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第十四 ライラさんマジパネェっす

また若干シリアスっぽいです。いつまで続くんだろ、マジで。



十月30

色々と修正しました。


改稿作業終了。


改稿すると文字数がグンと増える不思議。ある程度はレールに沿ってる筈なんだけどな……。

結局あの後、ライラは泣き疲れて眠ってしまった。

起こすのは忍びないし、体内時計的にもいい時間だったので、今日はこのまま水晶の間で休む事にした。

ただ、ライラがくっ付いたまま眠っているせいで、部屋の外に置いたバックパックを取りに行けてない。それが地味に困っている。

飯の準備とかしておきたいのだが、離れようとするも黒翼まで使って引き留めてくるため、動こうにも動けないのだ。便利過ぎるだろあの黒翼。


「あんな便利なのに、ライラは黒翼で苦労したってのがなぁ。本当に世界はままならない」


ライラの髪を手櫛で梳きながら、先程の出来事を思い出す。

下らない風習に囚われ、何の罪も無いライラを切り捨てた国。天使族の国というのは聞いた事が無いが、見つけたらただじゃおかねぇ。関係者全員、ボコボコにした上で土下座させてやる。

……そこまで考えた所で、ふと冷静になって頭を抱える。


「……俺、ライラの事を好き過ぎじゃねえの……?」


何で国に喧嘩を売る思考になってんだよ。ごく自然にとんでもねえ事考えてたぞ俺。

さっきの件もなぁ……。人が心配してるのに全く気付かないライラを見ていたら、凄い腹が立って、かなり小っ恥ずかしい事を言っちまったし……。


「宝物とか、傍から聞けばどう考えても告白じゃねえか……」


愛の告白と取られても仕方無いぐらいアレな台詞を、感情のままに叫んでいた。

別に言った事を後悔してる訳じゃない。いや、告白紛いの事をしたって意味では後悔してるが、あの時言った台詞自体は全部本心だ。

ただ、ライラに恋愛感情があるかと言われれば、正直よく分からないのだ。俺にとってライラという女の子は、この世界で初めて手に入れた仲間で、絶対に大切にしたい存在ではある。

だが、今は仲間という比重が大き過ぎて、恋愛方面に発展するかも分からない。


「もし告白って取られてたら、どうすれば良いんだ……?」


完璧なまでに畑違いの問題に直面し、頭がパンクしそうになる。

勿論、何を言われなければそれで良い。告白だと取られたとしても、断られたなら問題無い。男としては多少ショックではあるだろうが。

問題は、告白だと取られてしまい、その上でOKされてしまった場合だ。いや、ライラのようなレベルの美少女が、俺みたいな半野蛮人を恋人に選ぶなんて事はまず有り得ないのだが。

だが、万が一、億が一、OKされてしまった場合だ。裏切らないと言った手前、受け入れないという選択肢は無い。無いのだが、異性として好きと断言出来ない状態で受け入れるというのも、裏切りに当たるのではないか?

いや、勿論付き合ってから始まる恋もある。俺は別純愛主義者じゃないし、両想いじゃなければ恋人になってはいけないとは思ってない。

ただ、ライラの場合は事情が違う。裏切りによって、心が一度壊れかけてしまっているのだ。中高生の恋愛とは訳が違う。恐らく次は無い以上、迂闊な事は出来ない。


「……いやでも、ライラが俺を好きになるなんて事無いだろうし、やっぱり大丈夫か……? そもそも告白とも取られてない可能性も……。でもなぁ、万が一そうなった場合はヤバいし……。うーん……?」


相変わらず、戦闘以外は基本ポンコツだな俺。力でなんとか出来ないとなると、途端に出来る事が限られてくる。

魔法とか、何かしらの技術とか、こういう精神的な事とか、どうにも繊細さを求められるものとは相性が悪いのだ。逆に大雑把にやって良いものとかは、結構相性は良いんだけど。

