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アブノーマル  作者: 秋田こまち
第一章
11/17

第九節 『縺ゅ↑縺溘◆縺。縺ョ縺帙>』

四捨五入して5,000文字

[序]

 目を開く。

 眼の前には、無数の塵が転がっていた。

『・・・殺してやる』

 桐生礼華は立ち上がる。

 自分の娘を撃った奴らを塵と化すべく。

『殺してやるッ!!』


 形容するならば一種の神性。

 動かない。

 動けない。

 眼の前にいるのは、かつて自分を苦しめた存在のようで。

「―――あ」

 姿が重なる。その瞳には、


 鏡に反射したかつての自分の姿が写っていた。


[一]

「天音」

 何度問いかけても、彼女が目を開くことはない。

 こうなることを何故予想できなかったのか。

「天音」

 返事は返ってこないというのに、つい言葉を吐いてしまう。

 もしかしたら、自分の障壁があるからと自惚れていたのかもしれない。

 こうなったのは自分の非だ。

 礼華に、なんと言おう。

「・・・また来るね」

 最後に、一つだけ言葉を残して、結月は去っていった。




「これはどういうことだ!」

 眼の前にいるのは、警視庁の監察官。

 優作が今いるのは捜査本部。

「一般人が捜査に介入して、掻き乱すなど、許されると思うのか!?」

「組合と協力すると言ったのはそちらでしょう!!」

「そうではないッ!」

 柿沼が反論するも、余りの威圧感に一同動けなくなる。

「何故あんな小娘を捜査に加えた?何故天音様を前線に出した?

 あの小娘のせいで、犯人は逃がし、果には天音様は撃たれてしまった!

