第十六 コオリの昔話とステータス
昨日の二話同時投稿は特に意味が無いです。投稿予約の設定をミスっただけなので。
十月30
色々と修正しました。
改稿作業終了。
久々に出たぞステータス。やっぱり書くの面倒だな……。
ちょこっとライラのステータスを修正。
光輪に魔力回復能力を追加。
「……コオリ、やっぱり話したくないんだね?」
「何で開幕から煙に巻いたと思われてるんですかね?」
「だってコオリが元勇者だなんて信じられないよ!?」
「事実なんだよなぁ……」
まだ導入の頭部分しか語ってないのに、この反応よ。
いやまあ、自分でも似合ってねえと思ってるけども。更に言うなら、立ち位置的には勇者に倒される蛮族とかそっち系かなと思ってるけども。
「……に、似合わない……」
「それでも俺、元勇者なんだよ」
ライラがこれでもかと頬を引き攣かせるが、それでも俺が勇者だったという事実は変わらない。
「ま、勇者って言っても完璧な落ちこぼれだったし、強さって意味じゃ全く勇者ではなかったけどな」
「コオリの実力で!? ボクが封印されてる間に、地上はどんな人外魔境になったのさ!?」
俺が落ちこぼれだと聞いて、ライラが愕然とした顔になった。
おっと。こりゃ言い方が悪かったな。
「流石に、今の実力なら勇者なんて全員一捻りだろうよ。ただ、俺がこうなったのは、このダンジョンに入ってからでな。その前までは、ガキにも負けるって言われてたぐらい貧弱だったのさ」
「コオリが貧弱とか、全然想像つかない……」
「それも含めて、ちゃんと話してやるよ。勇者になった経緯も、俺の無様な姿も、勇者じゃなくなった理由も、強さの秘密も。全部ちゃんと話してやる」
そう言って、俺は過去を語り始めた。
地球での出来事を。
勇者として召喚された事を。
ステータスの恩恵を受けられなかった事を。
ダンジョンで囮にされた事を。
ユニークスキルの事を。
ダンジョンでの攻略の事を。
全部全部、余す事なくライラに語った。
「……とまあ、俺の過去はこんなもんだよ。な? 大したもんじゃないだろ?」
「何処が!? 波乱万丈を体現したみたいな過去じゃんか!」
俺がなんて事ない風に締めくくったら、ライラから思い切り否定された。
個人的には大した事ない、勇者召喚という部分を抜けば有りがちな展開だったのだが、ライラにとってはそうではなかったようだ。
「これの何処を大した事無いって言い切れるの!?」
「物語としては良くある展開だろ?」
「現実じゃん! 全部コオリが実際に体験した事じゃん!」
いやまあ、そうだけどさ。
「辛くないの!? 故郷から無理矢理引き離されて、それなのに弱いからって理由で差別されて、最後には裏切られて見捨てられて! どうしてそんな平然としていられるの!?」
「んなの、もっとキツイ事があったからに決まってんだろ。強え奴らと命懸けでやりあって、ダンジョンを延々と彷徨って、餓死しかけたり、人間の尊厳を捨てかけたりしてみろ。大抵の事が些事に思えてくるから」
「え、ええー……」
俺がそう即答すると、ライラが唖然とした表情を浮かべた。
ライラから見たら、俺は無理してるように写ったのかもしれない。自分という前例がある以上、俺が似たような精神状態でいると思っても不思議では無いだろう。
だが、俺とライラでは状況が違う。ライラは封印される直前まで、人の悪意が渦巻く環境にいた。だからあそこまでボロボロになっていたし、過去に囚われてしまっていた。
対して俺は、最初こそライラと似たような環境にいたが、最終的に叩き込まれたのは自然の猛威が渦巻くダンジョンである。人の悪意とか一切存在しない代わりに、純粋な弱肉強食のみが絶対のルールである野生の世界。そんな場所に俺はいたのだ。