そんな理由から、思考の袋小路に入ったというか、恋愛擬きの悩みに頭が拒否反応を起こし始めた。

簡単に言うと知恵熱出そう。


「ぬーん……!?」

「……ふふっ……」

「ぬあ?」


頭がパンクしそうになる程考えていたら、下の方からクスクスと笑い声が聞こえた。

何だと思って下を向くと、膝枕されていたライラの頭が微かに揺れている。

冷や汗が出た。


「……ライラさん」

「んー?」

「アナタ、何時から起きてました?」

「えへへ。俺、ライラの事好き過ぎじゃねえか? って所かなぁ」

「それ1番ダメな所じゃないですかね!?」


どうも結構前から起きていたようで、聞かれたら不味い所を全部聞かれてた。

くそっ、何時もなら余裕で気付けるのに、いっぱいいっぱいだったせいで全く気付かなかった!


「あー、あのなライラ。さっきの事なんだけど……」

「大丈夫だよコオリ」


俺が何とか弁明しようとする前に、ライラに遮られてしまった。

そして、むくりと俺の膝から起き上がったライラが、俺の目を真っ直ぐ見つめてくる。


「言ったでしょ? 最初から聞いてたって。コオリがどんな気持ちでああ言ってたのかも、ちゃんと分かってるよ」

「あ、あー……。そっか。そうだよな。うん、なんかゴメン」

「何で謝るのさ。むしろボクは嬉しかったよ? だって、あそこまで悩むって事は、真剣にボクの事を考えてくれてるって事だもん。それが分かって、凄い嬉しかった。ありがとね」

