闇の中の出会い、ふたたびの別れ
ふわふわと、身体が浮く感覚がする。
絵麻はぼんやりと目をあけた。
そこは真っ暗な闇の中で、目をこらしても何も見えない。感じない。
(……?)
頭の中で、何が起きたのかがゆっくりと整理されていく。
わたしは――お姉さんに殺されたんだ。
道具みたいに利用されて――。
それをゆっくりと認識すると、絵麻は哀しくなった。
(どうして、こんな……)
両手で顔を覆う。
指の隙間から涙がこぼれて、暗闇の中で微かな光を放った。
その時だった。
『絵麻ちゃん……』
どこからか、絵麻を呼ぶ声が暗闇に響いた。
全てを包みこんでくれるように暖かく、優しい声。
「え?!」
その声に、泣いていた絵麻ははっとして顔を上げた。
『絵麻ちゃん、泣かないで……』
「この声」
絵麻は弾かれたように暗闇を見回した。
自分を『絵麻ちゃん』と呼ぶ人は、知っている限りたった一人だけだ。
こんなに優しく自分を呼んでくれるのは――。
「まさか、お祖母ちゃん?!」
『絵麻ちゃん……』
声が微笑を含む。
「やっぱり、お祖母ちゃんなのね! どこにいるの? お祖母ちゃん?!」
絵麻は声の限りに呼んだのだが、それはこだまのように暗闇の中を反響するだけだった。
「お祖母ちゃん、会いたいよ! 死んだんなら、わたしを側にいさせて!」
『絵麻ちゃん、それはまだダメ……』
祖母の声が、静かに否定する。
「どうして? わたしは……死んだんだよ」
『まだ終われないわ……貴女にしかできないことが、貴女を待ってる……』
「何、それ……?」
『絵麻ちゃん、お願いよ……どうか前向きさを失わないで』
最後の方は消え入るようにか細い声だった。
「お祖母ちゃん?!」
絵麻は嫌がるように首を振った。
「嫌! もうどこかに行ったりしないで!! ずっと一緒にいてよ!!」
『光……が……あなたに優しくありますように……』
祈るような声が、暗闇にすっと溶ける。
祖母がいなくなったのを絵麻は感じていた。
「いやあっ! お祖母ちゃん?! お祖母ちゃん!!」
絵麻は喉が壊れそうなくらいに絶叫する。
その瞬間、絵麻は自分の身体が急降下するのを感じた。
「えっ?」
視界がぐるぐると回転して、思わず目を閉じる。
目を開けた時、絵麻の身体は地面めがけて落下していた。