺はドイランだ。『烈火の獅子』という冒険者パーティーのリーダーをしている」


ドイランに続く形で、他のメンバーによる簡単な自己紹介が行われた。

剣士のラギ。槍使いのガル。斥候のクルト。ヒーラーのセイム。魔法使いのメイラ。そこにリーダーで剣士のドイランを加えたのが、冒険者パーティー『烈火の獅子』だそうだ。


「ボクはライラです。で、彼はコオリ。二人で旅をしています」

「コオリとライラだな。では改めて礼を言わせてくれ。さっきは助かった。ありがとう」


俺達が名乗り返した所で、再びドイラン達は頭を下げた。こっちが名乗ってから改めて礼を言う辺り、意外と律儀な性格らしい。見た目はスキンヘッドの厳ついオッサンなのに。


「いえいえ! 頭を上げて下さい! ボク達だって下心があって行為ですし、一度お礼を言って貰っただけで充分ですよ!」


俺が失礼な事を考えている横で、ライラは慌ててドイランの頭を上げさせていた。……やっぱり、交渉はライラに任せとく方が良さそうだな。俺だと失言しそう。


「それに、困ってる時はお互い様って言うじゃないですか」


観戦しながら助けるかどうか話し合ってたけどな。流石に言わんが。


「そう言ってくれると助かる。……まさか、あんな大人数の盗賊に襲われるとは思わなかったからな」

「だよなぁ。あのままいけば確実に死んでたぞ」

「本当、キミ達が来てくれて助かったわ」


真実を知らない『烈火の獅子』は、口々に助かった幸運について述べていた。

それにしても、ドイラン達の口振りからして、やっぱりアレってイレギュラーな事態のようだ。


「やっぱり珍しいのか? あの規模の盗賊って」

「お、おう。此処は王都の近くだからな。普通だったら、盗賊なんてまず出ねぇ。精々出た所で、四・五人ぐらいだ」

「なるほどねぇ。……それはそうと、兄ちゃんビクつき過ぎ。クルトだっけ? 別に取って食いやしねぇから、少し落ち着け 」


動揺しながら答えるクルトに、俺はついツッコミを入れてしまった。

そしたら即行でライラに頭を叩かれた。


「コオリ! そういう事言わないの!」

「クルト。お前もだ。命の恩人に失礼だろうが」


クルトはクルトで、ドイランに頭を叩かれていた。何かシンパシー。


「悪いわね。コイツ、斥候なんてやってるからビビりなのよ」

「斥候は臆病なぐらいが丁度良いんだ! 冒険するような斥候は斥候じゃねぇ!」

「おい冒険者」


言ってる意味は分かるが、冒険者が冒険否定すんなよな。

まあ、それは兎も角。


「話を戻すが、アンタ等は何か心当たりあるのか? あの規模の盗賊が出た原因」

「まあ、無くは無いな。ちょっと前に、ダンジョンでのトラブルが原因で騎士団が一つ壊滅したらしい。第二騎士団なんだが、そこは王都周辺の治安維持を担ってたんだ。そこが壊滅ってだけで運が悪いんだが、時期も悪くてなぁ。丁度勇者を召喚した時期だったせいで、かなり上もごたついてるらしい。勇者の件で、教会も騒がしいしな」

「お、おう……」


何か、予想以上に濃い内容が返ってきたな。


「詳しいのな」

「冒険者だからな。こういう仕事をしてると、情報は自然と集めるようになるんだよ」


ドイランは事も無げに言うが、それにしても内容濃くない? 騎士団壊滅って機密じゃないの? 何で市井の冒険者にバレてんだよ。……あー、でも、第二騎士団は外回りを担当してたって言ってたし、普通にバレるもんか。


「じゃあ、上のごたつきが原因で、王都周辺の治安維持がままならなくなってると?」

「そういう事だな。この辺りは王都の近くだけあって、流通が盛んだ。騎士さえいなければ、格好の狩場なんだよ。大方、騎士団が思うように動けない今を狙って、近くの盗賊団が遠征してきたんだろ。この辺りを縄張りにしてる盗賊も、殆どいないしな」

「一当て二当てして、さっさとトンズラするつもりだったって事か……」

「だろうな」


盗賊の勢力的には空白地帯で、ある意味で縄張りの主であった騎士団の動きは鈍い。今まで安全が保証されてた事もあり、通行人は油断している。……なる程。確かに狩場としては申し分無いな。流通が活発という事は相応のリターンもあるだろう。

ただ、気になる事もある。


(どう考えても、リスクが釣り合わねぇよなぁ)


状況的には、確かに実入りは多そうだ。だが、だからと言って王のお膝元に手を出すか? 何かアレば即座に騎士団がやってこれる距離だぞ。ごたついてるとは言え、王都に繋がる街道に盗賊が出るとなれば、絶対に対処されるだろ。