「ぬぅ……」


ダメだこれ。顔がすげえ熱い。

面と向かってお礼を言われた事など殆どないので、こうも真っ直ぐな言葉には、なんて返したらいいのかが分からない。

そしてそれ以上に、何か色々と見透かされてるような気がして、滅茶苦茶恥ずかしい。


「あははは!コオリ、顔真っ赤だよ」

「………」


俺の顔が赤い事がそんなに面白いのか、ライラは腹を抱えて笑い転げている。


「……そこまで笑うか?」

「だって、赤くなってるコオリ可愛いんだもん」


ライラはいい意味で言ってるんだろが、可愛いと言われてもあんまり嬉しくない。なんだが釈然としないものがある。


「あはは、ゴメンゴメン。そんなに怒んないでよね」

「いや、怒ってはないが」


そう続けようとしたら、きゅ〜という音がどこからか聞こえてきた。


「………」

「ライラ」

「……な、なに?」

「今度はお前の顔が赤いぞ」

「うわー、言わないでよー!もう、なんでこんなタイミングで鳴るのさ!?」

「いや、お前の身体だろうが」

「そうだけど!そうなんだけど!!」


音の正体は、ライラの腹の虫だった。色々と雰囲気をぶち壊しにしてくれたので、俺としては物凄く助かったのだが、当の本人は本気で悶えていた。


「そこまで恥ずかしいか? 腹鳴ったぐらいで」

「ボクだって乙女だからね!?男の子にお腹の音聞かれたら恥ずかしいに決まってるよ!!」

「乙女は普通、あんな盛大に腹の音は鳴らさいと思うがな」

「うるさいよっ!」


正論を言ったせいか、ライラが涙目になっていた。

流石にこれ以上揶揄うのも気の毒なので、この話はここで打ち切る事にする。


「飯を用意するから、ちょっと待ってろ」

「うー。またそうやって揶揄うんだ……」

「揶揄ってねえよ。何だかんだで結構経つし、今日はここで野営するんだよ。まあ、野営って程上等な物じゃないがな」


テント所か、寝袋すら持ってねえし。今度宝箱から出てくれないかなぁ。


「そう言えば、コオリって荷物持ってなくない?」

「ああ。部屋の外に置いてある」

「え、何で?」

「この部屋、入る前から妙な気配がしてたからな。何かあっても良いように、最初から外してたんだよ。荷物に何かあったら不味いからな」

「へー。……じゃあ、大切な荷物を放置してまで、ボクの傍にいてくれたんだ。くふふ……」


余計な事に気付いたライラが、頬をだらしないぐらいに緩めていた。

間違っては無いのだが、かと言って素直に認めるのも何か癪な気がする。


「……俺が荷物を取りに行こうとしたら、ライラが黒翼まで使って離れられないようにしてきたんだが?」

「…………へ?」

「それでも迷ってたら、何か愚図りだしてなぁ。離れるに離れなられなかったんだわ」

「…………はぅ」

「眠りながら母親に抱き着いて離れようとしない、赤ん坊みたいだったぞ」

「…………もう止めて! 降参する! 恥ずかしいから!」

「よろしい」


顔を隠して悶えるライラを放置し、部屋の外に置いたバックパックを取りに行く。

幸い、バックパックが魔物に手を出されてた、なんて事は無かった。まあ気配で分かってたが。

バックパックを持って、未だ悶えているライラの元へと戻る。


「さてと。えーと、焚火は室内だししなくて良いから……干し肉とタオルと……」


未だに悶えてるライラの事はスルーして、バックパックから必要な物を取り出していく。

そしたらライラが無言で隣に陣取ってきた。完全にスルーされたのが気に食わなかったのか、微妙に不機嫌そうだ。

だが、それも直ぐに治った。いや、ビックリして不機嫌さがどっか飛んでったって言った方が正しいか。

ライラはポカンとした顔で、バックパックの中を覗き込んでいた。


「……ねぇ、コオリ」

「何だ?」

「荷物ってこれだけなの?」


ライラはバックパックの中を指差し、恐る恐るといった様子で尋ねてきた。


「他にあるよう見えるか?」

「……ボクには、干し肉と木の実が幾つかと、手入れがおざなりなナイフ、壊れかけの火打ち石、水袋、塩? の入った大瓶、タオル、服が何着かしか見えないんだけど?」

「結構ちゃんとした物が入ってるだろ?」

「これで!?」


ライラは唖然とした顔でこっちを見てくるが、これでも最初と比べれば全然マシなんだぞ。

布類もそうだが、やはり塩が手に入ったのが大きい。干し肉もなんとか作れるようになったし、塩味がつくだけ日々の食事が格段にマシになった。

大海の階層に10日ぐらい篭って、塩を作る為に奮闘したのは良い思い出だ。……ただフロアマスターの大鯨だけは許さん。ユニークスキルと思わしき水圧操作は、本当にクソだった。空気中の水分にも干渉出来るっておかしいだろ。あれ実質回避不可能じゃねえか。

