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アブノーマル  作者: 秋田こまち
第一章
10/17

クリスマス短編2 ※サンタクロースは本当にいます

メリークリスマスpart2

「何にしよう」

 天音は店の前で立ち止まっていた。時間は午後五時。先程の会が終わった直後。天音は端白達に引きずられ、西新井のショッピングモールまで来ていた。

 眼の前にあるのは女性物の洋服店。

「・・・結月くん、着ますかね」

 確かに結月の趣味ではないが、結月がこのような服を着ているところは、確かに見てみたい。

 だが、結月は今のままの結月でいいと思ってしまうのも事実。

「どう・・・しましょうね」

 本当にここで良いのだろうか。結月がもっと喜ぶところはないのか。

 考える。

 考えて考えて、必死に考えても何も出なかった。

 天音はある店の前で立ち止まった。

「アメリカかな?」

 店にはまるで米国のガンショップと言わんばかりに銃器が並んでいた。

「お嬢さん、何か用?」

 そう言って天音の前に現れたのは、小柄で中性的な男性。いや女性だった。

「いや、ちょっと、不思議なお店だなぁって」

「そうでしょー。本場の外観を再現したつもりなんだけど、みんな寄り付かなくて。ワタシセンスないのかな」

 日本の民度がいいだけでは?そう突っ込みたくなったが、迷惑そうなのでやめておく。

「どんな銃が好き?」

「あ、私は使わないんですけど、何というか・・・よくお世話になっている友人が使ってて」

「ほーん。そう。例えば?」

「そうですね」

 一丁の拳銃に目が行く。

「例えば、」

 黒光りするフレームとスライド。斜めに切られたセレーション。角ばっていながらもスマートな印象を持つアジャスタブルリアサイト。大きく肉抜きされたトリガーにスライドの側面に大きく掘られた「Kimber」の文字。

「こんなのですかね」

 キンバーゴールドマッチⅡ。競技射撃用に作られた、結月が使用するカスタムⅡと同じキンバー社の上位モデルの一つ。

「その友達は、多分こっちの方が好むんじゃないかな」

 机に置かれたのは、天音が手に取ったゴールドマッチと似た外観を持つ拳銃。

 キンバーゴールドコンバットⅡ。キンバー社の上位モデルの一つ。外観としては、ゴールドマッチのリアサイトを固定式にしただけのように見えるが、ゴールドマッチについているバレルを固定するパーツ、バレルブッシングが無く、その代わり、円錐形のコーンバレルと呼ばれる特殊な銃身を装備している。

「それは何故?」

「君が言ってる友達は、彼女じゃない?」

 店主が差した先にあったのは、笑顔の店主と、恥ずかしそうに顔を赤らめる結月の姿。

「ちなみにそれはつい二ヶ月前うちのCQBゲームで優勝した時のやつ」

「恥ずかしそう」

「実際恥ずかしいだろうね。彼女、目立つの嫌いみたいだし」

「かわってないなぁ」

 パシリと、店主が手を叩く。

「本題に戻るけど、彼女はサバゲーでも割と実戦を意識する癖があるからね。こっちの方がいいんじゃないかな?」

「そう・・・ですかね?」

 店主は立ち上がると、天音に向けて言った。

「今ならそれもまけて一万でいいよ」

「いいんですか?」

「うん。実は、それあんまり売れてないんだ。最近、実銃の競技射撃界隈では別の拳銃が流行り出してね。ガバは売り上げが下がってきてる。在庫処分に協力すると思ってくれていい。あと、そいつとこいつの二長は、彼女が欲しい欲しいって何度も言って悩んでたからね」

「・・・では、買います」

 言い負かされた天音は、二丁の拳銃を一万円で買い取った。

 ちなみに、それとは別に先程の店で別の物を購入した。


 何も、プレゼントで困っているのは一人だけではなかった。

「どうしよう」

 ここにも、悩んでいる少女が一人。

 背が高く、スタイルがいい栗色の髪を持つ少女。

「なにしてんの?」

「わぁっ!?」

 大きく飛び退く。

 話しかけてきたのは白髪の少女だった。

「なんだゆづきちゃんか・・・ゆづきちゃん!?」

「そ、そうだけど・・・何やってんの?」

 そう結月が聞くと、栗色の少女もとい姉、一華(いちげ)は急にもじもじと挙動不審になる。

「ぷ、プレゼントを・・・」

「奇遇だね。私もそう」

「へ?」

 思わず腑抜けた顔をする。

「誰にあげるの?彼氏?」

「ま、まあそんなトコロ・・・」

 結月に贈るなんて、自分の口からは出なかった。

 なんせ、あまり結月と関わってこなかったのだ。何を今更。そう言われるのが怖かった。後単に結月を恋人かなんかだと誤認しているのもあるだろう。

「へー。彼氏いたんだ」

「今私の目の前にいるけどね」

「ん?なんか言った?」

「へ?いや何でも」

 エスカレーターを下る。

 勇気を出して聞いてみる。

「ゆづきちゃんは今何が欲しい?」

「何急に」

「何でもいいじゃん」

「そうだなぁ。本とか?」

「本?」

「そ。この間買い損ねたから」

 安いなぁ。

 そう思いながら歩く

 ところで、結月は誰に贈るのだろうか。

「そういえばゆづきちゃんは誰に贈るの?」

「・・・なんでもいいじゃん」

「何々彼女ー?」

「・・・・・別に」

 ほんのりと頬を赤らめる結月。

 その時、一華に衝撃走る。

 付き合ったのか。私以外の女と。そう口から出そうになった。

「私のだもん」

「へ?」

「憂月は私のだから」

 結月を後ろから抱きしめる。

「・・・誰にも、渡さない」

―――こんなシスコンだったっけ?

