7:もうこれは餌やり。
クタクタになって家に帰って、もうひと仕事。
お腹をすかせた国王にご飯を作る。
ダイニングテーブルに着いて、ワクワクとした顔でこちらを見ている。尻尾が見えそうなほどに、ワクワク。
――――犬?
焦げ茶色のモサモサな……おじさん国王。
もうこれは餌と認識して良いのでは? と、炒めている途中のおかずを見下ろした。
「お待たせしました」
「うむ」
あれ? なんで働いている気分になるんだろう? となは考えてはいけない。
ダイニングテーブルに、パンとおかずとスープを並べて、二人で向かい合って食べる。
「んむ? うまいが、かぼちゃが固形だぞ?」
「そういうスープです」
「んむ! うまい。これはなんだ?」
「鶏肉とスナップエンドウとキャベツを炒めてトマトソースで和えたものです」
「長い料理名だな」
――――料理名、なの?
国王をちらりと見ると、やっぱり所作が綺麗だった。こういうところは抜けないんだろうなぁと、さっき見たソファに寝そべっていた姿を思い出す。
あれは、一日しっかりと働いた人の特権だと思う。ってか、この人は一日なにやってたんだろう?
「国王――――」
「堂々と国王とか言うな。バレるだろうが。レオ!」
いや、普通にバレませんかね?
ヒゲ剃っちゃったし、肖像画と瓜二つですよ?
面倒だから突っ込まないけど。
「レオは、一日なにしてたんですか?」
「ん? まずは――――」
まず、私が家を出てから、ソファで寝そべって本を読んだ。
お腹が空いて、この家と背中合わせの定食屋でお昼を食べた。ハンバーグランチだったらしい。
家に戻って、ソファで昼寝。
影に起こされて、書類にサイン。
――――影?
もう一度昼寝して、本を読み途中だったことを思い出して、ソファで読書再開。
「んで、リタが帰ってきた」
つまり、一日中ゴロゴロしてただけか。
「影ってなんですか?」
「んー、居場所は一応教えとけと宰相に怒られてな。暗部の一人にだけ教えた。他にバラしたら殺すと言ってるから、大丈夫だろう」
「……なにがどう大丈夫なのかわかりませんけど、つまり、国王がここにいると知っている人がいて、出入り自由になっていると」
「んー? まぁ、そうだな!」
ここ最近、私の右手が勝手に動く。何かの病気だろうか? 結構心配だし、病院とかに行ってみようかなぁ。
「いだぁぁぁぃ!」
「……食事中にいきなり叫ばないでくださいます?」
「いや、食事中にいきなりデコピンはないだろ!?」
「…………平民の家ではこうです」
「流石に嘘だとわかるが!?」
「黙って食べてください」
自分から話しかけてきたのにか!? とかなんとかワーワーと言っているけど、無視しておいた。