まあ、塩を手に入れる為に必要な戦いだったと思えば、どうって事無い。


「最初は本当に何も無かったからなぁ……」


火打ち石、ナイフ、タオルの入ったウエストポーチを付けて、ダンジョンを攻略してたあの頃が懐かしい。


「すっごいしみじみ言ってるけど、これで苦労するのは自業自得じゃないかな……?」

「一応言っておくが、此処には望んで入ってないからな? 馬鹿の巻き添え喰らった被害者だからな、俺」

「……コオリも中々に凄絶な過去がありそうだね」

「今度話すわ。取り敢えず今は飯の準備だ」

「……話したくないなら、無理に話さなくて良いんだよ?」

「いや、単純に長くなる。内容自体も大したもんじゃねえしな。それより、このダンジョンでのあれこれを説明する方が、どっちかと言うと優先度が高い」


ダンジョン内での注意点とか、現状抱えている問題点とか、そっちの方が遥かに重要だ。

俺は経歴こそ特殊ではあるが、このダンジョンにいる経緯はありがちな部類に入る。なので勿体ぶって話す必要も無いだろう。

なんかもう、色々あり過ぎて吹っ切れたのだ。アイツらに思考を割いてる余裕なんて、このダンジョンでは無かったし。

田所達は出会ったら問答無用で潰すが、他の奴らは関わるなって殺気当てて警告すれば、もう良いやと思ってる。それでも関わろうとしてきたら、その時潰せば良い。


「……コオリはやっぱり、ボクと違って強いんだね」


そんな風に考えていたら、ライラが柔らかい微笑みを浮かべた。

誇らしげで、それでいて少しの自虐が混ざった笑み。

その表情を見てしまった俺は、静かにライラの頭に手を伸ばし、


ーーバチンっ!


額を指で弾いた。


「みゅあぁぁぁ!?」


ライラが額を押さえて床を転がり回る。


「そういう顔すんじゃねえよ。単に俺は大雑把なだけだ。人の強さなんてな、それぞれが発揮出来る場所が違うんだ。状況によっては、俺だって滅茶苦茶弱い時もある。だから適材適所だ。ライラが弱い時は俺が守る。逆に俺が弱い時は、ライラが俺を守ってくれ。な?」

「……すっごい嬉しい事を言ってくれてるんだけど、今痛過ぎてそれ所じゃない……!」


どうやら相当痛かったらしく、ライラが涙目でぷるぷる震えていた。よく見たら額が真っ赤だ。

威力強過ぎたか?


「お、大雑把っていうのは本当に納得……! ちょっとは加減してよ!」

「悪い悪い」

「もうっ!」


謝ったら一応は許してくれた。

だがそれでも不機嫌ではあるらしく、頬を膨らませたまま額を撫で……あれ? もう赤くない。

ああ。回復系のユニークスキル持ってるって言ってたな確か。

俺が一人で納得していると、ライラがこっちを見て溜め息を吐いた。何だいきなり。


「アレだよね。コオリって悩みとか無さそうだよね」

「失礼な。普通にあるっての」

「例えば?」

「ダンジョン内での飯が基本不味い。塩がそろそろ少なくなってきた。食材の保存が効かなくなってきた。火打ち石とナイフが壊れそうで不安。布類が不足しがち。寝具が恋しい」

「……全部このダンジョンでの事じゃないか。状況が特殊過ぎるよ」

「だが、どれも切実な問題だ」


特に飯関係は本当に切実なんだぞ。


「そういう意味だと、ライラには少し申し訳無いんだよなぁ。少なくとも、ダンジョン攻略中は確実に不便をさせるし……」


せめて、もう少しちゃんとした物資が揃ってくれてれば良いんだがなぁ。

無い物ねだりなのは承知しているが、それでもぼやかずにはいられない。

折角手に入れた仲間なのだ。あまり不便な思いはさせたくない。


「ボクは全然平気だよ? 余裕が無い状態なのに、助けてくれただけでも十分過ぎるんだ。文句なんて言う訳無いじゃないか」

「そうは言うがな。ライラ、お前は質の悪い干し肉とか食えるか? その、元王女だったんだろ?」


先程までの事をほじくり返すようで申し訳無いのだが、それでも訊かずにはいられなかった。

長期保存の効く干し肉が食えないとなると、このダンジョンでは致命的だ。


「んー、多分大丈夫じゃないかな? ボク、忌み子って分かって直ぐに封印されたんじゃなくて、一度幽閉されてたんだ。その時の対応がかなり酷かったから、こういう限られた物資での生活も、なんとかなると思う」

「ほうほう……?」


軽い調子で大丈夫と言うライラに、俺は表面上だけ頷いてみせる。

内心ではかなり腸が煮えくり返っているがな。やっぱり天使族の国があったら殴り込み掛けないとな。


「コオリ、コオリ。目が据わってる。ボクはもう気にしてないから、変な事は考えないでね?」

「考えてないぞー?」

「それ絶対考えてる返事だから……。本当に変な事はしなくて良いからね」

「お、おう?」


どの辺りの人物までを制裁の対象にするか考えていたら、右腕に何か柔らかい感触。

何だと思って見てみたら、ライラが俺の右腕を抱え込んでいた。

ちょっと何してるんですかねぇ?


