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「置物姫」と呼ばれた公爵令嬢、婚約破棄されて決闘裁判に臨む——剣を持つと人格が変わる私は、王太子を黙らせました

作者: Vou
掲載日:2026/05/13

 王宮の夜会は、公爵令嬢クローデリア・レーヴェンハイトにとってはいつも憂鬱だった。


 極端に人見知りな性格のせいで、まともに話すことができず、友人と呼べるような者もいない。

 婚約者の王太子ユリウスですら、クローデリアをただの飾りのように傍に置くだけで、いつも他の出席者との談笑ばかりで、クローデリアを気遣うことなどなかった。


 ——銀の置物姫。


 それが、銀髪の人形のように美しく、しかし常に俯いて押し黙っているクローデリアに、社交界がつけたあだ名だった。


 しかし、クローデリアが社交界に馴染めない理由はもう一つあった。


 ——なぜ剣を持たせてもらえないの……?


 夜会のたび、クローデリアは無意識に腰のあたりへ手を伸ばしてしまう。

 だが、そこにあるはずの銀装剣ルミナス・エッジはない。

 指先が空を掴むたび、胸の奥が締め付けられ、言葉が喉に詰まった。


 剣がないだけで、クローデリアは自分が自分でなくなるような気がした。


 銀装剣(ルミナス・エッジ)——刃が月光のように美しく妖しい光を放つ、細身の片手剣だ。

 父、ヴォルフラム・レーヴェンハイト公爵から授かったその剣を、クローデリアは少女の頃からお守り代わりにして常に携行していた。


 だが、王国の社交場に剣を携行するなど、当然のように禁じられていた。それが王太子の婚約者の令嬢だろうと例外ではない。


 剣に執着する人形のような公爵令嬢を、社交界はますます薄気味悪がっていた。



 いつもの夜会の通例どおり、王太子ユリウスが挨拶のために出席者の前に立った。


 しかし、いつもと様子が違っていた。


 ユリウスの隣にいたのは、婚約者のクローデリアではなく、社交界で近頃頭角を現してきた、ミレーヌ・オルセーヌ伯爵令嬢であった。


「夜会を始める前に、一つ皆に伝えておきたい」


 ユリウスが口を開き、会場の隅で俯くクローデリアを見た。


「クローデリア・レーヴェンハイト、おまえとの婚約をここに破棄する」


 会場がざわつく。


 名前を呼ばれたクローデリアがびくっと反応したが、顔を上げることはなかった。


 その様子を見て、ユリウスが続ける。


「……抗議もせんのか、クローデリア? そういうところだ。黙りこくって何を考えているのかもわからん。そんな者に王太子妃などできるわけがない」


「殿下、クローデリアはお優しい方なのだと思います。……ですが、お優しすぎるのも、王太子妃の重責を担うのは難しいかもしれませんわね。貴族のご令嬢なのに、いつも剣をお持ちでなんだか気味が悪いですし……」


