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アブノーマル  作者: 秋田こまち
第一章
7/17

第七節 風邪を引いた話

つい先日私が本当に風邪を引いた時にその場のノリと勢いで書いた話。

珍しく短め。今日も今日とてセリフが多いです。

[前回までの、◯ョ◯ョの奇妙な冒険!]

 足立区内で妖怪が次々に暴走する事件が発生。

 結月と旧知の仲である死霊術師の笹木も一緒に暴走事件に巻き込まれてしまうことに。

 何とか接近戦対策を利用して勝利(雑)した結月だったが、その裏では二人の人間が何かと暗躍していた。

 

[序]

 二〇一四年十一月二八日

 明日は新書の発売日。仕事後だと言うのに、散々はしゃぎ回った後意気揚々と結月は布団に飛び込んだ。

 その時は、まだ異変はなかった。


 二〇一四年十一月二九日

 朝から、身体に異常は感じていた。何故か、妙に頭が回らなかった。何故かやけに寒く感じる。呼吸も荒い。

 不意に力が抜ける。

 皿が手から滑り落ちる。

「うわっ」

 ガシャンと、大きな音を立てて皿が割れる。

「大丈夫ですか!?」

「う、うん」

 普段はこんなことなかったのに、どうしてだろうか。

「結月くん。なんだか」

 天音がこちらを見つめてくる。

「ああ、片付けは自分でやるからいいよ」

「?いえ、そうではなくて」


「顔が・・・赤いような」


[一]

 38.1℃。

「如何せん熱が高い」

「とりあえず安静に。今日はお店お休みしましょっか」

「えー困るよー」

 近場にあったエプロンを取り、首に掛け、腰の紐を結ぶ。

「まだ事件が解決してないのに休めるわけ無いでしょうが」

 結月は店へ消えていこうとする。が、もう少しで階段というところで、首根っこを掴まれる。

「駄目です。安静にしてください」

「・・・・なんでさ」

 結月は天音を軽く睨めつけたが、天音はそれでもひるまなかった。

「最近働きすぎです。少し休んでみては?」

「休んでるでしょ?」

「たった三時間の休憩で十分な休息と言えますか?」

「うん」

「イカれてますね」

「だっしょ?」

「認めないでください」

 天音は結月を引っ張り出すと、そのまま抱えて布団まで持っていった。


「お薬はどこにあるんですか?」

「・・・カレンダーの下」

「あ、ありましたね」

 天音は結月のもとに薬を持ってくる。

 差し出された薬を規定量飲み込む。

「さ、寝ててください」

「いや、けど、家事とか」

「良いから寝る」

 天音から普段は感じないほどの剣幕を感じ取った結月は、大人しく眠りにつくことにした。


「さ、食器とか全部片付けちゃいましょうか」

 袖をめくり、エプロンをつけると、天音はシンクに向かった。

 スポンジを握り、食器用洗剤を垂らす。

 食器洗いの基本は御子時代にある程度身につけたので、何もなければ無事に食器は片付く。

 何もなければ。

 予想と反して、天音は素早く食器を片付けた。

 

 食器の片付け、部屋の掃除等々。やるべきことをすでに終えた天音は、暇を持て余していた。

「ひまー・・・・・」

 その一言は虚空に消えていく。

 テレビを付けて気を紛らす。

 少し早めのクリスマス特集を放送していた。

 天音はクリスマスについて一応の知識を身に着けていた。といっても、

『西洋にこんなお祭りがあるらしい』

『へー』

 あたりのことしか教わってないのだが、

「クリスマスですか・・・・どうしましょうかね?」

 結月は、クリスマスやハロウィン等の騒がしい行事が苦手なように感じる。

 といっても、この一ヶ月で感じたことなのだが、やけに人を避けているような気がする。

 人混みなどではなく、関わること自体を。

 だが、思い出してみれば、天音が幽世あちらに行く前までに関わっていた人間とはうまく友好的な関係を見せている。唯一知らない人間とすれば、それは端白くらいか。

「結月くん、クリスマスについてどう考えてるんですかね?」

 後に、結月はクリスマスのことをケーキ安売りの日と答えるのだが、それはまた別のお話。

 ふと、結月の様子が気になって部屋を覗いてみれば、安静に眠っていた。


「そろそろお昼にしましょうかね」

 天音は台所に立ち、米を研ぎ出した。


「結月くん。お昼できましたよ」

「ん、ありがとう」

 盆を受け取った結月は、いつもとは少し違うように感じた。風邪だからだろうか。どこか、元気がないというか、静かだった。いつもは端白や優作に絡まれて、少し元気というか、騒がしいというか。良く言えば元気。悪く言えばやかましい。そんな印象だった。

