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アブノーマル  作者: 秋田こまち
第二章
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第一節 新しい物語の開幕

簡単にわかる第一章のあらすじ


 どこか違う世界の日本、隠世。足立区在住の古本屋兼退治屋、枸城結月のもとに舞い込んできたのは、かつて失踪した幼馴染、桐生天音の護衛依頼。保留にすると言ったものの、結局護衛対象本人の希望で彼女を家に住まわせることに。彼女だけでなく、実験が失敗して外の世界からやってきた少女や、愉快な仲間たちとの、どこか新しくもいつもと変わらない穏やかな日常が始まる。

 と思いきや、ある少年が引き起こした妖怪の暴走事件によってその日常は崩されていった。そんな中、桐生礼華がさらわれてしまった。

 ようやく犯人を突き止めたかと思えば、犯人の手によって天音は凶弾に倒れ、その精神的ショックで天音の母である礼華は霊格崩壊を引き起こし、自我を失って暴走してしまう。

 何とか制圧したものの、風邪をひいていた結月は無理な動きをしたせいで余計に風邪をこじらせてしまう。


お久しぶりです

今回書き方を改めてみましたがやっぱりセリフ多めです。この状況から脱却できますように。

――――幸せな瞬間とはどんな時だろうか。

 必要もなく惰眠を貪っているとき。あるいはおいしいものを食べているとき。あるいは料理をしているとき。あすかばとき。

「おもんな」

 あるいはショッピングに出かけているとき。あるいは旅をするとき。あるいは本を読んでいるとき。

 あるいは、こうして無心になって原稿を書いているとき。

 創作活動において何も考えないのは楽なことだ。何事も主観で見て、いちいち感情移入してことあるごとにすり減らすよりも、事を客観的に考えたほうがまだ生きていけると思う。

 感情移入や自己投影をするな。というわけではない。する場所を考えなければ、疲弊しきって使い物にならなくなってしまうだけ。

 窓の外を見上げる。

 いつ見ても空は青いはずなのに、私には灰色に映っていた。

 もしかしたら私はおかしくなっているのかもしれない。

 いや、私は、私達は、

――――もうすでに手遅れなくらいに狂ってしまっていたか

 ハッと気付く。

 随分と格好つけたことを書いてしまったかもしれない。

「やっべ。いまのなしいまのなし」

 結月は慌てて今まで書いていた文を書き直した。

「相席してもよろしいかしら?」

「ああ、どうぞ」

 結月の前に少女が腰を掛ける。

「あなた、作家さん?」

「え?」

「これ、小説のプロットでしょ?」

 少女はルーズリーフを指さす。慌てて隠す。

「いや、別に。趣味ですけどね」

「いえこれは…日本語はあまりうまくないけれど、プロが書いたみたいな書き出ししてるわ」

「過言ですよ」

「かごん?」

「言い過ぎって意味です。日本語がうまくないって、もしかして外国から?」

「ええ。ドイツからちょっと」

「独逸から?」

「ご注文は?」

「ブレンドを一杯」

「承知いたしました」

 給仕係が帰っていく。

「世の中、いろんなことがありますね」

「確かに。事実は小説より奇なり。ということわざがあるのでしょう?本当にそのとおりね。この世界は」

「普通の、それこそ外の世界から来た人だと特にそう感じそうですね。実際夢と疑ってる人がいましたし。」

「…来訪者に会ったことがあるの?」

「まあ、いろいろあって」

「いろいろ?」

「ええ。いろいろ」

 沈黙に包まれる。

「こちらブレンドです」

「ああ。ありがとう」

 一口啜る。

「おいしいわね」

「ですよね。このお店お気に入りなんですよ」

「にしては道が難解過ぎないかしら?」

「そうですかね?まあ、人里から結構離れてるから、慣れない人からしたら大変ですよね。生憎、この暑さですし」

 受け皿にカップを戻す。

「あなたは、どうして日本に?」

 窓の外を見上げる。

「仕事から逃げたくて…」

「…そんなに大変な仕事なので?」

「ええ。町の治安をちょっと…ね」

「そうなんですか?」

「ついこないだも大学が爆発したりしたわね……あなたは?」

「うちもそんな感じですね」

「そうなの?」

「ええ」

 コーヒーを啜る。

「つい先日、ここらへんで妖怪が暴れまわる事件がおきまして…その対応に困って…」

 双方、一口コーヒーを啜る。

 カップを受け皿に置き、閉じていた目を開くとともに現実に引き戻される。

「大変ね。お互い」

「そうですね」

 苦労人二人。生まれた国は違えど、確かに互いに友情が生まれる…かもしれない瞬間だった。

 この先どうなるかは、まだわからない。


[数日前]