 ユリウスの隣にいたミレーヌが言う。

 ミレーヌは、クローデリアとは対照的に、明るく華やかな笑顔を浮かべていた。社交界で近頃もてはやされているのも、無理はないと思わせる笑みだった。


「そうだ。その剣も問題なのだ」


 ユリウスが俯くクローデリアに厳しい視線を送る。


「王太子である俺に近づき、命を狙っていたのではないか?」


 会場が騒然とする。


「近頃は王国騎士団(ロイヤル・ナイツ)の訓練にまで顔を出しているとか。公爵家の軍がありながら、なぜ王国騎士団に近づくのか?」


 ユリウスが会場を見渡し、さらに声を大きくする。


「王国でも有数の強さを誇る軍を持つレーヴェンハイト公爵家が、王国騎士団と結託すれば、王家にとって代われるとでも考えているのではないか……」


「まあ、そんな恐ろしいことが!」


 ミレーヌが驚いたように、よく響く声を上げた。


「そ、そんなことは……」


 ついにクローデリアが少し顔を上げ、囁くような声で否定したが、騒然とする会場にその声はかき消された。


 ——剣が欲しい……。


 クローデリアはそれだけを願っていた。


「そこでだ……」


 そのとき、王宮の大広間の扉が開いた。


 人々の目がそちらに向く。


 大広間に入ってきたのは、夜会には似つかわしくない、巨漢の近衛騎士だった。その騎士は複数の武器の入った大きな木箱を抱えていた。


「古い王国法に則り、決闘裁判を行う」


 夜会の出席者の一人がユリウスの前に出る。


「王太子殿下……夜会の余興にしては、少し血生臭いですな」


 それは王国の宰相ジークフリートだった。


「ジークフリート……これは余興などではない、逆賊を正当に裁く正式な儀礼だ。止めるのであれば、貴様もレーヴェンハイト公爵家とつながっているものとみなすぞ」


「そんなつもりはございません……。ですが、決闘裁判となると、王国法上、強い拘束力を持ちますので……」


「そうだ。だからこそ、決闘裁判によって、レーヴェンハイト公爵家の虚偽を暴き、反逆の芽を摘むのだ」


 王国では、真偽が判然としない際に決闘裁判が行われる。

 この決闘裁判では、勝った者が正しいとされる、とてもシンプルな仕組みだ。

 

 しかし、クローデリアにとって、決闘裁判が不当なものでしかなかった。たとえ冤罪であっても、一度決闘裁判にかかってしまえば、勝つ以外に身の潔白を晴らす手段はないのだ。


 ユリウスは、合法的にクローデリアを、いや、レーヴェンハイト公爵家を排除できる。

 ひょっとしたら、王家が力を増大している公爵家を危険視しての策謀かもしれない、とクローデリアはぼんやりと考えていた。


「さあ、クローデリア、決闘人を選ぶが良い。5分やろう。

 俺の側はこのガルドだ」


 ユリウスが武器を運んできた近衛騎士を指差す。


 それは王家の近衛騎士隊の中でも最強と言われるガルド・ベルンハルトだった。


 かつて国王の辺境視察に同行した際、数十匹の魔物に囲まれながら、ただ一人で国王を守り抜いた男である。

 その武名は、王都でも広く知られていた。


 クローデリアは俯きながら、上目遣いに広間を見回す。


 ただでさえ友人の少ないクローデリアに、この場で決闘人を頼める者などいようはずもない。たとえいたとしても、王国でも指折りの騎士であるガルドに挑もうなどという者がいるとは思えなかった。