「極限の環境にいたらな、下らない過去に思考を割いてる余裕なんて無いんだわ。まずは生き残る事が最優先。そういうのは脱出してから考えるって棚上げしてたら、いつの間にかな」
人智及ばぬ人外魔境で、人の悪意なんか引きずってみろ。数時間後には見事な死体にジョブチェンジだよ。
「だから、これは当然の帰結だ。言っておくが、辛過ぎて心が壊れたとか、絶望で全てがどうでもよくなったとか、そういうのじゃねえからな? 必要だから吹っ切ったんだよ。じゃねえと死ぬから」
フォローはいらないと、言外に告げる。
これは自分の意思でやった事だ。自分で選んだ選択だ。だから例えライラであろうと、俺の意思に口出しさせるつもりは無い。
それが伝わったのか、ライラはそれ以上、辛いかどうかは訊いてこなかった。
その代わり、別の事を訊いてきた。
「……じゃあ、コオリはそいつらの事、恨んでないの?」
「そうだなぁ……」
ライラの質問に、暫し考える。
正直に言うと、恨んで無いと言えば嘘になる。今でも田所達のした事は腹立たしいし、不当に扱ったマルトの奴らも大嫌いだ。
だから、はじき出した結論はこう。
「主犯格は会ったら潰す。他の奴らは、関わってこなければどうでも良い」
「……す、凄いざっくりした結論だね」
「そんなもんで良いんだよ。あんな奴らの為にわざわざ思考を割くのも無駄だろう」
ああいう奴らは、相手にするだけ無駄な気がするんだよなぁ。
ダンジョンに入ってから、そう思うようになってきた。
「それでも主犯格は潰すんだ?」
「そりゃなぁ。やられて来た事が腹立つってのもあるが、ああいう類の奴らは会ったら絶対にちょっかい出してくるし……。感情とか抜きにしても、何かやられる前に潰したい」
「……納得のいく説明をありがとう」
苦笑しながらも納得しているので、ライラにも思い当たる節があるのだろう。普通の王女時代に何かあったな、この反応は。
まあ、それは兎も角。これで話は一段落といった所か。
「他に何か訊きたい事はあるか? まだ暇だし、大抵の事には答えるぞ」
話し始めて結構な時間が経つが、ダンジョン攻略は依然として平和なものだ。徘徊する魔物は弱いし、トラップの類もそこまで見掛けない。あったとしても、壊すか回避出来るものばかりだ。
回復のアテもあるし、大変余裕がある。
「……何かコオリ、ちょっとウキウキしてない?」
「いやー、攻略中にお喋り出来るのが嬉しくなぁ。テンション上がってる。だからもっと喋りたい」
「か、可愛い事言うね……」
ライラに呆れられてしまった。
可愛いという評価は不本意であるが、それでもやっぱり話すのは楽しい。なんかこう、擦り切れてた何かが回復していってる気がするのだ。
そんな訳で質問クレクレ。
「え、えっと、コオリってステータスを無視出来るんだよね?」
「【反逆】の効果でな」
「じゃあ、コオリのステータスってどうなってるの? ボクのも見せるから、見せて欲しいなって」
「別に交換条件とか無しでも見せるぞ?」
というか9割バグってるステータスとか、交換条件のチップにすらなんねえし。
俺はそう思っていたのだが、ライラは駄目だと首を横に振る。
「あのね、異世界人のコオリにはあんまりピンとこないかもしれないけど、ステータスを訊くって言うのは、かなりの失礼な行為なんだよ? 余程信頼する相手なら別だけど、その場合でも自分のステータスも開示するのが、最低限の礼儀なの」
「あー、そういやそんな事聞いた気がする……」
王城でステータスについて説明された時、ついでにそんな事言ってたような。いや、人の世から離れて長いし、そもそも王城にいた時もマトモな教育されてねえから、そういうのって疎いんだよな。
まあ、ステータス=自分の全て、みたいな訳だし、信頼関係がなきゃ訊くものじゃないっていうのも、分からんでも無いが。
取り敢えず、ライラにとって俺は、ステータスを訊こうと思える程度には、信頼出来るという事なのだろう。それが分かっただけでも良しとするか。