 理由は何だってよかった。

 きっと、この仕事から一日でも逃げたかったんだと思う。

 だから彼女は、置き手紙ひとつ置いて、ついでに案内役を攫って旅に出る。


「なんで?」


 突然だが、腹が減った。喉も乾いた。

「今日って何月だったっけ……」

「四月だよ。まだ」

 アルクは隣に歩いているミリアに尋ねた。

 本日四月十九日の最高気温は28℃。

 サマーシーズン到来!と言うには随分早すぎる。それに夏というにはいささか涼しいような気がする。

 東京から出ていないはずなのに辺りを見渡せば木々が青々と茂った森林が広がっていた。

「誰か太陽を消し飛ばしてくれないかしら」

「そうしたら人間どころかほかの生物も多分滅んじゃうよ」

「そうかしら…?」

「やばい!普段の激務のせいで頭がやられてる!」

 羽田国際空港から適当に歩いて数時間。どこも混雑しており、昼食も食べれないまま、いまだに森林から出ることもできていない。

 こんなことになるならば昼食ぐらい事前に空港で済ませておくべきだったか。

「とにかく、町に出ない…と…?」

「そうね…人里がないと店もないも…の?」

 頭上の看板が目に映る。

「もしかして、この先に人里があるんじゃない?」

「そうかもしれないわね。倒れる前に行きましょう」

 果たして人里は近くにあるのだろうか。もしかしたらもう数時間森の中をさまようことになるかもしれないのに。だが、そんな不安も、考えも、二人の頭にはなかった。考えられなかった。それほどまでに、二人は限界に達していたのだ。

 だが、標識には人里なんて書いていない。

 それはこの森に囲まれた土地を明確に分けるため、自治区と自治区の境目を確かにするための看板だった。こうして二人は知らず知らずのうちに魔境と呼ばれる土地に足を踏み入れてしまったのだった。