「北境の黒狼公も、貴様の兄も今は王都にいない。誰も貴様を守れんぞ、クローデリア」


 勇猛で知られるレーヴェンハイト公爵家の者であれば、あるいは十分に対抗することができただろう。

 だが、「北境の黒狼公」と呼ばれる父は北の国境防衛、兄も魔物討伐の遠征に出てここにはいない。


 あえてこのタイミングを狙われたとしか思えなかった。


 そのとき、クローデリアの視線が一人の人物の前で止まった。


 ——王国騎士団長ルーファス・グレイヴェル。


 ユリウスが指摘したとおり、クローデリアは父の不在時に、王国騎士団にたびたび出入りすることがあり、ルーファスは顔馴染みであった。


 ルーファスは王国騎士団の叩き上げで、剣の腕一本で、若くして騎士団長まで上り詰めた猛者だった。

 当時、王都の貴族たちは、その昇進を異例だと驚いた。

 確かに彼であれば、ガルドにも対抗しうるかもしれない、と貴族たちも考えた。


「ルーファス様……」


 クローデリアはルーファスに近づき、声をかけようとする。


 しかし、その歴戦の王国騎士団長は、顔を青ざめさせて言った。


「私などでは、とても……あなたの決闘人など務まりません」


 その言葉に、会場の貴族たちが小さく息を漏らした。

 王国騎士団長でさえ、王家に逆らうことを恐れたのだ。

 そう受け取った者がほとんどだった。

 ユリウスもそれがわかっていて、今夜のこの決闘裁判を仕掛けたのだ。


 この王宮の夜会場に、クローデリアの決闘人になる者はいない。


 これでレーヴェンハイト公爵家は終わりだ、と貴族たちは確信した。


 中には、そう考えない者もいたのだが……。



 木箱の中で一本の細身剣(レイピア)が、燭台の光を受けてきらりと光った。


 俯いていたクローデリアの指先が、ぴくりと動く。

 次の瞬間、彼女は震えながら無言で歩き出していた。

 彼女は恐怖に怯え、錯乱しているようにも見えた。


 クローデリアはガルドが持ち込んだ木箱の前に立ち、その細身剣(レイピア)を手に取る。


 その瞬間、クローデリアの震えが止まった。


「軽い剣ね」


 クローデリアがそこで初めて顔を上げた。


「ふふ……王太子殿下にお似合いな軽さだこと……」


 夜会の出席者たちは、唖然としてその様子を見ていた。


 先ほどまで、俯いて押し黙り、おどおどしていたクローデリアが、剣に触れた途端に顔を上げ、まったく別人のように口を開いたのだ。


「だ、誰だ……おまえは?」


 ユリウスが狼狽えながら言った。


「あなたの嫌いなクローデリア・レーヴェンハイトです。……私もあなたが大嫌いですけれど」


「本当にあのクローデリアなのか……? 開き直りよって。まさかおまえが決闘をするのか?」


「ええ。どなたも決闘人を引き受けてくださらないのですから、仕方がないでしょう?」


「戦わず負けを認めることもできるのだぞ。そうすれば決闘で命を失うことはない」


 クローデリアはうっすらと笑みを浮かべた。


「ご冗談を」


 クローデリアがユリウスの喉元に剣を突きつける。


「レーヴェンハイト公爵家の者がこんな侮辱を受けて引けるわけがありませんわ」


「ガ、ガルド……」


 名を呼ばれたガルドが間に割って入り、その巨体でクローデリアの前に立ちはだかった。


「クローデリア様、決闘をするからには……いえ、俺に剣を向ける者には、誰であろうと俺は手加減することはできません」


 クローデリアが再び笑みを浮かべる。


「望むところですわ」


 ガルドの手には大振りの長剣(ロングソード)。一方のクローデリアは細身剣(レイピア)であった。

 クローデリアが奇跡的にガルドの太刀を受けることができたとしても、一撃で武器を砕かれ、そのまま頭部に斬撃を受けるだろう。

 親しくしていた者はほとんどいないとはいえ、公爵令嬢の無惨な死体が夜会場に転がるところを想像すると、出席者の中には気分が悪くなる者もいた。



「こうなっては仕方ありません。私が立会人を務めましょう。ご列席の皆様も証人となっていただきます」


 宰相ジークフリートが言う。


「王太子ユリウス・グランヴェル殿下の決闘人は近衛騎士団ガルド・ベルンハルト。クローデリア・レーヴェンハイト公爵令嬢側は、ご本人が決闘人となります」