 だが、今日の結月は、言うなれば昔の結月に近い。そんな印象だった。

 匙を取り、口にいれる。

「これ、梅?美味しい」

「も、もっと詳細なこととかは・・・・」

「うーん。えっと。ごめんね。わたし、そんなに食レポとか得意じゃない」

「そ、そうですか。ごめんなさい」

「謝るほどじゃない。けど、これだけは言える。

 あったかいよ。天音の作ったお茶漬け」

「出来立てですから」

「そうじゃないんだ」

 結月は人差し指を立てると、天音の方をしっかりと向き直って、言った。

「作り手が、どんな思いで作ったか、食べる人のために、どんな工夫がされてるのか、十分わかる。

 梅干し入れたの、私が風邪だからでしょ?免疫力を上げて、早く治すために。それに、出汁も、私が好きな鰹出汁。少し冷めてるのは、猫舌な私に合わせて、出汁を取ってから少し時間を置いてる。ご飯も、あんまり食べない私に合わせて、少なめによそって作った。」

 結月は、茶漬けの方を見る。

「飲食店で出てくるようなものは、美味しさと見た目重視。

 物によっては万人受けするわけじゃないけど、それでも店舗のほうが提供する人数が多いから、食べる人のことなんていちいち考えてられない。確かにハンバーガーとかは食べやすいけど、それは利便性の話。掴みやすくて、食器も必要ない。けど、どんな時に食べるかとかは、考えられてない。

 けど、天音のお茶漬け(これ)は違う。徹底的に、私に合わせて作られてる。

 味付け、量、温度。私に対する・・・・なんていうかな、感情?」

「愛情・・・ですか?」

「そうそれ・・・・とは断言できないけど、それに近しいもの、言うなれば・・・上手く形容できない。とにかく、その人の気持ちがこもってる。私が言ってるあったかいっていうのはそれ。家庭的な暖かさ。それがある」

「結月くんのには、ないんです?」

「わたしのは先生の料理を模倣してるから。

 作り方も、材料も、全部同じ。そういうふうにしか作れない。

 先生が、何をどう思って作ってたのかはわからないけど」

 結月は、口を動かす。口の中に、柔らかい米の甘みと、梅干しの酸味、燻した鰹の香りが漂う。

 気付けば、もうすでに椀の中は空になっていた。

「おかわりします?」

「いいや。おなかいっぱい」

 手を合わせる。

「ごちそうさま」

「お粗末様です。あした病院行きましょうね?私ついていきますから」

「・・・ん」

「どうかしました?」

「たべたらちょっとねむくなってきたかも」

「そうですか。おやすみなさい」

「・・・おやすみ」

 目を閉じた結月は、心做しか笑顔に見えた。

 自分も昼食を食べて、少し休もう。

 そうして天音は、再び「ひまー」と床に伏したのだった。

[二]

 暗い。部屋の中にいた。

 狭い。ここはどこだろうか。

 寒い。ほんとにココどこ?

「さむ・・・」

 桐生礼華は拘束されていた。手足は縛られ、少しだけ出ている素肌からパイプ椅子の冷たさを感じる。

「アンタが賢者か?」

 眼の前に、紫の髪の少年が腰掛ける。

 いや笹木とキャラ被ってんなこいつ (今更)

「そうだけど、アンタ誰よ」

「俺は紫電っていう。ちょっとアンタの力が借りたくてな。よろしく」

「よ、よろしく・・・?」

 返しはこれであっていたのだろうか。礼華は少し疑問を抱いた。


「はいじゃあ咳止めと熱冷まし出すので、ちゃんと飲んでくださいね?」

「はい」

 適当に返す。

「ちゃんと飲んでくださいね?」

「・・・・はい」

 目をそらす。

「ち ゃ ん と 飲 ん で く だ さ い ね ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・はい」

