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第40話 灯編

あたしはレズだ


それもかなり痛いほうのね


あたしね、結構中学のころは中々リア充しててさ

友達も普通にいたし、別に孤独とかはなかった


学校が終われば安いカラオケ行ったり、マックに行ったり、やたら外食したがったり

ディズニーで盛り上がったり、ちゃんと並な女子の生活してた


でもさ、あたしってね、ずっと自分の‘青春’ってものに憧れてて


ジャニーズのライブについていったり、学校帰りのしりとりで負けたら罰ゲームとかおごりとか

親をウザいとか言って皆でうなずいたり

男子の前だと猫かぶりして笑って話してボディータッチもして


次にその男子はどうだったか話のネタになると

また笑って、ちょっと愚痴っぽく言って、ここは良かったたけど、あそこであれはないとか、ホントくだらなく言って


そういうの、どっか違うと…思い始めた


素直に笑ってたのに、楽しくて充実してたのに…


私の思う‘青春’とはなんか違ってた


だからさ、いつも遊んで帰るとどっと疲れてて、家の中だとふぅっと息が出て

それでいて、どっか苛立ってたんさよね


あたしは、そういう生活と友達の輪の中にいた

皆幼い中学生、大人も先生も親もうっさいキモい

感情豊かに機敏で、何かあるとすぐ悩んで愚痴る

髪も服も顔も性格も着飾って、それでいて周囲と理解し同調し、必ず共有化する


もしドタキャンしたり、勝手に部活をやめたり、価値観が外れたりして

その輪から外れると、陰口やいじめ、悪い部分をこれでもかと特徴付けたあだ名を言われたりする


ずっと疑問を抱えながら、そんな生活を送って


…なんか疲れちゃってさ


集団の優等生の中の評価し合う生活がつまんなくて


だから、……やめた



ある日、友達全員とめっちゃ喧嘩した

マジあんたってなんなの、みたいに怒鳴られて…キレられて、一人はずっと泣いちゃってた


そこで、あたしは携帯に登録していた全アドレスを消した


一秒とかからず、一瞬で全てが消えた

何もなかったかのように、友達と呼ばれる人達と絶交した…


なんていうか、あたしってさ…こんなだからさ

飾りもしない、ずっと素顔の正しい自分でいたら、いろいろとクラスで浮いちゃって


自分は正しいって思って他の子に言ったら先生に怒られたり、こんなテンションで色々言うと必ず決まって皆離れてった

意味不明、重い、疲れる、理由はいっぱいあったんさ


そんなんで、クラスってのはあっさり諦めた

でも一人ぼっちって…やっぱりきつくて、中学生のあの時期だと尚更で


だから、あたしは街に自分の存在を証明しようとあがいてた

あたしが望む青春がきっとあるんだって信じてた


中学生なりに、人から構ってもらえる方法を探して

パソコンは家にもなかったし、さっぱり使い方もわかんなくて無理だった


中学生のガキ一人

うざくなって黒板消しを勝手に捨てたり、むかついて火災報知器鳴らしたり

マンホールに消えない落書きしたり

学校のブレーカー切ったり、雑巾燃やしたり

枠や輪に入らない意味も込めて、髪も染めた


前を歩く女子三人組が同じ飲み物買って飲みながら帰ってるの見たりして

それと同じ飲み物万引きしたりしてさ


クラスの連中に見つからないよう、夕方の駅前で男装して、ベースの弾き語りで歌ったりしたこともあったな

日頃のうっぷんをBUMPの歌詞に乗せて街中に響かせると最高だった


あとは、道の真ん中で死体の真似とかもしたんだ

死体の真似は一番強力でよかった


色んな方法を考えた

いつもどんなのがいいか考えてた、なんか安心できた


存在の証明と青春論理、あたしは同時進行で考えてた


そうして、気がつけば問題児、不良って呼ばれてた

相変わらず先生からは怒られて、生徒からは引かれて遠ざかれて、街からは無視されて


でもあたしは、それが自分の罪だとか思わなかったし、投げ出してふて腐れたりもしなかった


今の隠さない自然な自分も、自分が求めている事が間違えてるわけないと思ったから

同じ気持ちや痛みを抱えた誰かには、きっときちんとわかってもらえるって思ったから


そんでも、そういう事をしてれば必ず‘警察’が立ち塞がる


何回も、めちゃくちゃ怒られた

親にも、めちゃくちゃ怒られた


いつからか、警察はあたしの敵になってた


だから調べた、警察にだって邪魔されない方法、ムカつく警察の仕組みや内部

大嫌いなこいつらのサイクルを徹底的に手探りで調べてた


量子論とか宇宙とか、般若とか仏教とか、意味もなく自分が気になったことも手当たり次第調べてた


死ぬ方法とかもがっつり調べてた



高校生になって、そんなとき


あたしはゆりと出会った


衝撃だったよ


死んだ目して、死体みたいな身体してる、いかにも病んでる女の子


でも、思った


ぁぁ、この子も同類なんだって