「ボクにはもうコオリがいるんだから、過去の事なんて気にして無いよ。コオリが捨てろって言ったんだよ? だったらキミも、余計な事は考えないで」

「……うす」

「あはは。真っ赤になって可愛いなぁ、コオリは」


ライラに揶揄れるが、反撃する余裕は無かった。

元々モテる程の容姿では無く、更にイジメのせいで人から避けられており、ダンジョン攻略では強制的なボッチ生活を送っていたのだ。

女性耐性が馬鹿みたいに低下している状態で、正真正銘の美少女であるライラに抱き着かれるというのは、俺の思考力を奪うのには十分だった。


「まあでも、コオリの悩みは結構ボクが解決出来ると思うから、やっぱり大丈夫だと思うよ? ボク、魔法系はかなり得意だから。お肉とかは、氷属性の魔法で保存すれば良いし」

「マジか!?」

「うわ!?」


そのセリフは、俺から思考力を復活させるのに十分な力を持っていた。


「マジか! よっしゃこれで塩の消費は抑えられる! これで食料問題は大分解決するぞ!」

「……何だろう。喜ばれるのは嬉しいんだけど、女の子としては釈然としないものがある」


色気より食い気かコイツ、とライラが小さく呟いていたが、そんな事は些事だ些事。

実際、食料問題が大幅に改善するというのは大きい。ダンジョン攻略での不安要素の1つが無くなるという事だからだ。


「これで直近の心配は、壊れかけの火打ち石」

「火も出せるよ」

「……ナイフもガタが」

「生活魔法、高レベルだから《修繕》が使えるよ」

「……布類は」

「《修繕》があるから大丈夫」


1つだけでなく、不安要素が尽くライラに潰されていった。

まさか高レベルの生活魔法である《修繕》が使えるとは……!

簡単な造りの物なら、破損状態であっても一瞬で使用可能になる便利魔法。あくまで魔法による応急処置である為、通常より壊れやすくなる等の欠点もあるが、それでも現状では喉から手が出る程に欲しい魔法だ。

これで物資の寿命が伸びたぞ!


「あと、これチョイ技なんだけど、黒翼って伸縮自在で変幻自在だから、形を工夫すると」


そう言って、ライラは背中から生やした六枚の黒翼を、ぐにゃぐにゃと動かし


「こんな風にする事も出来るんだ」

「おおう!?」


1つのイスを形作った。

そこにライラが腰掛ける。


「他にもコレ、ベットとかにも出来るよ。素材が黒翼だから、ボクから離す事は出来ないけどね。ただ快適さは保証する。硬くも出来るけど、基本は柔軟だから。クッションみたいな物だよ」