「んじゃ、お互いに見せっこするか?」
「うん! じゃあボクからね」
そういう訳で、ライラと一緒にステータスを開く事に。
まずはライラの方からだ。
「ステータス」
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ライラ・エルファルト:Lv15
称号:[堕ちた姫天使][忌み子]
種族:天使族
体力:6325
魔力:8623
筋力:4532
耐性:3265
敏捷:5321
器用:4256
スキル
・短剣術Lv4・魔力操作Lv6・無属性魔法Lv6・火属性魔法Lv6・水属性魔法Lv6・風属性魔法Lv6・土属性魔法Lv5・闇属性魔法Lv7・雷属性魔法Lv7・氷属性魔法Lv4・生活魔法Lv6・礼儀作法Lv5
ユニークスキル
【堕天使の黒六翼】スキル所持者の思うがままに動く変幻自在な三対六翼の黒翼を生み出す事が出来る。黒翼はスキル所持者に向けられた、あらゆる攻撃を所持者の意思とは関係なく防御し、所持者が敵と定めた相手を自動で攻撃する。攻撃に関しては、所持者の意思である程度は操作出来る。
身体能力に超絶補正。魔法能力に超絶補正。
【堕天使の光輪】あらゆる外傷、魔力、状態異常を一瞬で回復する光輪を生み出す事が出来る。光輪を出していない場合でも、効果は多少落ちるが回復能力は発動可能。
他者も治療する事が出来るが、その回復量は通常よりも低下する。
自身の回復力に超絶補正。魔力回復能力に超絶補正。
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「おー」
思ってた以上のステータスに、つい関心の声が出てしまった。
いや、本当に凄いぞこれ。
確か王城にあった本には、平均的な中級冒険者のステータスが500ぐらいと書いてあった。んで、熟練冒険者で1000いかないぐらいだとか。
それなのに、ライラのステータスは、1番低い耐久でも3000オーバー。しかもLv15でだ。
この世界の特性として、上に行けば行くだけステータスの数値が跳ね上がるものらしいが、それにしたってこれはヤバいだろ。
「ここにスキルと堕天使の力が加わるのか……」
ステータスの数値だけでこれなのに、ライラはスキルの類も充実していた。魔法スキルの殆どは熟練者とされるLv6だし、闇と雷に至ってはLv7だ。
堕天使のユニークスキルと合わせたら、一体どれ程の実力になるだろうか? 少なくとも、現段階でマルトの騎士団1つよりは余裕で上だ。Lv15という伸び代を踏まえると、最終的には一国相手でも互角に渡り合う程になるんじゃないか?
国の力を持ってしても封印するのがやっとだったというのも、このステータスを見る限りでは納得出来る。むしろよく、天使族の国はライラを封印出来たものだ。姫1人に割ける戦力等限りがあるだろうし、一体どんな手を使ったのやら……。
「んー……?」
「コオリ? 怖い顔してるけど、どうしたの? ボクのステータス、何処か変かな?
おっといけない。ついついライラの国の事を考えてしまった。またライラに止められてしまう。
これは誤魔化さなければ。
「いや、ちょっと考え事をな」
「考え事って?」
「……」
やっべ。誤魔化す内容考えてなかった。えーと……、えーと……。
「あっ、いやな? 思った以上にライラが強そうだったから、攻略ついでに鍛えてみるのもいいかなー?って……」
「本当!?」
「おう。……おう?」
あれー? 何かとんでもない事言った気がするぞ俺?
……いや、待てや。戦わせる気ねえって言ってんのに、何でライラを鍛えようなんて言った俺!? 馬鹿なの!? 言ってる事ちぐはぐじゃねえか俺! 手のひらクルックルか!?
しかもライラ、反応が結構乗り気なんだけど!?
