『出会いの羽音 ― 妖精、現る』
レオナルディアの冷静さと、軍人としての判断力、そして少しずつこの異世界ルールに順応していく様子を描いていきましょう。
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## 第4話
### 『出会いの羽音 ― 妖精、現る』
ザザ……ッ。
風が止み、草がかすかに揺れた。
反射的にレオナルディアは矢を半引きに構え、視線を向ける。
そこにいたのは――
「……ちんまいのが飛んでやがるな」
空中をフラフラと漂う、小さな存在。
**背丈は手のひらほど。蝶のような羽根。きらめく髪と光る瞳。**
人間の少女のような顔立ちだが、透き通るような身体に妖しさが漂っている。
「鑑定、オン」
> 《種族:ピクシー》
> 《属性:風/精霊種(低位)》
> 《知性:低〜中程度 敵意:なし》
> 《危険度:★☆☆☆☆》
> 《備考:実体化直後の幼体。捕食されやすく、精霊種としては最も未熟な段階。》
「……ピクシー、ね」
その存在が“敵”でないことを即座に理解すると、レオナルディアは矢を下ろす。
(ただの動物やモンスターじゃない。これは“精霊”だ)
一歩間違えれば、森の捕食者たちの餌になるような存在。
とはいえ、精霊は成長すれば高度な知性と魔力を持つ存在にもなりうる――という鑑定結果。
興味深いが、今は優先順位を下げるべき対象。
「……作業再開だ」
レオナルディアは気配を切って、再び罠の構築作業へと戻る。
すると――
「ピピィィッ!」「チュィーン!」
ピクシーが高速で彼の周囲を**ぐるぐる飛び回り始めた。**
小さな羽音が周囲に鳴り響き、落ち葉や草を舞い上げていく。
「目が回る……」
時折、肩や頭にちょこんと着地しては、すぐにまた飛び立つ。
明らかに懐いている。敵意はまったくない。
(……なるほど。こいつ、俺に興味を持ったってわけか)
次の瞬間、また脳内に“通知”が走った。
> 《スキル獲得:妖精使役 Lv1》
> 《効果:低位精霊との意思疎通、簡易な指示が可能》
>
> 《スキル獲得:テイミング Lv1》
> 《効果:野生・精霊系・幻獣系との親和性上昇》
「……勝手にスキルが増える世界ってのも、面白いもんだな」
だがその目は冷静だった。
仲間意識も、愛玩感情もない。ただ“利用可能な戦力”としての評価。
「ピクシー。静かにしろ」
指を一本立てて囁くと、ピクシーはピタッと空中で静止し、
小さく首をかしげてから、木の影にすっと身を隠した。
(……使える)
レオナルディアは、確信した。