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「森を歩けば、風が告げる」

 森の息吹を感じながら、静かに足を進める。

 空気が少し湿っていて、朝の霧が名残惜しそうに木々の間を漂っていた。


 昨日の薬草採取で得た回復薬と毒消し薬をいくつか調合。乾燥させた薬草と一緒に、ストレージに整然と収める。

 作業の合間、ピクシーは器用に空を舞い、カーバンクルは丸くなって小さな寝息を立てている。


 ……と、そのとき、風の流れが変わった。

 動物的な勘が告げる。何かが近い。


「……来るか?」


 足音も気配も、まるで消えている。だが、いる。

 敵意はない。だが、何者かがこちらを観察している。


 すぐさま身を低くし、手早く罠の材料を確認。枝、蔓、杭。視線を巡らせながら、足元の踏み跡や小石の乱れを見逃さない。


 しかし、気配はすぐに消えた。

 何かが“こちらを試した”──そんな気がした。


 その日の午後は、拠点周辺の罠をさらに強化した。

 落とし穴に鋭利な杭を追加。トラバサミ式の枝罠には、毒草由来の塗布を施す。

 ストレージのアイテムを駆使して、トラップの完成度は着実に上がっていく。


 作業中、脳内に再びアナウンス。


【スキル「罠設置」Lv2 に上昇しました】

【スキル「調合」Lv1 を習得しました】


 森が応えてくれている。体が軽く、集中力も研ぎ澄まされている。

 明らかに以前より“動ける”。筋力ではない。反応と感覚だ。


 ――その夜、静かな空を見上げると、3つの太陽のうち1つが、ゆっくりと落ちていくのが見えた。


 耳を澄ませると、遠くで木の枝が折れる音。

 敵か? いや、獣か。目立った動きはない。


 今夜は寝ておくべきだ。眠る力もまた、生存には不可欠だ。


 明日はもう一歩、森の外に進んでみよう。

 この世界の“外”を、確かめに行く。


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