 もう一度問う。何であの娘を捜査に参加させた!何故犯人を取り逃がした!」

 周りがざわつく。

「だからこんな奴らに任せちゃ駄目だったんだ」

「何で警視は捜査協力を許可したんだ」

「こいつらのせいで・・・」

 罵倒の数々。小声で話しているが、そのほとんどが優作たちの耳に入ってきていた。

「しかも、その娘はあの忌々しい殺人鬼と同じ名前ではないか」

「殺人鬼じゃない!」

 柿沼達は必死に叫ぶ。

「それに、何故犯人の居場所がわかった?もしかして、貴様らは奴らの協力者なのではないか?」

 周囲が更にざわつき出す。

 彼等を避難する者もいれば、結月や優作を擁護するものもいる。

「違います!私達は・・・」

「言い訳は不要だ。もうこれ以上捜査を撹乱しないでくれ」


「笹木、起きてる?」

 ただ、寝息だけが聞こえる。

「流石に寝てるか・・・」

「起きてるよ」

 起き上がる。目と鼻の先に、結月の顔があった。

「・・・耳出てる」

「それがどうしたの?」

「触って良い?」

「駄目」

 ナナは寝ぼけたまま伸びかけていた手を払った。

「ホントに猫好きだね・・・で、何か用?」

「ちょっと、アイツの魔術のことについて聞きたい」

 少し間をおいて、話し出す。

「あの魔術は多分精神干渉系。理性がなくなって、そこには狂気だけが残る」

「一時的発狂ってこと?」

「たぶんそれに近いね。まあ、そんなヤバい感じじゃないから、心配はしなくていいよ。ただ、おそらくあの式は人間にも作用する。けど、欠点もある」

「欠点?」

「うん。あの術式には、クールタイムがあるんだ。一回の使用に三時間、発動できなくなる」

「なんでそれが言い切れる?」

「簡単だよ。紫の餓鬼がポロッと言ってた」

「莫迦なのかな」

「たぶんね。じゃ、僕は寝てるよ。おやすみー」

「起こしてごめん。おやすみ」


 修羅場と化した捜査本部に一人の少女がズカズカと入ってくる。

「失礼します」

「何だ貴様は」

「結月!?」

 刑事達は結月を見る。

「有益な情報を掴んだと思ったのですが、失礼。必要ありませんでしたか?」

「ああ。殺人鬼の言うことなど信じられるか。出ていけ」

「だから殺人鬼じゃないと・・・」

「君たちも出ていきたまえ」

 優作達は、やたらとガタイの良い刑事たちに掴まれ、ひょいと廊下に投げ出された。


「あのクソジジイッ!何で俺たちの話聞がないんだ!」

「落ちついて。一旦深呼吸。はい吸ってー」

「スーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

「長くね?」

「はいもっと吸ってー」

「殺す気かっ!」

 結月は優作の高速チョップを喰らった。

「とりあえず本部じゃなくて所轄に連絡するとして・・・どうします?ここから。相手逃げちゃいましたけど」

「いや、多分まだ発信機には気づいてない」

「そんなことあります?」

 柿沼は画面を見せる。

 赤い点が点滅しながら地図の中を移動していた。場所はよくわからないが、おそらく千住であろう。その答えを示すように、北千住駅が近くに表示されている。

「駅前で戦うってこと?」

「それは流石に・・・・」

 二人は明らかに嫌がる。

「たしかに、一般人を巻き込みかねん。それに、周囲にも損傷が出る」

「被害額を想像したら頭が痛いよー」

「人は駅前から捌けさせるとして、一体どうやれば・・・」

 狭山は結月を指さした。

 つられて、結月も自分を指さしてしまう。

「結月ちゃんが、わたしたちの最終兵器だからね」

「私・・・ですか?」

「結月が?」

「・・・ああ」

 優作は怪訝な、柿沼は納得したような表情をする。

「あの、なんで私なんでしょう」

 狭山は口角を上げて言う。

「障壁が、あるでしょ?」


[二]

 誰も居ない北千住駅。

 不自然に立ち尽くす二人の少年。

 そこに、突然警察車両が列をなしてやってくる。

「やあ。待ってたよ」

 その中には、不自然にただのワゴン車が紛れていた。

「お兄さん」

 中から出てきたのは、青い髪の少年。

「勝負するかい?手加減はできないけど」

「残念だけど、こっちも手加減できないし、正攻法で挑む気はない」

「ほう?正攻法ってのは?まさか、お仲間がいるってこと?」

「まあそゆこと」

 優作は一発、斜め上に向けて発砲した。同時に叫ぶ。

「結月!」

 サンルーフから飛び出す。

 ナイフを振り上げ、刺す。

 予想外の場所から現れた刃は抵抗なく入っていき、薄橙色の肌に一筋紅が走る。

「ッ!」

 眼前にいるのは、小柄な白髪の少女。

「・・・ガキ?」

「あ゛?」

 結月は朱憐の右腕を縦に切る。

 幸い、傷は浅い。

 このまま行けば、再生魔術で簡単に治るだろう。

 だが、地雷を掘られて黙っていられるほど、結月は大人ではなかった。

 即座に後ろに回り込み、左腕にも傷を負わせる。今度は割と深めに。

「グッ!?」

 やけにすばしっこい。こちらの攻撃を全てかわしてくる。そしてやけに硬い。捌き切れなかった攻撃を平然と障壁で弾いてくる。

 結月は拳銃を構える。

 発砲。発生する発火炎。両者の視界を大きく遮る。

 先に動き出したのは結月。左手のナイフを返し、一突き。

 だが、その突きは間一髪かわされ、代わりに拳を一発叩き込まれる。

 鈍い打撃音。共に少しだけ血を吐く。

 反撃。右手の人差し指が拳銃の引き金を引く。

 遊底が素早く動き、薬莢がタイルにあたり、金属音を鳴らす。

 腹部に一発。だが、こちらにも手はある。

 朱憐は周囲の警察官を射程に捉える。

 発動と同時に、頭に激痛が走る。

 警察官は、一斉に銃を抜く。

 その銃口は全て、紫電と交戦中の優作に向けられていた。

「危ないッ!」

 思わず叫ぶ。

 即座に障壁を展開する。

「よそ見しちゃっていいの?」

 朱憐の声で我に帰る。

 腹部に膝蹴り。結月は大きく弾かれる。

「ガッ」

 床に転がる。

 こうやって床と顔を見合うのも今年でもう何度目だろうか。まあ、床に顔があるわけではないので一方的に見ているのだが。

 立ち上がる。

『ちょっと待った』

「・・・?」

 通信機から声が聞こえる。

『桐生礼華は、今どこにいる?』

 今になって気付く。だが、その答えに辿り着かせないと言わんばかりに大量の靄人間が出現する。

『結月、靄人間の対処できるか?』

「犯人は?」

『現在逃走中。経路は靄が塞いでる』

「倒してかないといけないって事じゃん!」

『ああ。殲滅していってくれ』

「えぇ・・・」

 通信が切れる。

「結月!靄野郎共頼んだ!」

「な、どいつもこいつも・・・」

 拳銃を収め、ナイフを右手に持ち替える。

「ったく。病人を酷使するんじゃあ無い!」

 切り裂き、突き刺し、撃ち抜き、丁寧に、一人ひとり処理していく。

 そしていずれ開けた視界には、吹き飛ばされた赤い髪の少年と、桐生礼華の形をしたナニカがいた。


 夢を見た気がする。

 自分の何よりも大切な娘が撃ち殺される夢を。

 否、それは夢ではない。

 本当に撃たれたのだ。あの人間たちに。

 許さない。

 許さない。

 許さない。

 許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さないゆるさなイユルサない許さなイ許サなイゆルさなイユルさないユルさナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ


