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第十一 ライラ・エルファルト

遂にヒロインとの絡みが!

前回はヒロインが出ただけで一言も喋ってなかったwww



10月30

三点リーダーを修正しました



改稿作業終了


やっとヒロインのところまで到達したぁ。

何故か水晶が砕け散り、支えを失った少女が地面に……え、ヤバくね?

少女が埋まっていたのが、地上から10メートルぐらいの地点だ。その水晶が砕け散ったら、当然少女も落下する訳で。


「ヤバいヤバい!」


慌てて落下地点に走る。

感じられる強さ的には案外大丈夫かもしれないが、それでも一応普通の女の子と仮定して行動しなければ。意識があった場合、下手したら話が拗れる。


「あれ?」


そういう訳でキャッチしようとしたのだが、何秒経っても少女が落ちてこなかった。

何故かと思って上を見ると、少女が空を飛んでいた。


「白?」


違うこれ下着の色だ。……いや、あの娘の服がスカートだったから。偶然だよ?

というか、そうじゃない。


「黒い翼?」


少女の背中からは、三対六翼の黒翼が生えていた。

どうやら、あれで飛んでいるようだ。


「天使? ……いや、黒い翼だから堕天使か?」


予想外の光景に呆然としながらも、少女の正体を推測する。

それにしてもまさか、異世界で天使系の存在に出会うとは。……下等種族どもめ! とかいうタイプじゃないよな?


「おーい。大丈夫か?」


変態認定されても嫌なので、少女の真下から移動しながら声を掛けてみる。

そうして気付く。少女が何やら小声で言っている。あと何かプルプル震えてる。


「……あのー、」

「ーーーー!!!」

「うお!?」


どうしたのかと尋ねようとした時、少女が声にならない叫びを上げた。


「ちょっ!落ち着いっ!?」


嫌な予感がして、即座にその場から飛び退く。

すると次の瞬間には、今まで俺がいた場所に黒い何かが突き刺さっていた。


「あービックリした! いきなりなんだよもう!」


突然攻撃された事に驚きながらも、思考を戦闘のものへとシフトさせる。

さっきまで俺が居た場所に突き刺さる黒い影。よく見ると、その影は少女の背中から生えている六枚の翼の内の一枚だった。

槍のように鋭い姿に変形し、鞭のように靱やかに動き、10メートル以上伸縮する黒翼。


「ユニークスキルの類だろうなぁ……」


普通の翼にそんな機能はまず存在しないだろうし、黒い三対六翼なんてニッチな通常スキルも無いだろう。なら十中八九ユニークスキル。確定では無いのは、異世界ならそういうファンタスティックな翼がワンチャンあるかもだからだ。

まあ、ユニークスキルと仮定しよう。そうなると、少し面倒だ。

これまでの攻略でも、ユニークスキルを使ったと思われた敵は多くいた。フロアマスターは勿論、稀にだが雑魚にもいた。

その経験から言わせて貰えば、ユニークスキルの類はどれもクソ程面倒だ。睨んだ箇所を溶岩に変える瞳、触れた全てを凍てつかせる肉体等、お前らそれ生物としてどうなの?と思うような埒外の力もあった。俺の【反逆】と【原初の獣】だって大概だし、この娘の黒翼も同等の性能を持っていると見て良い。


「あとステータス無視も効かねえんだよな、ユニークスキルって」


これもまた面倒な理由の一つだ。ユニークスキルはステータス由来の力じゃない為、【反逆】によるダメージカットの対象外なのである。ユニークスキルを無効化したい場合は、個別に対象を設定しないといけない。


「……いやまあ、別に無効化しなくちゃヤバいって訳じゃねえか」


先程の速度と威力を見るに、見てからでも十分回避出来るし、当たったところでかすり傷ぐらいにしかならないだろう。迷宮の床を砕く程度じゃどうにもならないぐらい、今の俺は頑強だ。

強いて問題点を言うなら、貴重な服が破けるぐらいか。そういう意味でなら絶対に当たりたくはないが、全部避ければ問題は無い。


「さて。それじゃあどうするかねぇ?」


基本的に、敵対した相手は殺す事にしている。そのスタンスに従えば、殺すべき。

だが、やはり攻略の同行者は欲しい。そしてなにより、


「正気じゃねえよなアレ……」


見た感じでは、明らかに少女は錯乱している。理由は知らん。

ただそうである以上、あの攻撃は無意識と見ていい。大して脅威でもない無意識の行動に、そこまで目くじらを立てるのは如何なものか。


「……はぁ。まずは正気に戻してからか」


面倒だなと思いながらも、少女をなんとかする事にした。

攻撃されるのが困るというのが理由の大半だが、見ていられないというのもある。なんというか、錯乱している姿が凄く悲しそうなのだ。痛々し過ぎて、放っておくと、逆にこっちの心にクル。

