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第二十五 念願の外と研究室のお宝

革命の能力が謎という質問が多数ありました。なので、簡単に革命をまとめてみました。


現状の【革命】ですが、

まず、この能力は主人公にしか効果がありません。なので、敵のステータスが高い場合は高いままですし、低い場合は低いです。


そして、この能力は能力値やスキルレベルといった、ステータスに出ている数値を反転させる能力です。



改稿作業終了済み


という訳で、今回から新章に入ります。








ちょっとしたお宝の発見により、予想してたよりも遥かに早く、ライラの研究室漁りは終了した。

つまり、どういう事かと言うと、


「ついに外だぁぁぁ!!!」


ダンジョン脱出である。


「いよっしゃあァァァ!!!」


あまりの興奮に、俺は空に向かって叫んでいた。


「良かったね。コオリ」


隣にいるライラも、目に涙を浮かべて祝福してくれた。

俺は感極まって、ライラを強く抱き締める。


「ありがとうなライラ!」


ダンジョンに置いていかれて体感数十日。もはや体内時計すらも信用出来なくなっているが、まあそこはそれ。兎にも角にも、長く苦しかった日々から、俺は解放されたのだ。


「コオリ、コオリ。嬉しいのは分かったけど、ちょっと苦しい」

「あ、すまん」


ポンポンと腕をタップされ、慌ててライラを解放する。俺の力は既に人外の領域なので、加減を間違えたら洒落にならない。


「ちいとばかしはしゃぎ過ぎたな。少し落ち着こう」


テンションが上がるのはどうしようも無いが、だからと言って興奮しっぱなしというのはよろしくない。

俺達がいるのは、人のいなかったダンジョンじゃない。ここはマルト神聖王国、つまり敵地だ。


「……本当にマルト国内だよな? 転移先が変な所になってたりしないよな?」


自分で言っておいてアレだが、ちょっと不安になってきた。

ダンジョンを作ったのは、あのバルザック某だ。間接的にとは言え、死して尚俺やライラを振り回してみせた、真性のトラブルメーカー。脱出用の転移陣に、何か奇天烈な仕掛けを施していても不思議は無い。

念の為、確認はしておくべきか。


「ライラ、ちょっと待っててくれ。現在地を調べてくる」

「調べるって、どうやって?」


ライラが辺りを見渡しながら、首を傾げる。

俺達が転移した先は、大量の木に囲まれた、見通しの悪い場所であった。森か林かは不明だが、人気が無い事だけは確かである。

そんな場所で、どうやって現在位置を確認するのかと言えば。


「跳ぶ」


手っ取り早く、空から眺めれば一目瞭然である。今の俺には、それぐらい出来る力もある。

ただ、ライラには呆れられた。何でや。


「……跳ぶって。それならボクがやった方が良くない? 飛べるよ?」

「そうは言っても、ライラは今の時代の地理は知らんだろ」

「あそっか」


飛行出来るという意味では確かに適任なのだが、ライラには現在位置を判断する材料が無い。それならまだ、直接マルトの王城等を目にしている俺の方がマシだ。……まあ、知識量的には俺もライラとどっこいどっこいだと思うがな。


「ま、そういう訳だから、ちょっくら行ってくるわ」

「うん。気を付けてね」

「あいよ、っと!」


ライラに見送られながら、俺は一気に空へと跳び上がった。

景色がどんどん下へと流れていく。そして僅か数秒足らずで、地球でいうスカイツリーぐらいの高さに到達した。


(んー、飛び過ぎたか?)


