6:丸一日、しっかりと働いて。
国王居座り三日目。
今日もまた、国王を家に置いて仕事にいかなければならない。
「……行ってきます」
「うむ。あ、昼飯はどうしたらいい?」
ごはんのこと忘れてた。てかいい大人なんだから、自炊くらいすればよくない?
そうぼやいたら、胸を張って自炊などしたことないと答えられてしまった。
玄関先で国王に手招きして、定食屋を教えようとしたのに、国王はなぜかテーブルにしがみついて動かない。
「ちょっと来てくれません?」
「嫌だ! この家から出らんぞ!」
「いや……ただ定食屋さんを何件か教えるだけですから」
「なんだ。そういうことは早く言え」
いや、なんというか……いや。まあ、いいけど。
なんとなく腑に落ちないなと思いつつも、表通りに出て家と背中合わせになっている定食屋と、少し先に行ったところにある定食屋、そして家から更に裏通り入ったところにある隠れ家的軽食&スイーツの店を教えた。
「じゃあ、急ぎますんで!」
「あっ、おい――――」
国王が何か言ってたけど、まぁ大丈夫でしょ。ってことで、今日も遅刻ギリギリで出勤。
「ちょっと、最近たるんでるわよ?」
「すみません!」
洗濯場のお局様に遅刻ギリギリなことを怒られつつ、急いで担当地区に向かった。洗濯物を回収しなければならないので。
騎士様の居住区を回って、一旦戻る。次に使用人の居住区を回って、また戻る。
あとはガッシガシワッシワシと洗いまくる。
洗ったら干す。
これで午前中が終了する。
服や下着類は午前中に干して、夕方前に取り込み、たたみ、再配布する流れ。
王城のように人が多い場合、一人一人が専用の袋に入れて洗濯物を出している。洗うときは、他の人と混ざらないよう様々な工夫がされている。各々の家紋やイニシャルをちゃんと入れてくれている人は、本気でありがたい。
入れてくれていない人も沢山いるので、干す時はハンガーに印を付けて、ここからここまでがこの人! というふうにしている。
衣服の乾燥待ちである午後は、王城リネン室の洗濯物。
担当の洗濯が終わった人は、そっちの手伝いに回る。
リネン室の洗濯物はエグい。
何がエグいって――――。
「あらー、昨晩はお盛んだったのね」
「これ赤ワインこぼしてるぅ」
「こっち、尿汚染だから別洗いね」
まぁ、そういうこと。
ヒーヒー言いながらそれらと戦って、洗い終えたら、自分の担当の洗濯物が乾いているか確認して、取り込む。
アイロンはなるべく掛けないけれど、騎士様のシャツ類にはかけなければならない。地味に大変。
「ふはぁ。今日もよく働いた」
「おつかれさまー」
「おつかれさまでした」
丸一日しっかりと体を使いまくるので、終業時にはいつもクタクタ。
同僚たちと軽く挨拶して、帰路に着く。
きれいな夕焼けをみながらしばらく歩いて、ガチャリと家のドアを開ければ、やっとゆっくりでき――――。
「帰ったか。夕飯はなんだ?」
――――あ、コレがいたんだった。
ソファに俯せで寝そべって本を読んでいた国王の後頭部に、なぜか手が吸い寄せられた。
「いだぁぁぁ!」