(……いや。考えるだけ無駄か。盗賊なんてやるような奴らの考えなんか読めねぇし。そもそも全滅してるからな。馬鹿共が馬鹿やったってだけの話だ)


取り敢えず、そこで思考を打ち切った。倒した敵、それも盗賊なんて破落戸の思惑等考えるだけ無駄だろう。


「ま、アンタ等も運が悪かったか。そんな一回か二回を引くなんて。ある意味大当たりじゃねえか」

「そんな当たり嬉しく無えよ!」


それは同感だ。


「まあ、この件が街の騎士に伝われば、今回みたいに当たりを引く奴はいなくなるだろうよ」

「そりゃ、王都に続く街道に、あんな奴らが出ればなぁ」


治安維持やその他諸々の問題から、人海戦術を使ってでも安全を確認するだろうな。というか、そもそもあの規模の盗賊が、王のお膝元で出る方がおかしい訳で。ごたついて警備が緩くなったるにしても、限度があるだろう。……まあ、これが自然に起こり得る事じゃ無いのは確かだ。意図的に誰かが手を加えてるか、それとも余程の事がこの国におきてるのか。どっちかの可能性が高いな。

どちらにせよ、さっさとこの国からズラかりてえところだ。その為には、やはり纏まった金が必要だな。

チラリとライラの方を見ると、俺と同じように真剣な顔で何やら思案していた。俺程度でもこの件の違和感を察知出来たのだから、ライラが気付かない訳が無いと思っていたが、やはりか。


「……となると、この件は確実に伝える必要があるという訳ですね?」

「ああ、そうなる。流石に同じ規模の襲撃があるとは思えんが、さっきの襲撃自体がイレギュラーだ。警戒はして損は無いだろう」

「なる程なる程」


……ふむ? 話の流れ的に、此処は俺達が護衛として名乗り上げる場面だと思ったのだが。何故だかライラは、このタイミングで口を閉ざしてしまった。


「……」

「……」


無言の時間が流れる。ドイランもライラも、お互いに喋ろうとしない。しかも、ライラは俺に向かって目配せで、余計な事は言うなと訴えてきた。

……ドイランも何やら視線を仲間の方に動かしていたので、多分こっちと同じ事をやったのだろう。

そんな訳で、更に無言の時間が流れる。


「……はぁ。参った。降参だ。是非二人には護衛に加わって欲しい」


痺れを切らしたドイランが、頭を抱えながらライラに護衛の話を申し込んだ。

取り敢えず、無言の応酬を制したのはライラのようだ。恐らく、俺達が護衛を名乗り出た形にするか、依頼を引き受けた形にするのかをやり合っていたのだろう。この形の違いによって、報酬が増減する訳だ。

で、結局折れたのはドイランの方と。


「護衛の件、確かに引き受けましょう。ボク達としても、余計な被害が増えるのは好ましくありませんから。出来る限り、力を貸させて貰います」

「ったく、ぬけぬけと……。助太刀を申し出るから、てっきりお人好しだと思ったぞ」


してやられたと呟くドイランだが、ライラはその反応にキョトンとした表情を浮かべた。


「あれ? 最初に言いましたよね? ボク達にも下心があるって。助けたのも謝礼が欲しかったからですし」

「ぬぐっ……。因みにそれって」

「勿論、護衛とは別料金ですよ? それに結構お高めです」

「っ!? だが、あれはそっちから申し出ただろ!?」

「コオリは必要か?と提案しただけで、引き受けたのはドイランさん達ですから。それにあの状況の悪さと、コオリの実力も踏まえるとねぇ。ボク達から申し出たとしても、結構な額になるかと」

「ぬぬぬっ……!」


ライラの言葉に何とか反論しようと、ドイランは唸っている。

だが、ライラの意見の正当性も認めているのか、反論らしい反論は中々出てこない。


「だぁぁ、もうっ! 降参だ降参! 護衛も謝礼も、適正金額を払うよう、マリマンの旦那に話を付ける!」

「それは良かったです」


結果として、ドイランはライラの要求を全飲みする事となった。

因みにマリマンというのは、『烈火の獅子』の依頼主で、テイレンを拠点にしているマリマン商会という商会の会頭だそうだ。何故今まで話に上がらなかったかと言うと、襲撃の時から今に掛けて馬車の中で身を潜めているからである。