だから正気に戻して、矛を収めるのなら見逃す。それでも尚敵対するなら残念だが容赦しない。


「頬を叩けば戻るかな?」


錯乱は酷そうなので、時間経過で落ち着くまで待つというのは無し。見ていられないし、面倒。

こういう異状は叩けば大抵治るものだし、引っ叩けばなんとかなるだろ。婆ちゃん家にあったブラウン管もそうだった。

後はそうだな。翼を破壊するのは、大丈夫なのかが不明なので無しの方向で。捕まえる事は出来るだろうが、今での動きから考えると、変幻自在で伸縮自在な可能性が高い。捕まえたところで意味は無いだろう。


「っと、来やがったか」


方針を固めていたら、翼の内の二枚が大きく羽ばたき、形を変えて襲い掛かってきた。

迫り来る翼には刃の如き鋭さがある。当たれば服が切り裂かれるだろう。


「よっと」


横に跳ぶ事で二枚の翼を回避。紙一重で避ける事はしない。形が決まって無い以上、紙一重では翼の変形に対応出来ない。そしたら服が臨終する。

なので、避けたからといって油断はしない。何より翼は後四枚ある。

案の定、もう二枚の翼が時間差を付けて襲ってきた。 一枚は横に跳ぶ事で回避して、偏差で襲ってきた一撃はジャンプで飛び越えた。そして着地と同時に、一気に距離を詰めてみる。

すると、残った二枚の翼の内の一枚が形を変え、少女を包み込む様にして防御の体制を取った。そしてもう一枚の翼がバリケードの様な形状に変わり、近づけさせない様にしている。


「うわ、高性能」


かなりの万能性能な翼に、思わず呆れた声が出る。というかあの動き、確実にオートだろ。錯乱してるあの娘に、あんな判断出来る訳無いし。

翼の自動機能を踏まえた上で、何度か接近と回避を繰り返してみる。

その結果、三対の翼の内、上下の翼が攻撃を行い、真ん中翼が防御と迎撃を担当している事が解った。


「うーむ。良い判断」


翼の自動機能め。中々にいい仕事をしているな。

これは少し攻めあぐねるか?

四枚の翼はどうにかなるのだが、攻撃が出来無い状況での翼の防御を突破するのが難しい。攻撃していいのなら、一撃で破壊する自信が有るのだが。


「こりゃ、ちょっと賭けになるな」


無傷での突破は難しい。だが攻撃を受ける前提で動けば、なんとかなりそうだ。

服が多少切れるだろうが、この際胴体部分が無事なら良しとしよう。長袖から半袖になるぐらいなら大丈夫だろ。

というか、そろそろ本気で面倒になってきたので、さっさと済ませてしまいたい。


「いくか」


服が傷む覚悟を決め、少女のもとへと突撃する。

それと同時に飛んでくる、四枚の翼による攻撃。


「右、右、左で、ぴょん」


四枚の攻撃を難なく躱し、切り返しの攻撃が来る前に駆け抜ける。

残るは二枚。その内の迎撃用の翼が動き出し、バリケードを築こうとした瞬間。


「今っ、だ!」


魔力による強化を解禁し、今までの数倍以上の速度を叩き出す。

急な速度の変化に、バリケードを築こうとしていた翼は対応出来なかった。翼が慌てて形状を変化させようとした時には、既に俺は少女の懐近くまで潜り込んでいた。


「これで!」


右手を突き出し、少女に触れようとするが、


「ーー!」


それよりも早く動いた最後の翼が、俺の右手を切りつけた。

袖が千切れ、切り裂かれた皮膚から鮮血が舞う。


「それを待ってた!」


翼によって迎撃されるのは折り込み済みだ。皮膚こそ軽く切られたが、その程度なら数秒で塞がる。

守りを止めさせ、迎撃の為に最後の翼を動かせるなら、十分安い。

お陰で、少女は無防備だ。凄まじい速度で翼が守りに戻ろうとしているが、常人なら兎も角、俺が相手じゃ間に合わない。

故に、


「いい加減、正気に戻れや!!」


無防備な少女の顔を、平手で思いっ切り引っ叩いた。


ーースパァァァン!