「……え、あー、ライラさん? 嫌なら嫌って言ってくれて良いんだよ? 別に無理強いしようなんてこれっぽっちも思ってないからな?」
「嫌な訳ないよ! ボク、強くなりたいもん! 幾らコオリが強くたって、コオリにだけ戦わせるの嫌だもん!」
「いや、俺が戦うのって、経験値の獲得っていう理由もあるんだぞ? だから、そこまで気にしなくても……」
「それでも! ボクはキミの隣に立ちたい! 後ろで守られるお姫様じゃなくて、一緒に戦える仲間になりたいの!」
いやー、後方での回復役ってのも、十分一緒に戦ってると思うんだが。ヒーラーって戦闘の要よ? 特に俺の場合、効果的な回復手段が限られてるし。
……なんて言っても、多分ライラは納得しないんだろうなぁ。ライラにとって、【堕天使の光輪】はあくまで補助スキル。ステータスを見る限りだと、ライラのメインは魔法みたいだし、ユニークスキルはあくまでオマケなんだろう。
くそぅ……。下手に誤魔化すんじゃなかった。今更、ゴメン嘘でしたなんて言えねえよ。しかも理由が純粋というか、健気というか、ぶっちゃけ嬉しいわ。
いや、でもなぁ……。個人的にはあんまし戦わせたくねえんだよ。危ない事はさせたくないし、戦闘以外は俺お荷物だし……。戦闘までしなくなったら、ヒモ確定というのが……。
でも、この世界じゃ、強いに越した事は無いのもまた事実だし……。俺がちゃんと見張れて、ライラにとって適度な強さの敵が出てくるこのダンジョンは、俺の心象を抜きにすれば、ライラを鍛えるのにはうってつけな訳で。俺の心象を抜きにすればな。
んーー…………。
「ま、まあ、まだ敵が出てくる様子は無いし、取り敢えずそれは後でだな。ほれ、次は俺のステータスだ」
結論。先送り。
……いやだって、そう簡単に決められねえよ。本人は乗り気だし、俺から言い出した手前、駄目とは言えないし。
……それほぼ結論出てるとか言うな。こういうのは踏ん切りの問題なんだよ。
「うん! そうだね」
鍛えてくれるって信じてるからか、ライラは素直に頷いた。
お、おう……。この信じきってる笑顔は心にクルな……。
「……んん! じゃ、じゃあ開くぞ」
なんか、ライラの顔を直視出来なかったので、ササッとステータスを出して誤魔化した。……これはこれで罪悪感が……。
「……うわぁ……」
俺が頭を抱えている横で、ライラが俺のステータスを見てドン引きしていた。
幾ら理由がハッキリしていようと、やはり世界の法則が狂ってるというのは、かなりのインパクトがあるようだ。
「……何か、よく分からないけど、そこはかとない悪意を感じる狂い方をしてるね……」
「んー?」
ライラのコメントに、はてと首を傾げてしまう。
確かに俺のステータスはバグっていたが、悪意を感じるバグり方って何だ?
ちょっと気になったので、俺も自分のステータスを覗いてみる。
特に見る意味もなかったので、バグってるのが発覚した時以来覗いてなかったから、かなり久々だな。
「どれどれ……?」
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コーリー・クシュノンキ
称号:[▽・ω・▼]
種族:人間???ちげえわ
体力( ゜Д゜)
力(゜ω゜)
筋(:D)| ̄|_
耐性:、(゜д゜)
orz
器用(-´∀`-)
スキ(*'ω' *)
ユニークスキル
【反逆】 世界の理を跳ね除ける意思の力。抗う心がある限り、如何なる存在であろうと縛り付ける事は出来ない。
【原初の獣】 セカイ ヲ クラウ ケモノ ノ タマシイ ゲンショ ノ ケモノ 八 アマタ ノ イノチ ヲ カテ ト スル
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「メタくそ煽ってんじゃねえか!!!」
思わずステータスを拳で叩き割った。
何だこれ!? 全体的に予想外の方向に突き抜けてるんだが!? 名前、種族、項目、スキルとマトモな部分がねえ!? コーリー・クシュノンキって誰だ!? これでも人間だわ!! 顔文字やめろ! スキルは頬を染めんじゃねえ!!
【原初の獣】の説明分が地味に変化していたが、それが霞む程に全体的にイッテいた。
「ステータスに煽られるってなんだよ……」
「す、ステータスって割れるんだね……」
なんかもう、ライラを鍛えるかどうかとか全部吹っ飛んだぞ……。
シリアスは得意じゃないです。
ライラが賢い様なアホの様な。
後、コオリ君は色々な意味でドライですね。
会話がの展開が歪だったかも。これからも頑張ります。
改稿作業後
改稿後の内容、読者の皆様にはどう思われてるのかが気になる所。
いやまあ、書いてて楽しいから何を言われても突き通すんですけど。
コオリ君の過去は、ご存知の通りなので割愛しました。