この子はなんか違う、変に周りに馴染むことに努力もせず愛想笑いもしない


でも世界を捨ててるわけでもない、自分の未来を諦めてるわけじゃない


ちゃんと他の子と同じように話をして笑う、ちょっと変なモノを引きずっちゃってる傷者だけど…


あたしたちは、痛モノ同士…だった


あたしの求めた青春が、ゆりとなら一緒に叶えられる気がした、確信した


そして、久しぶりにメールアドレスを交換した

あの日から絶交して真っ白の空欄だったアドレス帳に‘初めて’友達ができた


ゆりから返ってきたメールは絵文字も色文字も、長くてオシャレな流行り言葉もなかった

さえたネタも長話もしなかった


でもね、見たこともないくらい、スゲー素直だったんさよなぁ


ホント、嬉しそうな言葉使うんだ

たった二三文字だったり単調な文のメールなのに

初めてそういうメールを知った


だから…、貴女に恋もした


大好きすぎるくらい大好きになった


毎日クラスのドアを開けて入ってくる貴女が、愛おしくてたまらなくなった


冷たくてちっちゃくて、チョコレートみたいな色した髪

その全てが大好きになった


…でも、それはいけない事だった、決して許されない事だった


近すぎる友達という存在、一線を越えてはならない感情を、あたしは密かに抱くようになった


委員会でひよりとも出会った


自分を飾ることもなく、下手したらゆりよりも重い感じだったんだけど

でも自分の好きなオタク関連とか、平気でジャンプ立ち読みしてBLなんかの話を嬉しそうに話すところとか

そしてなにより、誰より、裏のない優しさだったり


二人目の友達が出来た


そんで ゆりが有珠を連れてきた


一目見て一番秘密や影がありそうな感じだったけど、誰より無邪気で楽しそうだった


正直…全員とも欠点だらけで、削除した友達からは、悲しそうな奴らだな、って思われるかもしんない


でも、これがあたしの望んだ青春だ


髪も服も髪も性格を着飾らない

愛想笑いも同調もしない


警察にまでたてついてあがいた、そんな待ち望んだ青春が


やっと、見つけられたんだ


フリータイムのカラオケで枯れるまで歌ったり

ミスドで友達のドーナッツを一口づつ食べたり

ガストで小さなデザートと飲み放題ドリンクで二時間いたり

携帯で長電話して上げっぱなしの二の腕がつったり

お風呂あがりにメールの確認したり


確かに、前みたいなそういうのはないんだけどさ


でもなんでかなぁ、学校でもダントツ最下位なこんな友達なのに


ただ四人がいて、四人がいれる場所があって、四人が笑いあっていればさ


ホントそれでいいんだ、それだけで幸せなんさ



けどあたし…不器用で、レズで


あのとき、本当はゆりを助けたかった

でも出来なくて…言っちゃったんだ さようならって


一番辛くて頑張って、責任も感じちゃうような小さな子なのに

毎日怯えて、でも希望を必ず見つけようとする、めっちゃいい子なのに


絶対、泣いちゃう子なのに…っ

…言っちゃったんだ‘さようなら’って


なんで、こんな大切で大好きな人に言っちゃったんだろう

なんではっきり自然な気持ちを伝えられないんだろう


あたしの痛みや嫉妬の前じゃ、友情さえも壊れてしまいそう…


明日 行っていいのかな?


助けたい、ゆりの為にまだ頑張りたい、街にあらがい続けたい


あたしが考えて進めた作戦だ

その為に出会った皆のカルマや能力を使った、ひどく言えば、犠牲にした…


それなのに、自分のつまんない小さな嫉妬なんかで、…お前は本当に潰すのか?


あたしがいなきゃ、あたしの思考と行動がなきゃ、この作戦は絶対不可能なんだ


ひより…、有珠…、ゆり…


全員いなきゃ、不可能なんだ


ゆりならどうしてるかな?

ひよりならどうしてるかな?

有珠ならどうしてるかな?


今ごろ、それぞれのカルマと対峙するために、皆は背中合わせに頑張って進もうとしてる


誰にも頼ることなく、不安を抱えながら、恐怖と希望をいったりきたりして、懸命に逃げずに戦おうとあがいているはずだ


だって、仲間を捨ててまで己の痛みを乗り越える道を選んだんだから


あたしはどうだ…?

あたしは今、どうしてるかな?


あたしはリーダーだ


やっと掴んだ青春に、後悔して弱音なんか吐いてる場合じゃないんじゃないか?


あの日 仲間と振りかざした夢はどうした? ただ得意気にぶら下げただけだったのか?


あたしの痛みは‘ゆり’

そのゆりのために、お前はなにをする?

何ができる?


決まってる

ウィッチを捕まえることだろ


好き勝手暴れてるウィッチを捕まえて、ゆりを警察からの恐怖から解消させてあげることだろ


そんで、晴れて全員揃って、BUMPのライブに行くことだろ



だったら なにをするべきなのか もうわかるだろ?



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