最終話:また拾うから。
最後までお付き合いありがとうございました!
ちょいと駆け足でしたが、楽しんでいただけていたら幸いです。
ではまた何かの作品で☆
笛路
結婚式の直前まで、なんやかんやと大騒動しながら過ごしてーの、当日。
誓いのキスはまたもや『ぶっちゅぅぅぅぅぅ』なやつ。
どれだけ恥ずかしい思いをさせるのかと怒ったら、なぜか喜ばれた。
「恥ずかしがるリタが尊いっ!」
「端的に、気持ち悪い」
「ふっ。それくらいの言葉では心が折れないのが国王だ」
いや、それで国王を誇られてもと思うものの、結婚式の最中にこれ以上の私語は慎みたい。
式を執り行っている教皇様に、めっちゃ睨まれているというのもある。
「では、バルコニーに移動しましょう」
結婚式が滞りなく終わったら、王城バルコニーで国民への顔見せを行うことになっている。レオが妙にニヤニヤしているのが気になるけれど、問い詰める時間はないようで、王城内を足早に進んだ。
バルコニーに出る直前に、ファンファーレが鳴り響く。国王と王妃の登場の合図。
「さぁ」
柔らかに微笑んだレオに右手を差し出され、そこに自身の左手を重ねた。
ゆっくりと歩き、バルコニーに立つと、割れんばかりの歓声が湧いた。
「っ、すごい」
広場の地面が見えないほどに国民たちが詰めかけていた。レオの、国王の結婚を祝うために、その姿を見るために。
こんなにも国民に慕われている人の妻になるのだと、責任の重さを今やっと、本当の意味で実感した気がする。
「どうした?」
私の手が震えていることに気がついたらしいレオが、顔を覗き込んできた。その瞬間、歓声がさらに大きくなった。
「リタ、少し顔を上げて?」
「――――っ!?」
そう言われて、顔を少し上げた瞬間、柔らかな唇同士が重なり合った。結婚式のときとは違う、優しく甘いキスだった。
さっきまで聞こえていた歓声が、遠くに聞こえる。
ゆっくりと離れていくレオの瞳をじっと見つめていると、ニタリと笑われた。
「溶けた顔になったな」
「っ……」
「怖がるな、いつでも私がそばにいる」
「――――はい」
自信たっぷりの為政者の顔をしたレオ。路地裏で泥まみれになって倒れていた人とは思えない。ちょっと格好良く見えてしまった。
「レオって、格好良かったのね」
「ちょ、今までなんだと思ってたんだ!?」
「家出中のヘタれたおっさん国王」
「間違ってないが!」
間違ってないならいいじゃない? と言うと、レオが口を尖らせながら「家出するぞ」といじけていた。
「いいですよ? また私が拾って愛でるんで」
「っ! お願いします!」
たくさんの国民が見ているバルコニーで、レオに土下座された。
国民たちも臣下たちも、皆がいつまでも大笑いしていた。
――――『家出中の国王陛下を見つけても、絶対に拾わないでください。王妃が拾いに来ます』というお触れの書面が王城から配布されるが、それはもう少し先の話。
―― fin ――