 目を開く。

 眼の前には、無数の塵が転がっていた。

『・・・谿コ縺励※繧?k』

 桐生礼華は立ち上がる。

 自分の娘を撃った奴らを塵と化すべく。

『谿コ縺励※繧?k!!』


 形容するならば一種の神性。

 動かない。

 動けない。

 眼の前にいるのは、かつて自分を苦しめた存在のようで。

「―――あ」

 姿が重なる。その瞳には、鏡に反射したかつての自分の姿が写っていた。

「ッ———総員退避ッ!!」

 叫び声。大きく鼓膜を震えさせる。

 その頃には警察官たち掛けられた魔術も効力を失っており、全員が後方に逃げ出していた。

 だが、結月の身体は言うことを聞かず、金縛りにあっていた。

 砲撃。標的は眼の前にいた結月。

 優作は飛び出していた。

 結月を掴んで、安全な場所まで引っ張り出す。

 紫電も、朱憐を回収すると、優作達がいるところまで走り出した。

「何だよあれ!?」

「知らないのか!?」

「知るわけねぇだろ!こちとらここじゃ無い世界から来たんだぞ!」

———外の世界の住人か。

 優作はどう説明するか悩んだが、口を開いたのは結月だった。

「・・・霊格崩壊」

「なんて?」

「妖怪には霊格っていうのがあって、精神的ショックで正気を失うと、それが壊れてああいう風に自我を失って暴れ回る。もし鎮圧して収まったかと思えばその妖怪は生体活動を停止する。つまりああなってしまえば最期って事」

 淡々と語る結月。

「あれ、そんなにやばいのか?」

「やばい。かいつまんで説明するけどあれで国家一つ滅びかねない。しかも、その中身は天皇の代替品(この国の代表)。下手したらこの国が滅ぶ」

「そうなれば、どうなる?」

「私達の居場所がなくなるし、貴方達の計画も多分台無し。もしそれでもこの国を変えたいってんなら、別のプランをおすすめするよ」

「・・・何とかできないのか?」

 二人とも黙り込む。

「できないことは・・・無い。けど、多分私も彼女も持たない」

「・・・他の策は?」

「対格崩壊用の再構築術式は協会の奴らしか使えない。鎮圧用装備も自衛隊にしかない。ここまで呼ぶには時間がかかるし、第一さっきも言った様に無理にやったら死ぬよ。彼女」

「じゃあどうしろって」

「言ったでしょ。できないことはないって」

 結月は立ち上がる。

「優作さん。姉様に連絡しといて。あと、何かあったらお願い。葬式の費用は実家の地下にある」

「死ぬ前提で行くな。一華さんには連絡しとくよ」

「ありがとう」

 礼華の目の前に立つ。

 怖くて仕方がなかった。

「ごめんなさい師匠。言いつけ破ります」 

 結月はコートのフードを被ると、左手にナイフを握り、何を血迷ったか自分の右掌に突き立てる。

 肘から先、病気と見違う程白い肌が真紅(あか)に染まる。

 血の匂い。鋭く鼻を刺し、自分が自分では無くなっていく。


 そこに、先程までの枸城結月は立っていなかった。


[急]

 目が覚めると知らない天井だった。

「目が覚めたか」

「えっと、どちら様で?」

 寝台の横には一人の男性が立っていた。

「簡単に言えば、結月の上司だ。柿沼と同じ様な感じ」

「は、はぁ」

 何か忘れている気がする。

「お母さんは!?」

「無事・・・とは言い難いな」

「な、何が・・・」

「格崩壊だ」

「かく・・・ほうかい・・・」

 話は聞いたことがある。霊格が何かの要因で壊れてしまい、自我を失って破壊の限りを尽くしてしまうという。

「どうにかできないでしょうか・・・」

「俺たちも対処できる奴を探してるんだが・・・」

「ここにいるわよ?」

 ふたりとも、声の方向に向く。

「あ、アンタは・・・」

「格崩壊なら私に、この九条一華に任せてくれる?」

 そこには丁度いい女。もとい栗色の少女が立っていた。

導入が礼華視点で、終盤の文字化け付きが周りから見た礼華様です。結月の能力は何通りも考えましたが、結局自傷して起動に落ち着くという。やっと本編に姉が出てきたな。

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