「絶対飲まないじゃん」

 天音は結月とともに立ち上がった。

「ありがとうございました。あの、お忙しいんじゃ」

「そうですが、流石に患者さんを見ないわけにはいかないので」

「そうですか。がんばってくださいね」

「はい、ありがとうございます。結月も、こんないい相手が居るんだから、心配させないこと。良いね?」

「相手って何」

「恋人じゃないの?」

「ちがわい!」

 乾いた喉で叫ぶ。

「え?あんなことやこんな事やってないの?」

「人のことなんだと思って」

「女を食うショタ」

「結月くんって肉食だったんです?」

「流石にそんな身長低くないでしょ。というか私も女なんだけど」

「え、そうなの?」

「診察医として幾度となく私の身体見てきたでしょ」

「その平たい胸で女性?」

「ぶっ飛ばすぞテメェッ!」

 珍しく

「珍しくキレた。しかし声はガラガラ」

 あ、地の文取られた。

「いいか?現実であんなでかい奴はいないんだ。そんなのフィクションで・・・」

「君の隣りにいるじゃん」

「・・・・あー・・・・・」

「そんな話してないで、早く行きましょう。慧ちゃんも迷惑でしょう?」

「うーん。いい感じに暇が潰せてよかったんだけど・・・師匠いないし」

「こちらから見たらあまりいい話ではないんですよ。私が太ってるみたいに言われますし」

「こいつが細いだけ。結月って普段何食べてるの?」

「カロリーメイト」

「え?」

 天音の顔が少し強張る。

 どうして?どうしてそんな不健康な食事を・・・

「というかカロリーメイトと何食ってんのよ」

「ん?それだけ」

「「・・・・は?」」

「ほ、他に何か」

「何も?」

 本当にどうして?

「ダイエットかなんか?」

「あ、栄養のサプリあるじゃん?」

「まさかあれ飲んでるとか」

「飲んでる」

「言いませんよねって言おうとしたのに」

「どんなディストピアだよ」

「あ、朝晩はしっかり食べてるよ?」

 良かった。

 天音は少し安堵し、胸をなでおろした。

「何でそんな食生活してるの?」

「楽だから」

 天音は、再び後ろにドス黒い炎を出現させる。

「・・・・・後ろの奥さんが爆発する前に食生活を見直すことをおすすめするよ」

「奥さんて。そんなんで何で爆ぜるのさ。他人の話じゃない」

 更に天音が燃え盛る。

「他人は他人でも大切な人っていうのが」

「けど所詮他人でしょ?自分の身体のことじゃない」

 さらにさらに天音が燃え盛る。

「とにかく、見直してください」

「えー」

「そんなんじゃ死ぬよ?」

「別にいいよ」

 またまた天音が燃え盛る。

「・・・・・お願いだからもう帰って」

「何でよ」

「後ろがコワイ」

 慧は立ち上がって、薬を探して戻ってくると、結月に言った。

「ちゃんと飲んでね?大丈夫?飲み方わかる?」

「いや、子どもじゃねぇよッ!」

 怒鳴りつける。声は弱々しいが。

「だって貧血の薬も禄に飲んでないじゃない」

「飲んでるわッ!」

「はいはい。良いから帰りましょう?お医者さん困っちゃいますからねー」

「なっ」

 襟の後ろを掴まれた結月は、大人しく天音に引きずられていった。


「全く。平均から5センチ低いだけで何でみんな子供扱いしてくるのさ」

 解。身長が低いから。

[急]

「これでよし」

 赤髪の少年が、礼華の前に立つ。

「・・・何をする気?」

 警戒する礼華。

 少年は、両腕を広げた。

 傍から見れば、カルト宗教の教祖のようだった。

「報復だよ」


 結月は軽く昼食を食べると、もらった咳止めを服用し、少し眠ることにした。

 食器を片付ける。部屋には、食器が当たる音だけが響いた。

 その時だった。

 機械的な音が、台所に鳴り響く。

 楽器なんてこの家にないし、ましてやこんな音どんな楽器も奏でない。となれば。

 携帯を見る。

 そこに表示されていたのは、110の文字。

 この番号といえば、思い当たるのは一つだけ。警察からの電話。

 何のようだろうか。天音は手を洗って携帯電話を取る。

 さすがの結月でも、

「もしもし。はい、桐生天音で間違いないですが・・・」

 まさか、こんなときに非常事態に巻き込まれるなんて、思っていなかったわけで。


なんかこの近辺どこの店もアークナイツのパックだけ売り切れてるんですけど。何故かデッキは置いてあるんだ。

足立区はドクターが多いんですかね。

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