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母の宝物

作者: かなちょろ
掲載日:2026/09/17

 今日、我が家に黒い服を着た親戚が集まっている。

 私の母の葬儀だ……。

 悲しさもあり忙しさもあり、泣いている暇も無い。

 葬儀も終わりひと段落すると、急に涙が溢れ出して来る……。

 ひとしきり泣いた後は遺品の整理。

 母は自分の体のことをわかっていたようで、ほとんど処分していて、どうしても捨てられない物だけ一つのダンボールにまとまっていた。


「捨てられなかった物ってなんだろ?」


 私はそのダンボールを開けた。

 母は自分が死んだら捨てて良いと言ってたけど……。

 そのダンボール箱の中は綺麗に整頓され、一つ一つ布に包まれていた。

 一つ手に取り開けてみると……。


「これは……私のへその緒?」


 木箱に入って生まれた月日が書かれている。

 他の包みも剥がしてみた……。


「母さん……」


 入っていたのは私が幼い頃に書いた似顔絵、工作、私が捨てたはずのぬいぐるみなどの数々の思い出の品。

 そしてアルバム……。

 そのアルバムには【厳選写真】と書かれている。

 どうやら母が自分用に作っていたアルバムのようだ……。

 そこに写っていたのは私。

 写真の横には日付と一言が書いてある。


【私の子供が生まれた  ようこそ】

【初めてママと名前を呼んでくれた記念】

【歩き始めて三千里 ママはここよ】

【ちょっと体調が悪い 隊長パパ出番よ】

【初めての幼稚園 いやいやして泣き叫ぶ】

【桜の木の下でピクニック お顔に米粒ついておむすびまん】


 一枚一枚くだらない事が書かれている……。


「……お母さん……これじゃ……泣けないじゃない……」


 私はアルバムに涙をこぼしながらページをめくっていく。

 このダンボールに詰まっているのは母と私の思い出ばかり。

 お父さんの思い出の品が少ないのは残念だけどね。

 そんなダンボールの底には小さな小箱と手紙が一通入っていた。


【やっぱり覗いちゃったわね。 アルバムは見たかしら? 懐かしいでしょ? 覚えてないかも知れないけど、これが私の宝物。 でもこの手紙を読んでいるなら私にはもう必要無いから、このダンボール事粗大ゴミにでも出しておいてね。 ただ、この手紙と一緒にしてある小箱の中の物は捨てずに使ってくださいね。 私の母からの形見だから。 私がいなくても落ち込まないでよ。 私はいつもあなたのそばにいますからね 母より】


 小箱を開けると中には指輪が入っている。

 お母さんがいつも着けていた指輪だ……。

 入院の前に何処かにしまったとか言ってたけど……お母さん……。


 その指輪は今、私が身につけている。

 そして母の宝物のダンボールの横には新しい私のダンボールが置かれていた。

 

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