さっきまで立っていた場所は、既に豆粒のようである。ここまで跳ぶ必要があったかと訊かれれば、多分無い。個人的には、そこまで強く跳び上がったつもりは無いんだけどなぁ。

まあ、高い分には良いか。幸い、視力の類も人外レベルだし。


(さてさて……)


景色が流れる中、俺は下へと目を凝らした。


(えーと、あそこが街道か? ……で、あっちにあるのは……街か? お、向こうにも街があるな。アレは……城か? ……うん。見覚えもあるし、あの城は多分マルトの王城か。良かった。一応、変な所に飛ばされた訳じゃないみたいだな)


一通りの確認を終えたので、着地に意識を向ける事にする。

跳び上がった際の慣性も無くなり、今は景色が上へと流れていっている。

えーと、出来るだけさっきの場所の近くに着地するよう、体勢を調整して。あと、落下の勢いもなるべくなくさないと。


「っとぉ! うし。満点」


狙い通り、ライラが視界に入る位置に、出来るだけ静かに着地する事が出来た。

が、


「いや、満点じゃないから! コオリ、もっと抑えなきゃ!」


案の定、ライラには注意されてしまった。

まあ、少し落ち着こうと言った直後にコレだからな。そりゃ注意されるわ。


「悪い悪い。ちょっと予想以上に力が乗ったみたいでな」


どうも、化身として身体を一から再構築したお陰か、身体の動かし方に対する理解が上がったらしい。無意識レベルであった無駄が消え、最適な動かし方が出来るようになったみたいだ。予想以上に跳び過ぎたのも、恐らくこれが原因だろう。

動きの無駄が無くなった結果、発生した力の殆どが推進力に変換されたのだ。その証拠に、俺が踏み込んだ地面は僅かな窪みがあるだけで、殆ど割れていない。


「つまり、また強くなったと?」

「というよりは、動きが良くなった」

「ほぼ意味同じでしょ、それ」


どんどん手が付けられなくなるねと言われたので、大して変わらないとだけ返しておいた。

いや、普通なら大違いなんだろうけど、比較対象が人間とかの時点でどうしようも無いというか。戦闘力1からすれば戦闘力10万も100万も変わんないだろ。

まあ、それはそれとしてだ。


「取り敢えず、現在位置の確認は出来たぞ」

「どうだった?」

「ここは街道沿いの林みたいだ。で、向こうの方角にマルトの王都があったな。距離は結構近い。あと、あっちの方角にも街があった。あっちの街の良く知らんが、普通に歩けば三日ぐらいの距離だと思う」


先程得た情報を、ざっくりライラに伝えていく。


「なるほどねー。で、どっちに向かうの?」

「当然、名前の知らん街の方。王都は御免だ」

「だよね」


もしマルトの王都に向かって、俺の事を知ってる奴らと鉢合わせたりしたら、絶対に面倒な事になるしな。それが勇者達だった場合は特に。田所の顔とか見たら、衝動的に頭をかち割る自信があるぞ俺は。

それは出来れば避けたいので、王都は論外。消去法でもう一つの街しか選択肢は無くなる。


「出来ればあの街で、冒険者登録をしときたいな。冒険者カードは身分証にも使えるらしいし、それ以上に金を稼ぐ手段が要る。無一文は流石にヤバい」

「研究室にも売れそうな物は無かったしねぇ……」


そうなのだ。最初俺は、ダンジョンコアを換金して金を得ようと思っていたのだが、バルザック某の研究室にはダンジョンコアが無かった。そもそも侵入者を拒む構造になっていたあのダンジョンにおいて、価値のあるトカゲの尻尾など作る必要が無かったのだろう。

そんな訳で、金策その一が見事に潰れてしまった。その代案として研究室を色々と漁ったのだが、金に換えられそうな貴重品の類は無かった。


「収穫自体は大きかったんだけどねぇ……」

「流石にそれを売る訳にはいかねぇよ」


ライラが己の持つ鞄を見ながら、残念そうに呟いた。

実を言うと、バルザック某の研究室にお宝が無かった訳では無いのだ。むしろ、金銭的な価値で言えばかなりの物だろう。

そのお宝とは、ライラの持つ鞄と、その中身だ。

まず鞄の方だが、亜空間袋と呼ばれる物の亜種らしい。所謂アイテムバックであり、とんでもない量の物が入り、尚且つ重さが殆ど変化しないという優れ物だ。因みに、見た目はほぼビジネス鞄。時代錯誤が甚だしいが、ライラ曰く書類等の取り出し易さを追求した、バルザック某のオリジナルデザインだそうだ。使い易かった為、文官や研究者達の間で流行っていという。本当に無駄に優秀だったのだなと実感した。