 ガルドとクローデリアが向き合い、それぞれ頷く。


「では、始めてください」


 ガルドは無慈悲に巨大な長剣を振り上げた。


「苦しみはさせません」


 ガルドが言った。


 ——一撃で殺すつもりだ。


 誰もがそう思った。


 そしてガルドの長剣が轟音とともに猛烈な勢いで振り下ろされた。


 貴婦人たちの悲鳴が広間に響く。


 轟音とともに床石が砕けて飛び散った。


 そして、広間が静まり返った。


 ガルドの長剣は、広間の床に深々と突き刺さっていた。


 だが、その下にクローデリアの姿はない。


 次の瞬間、誰かが「あっ」と声を上げた。


 床に刺さった長剣の上に、白い靴先が乗っていた。


 ガルドの首元には、細身剣レイピアの切先が突きつけられていた。


 その剣を握っていたのは、クローデリアだった。


 ガルドが床に刺さった長剣から手を離そうとした瞬間、クローデリアの剣の切先が首に食い込み、血が流れ出た。


「やめておきなさい」


 クローデリアが冷たく言い放つ。


「レーヴェンハイト公爵家の者は、抵抗する者に容赦はできません」


「参りました……」


 ガルドは信じられないとでも言うような表情をしていた。


 その決闘を見ていた誰もが同じ気持ちだった。


「け、決着です。決闘裁判は、クローデリア・レーヴェンハイト公爵令嬢の勝利となります」


 呆然としていたジークフリートが、はっとして宣言した。


「ふ、ふざけるな! こんなイカサマが許されるか!」


 ユリウスが取り乱し、ガルドの武器箱から剣を取り、クローデリアに向かっていく。


「こんな小娘、俺が自ら叩き伏せてくれる」


「殿下、それは決闘法に反しますぞ」


 宰相ジークフリートが制止しようとする。


「だいたい決闘人を立てられない時点で、負けだろうが」


「決闘人の選定にそんな規定はございません。むしろ、本来は真偽を争う当人同士が行うものです」


「では、俺が決闘人で問題ないではないか!」


 突進してくるユリウスをひらりとかわし、クローデリアは足を引っ掛けた。


 ユリウスは派手に転倒し、顔を上げたときには目の前に細身剣(レイピア)の切先があった。


「決闘に応じていただいたということは、王太子殿下であれ、斬られても文句はございませんね?」


「ま、参った……」


 その声が聞こえなかったかのように、クローデリアは剣をユリウスの顔に向けて突き刺した。


 剣はユリウスの顔をかすめ、床に突き刺さっていた。


「次は、外しません」


 誰もが見たものを信じられず、何も言えなかった。



 そんな中、王国騎士団長ルーファスが口を開いた。


「だから言ったのだ。『銀閃の剣姫』クローデリアに代わって、私程度の者が決闘人などおこがましいと」


 夜会に出席していた中で、普段から剣の稽古に付き合わされていた王国騎士団の幹部たちだけが、クローデリアの実力を知っていたのだった。



「これ以上の異議は受け付けられません。クローデリア・レーヴェンハイト公爵令嬢の勝利です。よって、王太子ユリウス・グランヴェル殿下が申し立てた、レーヴェンハイト公爵家に対する国家反逆の疑義は、虚偽と認定されました」


 宰相ジークフリートが、決闘裁判の結果を改めて宣言した。


「ふ、ふざけるな! こんなものは無効だ! ただの余興に決まっているだろう!」


 ユリウスが喚いた瞬間、広間の空気が冷えた。


「余興ではない、と仰ったのは殿下ご自身です」


 宰相ジークフリートが呆れたように言った。


「古い王国法に則り、決闘裁判を行う。逆賊を正当に裁く正式な儀礼である。そう仰せになりましたな」


「そ、それは……」


「ご列席の皆様も、お聞きでしたね」


 ジークフリートが会場を見渡す。


 貴族たちは、ひとり、またひとりと頷いた。


「聞きました」

「確かに、正式な儀礼と」

「止めるなら、我々も逆賊とみなすとまで……」


 ユリウスの顔から血の気が引いていく。


「決闘裁判に敗れた以上、殿下の訴えは虚偽と認定されます。すなわち、レーヴェンハイト公爵家に国家反逆の濡れ衣を着せ、王国有数の忠臣を謀略によって排除しようとした、ということです」