「ったく……。見掛けによらずがめついんだな、嬢ちゃん」

「いやー、ボク達ちょっと訳ありでして。お金の類も殆どないので、この先の街、テイレンでしたっけ? そこで冒険者登録をして、お金を稼がないといけないんですよねぇ」

「……実力の割に初めて聞く名だとは思ってたが、冒険者じゃ無かったのか。というか、あっさり訳有りなんて認めるんだな」

「逆に訊きますけど、コオリ並の実力を持っていて、今まで普通の一般人でしたって話して、納得します?」

「……無いな」

「でしょ? なので隠すだけ無駄かと。それに」

「ああ。そういうのは詮索しないのが、冒険者のマナーだ」


それがマナー、らしい。

ちょっとピンとこなかったので、どういう事かとクルトに尋ねると。


「冒険者って職は、後暗い過去があったりする奴がいたり、特殊な立場の人間が肩書きとして使ってたりするんだよ。だから基本、冒険者はお互いの素性を詮索しないのさ。下手に詮索すると命に関わるからな」


そんな答えが返ってきた。つまり、元犯罪者や密偵等、法的にグレーゾーンの人間が混ざっている可能性があるという事か。

最悪国家権力が出てくるかもとなると、そりゃ詮索しない方が良いってなるわな。

なる程と納得したので、ライラの方に意識を戻す。そしたら何故か、ドイランがライラに忠告してる場面だった。


「嬢ちゃん。今回は俺が既に宣言したから良いが、金が無いとか訳有りとか、交渉の時に喋らない方が良いぞ? 足下見られるハメになる」

「いやいやいや。それぐらい分かってますって。今回は喋った方が良いって思ったから、話をしただけです」

「……どういう事だ?」

「訳有りって事は、法的にグレーゾーンの人間かもしれないって事ですから。それでいて圧倒的な実力者でしょ? そんなの相手の不興を買うような事できます?」

「無理、だな……」

「でしょ? しかもお金が無いって事は、機嫌を損ねれば奪われる可能性もあるという事。そして、そうなった場合は、戦力的に見てドイランさん達に阻止する事は出来ません」


ライラが武力行使による強奪を仄めかすと、『烈火の獅子』の間に緊張が走る。

それを見て、ライラはニッコリと笑う。


「これで分かったでしょう? ボクらお人好しな旅人じゃ無いって。この場に限って言えば、足下見る方が危険なんですよ。何をしたとしても、他に人気はありませんしね。今この場で貴方達に出来るのは、正当な謝礼と報酬を払い、ボク達と良好な関係でいる事だけなんです」


ライラは笑顔でそう語る。だがその笑顔は、それ以外は許さないと言外に告げているようで、とても恐ろしいものであった。

ライラが本気じゃないと分かっている俺ですら、空恐ろしいものがあるのだ。さっき会ったばかりの『烈火の獅子』としては、生きた心地がしないだろう。

……ったく。しょうがない。


「はいそこまで」

「きゃん!?」

「お前、さっき俺に向かって、ビビらせるような事言うなって叱ったばっかだろ。それなのに、お前がビビらしてどうすんだよ?」

「あはは……。説明するのに手っ取り早いかなって思って」

「手っ取り早いじゃないだろう……」


あははと笑うライラを見て、俺は思わず溜息を吐いた。……何が酷いって、こいつ台詞がブーメランなの分かって言ってたっぽいんだよなぁ。むしろ、俺が注意するよう話題を誘導した疑惑まである。ドイラン達に忠告するのと同時に、自分の方が要警戒対象になるようにしたのだろう。

平然とそれが出来る辺り、やはりライラは地頭からして違うようだ。


「さて。それじゃあドイランさん。交渉の方に行きましょうか。口聞き、お願いしますよ?」

「お、おう……」


そう言って、特に悪びれる様子も無く、ライラはドイランへと向き直る。

ドイランも、完全にライラのペースに呑まれてしまったようで、クルト達に盗賊の討伐証明を回収するように告げた後、文句も言わずにライラを馬車の方に連れて行ったのだった。


「…………なんというか、見た目はめっちゃ可愛いけど、それ以上におっかねえ嬢ちゃんだったな」

「だろ? 相棒として頼もしいさ」

「いや、頼もし過ぎだろ……。アレ、下手すれば恨みかって襲われるぞ?」

「大丈夫だろ。言っとくが、俺程じゃないにしろ、ライラも十分強いからな?」

「……マジ?」

「マジマジ。さっきの盗賊ぐらいなら、全滅まで十秒掛からんぞ。言っちゃ悪いが、お前らが揃って襲い掛かっても、歯牙にもかけないだろうな」

「頼もし過ぎんだろ……」


ああ、俺もそう思うよ。

どんどんコオリ君が駄目な子になってる。


改稿作業終了後

ライラさんは頼もしい。ちょっと黒めの交渉でも、普通に行えるできるヒロイン。ステゴロしか脳のない主人公とは大違いですねぇ。

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