ビヨンビヨンと、ライラを乗せた黒翼は、バネの様な動きをして見せる。

その動きはかなり靱やかで、ぎこちなさも硬さも感じさせなかった。


「この技、幽閉時代に編み出したんだけど、コオリの役に立つかな?」

「めっちゃ役に立つ。ライラと黒翼さん、マジパネェっす……」


俺の不安な部分の殆ど、ライラ1人で見事に潰されたぞ……。

というか何そのユニークスキル。俺のとは比べものにならないぐらい便利じゃん……。伸縮自在で変幻自在とは予想してたけど、武器だけじゃなくて家具の類にもなるとか……。

いや、俺のユニークスキルも便利っちゃあ便利だが、どの能力も戦闘特化だからなぁ。現実的な応用性って意味じゃ、完璧に負けてる。


「でもそっかぁ。それなら、ライラは快適に過ごせそうだな。硬い地面で寝させるなんて事、ならなくて良かった」


何度も言うが、ライラに不便な思いはさせたくない。

全部ライラの力であるのは情けなく思うが、その分俺は戦闘で頑張れば良い。ライラを守るのは勿論、働かせる事も無いようにしないと。


「じゃあ、寝床作りは俺だけで大丈夫か。身体に掛けるタオルは居るか?」

「タオルは欲しいけど、何でコオリは寝床作ろうとしてるの?」

「え? そっちの方が快適に寝れるからだが……」


流石の俺でも、硬い地面に直で寝るよりは、何か敷いて寝た方が快適だ。

何も無かった以前なら兎も角、今は布類にも多少の余裕はあるしな。

そうライラに説明したら、とても不満そうな顔をされた。


「……必要無いじゃん」

「……あの、ライラさん? 幾ら半野蛮人みたいな生活をしてる俺でも、寝るなら快適な方が色々と良いんですよ?」


何でそんな不満そうなんですかねぇ? アレなの? 俺が快適に過ごそうとするのが許せないの?


「俺、ライラを怒らせるような事したか……?」


それは少しショックだ。いや、デコピンとか心当たりは割とあるので、肯定されたらそれまでなんだけど。

だが、ライラの顔を見ると、どうもそういう事じゃないらしい。

ライラは頬を赤く染め、少しばかりモジモジしながら叫んだ。


「そ、そうじゃなくて! 寝床なんて作るより、ぼ、ボクと一緒に寝れば良いじゃん!」


……。

…………。

………………。


「さて、飯の準備するか」

「何で無かった事にするの!?」


ライラが何やら喚いているが、スルーだスルー。


「ライラー。干し肉、そのまま食べるか? それとも炙るか?」

「無視しないでよ! これでも勇気出したんだから!」

「喧しいわ! 女の子が不用意にそういう事を言うんじゃありません! 襲われたらどうすんだ!」

「別にコオリだったら良いもん!」

「良くねえよ!?」


なんて事言うんだこの馬鹿娘は!


「だって別々に寝る必要も無いじゃん! コオリも寝具が恋しいって言ってたし! ちょっと狭いけど、くっ付いて寝れば2人で寝れるよ!」

「確かに言ったが、だからって何で添い寝する事になるんだよ!?」

「1人だけ快適って気まずいの!」

「別に気にしなくて良いだろ! こっちは自分で選んでるんだから!」

「コオリの方こそ気にしないでよ! 別にボクは気にしないから!」

「こっちが気まずいんだよ! というか安眠出来るかい!」


ライラと添い寝とか、絶対寝不足になるわ!


「膝枕とかしてたんだから、今更だよ!」

「ありゃお前が黒翼まで使って引き留めたからだろうが!」

「なら今回も無理矢理一緒に寝る!」

「おまっ、絶対止めろよ!? この淫乱天使! ダメな天使でと書いて駄天使が!」

「うわ酷い!? 言ったねコオリ!? そういう事言うなら、絶対にやるからね!」


つい先程までのシリアスな雰囲気から一転し、騒がしくも馬鹿らしい言い合いが勃発した。

ライラの過去から、何がどうなって一緒に寝る寝ないの論争になるのか……。

当事者の俺ですら、甚だ疑問だ。


「女の子が勇気を出して誘ったんだよ!? それを無碍にするとどうなるか、その身体に叩き込んであげるんだから!」

「止めろよ本当に!? やったら全力で逃げるぞ俺!?」

「絶対に逃がさないから!」


そんな感じで、俺とライラが初めて出会った1日は過ぎていった。

だが、眠るにはまだ早い。

後書きが間違えてました。


改稿作業後

もうくっ付けコイツら。

便利キャラは前コオリ君から現ライラちゃんに変更。

伸縮自在で変幻自在な黒翼って、実際凄い便利じゃない?

ライラのポジションは、戦闘・日常問わず、サポート型の後衛です。


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