そして鞄の中身の方だが、これにはバルザック某の研究室にあった資料や論文が全てが入っている。あの膨大な量の記録を一度に網羅する事は、幾らライラが優秀でも流石に不可能である。なので、資料漁りはアイテムバックが見つかった時点で早々に切り上げ、片っ端から詰め込む方針に切り替えたのだ。


「未読なのが殆どだから、折を見ながら内容を把握していきたいよね」

「任せっきりになって悪いが、それはライラに全投げするしかないからなぁ……」

「まあ、そこはしょうがないよ。役割分担だって」

「ぬぅ……」


ライラは気にしないでと言ってくれるが、心苦しい事には変わりない。

膨大な資料の把握は、それだけで途方も無い労力を必要とする。ましてや、把握した内容を理解し、自身の知識とするとなれば、その苦労は計り知れない。

出来る事なら、俺も手伝ってやりたい。だが、俺にはそれが出来ない。


「まさか、書いてる内容が殆ど読めないんじゃなぁ……」


そう。俺には、研究室にあった資料が全くと言って良い程読めなかったのだ。王城では普通に本を読んでたので、この事実を知った時はマジで愕然とした。

一部の単語は何とか読めるのだが、後は全く理解出来なかったのである。読めた単語も本当に一部だけだし。何て言えば良いんだ?……アレだ。英語を始めたばかりの段階で、英語で書かれた研究論文を読んだみたいな感じだ。英語だとは分かるが、それ以上はちんぷんかんぷんというか。

なので、俺じゃあライラを手伝うにも手伝えないのだ。


「まあ、下手したら数千年前の文字だしねぇ。古代文字みたいなものだし、読めないのは仕方無いって」

「いやでもよ、そんな事言うなら異世界の文字が読めてんだぞ? だったら、昔の文字が読めてもおかしくないだろ」

「召喚の翻訳も、流石に古代文字は対象外だと思うけどなー」


うーむ。歯痒い。なんならいっそ、俺も古代文字をライラから学ぶか? ……いやでもな、文字を憶えるのも一朝一夕じゃねえし、ライラの読んでるのは専門書みたいなもんだ。要求される知識量自体が半端じゃない以上、俺に時間を割くよりライラだけでやった方が早そうなんだよなぁ。


「あはは。大丈夫だって。別に急ぎの物って訳じゃないし、そもそもバルザックの論文は不完全のものが多いから、完璧に読破しようとは思ってないし」

「何でだ?」

「察しはついてるだろうけど、バルザックって結構偏屈なんだ。自分の書き上げた論文は、自分の持ってる幾つかある研究室にバラバラで保管してたの。だから、あそこにあった論文の殆どは一部のみなの」


ライラ曰く、漁っていた際に既に論文の幾つかは確認しているらしく、その殆どが導入だけ、途中だけ、結論だけになっているらしい。もし全部揃えるのなら、残りの研究室も漁らなければいけないとの事。


「なるほどな。流石にそれは無理だ。そもそも研究室自体残ってないだろ。数千年前だし」

「いや、実際に研究室の一つがダンジョンの中にあった訳だし、同じようなものはあると思うけど」

「マジかい……」


あるんか。いやまあ、彼処と同じようにダンジョンの中にあったなら、確かに残ってそうだけども。


「うん。だから、旅のついでに出来ればそれらしい所を探したい。結構興味深い論文があったから、ちゃんと揃えて読んでみたい。……ダメかな?」

「いや、それは全然構わんぞ。旅の目的は幾つかあった方が良いし」


ライラのお願いを、俺は二つ返事でOKした。ライラの要求は出来る限り叶えたいと思っているし、旅に支障をきたすようなお願いでも無かったからな。拒否する理由の方が見当たらない。

