「静かなる収集と、魔法への興味」
ふと、思い出す。
――爆発魔法を放っていた冒険者がいたな。
戦場の只中で、魔力の奔流を炸裂させていたあの一撃。破壊力はもちろん、制御力にも目を引かれた。
(俺にも……使えるのか?)
そう、自分の身体のことを考える。
この異世界で再生した体は、動きが軽く、反応が早い。それに――どうも、魔法に対して“適正”があるような感覚がある。ただ、何かきっかけがないと使えそうにない。トリガーというか、イメージというか。試すにはもう少し準備が要るだろう。
(後で……こっそり聞いてみるか。使い手に)
そんなことを考えながら、静かに戦場跡を歩く。
倒れた巨木が一本。燃え残った枝に、焦げた樹皮。
壊れた盾、折れた剣。使い物にならないと判断されたのか、冒険者たちが無造作に捨てていく。
だが、俺にとっては“素材”だ。
《アイテムストレージ》に順番に入れていく。
巨木も丸ごと――異世界の力に驚くこともなく、すんなり収納される。
(……ああ、やっぱり入ったな)
これは最近、自分なりに“発明”したストレージの活用法だ。
ストレージ内で、木材を整形し、矢のシャフトとして加工。
時間の経過も劣化もない空間で、静かに大量の矢が生成できる。
今や、俺の矢筒は“中が空”になったことがない。
現地調達→即収納→ストレージ内で加工。非常に効率がいい。
(……この仕組みがバレたら、間違いなく目をつけられるな)
情報は武器だ。力も、手の内も、見せるべき時と隠す時がある。
ピクシーが肩の上でこくんと頷いたように見えた。
まるで、その考えに同意したかのように。
今日の旅路は、まだ続く。
けれど、少しずつ、俺はこの世界を“攻略”し始めているのかもしれない。