 その光景は、傍から見れば幼女を抱きしめている成人女性にしか見えない。もしもし警視庁?

「・・・急に何?」

 姉の方を振り向く。

 そして、

「―――ッ!?」

 見てしまった。見えてしまった。こちらを笑顔で見つめる天音を。そしてその後ろで何か黒いものが揺らめいている光景を。

「あッ。あぁ。ぁぁ。あああ!ああぁぁぁぁ」

 一華も突然悲鳴を上げる結月に流石に違和感を覚えたのか、結月が向く方を振り返る。

 瞬間。

 衝突する。二つの視線が。感情が。殺意が。

「わァ・・・あ・・・」

「泣いちゃった!」

 近くにいた愛音が投げ出された結月を回収する。

 実の姉VS実質的な嫁。戦いの火蓋が、切って落とされた。


「で、天音ちゃんは?」

「あそこでうちのクソ姉貴(ねぇちゃん)と格闘中」

 モール内の喫茶店。

 ここから少し離れた場所で、天音と一華が魔術の打ち合いをしていた。

「こら結月ちゃん。お姉さんのこと悪く言わないの」

「だって」

 結月は口を尖らせる。

「・・・こっちからプレゼント渡しても、帰ってこなかったし」

『グッ!』

 遠くから短い悲鳴が聞こえる。

「勝手にどっか行くし」

『ガッ!』

 遠くから短い悲鳴が聞こえる。

「・・・誕生日ろくに祝ってもらったことないし」

『ガァァァァァァァッ!』

「やかましいッ!」

「自分がやった事だよね!?」

 やかましいものはやかましい。

「というかどうしたんだよあの天然物の明星院当主」

 合流してきた優作が問う。

「天然物って」

「ああ。なんか釣れた」

「釣れたって」

 優作は一華の方を向いて言う。

「もしかしてあいつ、鮎?」

「いや、バスじゃない?」

「魚で例えないで!?」

 天音が放った弾幕に押しつぶされた一華が落下してくる。

「あ、一ねえが負けた」

「ッシャア私の勝ち!ほら、一〇〇〇円」

「むぅ」

 綾戸が端白に千円札を渡す。

「あれは・・・何やってるの?」

「「スポーツ賭博」」

「駄目じゃん!ギャンブルだよ!」

「「セーフセーフ」」

「思いっきりアウト!!」

 



「で、二人は何買ったの?」

「・・・本当に交換するの?」

「するに決まってるでしょ?天音を見てみなよ。やる気満々だよ?」

「えぇ・・・」

 結月は露骨に嫌そうな顔をする。

「何でそんな嫌なのさ」

「だって、私が選んだやつ、なんというか、ありきたりだし、安物だし・・・」

「別にそんなんでもいいんだよ。相手が喜んでくれりゃ、それでいいの。ちなみに私は誰に渡すか決めてないけどこれ」

 端白が出したのはステンドグラスの様な柄が入ったアクリルキーホルダーだった。

「ゆづきちゃんに本」

「よこせッ!」

「あっ」

 結月は文庫本を剥ぎ取る。

「愛音に髪飾り」

「ゆ、優作くんにタイピン」

 明らかに悲しそうな顔をする結月。

「一ねぇがいるならって。ぬいぐるみ」

「私は子供か!」

「でっけぇ子供だよ」

 結月は渋い顔をする。

「・・・買い直してくる」

「いいって。あと、今の結月にそんなお金無いでしょ?」

「・・・痛いところを刺してくるじゃあないか」

「で、二人は何買ってきたの?」

 二人とも黙る。

「せ、せーのでいきましょう」

 二人共プレゼント袋を出し、渡す。

「「せーの」」

 袋から物を出す。

「「マフラー」」

 結月が渡した袋から出てきたのは黒の、天音が渡した袋から出てきたのは赤の、同じ店で売っている無地のマフラーだった。

 何故だろうか。

 そこはかとなく気まずい。

「「・・・ま、全く同じ店のマフラー・・・」」

「あれま」

「あらあら」

「これは・・・」

 からかうような雰囲気が漂う。居心地が悪いが、皆その言葉を言っていない。

「つまり・・・・ペアルックってこと?」

 言った!と全員叫びたくなった。

 二人は、一斉に顔を赤らめ、

「違うっ!」

「違いますっ!」

「「「けどつまりそういうことだよね」」」

「「これは偶然!!」」

 偶然にしては出来すぎだなあ(すっとぼけ)。


 目が覚める。

 まだ眠い。十二月二五日。目をこすりながら淡い期待をいだいて枕元を見てみる。

 ―――まさかあるとは思わなかった。結月の枕元には、謎の木箱があった。

 箱を開けてみる。

 そこにあったのは、二丁の拳銃。

頑張り屋さん(サンタさん)には礼を言わなきゃね」

 結月は部屋を出ると、今まで見せた事ないような笑みを浮かべて、言った。

「ありがとう。天音」

結局彼女はサンタを信じなかったとさ。前回より多いですよ。本編に相当するってどういうことじゃ。

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