なにより、ライラの気持ちを分かるのだ。多分、好きな漫画を買いに行った時、幾つか足りない巻があった感覚なのだろう。そういう時、つい探したくなるのが人情というものだ。


「……さて。研究室探しとなると、やっぱり第一候補は何処かのダンジョンか。これは冒険者になる理由がまた増えたな」

「うん。そうだね」

「じゃあ、さっさと街に行って登録しちまおうか」


そんな訳で、俺達は名も知らぬ街を最初の目的地として、歩き始めたのだった。










先を歩くコオリの姿を見ながら、ライラは先程研究室で目にした論文の一部を思い返していた。


(『ーー故に神々は獣を恐れ、原初の力を恐れたのではないか。神々の働きによって、獣の多くは命を奪われ、時にはこの世界から追放された。更に獣の記録は神々の手によって抹消され、最強と謳われた存在は3つに数を減らした。

しかし、神々はそれだけに満足せず、新たな獣が産まれぬよう、この世界の意思ある生物に枷を嵌めた。意思ある者達から、それ以上に同格の龍や精霊から怒りを向けられぬように、ステータスという祝福の枷を嵌めたのだ。この枷によって、次第に原初の力は薄れ、やがてこの世界から消えていった』)


この論文を目にした時、ライラの心は大きく揺さぶられた。

出来れば勘違いであって欲しい。杞憂であって欲しいと願った。

だが、


(獣、原初の力、ステータス……。どうしよう、当て嵌る事が多過ぎる……!)


コオリの持つユニークスキルは【原初の獣】。まるであの論文は、コオリの事を述べているようだった。

ライラにとって、それは信じたく無い事であった。何故ならそれは、コオリにとって明確な敵がいるという事だから。


(もし、あの論文に書かれているのがコオリの事だったら……神は敵だ)


最強種が敵に回る。それはこの世界で生きる人間にとって、絶望以外の何ものでも無い。

如何にコオリが最強種に匹敵する力を持っていようが、ライラは安心出来なかった。何せ、コオリは最強種と同格であっても、格上では無いのだから。

もし、コオリの身に何かあったらと思うと、ライラは気が気で無かった。


(確かめるんだ、絶対に……っ! 何とか、バルザックの研究室を見つけ出して、この論文を完成させるんだ!!!)


最強で、行き当たりばったりで、少しお馬鹿で、優しくて、それでいてほんの少し厳しい相棒。そんな最愛の少年の為に、ライラは密かに決意を固めたのだった。

やっと地上の話しになった


コオリ君が結構駄目になってる。



改稿作業終了後。

やっとダンジョンの外に出た。

そして旅の目的が決定しました。

1,精霊を探して自分の世界の作り方を教わる。

2,退化した感性(笑)を復活させる。尚手段は問わないでよろしいbyライラ。

3,謎の論文を完成させる為に、バルザックの研究室を探す。


と、こんなのがこの物語の主軸になってきます。もう行き当たりばったりとは言わせない。



補足というか、特に書かれなかった設定。

実を言うと、コオリ君は最初の段階ではアイテムバックに触れないという設定でした。【反逆】のステータス補正無視によって、アイテム製作者のステータス補正が消え、マジックアイテムに込められた魔法等が壊れてしまう的な感じで。ただ、それだと色々と不便かつ、普通の道具すらも壊れる事になりそうだという理由から没に。

最終的に、魔法が付与されたアイテム等はステータス補正無視の対象。機能として組み込まれた物は対象外という事になりました。

イメージとしては、外付けの装飾か組み込まれた機構かの違い。魔法の付与は塗装。機能として魔法が組み込まれたのは回路。塗装は落とせても回路は外せないみたいな。

尚、魔法の付与されたアイテムはマジックアイテム。組み込まれた奴は魔道具と表記します。(多分本編の何処かで軽く説明入れます)


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