「耳長の国へ ― 静かな決意と密書の重み」
森の中の仮拠点は、今や立派な“生活圏”だった。
干した肉はきれいに並び、燻製棚では香ばしい匂いが漂っている。
罠の数も増え、夜の襲撃にも安定して対応できるようになっていた。
**──だが、心は晴れない。**
> 「……やっぱり、あの密書が気になる。」
アイテムストレージの奥。未だ開封時と変わらぬ状態で保存された密書。
それを読み返すことなくしても、内容は脳裏に焼きついている。
---
「もし、俺が何もしなかったら…」
「エルフの国――いや、**耳長族の故郷**が滅ぶ。俺と同じ姿をした連中が、理不尽に。」
これまでの戦場では、自分が生き延びるために動いた。
だが今は、**他人の命を救うために動くべき時かもしれない。**
> 「行くか。…いや、行くしかねえ。」
目指すは――**大森林国家・シルヴァリオン。**
---
背負った装備を再確認し、
ピクシーが旋回しながら進行方向を示す。
カーバンクルも静かに後ろをついてくる。
“仲間”というにはまだ遠いが、“孤独”というには十分な存在だ。
> 「エルフたちに、この密書を渡す。
> それが、今の俺にできる最低限の責任だ。」
---