部屋の中に、滅茶苦茶良い音が響く。やっておいてアレだが、これ滅茶苦茶痛い奴だわ。


「いったぁぁぁ!?」


案の定、ビンタをされた少女は頬を押さえて転げ回った。


「痛い!? 凄く痛い!? 何!? 何なの!?」


あまりの痛みに錯乱は収まったらしく、さっきまでの悲痛な雰囲気はすっかり消えている。


「そろそろ起きろ」

「ふぎゃっ」


転げ回られていては話が出来ないので、少女の襟首を掴んで無理矢理立たせる。


「ケホッ、ケホッ。いきなり何すんのさ!?」

「いや、割と急ぎの話があって。……うわぁ、実行した俺が言うのもアレだが、くっきり手形がついてらぁ」


詰め寄ってくる少女の顔には、それはもう見事な紅葉があった。


「キミか殴ったのは!? あれすっごく痛かったんだけど!?………あれ? 此処どこ!? ねぇキミ!ボクあの後どうなったの!?」

「いや知らんがな」


あの後ってなんだあの後って。


「………あれ? え、誰?」

「………」


何となく予想はしてたけど、このボクっ娘ポンコツでは……?

最初の神秘的な雰囲気も、先程までの悲痛そうな雰囲気も何処へやら。頭の緩そうな雰囲気となった少女に嘆息しながら、自己紹介をする。


「………はぁ。俺は楠木氷。いや、こっち風に言うならコオリ・クスノキだな。まあ、コオリでいい」

「え?あっ、ボクはライラ。ライラ・エルファルト。ライラでいいよ。えっと、よろしく、コオリ?」


……んーむ。自分で言っておいてアレだが、このレベルの美少女を名前呼びかぁ。いやするけども。


「オーライだ。それでライラ。お前は目が覚めてからの記憶があるか?」

「え?コオリに叩かれた事?」

「違うわ。その前に錯乱して襲い掛かってきたんだよ」

「嘘!?え、コオリ大丈夫?怪我してない?」

「一応は」


怪我したっちゃしたけど、既に治ってるので無傷で良いだろう。


「そっか。良かったぁ」


俺がなんとも無いと言うと、ライラは安堵の息を洩らす。取り敢えず、印象通りの善良な性格らしい。


「んで、何で水晶の中に居たんだ?」

「……えっと、その」

「……やっぱり訳ありか。話たくないなら、別に話さなくてもいいぞ」


水晶の中にいた理由を訊ねると、ライラは話し辛そうな顔をする。

表情が思ってた以上に深刻だったので、取り敢えず詳しく訊くのは止めておいた。


「ただこれだけは訊かせろ。お前は悪人か?」


だからこれが最大限の譲歩だ。


「……え?」


全く予想していなかったのか、ライラは驚きで目を見開く。


「お前を水晶から出したのは俺のエゴだ。やりたいと思ったからやったし、それを後悔してはいない。だがな、性根の腐った奴に都合の良い馬鹿と思われるのは腹が立つんだよ」


ライラが悪意をもって行動するような奴なら、それを知らずに助けた俺はただの間抜けだ。助けたこと自体に後悔はないが、屑を世に出す片棒を担ぐ気など毛頭ない。

故に俺は見定める。悪人ならこの場で殺す。屑にこの俺を利用なんてさせやしない。


「もう一度訊く。ライラ・エルファルト。お前は悪人か? 正直に答えろよ。俺は勘が鋭い。嘘をついたと判断したら即座に殺すぞ」


僅かに殺気を込めながら、ライラの瞳を射抜く。

果たして、答えは。


「……違うよ」


それは短くありながら、力強い言葉だった。


「確かに、ボクは封印されても仕方無い存在だった。でも、だからと言ってボクは悪い事はしていない。この身に流れる王家の血に賭けて、ボクは卑しい生き方なんてしていないと誓おう!」


俺の気迫に気圧される事も無く、ライラは毅然とした態度で断言した。自分は悪人では無いと。恥じるような生き方はしていないと。

……嘘を言っている様子は無い。


「ならいい」


だから信じる事にした。

殺気を引っ込め、直ぐに謝罪する。


「悪かったな。殺すなんて言って」

「全然良いよ。当然の事だし。むしろ良かったかも。コオリは信頼出来るって分かったから」

「初対面で殺気を出した相手を信頼するのか……」


やべぇ奴なんじゃねえのコイツ?


「ねぇ、今失礼な事考えなかった?」

「気のせいだ」


今の思考を読んだのか、群青色の瞳でジト目を向けてくるライラ。

誤魔化しながらも、内心で鋭いと舌を巻く。


「………ふん」


んー、誤魔化せなかったっぽいなぁ。

ボクっ娘は大好物です。

みなさん、天使+ボクっ娘ってアリですかね?


改稿作業後

コオリ君、初対面のヒロインの顔を容赦なく引っ叩く。

前コオリ君と比べると、現在のコオリ君は大分ワイルドになってしまった……。

因みに、水晶が砕け散った理由は次回ぐらいで明かされます。ご都合主義ではないです。ちゃんと理由はあります。

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