 異邦のご客人。ようこそ死地へ。ようこそ魔境へ。ようこそ、我らが足立区へ。


「あんたのこと、許したわけじゃない」

 勢いよく机を叩く。

 受け皿に乗った湯呑みが小さく揺れる。

「あんたがしたことは三つ。

 一つ。天音を撃ったこと。

 二つ。ただでさえあんたの魔術で面倒臭いことになってたのに、桐生礼華の霊格を破壊してくれたこと。

 三つ。私をロリだの幼女だの散々罵ったこと!」

「私のことはいいですから。それより結月ちゃん、貴女何歳か言ってみなさい?」

「枸城結月、一三歳独身。ネットで初めてあなたを見かけたあの日から、心火を燃やして」

「ストップ。お前は猿渡〇海じゃあない」

「やっぱり幼女じゃないか」

「あ゛?直流魔力でも流し込まれたいんかおんし」

 端白は優作の袖を軽く握った。

「ねぇねぇ優作さん。直流魔力って何?」

「さあ」

 結月は朱憐の胸ぐらをつかみ、ぶんぶんと擬音が付きそうなほど揺さぶる。

「誰が幼女だよ!だれが!」

「実際そうじゃん」

「おまっ。ぶち殺すど!?」

「なんか土佐弁とかどこかわからない方言まで出てるから。その辺にしときなさい」

「だって、だってぇっ!」

「だってじゃないの!ったく、いつからこんな子供になったか―――」

 刹那、首に違和感を感じる。背後から感じる、鋭いメス。軽く力を入れただけで首の皮膚を切断してしまいそうな、そんな殺気。そして首に感じる金属の冷感。

「今なんて言った?」

 結月は素早く優作の背後に回り、首にナイフを当てていた。その間わずか0.9秒。至近距離とは言え、およそ人間が出せる速さではないであろう。

「お前さぁ。そんなとこで変な才能発揮すんなよ」

「私、暗殺の才能あるかも」

「捨てちまえそんなもん」

「役に立たないよきっと」

「それもそうか」

 三人のやり取りを朱憐と天音はぼんやりと眺めていた。

「随分と仲いいんだな」

「ですねえ」

「…あんたは混ざらないのか?」

「そう…ですね」

 一つ息を吐く。

「全部知ってるとはいえ、私は彼女から離れていた身ですから」

「……知ってるって、何をだ?」

 天音は口の前で人差し指を立てる。

「内緒、ですよ」

 少しだけ、本当に少しだけ知りたくなった。彼女の、彼女達の隠している秘密について。過去について。

 けどそれは、なんだか開いてはいけない扉のように感じた。自分の直感がそう言っていた。

「いい?身長は低いけど私は幼女じゃない」

「身長はともかく一三歳はギリ幼女だと思います」

「だぁらっしゃい!一三歳はギリ少女でしょうが!」

「幼女だよ!」

 なんて醜い争いをしているのだろう。

「「優作さんはどう思う!?」」

「え俺ぇ?」

 絶望したような表情を浮かべる優作。その表情はそんな争いに自分をまきこまないでくれと語っていた。

「ハイハイ、じゃあ二人の主張を聞かせてくれる?」

 これ以上不毛で醜い争いを生ませないため丁寧に進行をしていく。

「一三はれっきとした少女でしょうが!!」

「いや十分幼いでしょ!!」

「あ゛?」

「なに?やんの?」

「本当に仲がいいな」

「ですねえ」

 扉が開く。

「あれ、三人とも何してるの?」

 中に入ってくるのは愛音。この人もこの人で出番がなかったり、どこかの式の変装に使われたり、かわいそうな女性である。

「あ、えっと、私が言えたことじゃないけどお客さんですか?」

「あっ、別に」

「何陰キャぶってんだ厨二野郎がッ!早くこの二人とめろ!」

 視線を向けると、結月と端白が本棚のないところで取っ組み合っていた。

「器用だな」

「関心してないで手伝ってくれよ……」

「ふんぬっ」

 どうこう言っている間に、結月は本棚がある場所に端白を背負い投げしていた。

 端白に向かって多くの魔導書がバサバサと崩れていく。

「……端白のせいで片付けなきゃいけなくなっちゃったじゃん」

「結月が投げ飛ばしたせいだよね……?」

 もはや原型はとどめておらず、安物の魔導書が並んでいた本棚はただの箱になっていた。

「まったくもぉ。ん?」

「どうしたの?」

 結月は本と一緒に落ちてきた一枚の写真を手に取る。

「その写真、こないだの?」

「ああうん。そうだよ」

 写真に映るのは二本の角が生えた少女。

 気温が高いのか、それとも彼女が熱を放っているのか、少女の姿は陽炎で歪み、よく見えない。

 周囲は炎を放っており、多くの家屋と思われる残骸が転がっていた。中には、原形も見えない、だが確かに人型に見える黒い物体があった。

「この黒いのって…」

「多分…焼死体だよ」

 絶句する。

 結月も何も言葉が出てこない。先ほどから動かなくなってしまった端白をどうやって励ましてやろうか。

 焼死体は一つではなかった。たくさん、それはもう両手の指では到底数えることができないほど。いや、指で数えることが馬鹿馬鹿しく思える程度には大勢の人間が死んでいた。

 被害者数と言って表示された約四〇〇〇名の名前。今でも忘れない。そしてこれからも、忘れることはないだろう。忘れさせてはくれないだろう。

 だけど、この時だけは忘れさせてほしかった。たとえそれが世間から許されない行為だとしても。一度でいいから逃げたかった。目を背けたかった。

 それは、こんな小さい少女に背負わせるには大きすぎる業だった。

「こんな小さいのにこんなんなって…別に、同情も理解もできないし、したくも無いけどね」

「そりゃまた随分と薄情で」

「私はちょっと同情しちゃうけどね。結局この子どうなったの?」

「人里から隠れてコソコソ暮らしてるんだと。

 当時のことを思い出すと……


 全く、反吐が出る」

 結月は今まで見たことない、般若の様としか言いようがないような形相で虚空を睨みつける。それほどまでに忌まわしい出来事なのだろう。

「例に出さなければいいのに」

「そんなマジレスロボットみたいなこと言うなよ」

 優作が朱憐を小突く。

「はいはい終わり終わり。そんな暗い話しててもつまんないだけだ」

「ん、そうだね」

 パン。と、手を合わせる。

「さ、解散解散。昼飯食べてくってんなら軽くサンドイッチでも作るけど?」

「たーべるー♪私たまご!」

「私ももらっていい?」

「いいよ。卵でいい?」

「うん。ありがとう」

「優作さんは?」

「ではお言葉に甘えてハムで。お前はどうすんの?」

 朱憐は自分に指をさす。

「…俺?」

「そう」

「…いただこうかな」

「食べるじゃなくていただくって言ってるところに育ちの良さを感じる」

「お前が言えたことじゃないだろ」

「優作さんが言えたことでもないよね」

「結月だって…」

「お世辞にも良いとは言えないなぁ」

 それまで結月をいじるような言い方だった端白が急に静かになる。

「え?…あ…ごめん」

「もしかして虐待でもされてたって思ってる?」

「違うの?」

「…まあ当たらずとも遠からずといえばいいのか?」

 端白は結月のことを憐れむような眼で見ていた。

「え、何さ。なんでそんなお労しいみたいな空気になってんの?」

 全員黙りこくってしまった。しょうがないので一人二階の台所へ向かう。

 ふと、窓の外を見る。

 空は、今日も頭が痛いくらいに青い。


 青い、はずだ。

「灰色にしか見えねえや」

 結月には青いはずの空が、碧いはずの木々が、景色のすべてが古いテレビジョンのように灰色に映っていた。

 やはり自分はあの日からすでにおかしくなっているのかもしれない。

「そうだ…サンドウィッチ…」

 急いで台所に向かう。何故だか足が重かった。


 


 

結月にも『武装』(アビ・エシュフ)とか霊基外骨骼オルテナウスみたいなやつほしいな。(FGO3年もやってるのにいまだ2部序章のやつ)

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