「俺は王太子だぞ!」


「だからこそ、その言動の責任は重いのです」


 ジークフリートの声は揺るがなかった。


「王太子が、王国法を私物化し、政敵を冤罪で葬ろうとした。これを『余興でした』で済ますことなどできません」


 ユリウスは助けを求めるようにミレーヌを見た。


 だがミレーヌは、すでに一歩後ろに下がっていた。


「わ、私は……殿下のお言葉に驚いていただけですわ」


「ミレーヌ……?」


「国家反逆だなんて、私は存じませんでしたもの」


 つい先ほどまで隣で微笑んでいた令嬢は、もうユリウスの隣にはいなかった。


 しかし、ジークフリートはミレーヌにも告げる。


「ミレーヌ様、あなたの発言も決闘裁判の証言として記録されています。もちろん、ユリウス様側の発言を擁護した証言として」


 ミレーヌの顔から、すっと血の気が引いた。


 再びジークフリートがユリウスに向き直る。


「さて、殿下。懲罰については、国王陛下にご相談の上、追って決定させていただきます」


「父上にも報告するのか……?」


「王家と上級貴族の量刑は、国王陛下に諮るというのが決闘法の規定です」


 ジークフリートはそう冷たく言い放った。


 ユリウスはまた助けを求めるように、次にクローデリアのほうを向く。


 剣から手を離していたクローデリアは、再び俯いて押し黙っていた。


「ク、クローデリア。すまなかった。決闘はなかったことにしてくれないか? 婚約破棄も解消しよう。それならば良いだろう? おまえは王太子妃だ」


 ユリウスが哀願した。


 クローデリアがチラリとユリウスの顔を見て言った。


「……私、あなたのこと嫌いなんです」


 普段から大人しいクローデリアであっても、その気持ちだけは譲れなかったようだった。


   ※


「ご無事で何よりでした」


 散会となった夜会の後、クローデリアに声をかけたのはルーファスだった。


 ルーファスの声を聞いた途端、クローデリアは頬を赤くし、視線を床へ落とした。


「あ、あの……ルーファス様。先ほどは、失礼しました」


「何がです?」


「決闘人を、お願いしようとして……」


 ルーファスは小さく首を振った。


「失礼だったのは、私の方です」


「え……?」


「あなたが私よりも優れた剣技をお持ちだと知っていながら、決闘人をお受けすべきか、最後まで迷っていました」


 クローデリアは俯いたまま上目遣いにルーファスを見た。


 ルーファスは静かに笑った。


「ですが、やはり私は間違っていなかった」


「……でも」


 クローデリアは小さく呟いた。


「剣を持っていない時のわたくしは、やっぱり弱いです」


「では、その時は私が隣にいます」


 クローデリアが思わず顔を上げる。


「……そ、それは、騎士団長として、ですか?」


「いいえ」


 ルーファスは少しだけ声を落とした。


「一人の男として、です」


 クローデリアが何かを言いかけたが、そのとき別の人物が近づいた。


「クローデリア様、ご無事で何よりでした」


 ルーファスと同じ言葉で声をかけてきたのは宰相ジークフリートだった。


 クローデリアはまた恥ずかしそうに頭を下げた。


「国王も公爵もあの王太子殿下には手を焼いていましたので……。うまくいってよかったです。しかし、あそこまでお強いとは……」


「えっ……?」


 クローデリアが小さく声を上げた。


「あ、いえ。何でもございません」


 そう言うジークフリートの声はどこか明るかった。


「ですが、クローデリア様のおかげできっと王国は良くなります」


 そう言ってジークフリートは笑った。


   ※


 その後、決闘裁判により、その剣技が広く知られるようになったクローデリアは、王国騎士団(ロイヤル・ナイツ)の副団長として迎え入れられた。


 一方、ユリウスは王太子の称号を剥奪され、王位継承権の無期限停止を言い渡された。その上で、王国騎士団(ロイヤル・ナイツ)に最下級兵として放り込まれた。


 さらに配属先は、クローデリア・レーヴェンハイト副団長の直属部隊だった。


「あの、殿下……あ、いえ、ユリウス卿……」


 訓練場でクローデリアが、おずおずと声をかける。


「きょ、今日も……よ、よろしくお願いします」


 そう言って彼女は、腰の銀装剣ルミナス・エッジに手を添えた。


 次の瞬間、銀の瞳が冷える。


「まずは素振り千本です」


「せ、千本……?」


「不服ですか?」


「い、いえ……」


「では二千本です」


「増えた!?」


「口答えは三千本です」


 その日も王国騎士団の訓練場に、元王太子の悲鳴がよく響いた。


 かつて彼が「銀の置物姫」と呼んだ令嬢は、今や彼の根性を叩き直す上官になったのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


もし少しでも「面白かった」と思っていただけたら、

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のいずれか一つでもいただけると、めちゃくちゃ励みになります。


改めて、ありがとうございました!

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嫌いな男相手でも軍人モードなら大丈夫なんだ。直接シゴくエンドは割と珍しいけど、まぁ理にかなかってる、か?
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